闇堕ち女帝マリア・痴女皇帝建国譚

すずめのおやど

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いけない雅美先生・淫化の変態雄娘治療編・11

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さて、太平洋なる大きな海に面した漁港として整備中であるタララの町の巡察を終了した私たち…新しく淫化皇帝となった少年クシと、その皇妃たる私、コイリュル。

「さて…昼過ぎまでにはマンコラに戻りませんと」

で、これから自転車けったましんを漕いで走ろうとしておりますのは南米縦割ぱんあめりかん街道はいうえいなる立派な広い道。

途中にある絶頂乃巣おるがのす村を経由して、マンコラに向けて戻ろうかとしております。

むろん、私一人ではありません。

私たちの前と後ろ、新任の太陽乙女…淫化の区別で申しますと、太陽神殿という部類の神殿に勤務する若い女性神官となるニスカとワヤチャの二人が自転車で走ることになっております。

そして、私が乗る自転車、かつては離魔の街で貴人街の私の自宅と、そしてお勤めの場所であるパチャカマック神殿との間、元・リュネの王子であるクシーが送り迎えしてくれた際に使われたそのものなのです。

即ち、側車なる箱が左横に装着されており、その箱の中にもう1人が座れるしろもの。

この特殊自転車、淫化の地に送られる前は遥か西、太平洋の向こうにあるマルハレータ殿下やレオノール様が働いていた南洋王国の首都であるジョクジャカルタという都で、痴女皇国南洋行政局長のオリューレ様が毎朝、少年王カルノ様を乗せて都の巡察にお使いであったそうです。

マルハレータ殿下いわく「その時々に於いて、乗った男女の恋や愛を育んだ縁起物」だそうなのです…。

(南洋慈母宗のアニサです。実はね…私も、ある時に旦那のベテハリ乗せて走ったり、逆にベテハリが乗せてくれたことあったんですよね。あと、ベラ子陛下も聖父様乗せて走ったことあったんじゃないかな)

(アニサ…あのチャリ、淫化に送り込む前にうっかりティアラがハバナでリンクくん乗せたり、キュラソーでレオノールとラウシュミがサリム乗せたりしとんねや…で、あれが縁起もんとかいう噂、広まってな…)

そうですね…成就しなかったのはクシーくらい…いえいえ、クシーとは時折連絡を取っておりますよ。

心話でどちらかが呼べば伝わりますし。

で、タララや絶頂巣おるがのすまで行っておりました理由。

実は、タララの街は漁港として少年たちが働く場所でもあるのですが、置かれておる聖母教会、極めて小さなものなのです。

ただ、所属する司教様と副司教様、痴女皇国海事部所属経験者で、紺碧騎士団員。

つまり、タララの周囲の海で何かしら事故があった場合に騎士として出動する…いわば海の警備本部を兼ねた建物だそうでして、住民の精気収集は「ついでに」やらせてもらっているのが現状だそうですね。

ただ…今はこのタララの町や、タララに出入りするお船や港で働く労働者、マンコラ聖母教会のすぐ南側にある労務者寮から通勤している状況だそうですけど、ゆくゆくはタララの街に寮を作り、仕事場と住まいをなるべく近づけてあげたいという要望、早速にも頂きます。

(タララに少年たちを住ませず、マンコラからばすとやらで通わせておるのも、タララの町を切り開くまでの措置であるとか。ゆくゆくはタララ聖母教会も尼僧の数を増やすとなった際の大きさであらかじめ作られておるとの事でございます…)

で、この要望、どうするか。

本来ならば淫化皇帝であるクシ。

または、その妃である私コイリュル。

つまり、淫化帝国の統治をしておる私たちがですね、「よしよし、訴えの内容はあいわかった。早速にも手配してやろう」と申すべきか。

これはダメだと言われています。

そして、私個人としてもダメだと思います。

そう…思い出して頂きたいのです…この巡幸の要所要所で、随伴神官がつくことを…。

こうした要望、本来ならば正に、同席した随伴神官が聞き取って、その地域を担当する支部長なりに伝えるべきなのです。

ただ、それでは私たちが赴いている意味はありませんので、後で必ず、担当の神官なり支部長なりに「なんで今まで何がしを改善や実施しなかったのか」をクシや私が聞くことになります。

で、この場合。

タララの担当者は…ええ、今、マンコラにおります。

しかもベラ子陛下と遊んでおられ…親睦を深めておる様子。

(あんっ陛下のぶっといチンポがぁっ!)

何をしておいでなのですか、一体全体。

(せめて水産加工場を視察するとか、荘園寮を視察するとかしてからにしてくださいよ…)

つまり、担当者は離魔支部長…即ち、エマネ様なのです。

(ううううう、コイちゃんが厳しい…)

(我々は視察が主な目的ですから当然ですよ…それにレオノール大司教…そちらでは今、マンコラ分校の授業中かと存じます。授業参観の後、昼からの方が色々お楽しみの時間に良いのでは?)

