闇堕ち女帝マリア・痴女皇帝建国譚

すずめのおやど

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アルトのアメリカ大冒険 - Route 69 -6.65

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ええ、体の動きが自由になったのなら、そのタブレットをひったくってしまいかねないほどの驚きに身を震わせている、峯亜沙子さん他、連邦世界の日本の交通関係省庁から送り込まれて来た女性陣。

通称:桜田商事の本店による警備が日本でも一番に厳重だったはずの、東京都内で起きたテロ事件。

それも、紛争や戦争で使用する火器を用いた事件によって、震撼する東京…そして日本の状況を報道する画面や映像を次々と見せていく伊藤瞳・痴女皇国内務局皇帝室秘書課長と宇賀神雪子・内務局広報部出版課長。

(どうも、そのNK流人の宥和派が本国政府との妥協策に転換したせいで、本国派と過激派との間で闘争が起きていたようなのです…宥和派は過激派の脱法行動を訴え、本国への送還を目指していたようで…)

(で、過激派…反政府派のNK流人はテロ組織やゲリラ系にはお馴染みの、非・西側系の武器を密輸して騒乱を起こして日本警察や政府の弱体化を狙ったようなのです…何せ彼らは戦闘で戦死すれば天国へ行けると信じていますし…)

(それも、そういうテロ行為に慣れた国の人をNK流人だと偽った偽造電子旅券で何名も入国させていたようなんですよ…いくら日本の入国審査が厳格だって言っても、出国先の国の戸籍や身分証明システムがザルだと正規入国者として通ってしまいますから…)

(で、脱法移民が黙認されていた地域だし、文句言わなきゃ食うのに困らない仕事はあるってところか…本当によく考えたもんだと思うよ、あたしたちが日本政府に肩入れしてなきゃ、ね)

しかし、このテロ事件。

まりりであれば事前に防げたという気もしますが、そこは黙っておきましょう。

そして、彼らは異なる宗教の本部を狙ったように見せかけていますが、実のところはそういう脱法・偽装難民の一派の非合法就労利権に絡んだ内輪の争いを利用して、日本侵略の契機を探った背後組織の存在すら感知できそうな一件にも。

ともあれ、これで日本の治安を問題視する意見が市民の間にも広がることは間違いないでしょう。

そして、日本に在住する外国人の方は、例え日本に帰化された方であったとしても、アメリカ同様に肩身が狭くなる可能性があることも…。

そして、移民問題や海外の技術導入については悪い意味での定評がある某政党はもとより、政権与党の政策や姿勢についても見直し議論が高まるのは間違いないと、この室見理恵にすら思えたのです…。

(ま、あたしらは不殺の掟を破るわけにはいかないからな、は…)

(マリアリーゼ陛下、堕天使族や八百萬神種族にも、その掟は適用されるのですか)

(適用するのが無理。あれは聖院女官…つまり、痴女皇国に対してのものだからね…ただ、北欧いけにえ村作戦の時みたいに、あたしらの支配領域や管理資源を侵害するなら容赦はしないってこったよ)

(加藤です。マリアリーゼ陛下…将門公と崇徳上皇陛下からの感謝の伝言をお伝えしようかと)

(それはいいんだけどさ、加藤さん…皇居の中、大丈夫だろうね…)

(もちろん。虫一匹どころか、流れ弾の一発も入ってはおりませんよ。ま、あそこらの周囲は阿鼻叫喚の地獄絵図だったようで…あの爆轟火炎爆弾だけでなく、テルミット弾を使用したようですな…焼け死んだ者の断末魔の叫びが極上であったと、公と上皇陛下が大喜びしておられたようでして…)

(加藤さんも喜んでたでしょ、内心…4桁は困るっておかみ様も言ってたじゃん…事前協定を破らないか、あたしは冷や冷やハラハラしてたんだよ?)

(まぁまぁ。マリアリーゼ陛下の邪魔になる者が失せたことで、その辺は勘弁願いたいとも申しておられますし…それに、私からの感想ですがね。正直、もうちょっと処分しておいても良かったと思いますよ)

(あたしの独断で数字決めてないんだって…あたしはあくまで堕天使さんと将門さんと崇徳上皇陛下にさ、こんなことが仮に都内で起きたら誰がどう喜ぶんだろうねっていう思いつきを披露しただけじゃんか…加藤さんも知ってるでしょ?)

