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アルトリーネの素敵な朝・牝豚調教編その1
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皆様。爽やかな朝のお通じに肉便器。
うそです。
本気になさらないでください。
そんな常識がまかり通る我が職場が異常なのです。
ええ。自覚はしております。
そして、この異常な風潮を流行らせた一因、他ならぬあたくしにもありますので、穴があったら入れたい、いや入りたいです。
はい、色々と毒されてきた自覚、ございます。
------------------------------------------------
アルトリーネでございます。
ちょっと文句を言います。
と言っても、皆様にではございません。お空の上のほーを向きます。
こら。聖院の性院な日常、その3でなぜうちの可愛い牝豚を宥めてたのか書き忘れてたでしょっ。
え?いたりあんぽるの方式ですと?知りませんわよそんなもん。
まぁ良いです。とりあえず、なんでこないだ、クレーニャが土下座してたのか説明いたしましょう。
その日、ダリアリーネとの引き継ぎに遅れたわたくしども。
とりあえず持ち場の引き継ぎを済ませましたところ、ダリアリーネがあたくしのクレーニャを「読み」ましてね。
「ふん、流行っておるからと言って朝も早うから部下と盛っておったのか。主従揃って困ったものだな」と、不機嫌にダリアリーネ。
…ま、そりゃ、夜の勤め明けであたくしどもが遅れたら、そのぶん眠る時間も削られますから、ダリアリーネのご機嫌がナナメってるのは無理もございません。
あたくしだって、クライファーネとかが似たような事をしたら嫌味の一つも言うかも知れません。
「申し訳ございませんわダリアリーネ。従者の不義は主人役の不義。このアルトリーネ、謹んでお詫び申し上げます」と、あたくしが床に片膝をついて謝罪のポーズを致しました。
「次からはこのような事なきように」えらっそうに。
ものすっごくえらっそうに言い捨ててダリアリーネが立ち去ります。あたくしも正直、かちんと来ました。
昔のあたくしならご法度の女官同士の刃傷沙汰をやらかしていたかも知れません。
ちなみに上級でこれをやらかすと、理由如何を問わずクレーゼ様またはアレーゼ様扱いになり、まず重謹慎です。聖院の地下深くの謹慎室送りです。
そして、沙汰が始まりますが、わたくしどもに隠し事はできません。あっという間に沙汰が出ます。
で、過去に数度かありましたが、最悪の場合は死罪。
これは、情を殺して涙を飲んで行う場合もありますので、あえてクレーゼ様の任務と定まっており、見届け人としてアレーゼ様と、配下の銀衣騎士1名が刑場に列席します。
つまり、今、何かやらかせば、あたくし、元来の職務の一つであるこの死罪の刑執行を見届けるどころか、自分で体験しちゃう羽目になります。それは流石に勘弁ですね。
さて、ここで聖院に詰める女官の不文律がございます。
この不文律、基本的に騎士女官も同じです。
まず一点。
少々の揉め事は、なるべく当事者同士で片付けよ。
これは上級下級合わせて結構な人数がいますので、揉めるたんびに先輩女官の手を煩わせれば仕事が止まります。
それと、わたしども同士で隠し事が出来ないのもあるんですよね。普通の女性同士なら笑顔で誤魔化せる本音が、そりゃあもう、だだ漏れに漏れますので。
で、いくら先輩や上司が仲介しても、お互いを憎みあったままでは色々捗らないこともございます。ですから、お互いが納得できるように時間をかけてでも和を為せと教えられます。
で、二点目。
上下関係は守るべし。
これは院内の秩序維持のためです。
で、あのクレーゼ様が、マイレーネ様から締め出しの罰を受けて、そりゃあもう嫌々渋々ながら従ってたのは何故か。言うまでもなく、クレーゼ様はマイレーネ様からしても雲上人の部類です。
ですが、昔からの金衣様がマイレーネ様に「マイレーネが該当の職務に就く限りは、院内の日常生活に関わるこれこれに関し、権利と責任を与えます。励むように」と任じています。