(私もそう言ったんだけど、エマネ支部長が魔毒を抜かせてくれって、苗床の間に陛下をですね…)

レオノール大司教。

ちょっと地引網とやら、手配願えませんか。

もしくは漁船。

どうせ身体を使うなら、ここでしか体験出来ない上に皆様の助けになるような事をですね。

(コイちゃんが結構、情け容赦のない女だってよくわかんだね…)

(とにかく、昼には私たちもマンコラに戻ります。聖院学院の授業時間割とやらはお聞きしておりますから、お楽しみの時間までは我慢して、皆の勤労や学業を見守ってくださいよ…)

で、この私の態度に感動しているらしいクシ。

(うむ、コイリュル…やはり、そちが余の正室であるのが良いという周りの見立て、正しかったようであるな…クシー王子との経緯は聞いておるし、不能ぷーのなり不倫垢ふりあかなり、視察の際には旧交を暖めてもよかろうぞ)

と、私とクシーとの経緯を知っておるクシも、その辺には一定の理解を示してくれております。

ええ、クシーとは別に、相手が嫌いで別れたとかではないのです。

あくまでも不倫垢ふりあか支部と挿入器具くすこ、それぞれを担当する者を入れ替えたに過ぎません。

(それにジャムジュナ妃も少年好きとの噂。クシ、恐らくですが、不能訪問時、ジャムジュナ妃はクシとクシーを交換することを申されると思いますよ…)

(であろうな…しかし、こうした人付き合いというのも大変であるな。朕一人では往生しておったであろう)

(ピラコチャ様はどうなさっておいでであったのでしょうか)

(うむ。父の場合、基本はクスコで執務し、必要に応じてクスコに詣でた者との謁見に臨んでおった。ただ…父への謁見を望んだ全てが叶うわけでもなく、それなりに手間を経ておったな。はっきり言えば、貴人なり神官を通さねば、御目通り自体が叶わぬようになっておった…今の我らとて、こうして俗地に向かわねば、一生に渡って俗民の暮らしを間近に見ることなど叶わなかったであろう。それと同じよ…)

ですね。

淫化の地では、皇帝は基本、居宮なり神殿に座するものであり、軍を率いるか、皇帝自体が令を発して行幸を指示せねばクスコの地からすら離れられぬ立場であったのです。

そして神殿は、皇帝と神官…そして太陽処女以外の立ち入りを基本的に禁じておりましたから…本当に俗民はおろか、下手をすれば貴人ですら簡単には皇帝へのお目通り、叶うものではなかったのです…。

(避暑であっても、であるな。マチュピチュなどに赴いたり、湯治に行くのが娯楽と言えば娯楽であったか)

と、その時、聖母教会の司教様兼、海上警備支部長様が独特の騎士服姿でお見えになられます。

(海事部からの申し出ですが、せっかくだからと、絶頂乃巣おるがのすまではお船で送って頂けるそうですよ。特にクシ陛下は海上航行船の経験がないでしょう。この機会に船の体験、なさってはいかがでしょうか?)

ベラ子陛下にお聞きしますと、ちょうどタララの港に寄っていたお船で、この後に破膜生はなま運河を通って魚の塩漬け油漬け酢漬けを運ぶ船便、絶頂乃巣おるがのすまたはマンコラの港に寄るそうです。

で、私たちも親睦にもよかろうと、申し出をありがたく受けることにしました。

お船自体は痴女皇国通商局の委託を受けておる船会社の持ち物だそうですが、必ず船長か機関長に千人卒以上の国土局海事部の女官が乗り組まないと動かせない部類のお船とのこと。

(補助用のでぃーぜるはつでんきとやらを積んではおりますが、この船は精気発電機にて起こした電気を筒の周囲に通し、吸い込んだ水を吐き出す仕掛けにて進むようになってございます。即ち、大量の精気を扱える女官でなくば機関を制御できないのでございます)

なるほど…。

(ヘリカル水流ジェットエンジンと精気発電機の組み合わせです。淫化の皆さんからも精気を頂いている理由の一つが、この手のお船を動かすために大量の精気を必要とするからなのですよ…)

で、お船の横に用意された坂道を伝って乗り込みますと、ちょうど私たちの自転車、かごに詰め込まれた上で動く腕を使って甲板の上に降ろされる作業の最中。

そして船長と航海長や機関長など、乗り組まれている方々の挨拶を受けて船橋なる場所に招かれます。

用意された椅子にクシともども腰を下ろしておりますと、船出の準備ができたのか、岸壁からの合図を受けて船はゆっくりと真横に動きます。

そして、港の外に出たお船は舳先をマンコラや絶頂乃巣おるがのすの方に向けますと。

「船長、前方よし」

「進路15。両舷前進全速ふるあへっど

「了解。次の寄港地は絶頂乃巣おるがのす。両舷前進全速」

船長様の前に座る航海長と申す男性、右手でお席の横に生えた棒を掴んで前に押し出します。

棒を押し込むたびにちん、ちん、ちんと鐘が鳴ります。

(あの棒はエンジン・テレグラフと申しまして、このユリマル型貨物船の速度の加減を機関室に伝えるための指示棒でございます。今は中立の位置から前進低速、半速、そして全速の位置まで棒を動かしましたので、鐘が三遍鳴りましてございます)

