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弥助の大冒険 -少年は巴里を目指す- 8.01
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さて、舞台は変わりまして…ベルサイユ宮殿東翼の一番端に所在する、宮殿歌劇場。
なぜか、呼ばれておりますわたくし室見理恵と、アルトさん。
実は、宮中歓迎会とやらをここで行うと言われたのです。
フラメンシア殿下が客室乗務員に変装してTGVに乗っておられたのも、この歓迎会に向けての準備のためらしいのですが…。
(マダム室見…ヤスケくんやムッシュ・イバラキは比丘尼国の方なので、我が国の料理については全く未経験ではございませんでしょうけど、やはり私どもの考える歓待のご馳走を食べつけない方々に、フランス料理、それもカレーム料理長の手になるような本格的なものをいきなりお出しするのもよろしくないのではないか、という事なのですよ)
とまぁ、こうした配慮があった結果、TGV-M…臨時ミストラル号の中で、ベルサイユでの歓待のご馳走に代えて出された料理を召し上がって頂く形態にしたそうです。
なるほど、ならばフラメンシア殿下がメイド風の客室乗務員に変装して特等個室車に乗っていた理由もわかります。
(実は、あの時にれっしゃの厨房におったのはカレームなのですよ…ふふふ)
このカレーム氏、連邦世界では「この人がいないとスイーツの原型はなかった可能性が高い」ある意味では日本のお菓子業界に深刻かつ甚大な影響を与えかねない重要人物だそうですね…。
(つか、フランス料理どころか、料理そのものも大きく進化してなかった可能性があるんだわ…)
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/219/
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/220/
で、まりりと雅美さんに教わった話では、それこそ近代料理史の金字塔とでもいうべき重要人物のようでして、痴女皇国では密かに身辺に警護がつきーの本人の健康状態も監視されーので、そうとは知らされずに最恵待遇に預かっている一人のようなのですよ…。
で、列車内ということでメニューこそ限られますが、そこそこの料理を出せるように厨房設備を整えた件、私がこだわったところでもあります。
そして、今回はポルトガル名物…特に痴女皇国世界の海綿菓子国名物であるアロス・デ・サルディーニャ…イワシライスのフランス版とでもいうべきものが出されたのです。
これ、干しイワシの身をほぐして混ぜた炊き込みご飯に炭火焼の塩焼きイワシを添えた代物でして、マレーシアを中心とした東南アジアでの人気料理のチキンライス、あれのイワシ版とお考え下さい。
(実はこれにはベルシオンがありまして、オリーブオイル炊きのエスニック風にするとか、イワシに代えてハラマスを使うとかいう調理法もございまして…)
そう言えば、ご飯を炊く際は水でなくスープを使うそうですけどね、なにかこう、淫棒茸の味が混ざっていた気も。
見た目はドライカレーのようなサフランライスでしたけど、少々こぼれやすいパラパラ炊きのロンググレインライスであるためもあって、スプーンだけではなくお箸が添えられていました。
これは、痴女皇国世界のフランス王国が日本の食生活や流儀を決して格下に見ていないことや、フランスの食堂車でありながら、フランス風にアレンジしているとは言えどポルトガル料理を出していることでも何となく納得できる話ではあります。
更には、フランス料理アカデミーの筆頭講師であるカレーム氏と、中井ティアラさんのお父さんの中井義文さん…現在は海賊共和国の本拠地であるナッソーに設立された痴女皇国厚労局所轄の料理研究センター室長の地位を得ておられる方との交流の成果であることも容易に予想される話。
で。
プラウファーネさん曰く、江戸での研修時には弥助くんたちと一緒に横浜租界にある欧州料理店に出向いて向こうの食事作法を学ぶなどして、相応に欧州生活に慣れるように研修を受けたそうです。
(まぁ、私は聖院本宮の生活も経験していましたから、そんなに違和感はないんですけどね…)
そう、プラウファーネさんが大使館立ち上げの1年間とはいえど、最初の大使に選ばれた理由、この長年の聖院本宮と痴女宮での暮らしを経験していることも大きいそうです。
つまり、比丘尼国の居住者としては、5本の指に入るくらいに外国生活に慣れている部類なんだそうです…。
でまぁ、この臨時TGV、リヨン駅の地上ホームではなく、地下の高速地下鉄ホームを通過してエリゼ駅地下ホームに着いたのです。
(確かにフランス王族や閣僚専用列車の発着を考えた設備にしたの、あたしだけど…)
(まぁまぁ、これでらくができるとおもえば)
そして、ベルサイユ宮殿への専用連絡通路を通って直接に宮殿へと招かれた私たちは、待ち構えていたテレーズ殿下の案内でこの王宮歌劇場に通されたのです。