(ま、私にしてみれば日本と日本人が苦しみ困るだけでも大いに有難い話ですからね、本来ならば…そうそう、高木閣下にお伝えください。お気に入りの店、どれも火災や銃撃の被害を受けてはいないと…)

(んじゃ、あの食い意地の張ったせこいおばはんの接待で手を打つよ…今度、うちの母親が行った時にはよろしく)

(もちろんです。閣下のおかげで私や八十川やそがわ氏もお相伴に与れますしな…では)

ええ、心話だけですら伝わってくる、不気味な怨念の気配。

東京と…そして日本を滅ぼすのが宿願だそうですけど、本当の姿は年齢一千年を超える魔人の加藤さんです。

そりゃ、この方ならば、聖院規範を守る気は全くないでしょうね…それどころか今回のテロ事件で、死者が4桁5桁6桁となっても…いえ、都心で核爆弾が炸裂して数百万から一千万人が一瞬に死亡したとしても、逆に欣喜雀躍しそうじゃないかとすら思えます。

(室見さん…逆ですよ…私は即死など安楽死だと思っておりますよ。例えばコレラやペストのような流行性伝染病が流行った昔を想像下さい。あの時も一瞬に大量の人間が死亡したのかを…)

ああ、そうですね…疫病に対して特効薬が存在しなかった時代では、死に至るまでの発症症状になす術もなく人は苦しみ、絶望の果てに倒れたことでしょう。

もしくは、家族や周囲の人間に対して何も出来ない無力感を味わいながら、その次に感染して倒れたか。

そう、大怨霊とか悪神鬼神とか言われるような存在の方々にとって、自分の身に何が起きたのかも理解不能なうちに命を奪われるというのはむしろ温情の部類の死に方らしいのです。

ですので、今回のテロ事件のような、迫り来る原因不明の恐怖や、殺人鬼のような存在が多数、跳梁跋扈して暴れ回っては見つけ次第に惨殺を図るような行為の方が、この方々にはご馳走らしいのですよ…。

(私ども堕天使にしても類似ですよ。これを申すと聖院の方々には叱られますが、怠惰や堕落、欲望の果てに修正不能な間違いを犯して災厄を引き入れた事に絶望して苦しみながら死んでもらうのが一番ですから…)

(または、そこな女の所属組織がそのようですが、人を間違った道に誘い入れて吸血するが如き所業の挙句、組織諸共崩壊するとか…ですね)

ええ、人外の方々の悪業に該当する行為、やはり格が違うと申しますか…例えば蚊に血を吸われたとして、その蚊を叩くのが通常の人だとしましょうか。

この方々は、蚊をわざわざ何匹も呼び寄せたあげく、蚊取り線香の煙を致死量未満で吸わせるような殺し方をするのです。

そして、地面に落ちた蚊の群れが苦しみに悶えるような状態で死んでいく人々から得られる怨念や残念といった負の思念を、ことさらに美味に感じられるようなのです…。

(ふふふふふ、私どもの本質へのご理解が早くて助かります…)

(人の道を誤らせて苦しめるのはまこと、娯楽ですからね…)

(できれば田中様の墓の前で乳繰り合うあの二人にも、悲惨な結末をご用意頂ければと、心よりお願いをさせていただきたく)

ああ、なんという意見の不一致。

(理恵さん…だからこそ、かとうさんもだてんしたちも、あたくしたちと同じくふじゆうな身にされておるのですわよ…ペルセポネ、アフロディーテ…そうやすやすとだ天使や魔人のたぐいに人がおかされると、あたくしはもちろん、あなたがたも困るのをむろみさんに教えてさしあげなさいな…)

え。

(困りますなナンム様…本気を出されては、私どもはもちろん、加藤氏もお困りかと…)

(何をいうのですがバァル…マリアリーゼのいうとおりで、あなたがたにもりよう価値があるあいだは、たがいをぜつめつさせるような大いくさはいたすことなかれ、でしてよ…)

(共存共栄という奴であればまだ、納得は致しかねますが渋々の合意をば…)

(それに…いいこと、アフロディーテ…ペルセポネ…むろみ様のせいしつをさいだいげんに活用できる神通力、あなたたちなら使えるはず…ふふふふふ、わかっておりますね…)

(もちろんですわ、ナンム母様…ふふふ、堕天使や悪神邪神の類にも、人が死ぬのとはまた違う断末魔の楽しみをお教えしましょう…)

(冥土の底に落ちるまでの間にも使い道はあるのですよ…死ぬよりも生きる方がずうっとずうっと楽しみも苦しみも含めて、人から採れるものはあるのです…)