つまり、マイレーネ様の管理責任範囲で起きたことはマイレーネ様の責任となりますが、同時に金衣の権限も持たされているわけです。
で、わたくしどもは、あばうと、というのですか、ちゃらんぽらんにやっているようで、結構色々な決まり事に従い縛られる身です。そして、クレーゼ様がマイレーネ様の言いつけに従うのも、この決まり事をクレーゼ様が横紙破りしすぎると聖院の秩序が崩壊しかねないからです。
…うん、時々、クレーゼ様が何かやらかして、担当の上級女官に叱られてるのも、クレーゼ様といえどあまり無茶は出来ないから、いわんやその下にいる我々が秩序を乱し決まり事を破り白を黒とは言えないわよね、となる訳ですね。
そう考えますと、クレーゼ様の珍奇なふるまいは我々女官に決まり事はこうも重いものですよと説いて聞かせるために、わざとおやりになってるのかとわたくしは密かに尊敬の眼差しを送ろうとも思います。
思いますが、天然ですっぱーんと見事にやらかしておられるのかも知れません。
真実は闇、知らなくとも良い闇もございます。
そして三点目。
後輩は先輩を立てるべし。
実は聖院、割と実力社会ではあります。特にわたくしども騎士は、やはり剣を握るかその他の得物に精通してなんぼ、強くてなんぼです。
ですが、聖院開闢から一千年にわたる歴史は、決して無視はできません。
そして、そちら様の修道院同様に、入った人は一般のきぎょう様ですか、こちらで言う大店よりさらに長くいらっしゃる方も少なくありません。特に上院。
ええ、クレーゼ様が他で語っていた金衣の還俗があり得ませんように、金衣様銀衣様ほどではないにしろ、聖院の精気流通の流れに組み込まれた我々上級女官も、還俗はほぼ不可能といってよい身の上です。
本当はものすごく希少な例外をわたくしは知っているのですが、これについては後日といたしましょう。
(ひんとを出しておきますと、わたくしが腰に佩く聖剣リトルクロウこと小烏丸。これとアルトリーネの名をどういう経緯で授かったか、思い出すか読み直して頂きますと。何かひらめかれますかも。うふ)
ですので、先輩後輩の仲は基本的に十年二十年と続きます。下克上がしたいのなら、特定の分野または総合的な実力を認めて頂き、要職に取り立てられるしかありません。
で、クレーニャがあたくしに土下座してたのはこれです。これ。
実は、先に申しました通り、同じ騎士でも微妙に差があります。
ジーナ様ちょい交代。あたくしより適任と思うので御願いいたします。
「なんやねん、これくらい説明しーや。まぁええ。えっと、会社勤めの方で、例えば同じ課長さんでもお給料ちょっと違うとかいうの経験した事ありませんか。例えばうちの会社、フットワークですと、営業課長と総務課長の三田村さんだと、営業課長の方が三田村さんよりお給料は高いです。ええ、営業手当ついてますから。で、もうちょっと大きい会社とかだと、同じ課長さんでも役名と職名が分かれていて、課長という役名に対して出る課長手当と、管理職○級でなんぼといった職級手当を採用してる場合があります。で、アルトくんが私に説明して欲しいのは、この、同じ課長さんでも管理職7級の課長さんと、6級の課長さんの差だと思います。みなさん、これでわかりますでしょうか。あとアルトくん、頼むぞ。あんまウチを頼るなよ!わはは」
えー、なんかよくわかったようなわかんないような。
で、ちょっと前にお話しいたしました「同じ上級騎士でもクライファーネとあたくしでは装備の装飾とお小遣いの額が違う」件がこれなんです。
聖院ではジーナ様の例のようにきちんとはっきり決めてるわけではないのですが、同じ騎士でも明らかに違う場合があります。
で、これ、揉めた場合にあとあとまでひきずらないようにする為にも、直接の先輩が後輩に教えておくはずの事なんですよね、わたくしたちの場合。
たとえば、ダリアリーネの担当先輩は誰だっけ…マイアニーネか…あいつか…ずぼらしよって…。
ええ、最近とみにかんさいべんというのですか、ジーナ様語に汚染されてる気がします。どなたですか聖院の第二言語に日本語を押し込んで日常公用語指定したの。どっかの楽そうな名前のかいしゃみたいな事決めたの。
…ああ、シメます。後できっちりシメます。ええ、こんな重要事項をあっさり決めてごりごり押し込める人、あのめすぶ…うちで一番偉いお方しかいませんから。