まず、この王宮歌劇場で、大使として着任するからよろしくという内容が書かれた江戸幕府発行の申請公書をプラウファーネさんがテレーズちゃんに手渡し、フラメンシアちゃんに見てもらいます。
そして、オスカーさんがその文書を保管するために預かる流れ。
で、テレーズちゃんがプラウファーネさんを比丘尼国大使として認める内容の信書を渡す事で、公式に大使として承認される流れですね…いわば日本へ着任した外国の大使が、皇居で信任状奉呈式に出席して書状を交わす儀式の類似行為です。
で、本当ならば大使館の建物にそのままお送りするそうですけど、ここで、歓待の催しとやらを観劇頂くという話、あらかじめプラウファーネさんたちに通告されていたそうです。
んで、これまたこの室見の国土局オフィスにおける使用端末で「設備電動化・照明増設他王宮演劇場構造更新工事予算承認」なる題名の稟議書に電子印鑑を突いて流した話なのですがね。
このベルサイユ王宮歌劇場、テレーズちゃんや他の人も触れていましたけど、ルイ14世在位当時の元来の設計からして王宮の宴会場を兼ねた構造になっておりまして、舞台と1階客席の床の高さを面一にできる構造にもなっています。
電動化、というのは緞帳や映写用幕だの、昇降照明だのをスイッチ1つで引きーの伸ばしーの、上げ下げだのだけでなくこの客席床を宴会場に早替わりさせるための昇降床設備の動力化と強化更新も含んでいたりするのです。
しかし、本日は通常通りに1階床が下げられ、舞台は通常の高さになっています。
そして、本来であれば舞台から見て正面の入り口直上、2階3階に該当する高さに設けられた貴賓観覧席でフランス王や王妃は観劇することになっているそうですが、痴女皇国がフランスに介入してからは、ちょっとだけ変化があります。
それは、王家の人々や招待賓客が、かぶりつきで観劇できるようにと用意された移動式の簡易ボックス席、これを1階席に通常は設置している椅子と置き換えられるように準備されたことなのです。
つまり、今は私やアルトさんも、その移動式の大ぶりな椅子に着席している状態です。
で、この場での歓迎儀式。
なんと、フランス座…連邦世界ではオデオン座として知られる劇場の注目映画であり、オペラ座でも臨時公演が組まれた注目の英仏共同企画であるという演劇映画「ハムレット」のフランス版主演女優であるサラ・ベルナールという女優さんを招いての舞台演劇をお見せしたいという話。
「サラはセエネセム…フランス国立音楽演劇学校出身の注目株女優であります。本日は、このサラが主役を演じた映画「ハムレット」の注目場面をこの舞台にて演じてもらうことで、我が王国の芸術重視の気風に触れて頂ければと存じます…」
この、テレーズ王女の紹介を受けて、ソフィー王女に連れられて現れたサラ・ベルナール嬢。
見るからに痴女皇国関係者によって体型補正が入ったと思しき、モデル体型です。
そして、劇場の皆の衆目を集める中で…なんと、ネイキッドドレス姿からタイツ姿の騎士風の衣装に、巻き毛の中世風カツラをつけたような髪型に変貌。
瞬間更衣システムによって一瞬で着替えたのでしょうけど、斬新な演出にも見えるこの変化に、1階以外の観覧席に招かれた招待者のお客様方からも喝采や拍手が。
で、着替えたサラ嬢が私たちの方を向いて申されるには。
「本日はジャポンの大使様を我が王国の王宮に招き国交を樹立したよき日。この祝賀を記念しての演劇を披露せよとの王女殿下からのお申し付けに応じまして、お目汚しに参内した次第…大使様、そして従者の方々には目下、我が王国内でも好評を頂きましたる歌劇の中でも、評価の高い一幕をわたくしの主演にてご観覧頂ければと存じます」と、口上を述べられた後は一礼して一旦は幕が下ろされた舞台の袖に消えられます。
一方、私たちの座るその、大きめの1人がけ座席。
単純に申し上げますと、前以外からは着席者が見えなくなる箱状の仕切りに覆われた1.5人がけのハイバックソファです。
そして、この座席は仕切りごと、台座の下に隠れているキャスターで転がして設置場所を変えることも可能です。
で、この座席がずらっと舞台前に並んでいるのが、今の状態です。
実のところこの座席、私も設計に噛んでいましてね…飛行機の個室型ファーストクラスも参考にしながら、なるべく現地の技術で製造や保守が可能なようにとエマちゃんと設計を仕上げて監獄国でプロトタイプを製作してもらった代物です。
で、ブランデーグラスやチーズの小皿が載ったお盆のようなもの、そして灰皿が置ける小テーブルも設けておりまして、お酒やおつまみを頂きながらの観劇も可能なように考えております。
そして照明が落とされても、手元照明でこの小テーブルの上のものを手に取れるように配慮しております。
で、実際に司会役らしいソフィー殿下の案内によって、劇場内は薄暗くされてしまいます。
『人魚国の王子であったハムレットですが、不慮の死を遂げた父王の弟が王位を継いだがため…更には実母も王弟と再婚し、失意の日を送っておりました。しかし、亡き先王の亡霊との邂逅によって先王は毒殺されたこと、そして下手人が他ならぬ王弟と王妃の策動によるものであると告げられます…』