え。

わたくし室見、人外になった覚えはないのですが。

(ふふふふふ、まぁまぁ…キリアおねえさま・ムロミ…とりあえずはそのミネと申す女、予定通りに裁く方向で…)

(人を生かす方がうまみ爆発という証拠、今の室見局長ならばおできになるんですよ…)

で、峯さんたちは痴女皇国に対する反乱未遂の罪状で告発されています。

しかし、ぐっだぐだと罪状否認とか証拠を出すとか云々はめんどくさい。

なので、単純に裁きます。

この、家族会決定をまずは峯さんたちにお伝えします。

「で、あなたたちの才能は惜しいので、心を入れ替えて痴女皇国に忠誠を誓うなら、逆に昇格もやぶさかではないことをお教えして欲しいというのが、聖院金衣銀衣家族会代表かつ、シュメール神話の原始海洋母神である女神ナンム様からの伝言です」

と、仏教系宗教団体の信徒である峯さんたちには、何気にものすごい地雷を踏ませているような気がする裁定を伝えるわたくし、室見理恵。

「室見女官長資格が着用しておられる衣装ですが、単なる女王様装束ではありません。これは黒化白金衣と言って、着用者に亜神や神の力を一刻限定で与えるしろもの。この衣を着た室見様は、皇帝マリアヴェッラ陛下や上皇マリアリーゼ陛下に比肩する立場となり、あなたたち3人に対する裁定を下す権限を持つ事になります」

「つまり、あなたたちが仮に命乞いをしたいのであれば、室見様がその嘆願を受け付けられるのです…もしも助命を真摯に願うならば、今のうちになさい…」

おごそかに述べる、アフロちゃんとペルセちゃん。

(正直、この生意気な小娘に助命なんて…ううううっ)

(しかし室見局長に時限権限が与えられたのは事実みたいね…ここは媚を売るべきか…)

(今から心変わりしましたって言えば、室見さん許してくれるかしら…)

と、思考共有を遮断してはおりますが、こちらからは考えが読めるのです。

誰がどういう思いで、このアフロちゃんとペルセちゃんの宣告を聞いたかはともかく。

「では、みなさんが家族会、わけても初代様に許されて女官としての力を得た場合にはどうなるか。ちょっとの間、体験して頂きましょう」

で、私の着ている黒化白金衣、アルトさんやベラちゃんの白金衣はもちろん、雅美さんの持っているものと同様の機能があります。

または、生まれながらに金衣の力を持っているスザンヌちゃんやまりりのように…。

つまり、峯さんたち3人に、現状以上のIFFステータスランク…痴女種位階を与えることができるのです。

で、実際に3人とも、出力十万卒で吸引百万卒…つまり、黒薔薇騎士団への入団資格者へと引き上げさせてもらいました。

この設定だと、ペルセちゃんやアフロちゃんはもちろん、普段の私にも勝てませんけど、それまでより格段に強くなっているのです。

で、拘束用のバンド、試しに引きちぎってみてはと申したところ。

さすがに、更に強いアフロちゃんやペルセちゃんが側にいるせいか、私には襲い掛かろうとはしませんでしたけど、それでも隙があれば暴力行為に及んでやろうかという感情、峯さんから漏れます。

(よくもこんな目にあわせやがって…と言いたいけど、この強さで室見さんを叩きのめせるかは微妙ね…そばの二人の強さや能力も未知数だし…)

(戦うとか正気ですか峯課長…それより、教団婦人部事務局に連絡を取らせてもらう方がまだ先決では…)

(というより、私たちに対する裁定とかいうの、まだ、室見さんが言ってない気が…)

ええ、心話解禁しただけで、この有様です。

アフロちゃんもペルセちゃんも鉄面皮ですが、私にはわかります。

内心、爆笑したくて堪えているのを。

しかし、もっと現実的で、しかも非情なツッコミを入れた人間がここにいました。

ええ、この室見も大概、ジーナさんいわくの「いらんこと言い」な自覚はあります。

しかし、この私と同じか、それ以上に無用な喧嘩の火種を撒く不用意発言が得意な人間チャッカマンならぬ着火ウーマンがいたのです、この場に。

「あの…峯さんとお二人のステータスランク、それまでの卒級から2段階から4段階は上がってますよね…だったら保有精気も補充してもらっとかないと、またすぐ動けなくなりますよ…人間で言うとアスリートの女性選手になった上に、何も食べてないのに等しい状態なんですよ、皆さんの今って…」
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