(ちな、聖院の第一言語は央方古代王国語、あたくしの出身地からそんなに離れてなくて、ジーナ様世界でいうと、ぜったいおしりまじゅうせんせんばびろにあな場所の言葉に近いものだったそうなんですが、何代目かの金衣様の時に「いい加減この言葉は古くさいからちょっと新しめでほーりーな感じのやつに変えちゃいましょう。なんかいいのないかしら~♪」と、ものっすごくその場のノリな感じで決められたそうで。ええ、長靴米麦国の古代語…らてんごっていうんですか、これもたいがいカビ生えてそうな言葉に切り替えたらしいんですよ。…聖院は、真面目に運営されていると信じたいです。ええ)
そーです。
マイアニーネが説明さぼったか、はたまたど忘れしてた公算がものすごく高いのですが、ダリアリーネとマイアニーネが並んで姿見に映ったり、或いはマイアニーネが自分の正装とダリアリーネの正装を比べて違いを教えていたら、このアルトリーネとダリアリーネの違い、彼女が気づいてたはずだとクレーニャは言いたいわけです。
ええ、あたくしの腰の刀、リトルクロウですから明らかに聖院上級騎士標準支給刀と見た目からしてまるっきり違いますから。
そして、クレーニャがゲザって腹を切るとか泣いてた理由。
「実質格上で上司で、聖院女官騎士ナンバーワンで、この上はアレーゼ様となる格のアルトリーネが、従者たるクレーニャの朝のおねだりのせいで遅刻して、昇格一年未満の新米上級騎士ダリアリーネに膝をついて謝罪した」これなんですよねえ。
しかし、あたくし、こうして改めて言葉にするとけっこー昇進しちゃってますわね。ほほほ。
ええ、出身国の人によくある性格らしいのですが「変態だけど」生真面目で融通の利かないクレーニャは、重ねて言いますが変態だけど生真面目すぎるくらいに生真面目なクレーニャは、自分のせいであたくしに屈辱的な行動をとらせてしまったと斬鬼の念にとらわれていたわけなんですわよ。
ふむふむ。確かに、これはアレーゼ様あたりに確認を取るまでもなく、遅刻したあたくしたちが無条件に悪うございます。そして、上司に恥をかかせたクレーニャも、厳しい上級騎士についていたら叱責対象だったでしょう。
しかしですね。このアルトリーネ、密かなる特命あらばこそ、専属家畜のクレーニャを預からせていただくことができた身の上です。
幾つかの特命または特務につく立場ならばこそ、可愛い家畜の求めに応じて愛でることも必要業務なわけです。
ええ、遅刻は遅刻で責められましょう。
ただ、騎士の誇りに泥を塗る言動はちょっと今後を考えるといかがなものか。主従揃って卑しい発情豚扱いされたのがあたくしのカッチーンポイントです。そしてあたくしも性別は牝。
ええ、覚えておいてください殿方の皆様。牝同士の争いが熾烈苛烈となる原因がこれなのです。とげとげしい物言いになりがちなのと、そして重要事項「女はいったん、敵認定したら相手を殲滅するまで敵扱いを解除しない」これです。
女の多い職場でしょうもない、殿方からすればほんの些細なことでもめる原因がこれなんっすわ。ねえジーナ様。
(うっさい、あたしに聞くな。それに、これどっちか言うたらクレーゼさん案件やろ)
そーです。最近は女官や騎士の管理について、あの自由奔放で天真爛漫なクレーゼ様だと絶対にボロボロボロボロ抜けが出るので、マリア様が密かに「あっこれは後々の禍根になる。これはジーナ母様に処理させよう。こっちはアレーゼ様送りで、これは流石にクレーゼ母様だなぁ」と、采配をふるっておられるご様子。
素晴らしいです。
若年5歳にしてこの采配。アレーゼ様がマリア様に臣下の礼を取るのも理解できます。
まぁ、マリア様とはあたくし、あまりお話させて頂くことがないんですがねぇ。お母様お二人との接触が多すぎるくらいに多いせいでしょうか。
(ええ。アルトリーネはお母様お二人の寵愛を受けておられるから、あたくしがあれこれお助けする前に色々解決してしまうのですよ…申し訳ありません)
(い、いえ、マリア様のお助けを求めるわけではございませんから!このアルトリーネの些事ふぜいにお心を乱されずとも大丈夫です!なにとぞお気になさらぬように!)