ええ、よろよろと舞台左袖から現れたのは先ほど、きりきり毅然としたフランス王国の軍人らしい装いで挨拶を見事になさったサラ・ベルナール嬢。
ソフィー王女の紹介の通り、この演劇の主役のハムレット王子を演じておられるようです。
ですが、その髪の毛や憔悴しきった顔の表情は、先般の時とはあまりに打って変わっておりますが、そんな姿になった理由、独白で私を含めた観劇者に伝えられるのです。
『しかし、私は一体どうすれば良いのだ…父の仇を取ろうにも、仮にも王となった叔父を正当な理由なく殺めては、私が利己的な下手人と見做され、皆の信頼を得るどころか国を挙げて追われることともなろう…』
その変貌ぶりと、情けなさげな台詞を含めた迫真の演技に皆が驚き息を呑まれる中、ふらふらと舞台中央に置かれた小道具であるテーブルの前の椅子に腰を下ろします。
どうやら、酒浸りとなっているらしき舞台上の小物であるテーブルと、その上に乗せられた酒瓶やグラス。
この辺りで、今のハムレット王子の境遇を暗示する演出がなされているようです。
そこへ現れる、ドレス姿のうら若き女性。
『おお、ハムレット様…また昼間からお酒をきこし召されて…』
『オフェーリアよ、これが飲まずにおれようか…我が父王の死を囲っての真実を知ったからには仇討ちも辞さず、しかし証拠がなくば私は単なる殺人狂か、はたまた権勢欲に狂って王位を欲した愚か者とされてしまうであろう…』
『ハムレット様…残念無念は理解いたしまする…しかし、今は機会を伺う時かと存じます…』
『うむ…』
ええと、はばかりながらわたくし室見理恵、ハムレットのあらすじを詳しくは知らないのですが。
(しゃあないわねっ。ええとね理恵ちゃん…連邦世界のハムレットと、痴女皇国世界のハムレットはかなり異なる内容なの…連邦世界での原作のネタバレになるけど、基本的には登場人物はあらかた死亡するのよ…悲劇だから…)
(田中局長、いえマダム・マサミ…その先はわたくしフラメンシアが…この演劇ですが、ハムレット役で固定されておるサラとは違い、ハムレットの恋人であるオフェーリアにつきましては、ロントモン歌劇団の座長であるルネ・バタイユ夫人の強い意向で女優の卵…すなわち、新人女優が舞台の都度、交代で演ずることとされたのです…)
むう。
しかし、そんな大役に思える役柄、新人に演じさせて良いものなのでしょうか。
(ふふふ…新人とは言っても、コメディ・フランセーズ…フランス王立歌劇団、すなわち今やロントモン過激団の表の顔でもある劇団の選抜試験を通りました女優…さらには遊撃騎兵隊の所属者を選抜しております…)
ええ、座席の衝立に隠れておりますが、絶対にフラメンシアちゃんは今、悪い顔をしているはずなのです。
フランス支部の独自騎士団ですが、まず、オスカー団長率いる聖女騎士団が存在します。
これ、某・有名少女漫画の主人公とその所属部隊の格好や行動、まんまらしいです。
ですから痴女皇国関係者、それも騎士としては極めて珍しく、お尻の見えない服が制服なのです。
しかし、本宮騎士団で言うと赤薔薇や白薔薇騎士団に該当する役目のこの聖女騎士団に対して、黒薔薇や紫薔薇に該当する裏騎士団めいた存在があるのです。
それが、遊撃騎兵隊…女ばかりで編成された、色ごとや裏工作専門部隊。
その起源は、ルイ14世か15世の辺りで創設された、時の王妃肝入りのフランス王国外交謀略のためのハニトラ娼婦軍団で、貴族夫人有志を中心とした面子で活動していたものに遡れるそうです。
で、その存在を知っていた雅美さんはジョスリンを通じてフランス側に入れ知恵した結果、貴族社交界に明るい娼婦たちや、フランスの痴女皇国支部化に伴う改革で経済的地位的な危機に立った貴族夫人をスカウトしてお色気諜報員として活用することとなったそうでしてね…。
ですから、この遊撃騎兵隊、紫薔薇騎士団英国支部はもちろん、黒薔薇騎士団欧州分団長…ジョスリンの指揮でも動くことがあると。
で。
フランス支部の英術分野については、支部単独ではなく南欧行政局…つまり、マドリードの意向も入っています。
(というか私とてれこの管轄なんすよ…あの悪母イザベルめがこういうこと、、自分で直接積極的に動くとお思いですかマダム室見…)
(犬猿の仲のわたくしとふらこですが、こればかりはふらこめの申す通り。さらには、連邦世界の歴史も参照する必要もあるとかで、遊撃騎兵隊の活動ともども紫薔薇騎士団長の監督下で工作をしております次第…)
ええ、その紫薔薇騎士団長ってのが私と宇賀神雪子・内務局広報部長の天敵でもありますんでね。
よう、存じ上げとります。
従って、今まさに舞台で起きていることの責任は雅美さんにある。
わたくし室見はそう、申したいのです。
ええ、もちろん。
責任問題になるんちゃいますの、と思わずジーナさん語で呟きたくなる光景がですね、舞台の上でですね。
『ああ、おいたわしやハムレット様、しかしてこのオフェーリアに策がございます…必ずや先王様の無念を晴らし、晴れてわたくしと結ばれる日のためにもここは是非、ガシンショウタンと申しますか、ご忍耐をば…』
しかし、その言葉とは裏腹に、なんとハムレットのタイツからはにょっきりと、ちんぽが飛び出して来たじゃないですか!
