闇堕ち女帝マリア・痴女皇帝建国譚

すずめのおやど

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欧州傀儡雑技団ものがたり -Le cirque de marionnettes- 11.03

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で。

フランス共和国側の皆様からの文句を柳に風とばかりに受け流すベラ子陛下と、その間に挟まれて窮屈そうにしておるヴァロワ朝フランス王家の血を引く、イスパニア王家出身者の私たち…クララ姉様にカタリナ姉様、そしてわたくしフラメンシアの王女三姉妹。
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/215/

ぶっちゃけ、噴水庭園とか国威発揚とかやっとる場合かと申し上げたいのですが、そこはそれ、あのくっそだだっ広い庭園をぶっ潰すのも勿体無い話ですので、もともとヴェルサイユ宮殿が建っていた跡地は王立庭園公園として再整備する案にも合意したのです。

それに、庭師たちの雇用維持って問題もありましたからね…。

で、ヴェルサイユをパリ市内中心部にどかん、と移築した件で、同時に持って来た大トレアノン&小トレアノン宮を周囲から隠すためにもそれなりの庭園を宮殿後方に設ける必要もあったのです。

これは、庭園そのものを移すのではなく街区整理で敷地を捻出した上で、新たに庭園を建設しております。

で、その庭園内の森の中に、大トレアノン並びに小トレアノン宮殿を移築する形で決着。

大トレアノン⬜︎  ⬜︎→マドレーヌ寺院
小トレアノン⬜︎  ⬜︎→ガルニエ宮
ベルサイユ宮殿   (オペラ・ガルニエ)
⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎|    |
====== コンコルド|ティルリー|ルーブル|
 エリゼ宮⬜︎| 広場  |宮殿  |宮殿  |    
---------------------
セーヌ川   シテ島・ノートルダム大聖堂→
---------------------

あ、愛の神殿や愛の洞窟は移築または再現していますよ。

それとですね。

お気付きになりましたか。

オペラ・ガルニエ…オペラ座はコンコルド広場のど正面に移されました。

もう一度、申し上げます。

西に数百メートル程度ですが、あのオペラ座とか言われる大きな劇場、ベルサイユ宮殿の後方庭園の東側すぐ側に持ってこられたのです。

こんなん、ありか。

しかし、この措置はバレエや演劇を王陛下や、私たちが観劇するのを容易にするためであると言われましては。

ええ、マドリードでも王立劇場と王立闘牛場、オリエンテ宮殿のすぐ近くに作られましたしね。

「フラメンシアちゃんが今やベルサイユの主人、大アパルトマンの居室の主なのですよ…」などとベラ子陛下に言い切られては、仕方ありません。

まぁ、我ら3姉妹、そもそもオリエンテ宮殿やらサルスエラ宮殿で育ってますから、いくらベルサイユが巨大であると言っても、その半分以上の面積と規模の宮殿におったのです。

(言っときますけどオリエンテ宮殿も南北長さは200メートルはありましてね。フランシスカ局長がメキシコで居住しておられる国立宮殿とほぼ同じくらいの大きさがあるんですよ…)

ええ、オリエンテ宮殿、それなりに巨大なのです。

しかもベルサイユより少し高い「おーる3階建て」。

もっかい、言わせて下さい。

オール3階建て。

(ちなみに国立宮殿も全3階建てですからね…)と、フランシスカ局長にはおこらえましたが。

んで、ベルサイユ中央部の左右のお部屋…もともとの王と王妃のための区画ですが、今のところはルイ16世陛下たちのために空けてはいるのです。

陛下たちは隠居後は家族水入らずで過ごしたいとのご希望でしたので、トレアノン宮にお住まいなだけなのです。

では、クララ姉様とカタリナ姉様はどこにおられるのか。

宮殿南翼…今は西翼部ですが、かつてはマリー・テレーズ王女様他がお住まいであった「子供部屋」を改装して住まれておられます。

実はここに、河原女くのいち三人衆の部屋もこさえてもろうておるのですけどね。

「っていうか、私たち、エリゼー宮に行きっぱなしに近いし…」

「クララ姉様におなじ」

「カタリナ姉様におなじ」

「あのさぁフラメンシア…あのくっそ長い鏡の間の下の階そっくり王妃の部屋になってんのを占領してんだからさぁ…」

「代わりましょうかクララ姉様。あそこで舞踏会とかやられたら最後、真下で寝てたら楽団のナマ演奏とか、果ては靴音がゴンゴンガンガン響くわ談笑の声が聞こえてくるわと、やったらうるさいんですよっ」