ええ、騎士の身に刻まれた本能です。
条件反射で、この場にマリア様がいない筈なのにひざまずいています、あたくし。自室で。
壁のクレーゼ様・ジーナ様・クリス様・マリア様ご一家のおしゃしんに向かって。
「ふっふっふー。困った時にすかっと爽やか素敵に参上、聖院内の揉め事は全てあたくしにお任せあれ。金衣仮面ただいま見参!」なんすかクレーゼ様。そのお姿は。あたくし、その正体丸わかりのお姿について、ひとことだけ申し上げてよろしいでしょうか。
変態仮面、と。
------------------------------------------------
アルトリーネ「でぇ。精神汚染著しい昨今なんですが。もしかしてクレーゼ様、あたくしが就寝中に何かなさってませんよね?さぶりみなるとかせんのうとか」
クレーゼ「ぴ~ぷ~♪あたくしは尻、いや知りませんわよ。だいたいあなた方の部屋ってあのうるさいうるさいうるさいうるさいマイレーネの縄張りでしょうが。あたくしが抜き足差し足忍び足しても近づけやしませんことよ!ありばいはあるのですわ!わたくしはむざいなのですわ!」
アルトリーネ「あのー。あたくしたち、最近、ジーナ様の例の計画で、24じかんけいそくとかで寝てる時の姿もかめらに撮る必要があるということなんですが」
アルトリーネ「ちょっとジーナ様かクリス様に頼んで、直近三日間くらいのわたくしどもの寝てる時のえいぞうとやらを見てきてもよろしいでしょうか」
クレーゼ「…しししししし知りませんわよ!なんか映っててもいきりょうですわぽるたーがいすとですわねつぞうですわ!」
アルトリーネ「この次の話でシメ…いえ、ちょっとクレーゼ様の愛の表現につきましてご指導をさせて頂きたいのですが(ビキビキ)」
うそです。
本気になさらないでください。
そんな常識がまかり通る我が職場が異常なのです。
ええ。自覚はしております。
そして、この異常な風潮を流行らせた一因、他ならぬあたくしにもありますので、穴があったら入れたい、いや入りたいです。
はい、色々と毒されてきた自覚、ございます。
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アルトリーネでございます。
ちょっと文句を言います。
と言っても、皆様にではございません。お空の上のほーを向きます。
こら。聖院の性院な日常、その3でなぜうちの可愛い牝豚を宥めてたのか書き忘れてたでしょっ。
え?いたりあんぽるの方式ですと?知りませんわよそんなもん。
まぁ良いです。とりあえず、なんでこないだ、クレーニャが土下座してたのか説明いたしましょう。
その日、ダリアリーネとの引き継ぎに遅れたわたくしども。
とりあえず持ち場の引き継ぎを済ませましたところ、ダリアリーネがあたくしのクレーニャを「読み」ましてね。
「ふん、流行っておるからと言って朝も早うから部下と盛っておったのか。主従揃って困ったものだな」と、不機嫌にダリアリーネ。
…ま、そりゃ、夜の勤め明けであたくしどもが遅れたら、そのぶん眠る時間も削られますから、ダリアリーネのご機嫌がナナメってるのは無理もございません。
あたくしだって、クライファーネとかが似たような事をしたら嫌味の一つも言うかも知れません。
「申し訳ございませんわダリアリーネ。従者の不義は主人役の不義。このアルトリーネ、謹んでお詫び申し上げます」と、あたくしが床に片膝をついて謝罪のポーズを致しました。
「次からはこのような事なきように」えらっそうに。
ものすっごくえらっそうに言い捨ててダリアリーネが立ち去ります。あたくしも正直、かちんと来ました。
昔のあたくしならご法度の女官同士の刃傷沙汰をやらかしていたかも知れません。
ちなみに上級でこれをやらかすと、理由如何を問わずクレーゼ様またはアレーゼ様扱いになり、まず重謹慎です。聖院の地下深くの謹慎室送りです。
そして、沙汰が始まりますが、わたくしどもに隠し事はできません。あっという間に沙汰が出ます。