(ええとテレーズちゃん、フラメンシアちゃんでもソフィーちゃんでもいいんだけど。あのサラさんって…)
(マダム室見…ええ…)
(この際です、3人とも王女様なんですし、聖院第二公用語使用時は理恵さんでええですっ)
ええ、奥様とかおばちゃん呼ばわりよりは遥かにマシ。
実際、3人とも、私より年下なのは間違いないんですよねぇ。
んでまぁ、3人の王女様に話を聞きましたところ、サラさん自身も遊撃騎兵隊員。
なもんで千人卒ではないのですが、ちんぽありの特任女官状態だそうです。
しかし、この演劇「ハムレット」では主人公のハムレット王子は、言うまでもなく男性の役柄のはず。
ですので、ちんぽが出てきても…いえ、舞台ですよここ!
(もちろんこの後、オメコを致しますわ…サラと新人女優…)
(てれこの言う通りなんですよ室見様。つまり、この演劇の方のハムレット、新人女優を鍛える場でもありますし、更には遊撃騎兵隊員としてご指名がかかりやすくするためなのですよ…)
(ふらめんしあおねー様。オペラ座でもフランス座でも、口説きたい女のためにと模造花の束や花の小鉢、近所のおはなやで扱っておったかと…)
(ソフィーの言う通りなんですよ室見様。それなりのおひねりは頂戴しますけどね、花屋で小鉢を買うか模造花にカルテを添えて差し入れますと、ロントモン過激団の事務方から心話で売春に関する相談の話が行く仕掛けがあるんですよ…)
更に聞けば、指名するかしないかでその、おひねりの額は大きく変わる模様。
相手の身元を調べ上げることは紫薔薇騎士団であれば一瞬ですし、相手の家柄や公的な立場に見合った女性を紹介するそうです…。
で、そういう話をしておる間にも、オフェーリア役の新人女優さんの熱心な奉仕が続いている舞台の上。
いつしか銀幕が舞台に降ろされ、映画での同じシーンが大写しに…じゃなくて舞台で起きてる尺八の光景の拡大映像じゃないですかこれ…。
『ううっオフェーリア、駄目だ…誰が覗いておるかわからぬ話…』
『ふふふふふ、そう思いまして、この部屋付きの侍従には菓子を差し入れておりまする…今頃はさぞや夢心地…』
ええ、ドレスをまくると、椅子に座ったままのハムレットの上に跨ってお尻を振り始めるオフェーリアという絵図に変わっております。
しかも、このお色気攻撃に耐えかねたハムレット、獣のごとく恋人を床に押し倒して今度は尻を振り始めるのです。
こんなの、連邦世界のハムレットにあったのでしょうか。
そして、こんなエロ歌劇、いえエロ過激にされて、シェイクスピア先生が頭を輝かせながら化けて出ないか、この室見は真剣に心配なのです…。
こんな助平歌劇いえ過激な演し物、いくら痴女皇国でも遠慮すべきじゃないかと思うんですけど!