ええ、鏡の間の真下の階なのです、私の部屋。

あの部屋を見せられた瞬間は大喜びしましたが、そもそも王妃の部屋は王妃の部屋で、ベルサイユの正面に向かって左手の西翼部付け根にがっつりと数区画を取られておるのです。

そっちを貰い受けるべきであった。

しかし、水洗トイレやお風呂の配管工事は既に終わったと聞かされました。

暗雲に沈む、私のベルサイユ生活。

しかし、救いは意外なところからもたらされたのです。

舞踊全般の練習場所を変えてもらえればよいとの仰せ。

そして、代替の練習場所は存在したのです…。
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/216/

んで、その場所で拝見した光景ですけどね。

ごっとんごっとんと、持ち上がっていく1階客席床。

既に、1階可動床部の椅子類は撤去されており、その持ち上がっていく部分の高さは舞台のそれと同一になろうとしています。

で、生まれたのは大型劇場並みか、それ以上の広さの平面空間。

そう、この王宮歌劇場の床はこうして可動することで舞踏会場などに転用できる構造になっていたのです。

実際に、ルイ16世陛下が王太子であった時、アントワネット妃との婚姻が成り、マリア・アントーニア・ヨーゼファ・ヨハンナ・フォン・ハプスブルク=ロートリンゲン嬢がマリー・アントワネット王太子妃となったことを祝うあの5月16日、まさに婚姻披露祝賀の宴がここで催され、その時は椅子と食卓がずらりと並でいたと申されます。

これは、ルイ14世か15世かは存じませんが、この王宮歌劇場をこんな凝った作りにしろと指示された方と建築陣にぐっじょぶと申し上げるしかないでしょう。

ちなみに、痴女皇国によってベルサイユが移築された際にここの照明や設備はそれとなく手が入っておりまして、この可動床も電動化されておるようです。

ああ、これで安眠の日々が。

ええそうです、わたくし、夜は夜で鏡の間を使った夜会に参加してましたから、寝るならば昼間。

(夜会だけか。だけなのですかフラメンシア)

(そういうクララ姉様こそぉっ)

ぐぬぬぬぬぬ。

(ところでカタリナ姉様は)

ええと。

(ドリナ。そこの礼拝堂は聖母教会のそれちゃいます。救世主教仕様です)

つまり、カタリナ姉様は宮殿東翼棟の付け根にある礼拝堂へ忍び込んで、ドリナ相手にいらんことしかけていたのです。

解説の話が多くなって申し訳ないのですが、救世主教とはなにか。

はい。

マダム・ジョスリンかマドモアゼル・ドミニクにお願いしてみましょう。

(それよりはパスタ女にやらせるべきではと)

(これこれカエル女、何を言うとるのですか…)

で、歴史差異研究室なる痴女皇国文教局の出先機関を受け入れておられる、東欧行政局長のアルテローゼ殿下にお聞きしましたところ。

(ええとですね、連邦世界では聖母教会ではなくキリスト教という宗教が欧州での主流となっています。で、この宗教は無原罪処女マリアとかいう大工の娘が、誰ともおめこせずに妊娠して産んだ子供イエスを神の子にして救世主であると崇拝することで成り立っています)

はぁ。

器用なことをなさる娘御もおったようで。

(で、このキリスト教は最初は迫害されまくったのですが、やがて救世主を崇拝することの政治的な価値に気付いた権力者たちは、この救世主を神格化し崇拝の対象とすることを推奨し、宗教組織に育ててしまったのです)

ふむふむ。

私どもで言えば、マリアリーゼ陛下を産んだ事になっておる聖母様と、クレーゼ通商局長が当時の聖院頂点としてマリアリーゼ陛下を実際にこの世に出される助けをなさった云々のお話や、そうして出て来られた陛下を崇めるようなもんでしょうか。

(マリアリーゼ陛下が崇拝の対象となるかはともかく、そういうことです)

(乳上…あたしは拝んではもらえないんだろうか)

(今からでも遅くありませんから、そのだっさい日本人少女に擬態してる姿を解除なさった聖女像を作りましょう。もちろん、聖母像と同様にちんぽフル勃起全力屹立状態で)

(待ってよ!)