で、過去に数度かありましたが、最悪の場合は死罪。
これは、情を殺して涙を飲んで行う場合もありますので、あえてクレーゼ様の任務と定まっており、見届け人としてアレーゼ様と、配下の銀衣騎士1名が刑場に列席します。
つまり、今、何かやらかせば、あたくし、元来の職務の一つであるこの死罪の刑執行を見届けるどころか、自分で体験しちゃう羽目になります。それは流石に勘弁ですね。
さて、ここで聖院に詰める女官の不文律がございます。
この不文律、基本的に騎士女官も同じです。
まず一点。
少々の揉め事は、なるべく当事者同士で片付けよ。
これは上級下級合わせて結構な人数がいますので、揉めるたんびに先輩女官の手を煩わせれば仕事が止まります。
それと、わたしども同士で隠し事が出来ないのもあるんですよね。普通の女性同士なら笑顔で誤魔化せる本音が、そりゃあもう、だだ漏れに漏れますので。
で、いくら先輩や上司が仲介しても、お互いを憎みあったままでは色々捗らないこともございます。ですから、お互いが納得できるように時間をかけてでも和を為せと教えられます。
で、二点目。
上下関係は守るべし。
これは院内の秩序維持のためです。
で、あのクレーゼ様が、マイレーネ様から締め出しの罰を受けて、そりゃあもう嫌々渋々ながら従ってたのは何故か。言うまでもなく、クレーゼ様はマイレーネ様からしても雲上人の部類です。
ですが、昔からの金衣様がマイレーネ様に「マイレーネが該当の職務に就く限りは、院内の日常生活に関わるこれこれに関し、権利と責任を与えます。励むように」と任じています。
つまり、マイレーネ様の管理責任範囲で起きたことはマイレーネ様の責任となりますが、同時に金衣の権限も持たされているわけです。
で、わたくしどもは、あばうと、というのですか、ちゃらんぽらんにやっているようで、結構色々な決まり事に従い縛られる身です。そして、クレーゼ様がマイレーネ様の言いつけに従うのも、この決まり事をクレーゼ様が横紙破りしすぎると聖院の秩序が崩壊しかねないからです。
…うん、時々、クレーゼ様が何かやらかして、担当の上級女官に叱られてるのも、クレーゼ様といえどあまり無茶は出来ないから、いわんやその下にいる我々が秩序を乱し決まり事を破り白を黒とは言えないわよね、となる訳ですね。
そう考えますと、クレーゼ様の珍奇なふるまいは我々女官に決まり事はこうも重いものですよと説いて聞かせるために、わざとおやりになってるのかとわたくしは密かに尊敬の眼差しを送ろうとも思います。
思いますが、天然ですっぱーんと見事にやらかしておられるのかも知れません。
真実は闇、知らなくとも良い闇もございます。
そして三点目。
後輩は先輩を立てるべし。
実は聖院、割と実力社会ではあります。特にわたくしども騎士は、やはり剣を握るかその他の得物に精通してなんぼ、強くてなんぼです。
ですが、聖院開闢から一千年にわたる歴史は、決して無視はできません。
そして、そちら様の修道院同様に、入った人は一般のきぎょう様ですか、こちらで言う大店よりさらに長くいらっしゃる方も少なくありません。特に上院。
ええ、クレーゼ様が他で語っていた金衣の還俗があり得ませんように、金衣様銀衣様ほどではないにしろ、聖院の精気流通の流れに組み込まれた我々上級女官も、還俗はほぼ不可能といってよい身の上です。
本当はものすごく希少な例外をわたくしは知っているのですが、これについては後日といたしましょう。
(ひんとを出しておきますと、わたくしが腰に佩く聖剣リトルクロウこと小烏丸。これとアルトリーネの名をどういう経緯で授かったか、思い出すか読み直して頂きますと。何かひらめかれますかも。うふ)
ですので、先輩後輩の仲は基本的に十年二十年と続きます。下克上がしたいのなら、特定の分野または総合的な実力を認めて頂き、要職に取り立てられるしかありません。
で、クレーニャがあたくしに土下座してたのはこれです。これ。
実は、先に申しました通り、同じ騎士でも微妙に差があります。