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まさみ「痴女皇国版だからいいと思うの」
りええ「ええことないでしょ…」
まさみ「ちなみにクライマックスはもっとすごいわよ」
りええ「一つ質問があります。まさかこれ、最後の写生までセットで見るんですか」
まさみ「んふふふふふ、その辺に、弥助くんやプラウファーネさんを招待した理由がありそうなのよね」
りええ「って、続くんですかこれ…」
まさみ「もうちょっとだけ続けたいようよ…」
なぜか、呼ばれておりますわたくし室見理恵と、アルトさん。
実は、宮中歓迎会とやらをここで行うと言われたのです。
フラメンシア殿下が客室乗務員に変装してTGVに乗っておられたのも、この歓迎会に向けての準備のためらしいのですが…。
(マダム室見…ヤスケくんやムッシュ・イバラキは比丘尼国の方なので、我が国の料理については全く未経験ではございませんでしょうけど、やはり私どもの考える歓待のご馳走を食べつけない方々に、フランス料理、それもカレーム料理長の手になるような本格的なものをいきなりお出しするのもよろしくないのではないか、という事なのですよ)
とまぁ、こうした配慮があった結果、TGV-M…臨時ミストラル号の中で、ベルサイユでの歓待のご馳走に代えて出された料理を召し上がって頂く形態にしたそうです。
なるほど、ならばフラメンシア殿下がメイド風の客室乗務員に変装して特等個室車に乗っていた理由もわかります。
(実は、あの時にれっしゃの厨房におったのはカレームなのですよ…ふふふ)
このカレーム氏、連邦世界では「この人がいないとスイーツの原型はなかった可能性が高い」ある意味では日本のお菓子業界に深刻かつ甚大な影響を与えかねない重要人物だそうですね…。
(つか、フランス料理どころか、料理そのものも大きく進化してなかった可能性があるんだわ…)
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/219/
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で、まりりと雅美さんに教わった話では、それこそ近代料理史の金字塔とでもいうべき重要人物のようでして、痴女皇国では密かに身辺に警護がつきーの本人の健康状態も監視されーので、そうとは知らされずに最恵待遇に預かっている一人のようなのですよ…。
で、列車内ということでメニューこそ限られますが、そこそこの料理を出せるように厨房設備を整えた件、私がこだわったところでもあります。
そして、今回はポルトガル名物…特に痴女皇国世界の海綿菓子国名物であるアロス・デ・サルディーニャ…イワシライスのフランス版とでもいうべきものが出されたのです。
これ、干しイワシの身をほぐして混ぜた炊き込みご飯に炭火焼の塩焼きイワシを添えた代物でして、マレーシアを中心とした東南アジアでの人気料理のチキンライス、あれのイワシ版とお考え下さい。
(実はこれにはベルシオンがありまして、オリーブオイル炊きのエスニック風にするとか、イワシに代えてハラマスを使うとかいう調理法もございまして…)
そう言えば、ご飯を炊く際は水でなくスープを使うそうですけどね、なにかこう、淫棒茸の味が混ざっていた気も。
見た目はドライカレーのようなサフランライスでしたけど、少々こぼれやすいパラパラ炊きのロンググレインライスであるためもあって、スプーンだけではなくお箸が添えられていました。
これは、痴女皇国世界のフランス王国が日本の食生活や流儀を決して格下に見ていないことや、フランスの食堂車でありながら、フランス風にアレンジしているとは言えどポルトガル料理を出していることでも何となく納得できる話ではあります。
更には、フランス料理アカデミーの筆頭講師であるカレーム氏と、中井ティアラさんのお父さんの中井義文さん…現在は海賊共和国の本拠地であるナッソーに設立された痴女皇国厚労局所轄の料理研究センター室長の地位を得ておられる方との交流の成果であることも容易に予想される話。
で。
プラウファーネさん曰く、江戸での研修時には弥助くんたちと一緒に横浜租界にある欧州料理店に出向いて向こうの食事作法を学ぶなどして、相応に欧州生活に慣れるように研修を受けたそうです。
(まぁ、私は聖院本宮の生活も経験していましたから、そんなに違和感はないんですけどね…)
そう、プラウファーネさんが大使館立ち上げの1年間とはいえど、最初の大使に選ばれた理由、この長年の聖院本宮と痴女宮での暮らしを経験していることも大きいそうです。
つまり、比丘尼国の居住者としては、5本の指に入るくらいに外国生活に慣れている部類なんだそうです…。
でまぁ、この臨時TGV、リヨン駅の地上ホームではなく、地下の高速地下鉄ホームを通過してエリゼ駅地下ホームに着いたのです。
(確かにフランス王族や閣僚専用列車の発着を考えた設備にしたの、あたしだけど…)
(まぁまぁ、これでらくができるとおもえば)
そして、ベルサイユ宮殿への専用連絡通路を通って直接に宮殿へと招かれた私たちは、待ち構えていたテレーズ殿下の案内でこの王宮歌劇場に通されたのです。