(待たんでええですよ乳上。ねーさんの擬態解除推定時の3Dデータ送りますから)

まぁ、本宮や他の幹部と痴女皇国皇族の方々の内紛は傍観する方向で行こうと思います。

ですが、擬態といえばこのわたくしフラメンシア。

いつの頃からか、姉二人よりはぶっさいくに見せておこうと思って、身体最高顔ハンカチのルネ・サド夫人…そして今はバタイユ男爵夫人となった方の身体情報に近い姿を取ったのです。

つまり、ケツや身体や乳は見どころがあるものの、顔はいまいち。

おめこの相手以上の進展進捗はあまり考えてもらえないようにしておこう。

こう思われる見た目にしてたのです。

しかし。

マリアリーゼ陛下が擬態とはお聞きしましたが、本来のお姿とは。

(想像つけてる人間が大杉なんであたしは今更変わる気はない。その時が来るまでは内緒にしてぇんだよ…あ、白マリ…聖院方のマリアなら時々元の姿になってるから、幹部会に出たら見れるよ)

ふむふむ。

んで、擬態話はともかく、救世主教とやら。

なんで流行せんかったのですか、マリアリーゼ陛下。

(聖院女官がいたから。似たようなことできるし)

この、身も蓋も何もないご発言ですが、聞けば確かにその通り。

代償を何かしら差し出す必要はありますが、奇跡の出し惜しみはなさらなかったようですね。

(で、聖院や痴女皇国と仲が良くなかった国のカルト宗教…まぁ、一部にしか信じられなかった信仰として存在はしていたんだわ。というか聖院側でも完全に根絶はしなかった)

で、それがフランスにも伝わっておったと。

(んで、フランスは聖院と対立傾向にあったので、聖院を崇拝せずにカルト宗教に目をつけて礼拝してたと思いねぇ)

だ、そうです。

しかし、この礼拝堂、なんでか聖母教会仕様に改装されてはいないのです。

なんでやねん。

理由その1。

マドレーヌ寺院がすぐ近くにあって、この界隈の精気授受管理を行なっているから、殊更にヴェルサイユの礼拝堂に聖母像を置く必要もない。

理由その2。

王妃様と、お子様…そして王様のため。

これ、実はルイ16世陛下やアントワネット殿下を若返らせている程度に留めていることや、そのお子様を自然成長なさる方向で育成するという方針、すぐ南側のエリゼ宮から出たからです。

プロフェスール・マリーことマリーセンセイや、ジョスリーヌ団長までもが「王陛下夫妻に痴女皇国のおめこ漬け生活の強要は控えるべき」と強硬に主張されたのが意外だったのですけどね。

そう…遊撃騎兵隊(escadron volant)の復活は、まさにこの「ルイ16世王陛下夫妻を武道と舞踊に邁進して頂く」ための措置でもあるのです。

要は色仕掛けや痴女皇国ならではの助平政策、エリゼ宮とヴァンセンヌ娯楽館でなんとかするからフランス騎士道や舞踊道といった、その道の求道者めいた振る舞いを王陛下ご一家にお願いしようとなったのですよ。

で、新生・遊撃騎兵隊の編成をどうするのとか、あるいは脈のありそうな貴族夫人やら子女を探すためもあって、王陛下主催の夜会を企画したり、あるいはスペインから婦人舞踏団を呼んで南欧流の舞踊講習への参加を打診してみたり等々、私は私で夜の公務に従事しておったのですっ。

それと、今や黒薔薇資格者ともなった私ですが、昨今の痴女皇国女官は元来ならば睡眠を必要としないはずの千人卒以上の女官であっても「時間や機会があれば身体の自己調整や自己再構築・補修能力を安定して稼働させるためにも睡眠と同じ動作をしておくほうがよい」というお触れが出ております。

これが昼間、私が大アパルトマンの寝室で転がってる理由です。

(そーですわねー、とりあえず予備の人選はあたくしとかジョスリンとかヴェロニク様でやっちゃいますし、いてこますのは河原くのいち三人衆の子たちとかで大丈夫ですわよ…あ、そうそう。アンヌマリーにもパリを見せておきたいので、近々こっちに来させますわね…ええ、白薔薇三銃士の子たちにも社交舞踊はまだしもバレエを教えろとかおっそろしいはなし、ベラ子陛下が言われてますので…)

----------------------------------------

あんぬま「いくら高木マリアンヌ様や母様と名前が被るからって言っても…。それとジョスリーヌかーさま。これはベラ子陛下被害者友の会事務局提訴事案では」

じにあ「アンヌマリーに激しく同意。つか理恵母様経由で既に文句言ってもらってますからね」

てあら「マジ切れていいですか。あたし、イザベル陛下にすら「宮廷舞踊を叩き込みはしましたけど、ティアラは正直舞踊より武道の子ですわねぇ」とまで言い切られたんですよ…(泣)」

ふらめ「というわけで、そもそも白薔薇三銃士の皆様にバレエを覚えさせることが妥当なのか」

まりー「まぁ、ともかくパリには来ること。特にティアラさん。あなたは逃げない方がいいと思いますわよ…(意味深)」

てあら「ううううううう」
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