ジーナ様ちょい交代。あたくしより適任と思うので御願いいたします。
「なんやねん、これくらい説明しーや。まぁええ。えっと、会社勤めの方で、例えば同じ課長さんでもお給料ちょっと違うとかいうの経験した事ありませんか。例えばうちの会社、フットワークですと、営業課長と総務課長の三田村さんだと、営業課長の方が三田村さんよりお給料は高いです。ええ、営業手当ついてますから。で、もうちょっと大きい会社とかだと、同じ課長さんでも役名と職名が分かれていて、課長という役名に対して出る課長手当と、管理職○級でなんぼといった職級手当を採用してる場合があります。で、アルトくんが私に説明して欲しいのは、この、同じ課長さんでも管理職7級の課長さんと、6級の課長さんの差だと思います。みなさん、これでわかりますでしょうか。あとアルトくん、頼むぞ。あんまウチを頼るなよ!わはは」
えー、なんかよくわかったようなわかんないような。
で、ちょっと前にお話しいたしました「同じ上級騎士でもクライファーネとあたくしでは装備の装飾とお小遣いの額が違う」件がこれなんです。
聖院ではジーナ様の例のようにきちんとはっきり決めてるわけではないのですが、同じ騎士でも明らかに違う場合があります。
で、これ、揉めた場合にあとあとまでひきずらないようにする為にも、直接の先輩が後輩に教えておくはずの事なんですよね、わたくしたちの場合。
たとえば、ダリアリーネの担当先輩は誰だっけ…マイアニーネか…あいつか…ずぼらしよって…。
ええ、最近とみにかんさいべんというのですか、ジーナ様語に汚染されてる気がします。どなたですか聖院の第二言語に日本語を押し込んで日常公用語指定したの。どっかの楽そうな名前のかいしゃみたいな事決めたの。
…ああ、シメます。後できっちりシメます。ええ、こんな重要事項をあっさり決めてごりごり押し込める人、あのめすぶ…うちで一番偉いお方しかいませんから。
(ちな、聖院の第一言語は央方古代王国語、あたくしの出身地からそんなに離れてなくて、ジーナ様世界でいうと、ぜったいおしりまじゅうせんせんばびろにあな場所の言葉に近いものだったそうなんですが、何代目かの金衣様の時に「いい加減この言葉は古くさいからちょっと新しめでほーりーな感じのやつに変えちゃいましょう。なんかいいのないかしら~♪」と、ものっすごくその場のノリな感じで決められたそうで。ええ、長靴米麦国の古代語…らてんごっていうんですか、これもたいがいカビ生えてそうな言葉に切り替えたらしいんですよ。…聖院は、真面目に運営されていると信じたいです。ええ)
そーです。
マイアニーネが説明さぼったか、はたまたど忘れしてた公算がものすごく高いのですが、ダリアリーネとマイアニーネが並んで姿見に映ったり、或いはマイアニーネが自分の正装とダリアリーネの正装を比べて違いを教えていたら、このアルトリーネとダリアリーネの違い、彼女が気づいてたはずだとクレーニャは言いたいわけです。
ええ、あたくしの腰の刀、リトルクロウですから明らかに聖院上級騎士標準支給刀と見た目からしてまるっきり違いますから。
そして、クレーニャがゲザって腹を切るとか泣いてた理由。
「実質格上で上司で、聖院女官騎士ナンバーワンで、この上はアレーゼ様となる格のアルトリーネが、従者たるクレーニャの朝のおねだりのせいで遅刻して、昇格一年未満の新米上級騎士ダリアリーネに膝をついて謝罪した」これなんですよねえ。
しかし、あたくし、こうして改めて言葉にするとけっこー昇進しちゃってますわね。ほほほ。
ええ、出身国の人によくある性格らしいのですが「変態だけど」生真面目で融通の利かないクレーニャは、重ねて言いますが変態だけど生真面目すぎるくらいに生真面目なクレーニャは、自分のせいであたくしに屈辱的な行動をとらせてしまったと斬鬼の念にとらわれていたわけなんですわよ。