まず、この王宮歌劇場で、大使として着任するからよろしくという内容が書かれた江戸幕府発行の申請公書をプラウファーネさんがテレーズちゃんに手渡し、フラメンシアちゃんに見てもらいます。
そして、オスカーさんがその文書を保管するために預かる流れ。
で、テレーズちゃんがプラウファーネさんを比丘尼国大使として認める内容の信書を渡す事で、公式に大使として承認される流れですね…いわば日本へ着任した外国の大使が、皇居で信任状奉呈式に出席して書状を交わす儀式の類似行為です。
で、本当ならば大使館の建物にそのままお送りするそうですけど、ここで、歓待の催しとやらを観劇頂くという話、あらかじめプラウファーネさんたちに通告されていたそうです。
んで、これまたこの室見の国土局オフィスにおける使用端末で「設備電動化・照明増設他王宮演劇場構造更新工事予算承認」なる題名の稟議書に電子印鑑を突いて流した話なのですがね。
このベルサイユ王宮歌劇場、テレーズちゃんや他の人も触れていましたけど、ルイ14世在位当時の元来の設計からして王宮の宴会場を兼ねた構造になっておりまして、舞台と1階客席の床の高さを面一にできる構造にもなっています。
電動化、というのは緞帳や映写用幕だの、昇降照明だのをスイッチ1つで引きーの伸ばしーの、上げ下げだのだけでなくこの客席床を宴会場に早替わりさせるための昇降床設備の動力化と強化更新も含んでいたりするのです。
しかし、本日は通常通りに1階床が下げられ、舞台は通常の高さになっています。
そして、本来であれば舞台から見て正面の入り口直上、2階3階に該当する高さに設けられた貴賓観覧席でフランス王や王妃は観劇することになっているそうですが、痴女皇国がフランスに介入してからは、ちょっとだけ変化があります。
それは、王家の人々や招待賓客が、かぶりつきで観劇できるようにと用意された移動式の簡易ボックス席、これを1階席に通常は設置している椅子と置き換えられるように準備されたことなのです。
つまり、今は私やアルトさんも、その移動式の大ぶりな椅子に着席している状態です。
で、この場での歓迎儀式。
なんと、フランス座…連邦世界ではオデオン座として知られる劇場の注目映画であり、オペラ座でも臨時公演が組まれた注目の英仏共同企画であるという演劇映画「ハムレット」のフランス版主演女優であるサラ・ベルナールという女優さんを招いての舞台演劇をお見せしたいという話。
「サラはセエネセム…フランス国立音楽演劇学校出身の注目株女優であります。本日は、このサラが主役を演じた映画「ハムレット」の注目場面をこの舞台にて演じてもらうことで、我が王国の芸術重視の気風に触れて頂ければと存じます…」
この、テレーズ王女の紹介を受けて、ソフィー王女に連れられて現れたサラ・ベルナール嬢。
見るからに痴女皇国関係者によって体型補正が入ったと思しき、モデル体型です。
そして、劇場の皆の衆目を集める中で…なんと、ネイキッドドレス姿からタイツ姿の騎士風の衣装に、巻き毛の中世風カツラをつけたような髪型に変貌。
瞬間更衣システムによって一瞬で着替えたのでしょうけど、斬新な演出にも見えるこの変化に、1階以外の観覧席に招かれた招待者のお客様方からも喝采や拍手が。
で、着替えたサラ嬢が私たちの方を向いて申されるには。
「本日はジャポンの大使様を我が王国の王宮に招き国交を樹立したよき日。この祝賀を記念しての演劇を披露せよとの王女殿下からのお申し付けに応じまして、お目汚しに参内した次第…大使様、そして従者の方々には目下、我が王国内でも好評を頂きましたる歌劇の中でも、評価の高い一幕をわたくしの主演にてご観覧頂ければと存じます」と、口上を述べられた後は一礼して一旦は幕が下ろされた舞台の袖に消えられます。
一方、私たちの座るその、大きめの1人がけ座席。
単純に申し上げますと、前以外からは着席者が見えなくなる箱状の仕切りに覆われた1.5人がけのハイバックソファです。
そして、この座席は仕切りごと、台座の下に隠れているキャスターで転がして設置場所を変えることも可能です。
で、この座席がずらっと舞台前に並んでいるのが、今の状態です。
実のところこの座席、私も設計に噛んでいましてね…飛行機の個室型ファーストクラスも参考にしながら、なるべく現地の技術で製造や保守が可能なようにとエマちゃんと設計を仕上げて監獄国でプロトタイプを製作してもらった代物です。
で、ブランデーグラスやチーズの小皿が載ったお盆のようなもの、そして灰皿が置ける小テーブルも設けておりまして、お酒やおつまみを頂きながらの観劇も可能なように考えております。
そして照明が落とされても、手元照明でこの小テーブルの上のものを手に取れるように配慮しております。
で、実際に司会役らしいソフィー殿下の案内によって、劇場内は薄暗くされてしまいます。
『人魚国の王子であったハムレットですが、不慮の死を遂げた父王の弟が王位を継いだがため…更には実母も王弟と再婚し、失意の日を送っておりました。しかし、亡き先王の亡霊との邂逅によって先王は毒殺されたこと、そして下手人が他ならぬ王弟と王妃の策動によるものであると告げられます…』
ええ、よろよろと舞台左袖から現れたのは先ほど、きりきり毅然としたフランス王国の軍人らしい装いで挨拶を見事になさったサラ・ベルナール嬢。
ソフィー王女の紹介の通り、この演劇の主役のハムレット王子を演じておられるようです。
ですが、その髪の毛や憔悴しきった顔の表情は、先般の時とはあまりに打って変わっておりますが、そんな姿になった理由、独白で私を含めた観劇者に伝えられるのです。
『しかし、私は一体どうすれば良いのだ…父の仇を取ろうにも、仮にも王となった叔父を正当な理由なく殺めては、私が利己的な下手人と見做され、皆の信頼を得るどころか国を挙げて追われることともなろう…』
その変貌ぶりと、情けなさげな台詞を含めた迫真の演技に皆が驚き息を呑まれる中、ふらふらと舞台中央に置かれた小道具であるテーブルの前の椅子に腰を下ろします。
どうやら、酒浸りとなっているらしき舞台上の小物であるテーブルと、その上に乗せられた酒瓶やグラス。
この辺りで、今のハムレット王子の境遇を暗示する演出がなされているようです。
そこへ現れる、ドレス姿のうら若き女性。
『おお、ハムレット様…また昼間からお酒をきこし召されて…』
『オフェーリアよ、これが飲まずにおれようか…我が父王の死を囲っての真実を知ったからには仇討ちも辞さず、しかし証拠がなくば私は単なる殺人狂か、はたまた権勢欲に狂って王位を欲した愚か者とされてしまうであろう…』
『ハムレット様…残念無念は理解いたしまする…しかし、今は機会を伺う時かと存じます…』
『うむ…』
ええと、はばかりながらわたくし室見理恵、ハムレットのあらすじを詳しくは知らないのですが。
(しゃあないわねっ。ええとね理恵ちゃん…連邦世界のハムレットと、痴女皇国世界のハムレットはかなり異なる内容なの…連邦世界での原作のネタバレになるけど、基本的には登場人物はあらかた死亡するのよ…悲劇だから…)
(田中局長、いえマダム・マサミ…その先はわたくしフラメンシアが…この演劇ですが、ハムレット役で固定されておるサラとは違い、ハムレットの恋人であるオフェーリアにつきましては、ロントモン歌劇団の座長であるルネ・バタイユ夫人の強い意向で女優の卵…すなわち、新人女優が舞台の都度、交代で演ずることとされたのです…)
むう。
しかし、そんな大役に思える役柄、新人に演じさせて良いものなのでしょうか。
(ふふふ…新人とは言っても、コメディ・フランセーズ…フランス王立歌劇団、すなわち今やロントモン過激団の表の顔でもある劇団の選抜試験を通りました女優…さらには遊撃騎兵隊の所属者を選抜しております…)
ええ、座席の衝立に隠れておりますが、絶対にフラメンシアちゃんは今、悪い顔をしているはずなのです。
フランス支部の独自騎士団ですが、まず、オスカー団長率いる聖女騎士団が存在します。
これ、某・有名少女漫画の主人公とその所属部隊の格好や行動、まんまらしいです。
ですから痴女皇国関係者、それも騎士としては極めて珍しく、お尻の見えない服が制服なのです。
しかし、本宮騎士団で言うと赤薔薇や白薔薇騎士団に該当する役目のこの聖女騎士団に対して、黒薔薇や紫薔薇に該当する裏騎士団めいた存在があるのです。
それが、遊撃騎兵隊…女ばかりで編成された、色ごとや裏工作専門部隊。
その起源は、ルイ14世か15世の辺りで創設された、時の王妃肝入りのフランス王国外交謀略のためのハニトラ娼婦軍団で、貴族夫人有志を中心とした面子で活動していたものに遡れるそうです。
で、その存在を知っていた雅美さんはジョスリンを通じてフランス側に入れ知恵した結果、貴族社交界に明るい娼婦たちや、フランスの痴女皇国支部化に伴う改革で経済的地位的な危機に立った貴族夫人をスカウトしてお色気諜報員として活用することとなったそうでしてね…。
ですから、この遊撃騎兵隊、紫薔薇騎士団英国支部はもちろん、黒薔薇騎士団欧州分団長…ジョスリンの指揮でも動くことがあると。
で。
フランス支部の英術分野については、支部単独ではなく南欧行政局…つまり、マドリードの意向も入っています。
(というか私とてれこの管轄なんすよ…あの悪母イザベルめがこういうこと、、自分で直接積極的に動くとお思いですかマダム室見…)
(犬猿の仲のわたくしとふらこですが、こればかりはふらこめの申す通り。さらには、連邦世界の歴史も参照する必要もあるとかで、遊撃騎兵隊の活動ともども紫薔薇騎士団長の監督下で工作をしております次第…)
ええ、その紫薔薇騎士団長ってのが私と宇賀神雪子・内務局広報部長の天敵でもありますんでね。
よう、存じ上げとります。
従って、今まさに舞台で起きていることの責任は雅美さんにある。
わたくし室見はそう、申したいのです。
ええ、もちろん。
責任問題になるんちゃいますの、と思わずジーナさん語で呟きたくなる光景がですね、舞台の上でですね。
『ああ、おいたわしやハムレット様、しかしてこのオフェーリアに策がございます…必ずや先王様の無念を晴らし、晴れてわたくしと結ばれる日のためにもここは是非、ガシンショウタンと申しますか、ご忍耐をば…』
しかし、その言葉とは裏腹に、なんとハムレットのタイツからはにょっきりと、ちんぽが飛び出して来たじゃないですか!