ふむふむ。確かに、これはアレーゼ様あたりに確認を取るまでもなく、遅刻したあたくしたちが無条件に悪うございます。そして、上司に恥をかかせたクレーニャも、厳しい上級騎士についていたら叱責対象だったでしょう。
しかしですね。このアルトリーネ、密かなる特命あらばこそ、専属家畜のクレーニャを預からせていただくことができた身の上です。
幾つかの特命または特務につく立場ならばこそ、可愛い家畜の求めに応じて愛でることも必要業務なわけです。
ええ、遅刻は遅刻で責められましょう。
ただ、騎士の誇りに泥を塗る言動はちょっと今後を考えるといかがなものか。主従揃って卑しい発情豚扱いされたのがあたくしのカッチーンポイントです。そしてあたくしも性別は牝。
ええ、覚えておいてください殿方の皆様。牝同士の争いが熾烈苛烈となる原因がこれなのです。とげとげしい物言いになりがちなのと、そして重要事項「女はいったん、敵認定したら相手を殲滅するまで敵扱いを解除しない」これです。
女の多い職場でしょうもない、殿方からすればほんの些細なことでもめる原因がこれなんっすわ。ねえジーナ様。
(うっさい、あたしに聞くな。それに、これどっちか言うたらクレーゼさん案件やろ)
そーです。最近は女官や騎士の管理について、あの自由奔放で天真爛漫なクレーゼ様だと絶対にボロボロボロボロ抜けが出るので、マリア様が密かに「あっこれは後々の禍根になる。これはジーナ母様に処理させよう。こっちはアレーゼ様送りで、これは流石にクレーゼ母様だなぁ」と、采配をふるっておられるご様子。
素晴らしいです。
若年5歳にしてこの采配。アレーゼ様がマリア様に臣下の礼を取るのも理解できます。
まぁ、マリア様とはあたくし、あまりお話させて頂くことがないんですがねぇ。お母様お二人との接触が多すぎるくらいに多いせいでしょうか。
(ええ。アルトリーネはお母様お二人の寵愛を受けておられるから、あたくしがあれこれお助けする前に色々解決してしまうのですよ…申し訳ありません)
(い、いえ、マリア様のお助けを求めるわけではございませんから!このアルトリーネの些事ふぜいにお心を乱されずとも大丈夫です!なにとぞお気になさらぬように!)
ええ、騎士の身に刻まれた本能です。
条件反射で、この場にマリア様がいない筈なのにひざまずいています、あたくし。自室で。
壁のクレーゼ様・ジーナ様・クリス様・マリア様ご一家のおしゃしんに向かって。
「ふっふっふー。困った時にすかっと爽やか素敵に参上、聖院内の揉め事は全てあたくしにお任せあれ。金衣仮面ただいま見参!」なんすかクレーゼ様。そのお姿は。あたくし、その正体丸わかりのお姿について、ひとことだけ申し上げてよろしいでしょうか。
変態仮面、と。
------------------------------------------------
アルトリーネ「でぇ。精神汚染著しい昨今なんですが。もしかしてクレーゼ様、あたくしが就寝中に何かなさってませんよね?さぶりみなるとかせんのうとか」
クレーゼ「ぴ~ぷ~♪あたくしは尻、いや知りませんわよ。だいたいあなた方の部屋ってあのうるさいうるさいうるさいうるさいマイレーネの縄張りでしょうが。あたくしが抜き足差し足忍び足しても近づけやしませんことよ!ありばいはあるのですわ!わたくしはむざいなのですわ!」
アルトリーネ「あのー。あたくしたち、最近、ジーナ様の例の計画で、24じかんけいそくとかで寝てる時の姿もかめらに撮る必要があるということなんですが」
アルトリーネ「ちょっとジーナ様かクリス様に頼んで、直近三日間くらいのわたくしどもの寝てる時のえいぞうとやらを見てきてもよろしいでしょうか」
クレーゼ「…しししししし知りませんわよ!なんか映っててもいきりょうですわぽるたーがいすとですわねつぞうですわ!」
アルトリーネ「この次の話でシメ…いえ、ちょっとクレーゼ様の愛の表現につきましてご指導をさせて頂きたいのですが(ビキビキ)」
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