(ええとテレーズちゃん、フラメンシアちゃんでもソフィーちゃんでもいいんだけど。あのサラさんって…)
(マダム室見…ええ…)
(この際です、3人とも王女様なんですし、聖院第二公用語使用時は理恵さんでええですっ)
ええ、奥様とかおばちゃん呼ばわりよりは遥かにマシ。
実際、3人とも、私より年下なのは間違いないんですよねぇ。
んでまぁ、3人の王女様に話を聞きましたところ、サラさん自身も遊撃騎兵隊員。
なもんで千人卒ではないのですが、ちんぽありの特任女官状態だそうです。
しかし、この演劇「ハムレット」では主人公のハムレット王子は、言うまでもなく男性の役柄のはず。
ですので、ちんぽが出てきても…いえ、舞台ですよここ!
(もちろんこの後、オメコを致しますわ…サラと新人女優…)
(てれこの言う通りなんですよ室見様。つまり、この演劇の方のハムレット、新人女優を鍛える場でもありますし、更には遊撃騎兵隊員としてご指名がかかりやすくするためなのですよ…)
(ふらめんしあおねー様。オペラ座でもフランス座でも、口説きたい女のためにと模造花の束や花の小鉢、近所のおはなやで扱っておったかと…)
(ソフィーの言う通りなんですよ室見様。それなりのおひねりは頂戴しますけどね、花屋で小鉢を買うか模造花にカルテを添えて差し入れますと、ロントモン過激団の事務方から心話で売春に関する相談の話が行く仕掛けがあるんですよ…)
更に聞けば、指名するかしないかでその、おひねりの額は大きく変わる模様。
相手の身元を調べ上げることは紫薔薇騎士団であれば一瞬ですし、相手の家柄や公的な立場に見合った女性を紹介するそうです…。
で、そういう話をしておる間にも、オフェーリア役の新人女優さんの熱心な奉仕が続いている舞台の上。
いつしか銀幕が舞台に降ろされ、映画での同じシーンが大写しに…じゃなくて舞台で起きてる尺八の光景の拡大映像じゃないですかこれ…。
『ううっオフェーリア、駄目だ…誰が覗いておるかわからぬ話…』
『ふふふふふ、そう思いまして、この部屋付きの侍従には菓子を差し入れておりまする…今頃はさぞや夢心地…』
ええ、ドレスをまくると、椅子に座ったままのハムレットの上に跨ってお尻を振り始めるオフェーリアという絵図に変わっております。
しかも、このお色気攻撃に耐えかねたハムレット、獣のごとく恋人を床に押し倒して今度は尻を振り始めるのです。
こんなの、連邦世界のハムレットにあったのでしょうか。
そして、こんなエロ歌劇、いえエロ過激にされて、シェイクスピア先生が頭を輝かせながら化けて出ないか、この室見は真剣に心配なのです…。
こんな助平歌劇いえ過激な演し物、いくら痴女皇国でも遠慮すべきじゃないかと思うんですけど!
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まさみ「痴女皇国版だからいいと思うの」
りええ「ええことないでしょ…」
まさみ「ちなみにクライマックスはもっとすごいわよ」
りええ「一つ質問があります。まさかこれ、最後の写生までセットで見るんですか」
まさみ「んふふふふふ、その辺に、弥助くんやプラウファーネさんを招待した理由がありそうなのよね」
りええ「って、続くんですかこれ…」
まさみ「もうちょっとだけ続けたいようよ…」
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