(で、このユリマル型、中身は最新鋭のからくり船になっておるそうでして、船長または私の席に座れば1人でも操れるように仕掛けがございます。舵輪も帆船の如く大きなものではなく、船長の席に備わるような両手あるいは片手で握る操縦桿なるしろものとなっております)

などなど、説明を受けましたが。

で、先ほど、全速とかいう位置に棒を動かされたそうですけど。

何やらきいいいいんとかぐおおおおんとかいう音、この操舵室なるお部屋の下で起きております。

(元々のユリマル型、二千馬力なる単位の機関を積んでおったそうですが、痴女皇国の同型船では一万五千馬力…馬一万五千頭立ての水流機関を左右1基ずつ積んでおります。即ち、この船を走らせる力、最大で馬三万頭分となります)

で。

その、馬三万頭分の力が加わったこのお船。

何やら、舳先が持ち上がったような気もしますが。

(あまり船首が持ち上がり過ぎると困りますので、船底の水槽に水を出し入れして調節を致す仕掛けがございます)

と、船長様のお席の正面に備えられた画枠の中の一つを指差されますが、そこにはこのユリマルを横や真上から見たとおぼしき線画が描かれておりますね。

そして、底の部分が青や赤に塗られております上に、刻一刻と色が変わったり、その色の上に出た数字が変わっております。

更には、今の船の前後の傾きを示しているのでしょう。海面らしき線と比較して、船の前後がどれだけ上や下を向いているか一目瞭然にわかるようになっておりますね。

ただ…先ほどから響いております轟音とともに、船は尋常でない速度で波を蹴立てて進んでおります。

前の窓につけられた丸い枠の中の硝子も回っておるようですが、これは吹き付ける波を弾き飛ばしておるのでしょう。

ずどどどどどと突進するこのお船ですが、どうも我々にその性能を披露したくて全速で飛ばしておるようですね…。

一体、どのくらいの速度が出ておるのでしょうか。

(北行きの海流をうまく捕まえられまして、現在で時速60ノットを超えております。絶頂乃巣まで1時間以内には到着いたします)

なかなかの速さではないのでしょうか。

海に詳しそうなレプタ様にお聞きしてみましょう。

(紺碧騎士様がお使いになる高速推進機なるものと同じ原理で泡の中を泳げば、それより更に速く泳げますが…あれ、長い間、続けられないのですよね…)

(まぁ、我々に水の上を行くもので追いつくには飛ぶか、警備用の水上滑空艇を使うしかないでしょう。タララにも一隻おりましたはず)

(船長…あれ、このユリマルの両舷全速より酔いますよ…慣れぬ者はっ…て、クシ陛下、大丈夫ですか…)

え。

見れば、クシの顔が真っ青です…。

えええええ。

(とりあえず速度を緩めます。両舷半速!)

と、速いには速いのですが、先程までの波を蹴立てるどころか空を飛びかねない進みっぷりよりは遥かにマシになったお船。

淹れてもらった効果茶をクシに飲ませたりするうちに、何とか血色を取り戻してくれます。ふう。

(ベラ子です。えーとね、マルハちゃんに絶頂乃巣おるがのすまで迎えに行ってもらいます…)

(えー…クシ、大丈夫なの…あ、そうか…乳母湖の船だとあそこまで飛ばさないし、だいいち湖だから荒れてないわよね、波…)

(ぬ、ぬぅ…余としたことが何たる不覚…)

(いえ陛下。慣れぬうちは痴女種でも辛いのです。それ故に我ら海事部、必ずや紺碧騎士団に所属して海に慣れるのが必須とされております…)

そう、このお船の船長様、海事部から派遣された騎士様がお勤めなのだそうです。

(実のところ、イワシの樽のみならず、効果の葉をナッソーまで運ぶ重要貨物輸送便ですので…内緒ですが、この船の積荷は一部、ナッソーで別の船に積み替えられた上で欧州へと運ばれます)

どうやら、このお船の正体…淫化の海沿いの港に寄っては効果の葉を積んで行く輸送船であり、イワシを運ぶのは効果の葉を載せるついでのようなのです…。

(別に密輸をしているわけではないのですから、堂々と運べば良いような気もするんですけどねぇ)

(というより万一に盗まれでもしたら、高値で闇取引される危険が危ないのですよ…)

(あら、マリアヴェッラ陛下…マンコラにお越しとは伺っておりましたが)

(その効果の葉、恐らく英国行きですよ。昨今は紅茶に混ぜてたしなんでおるはずなのです…)

(なんで効果は効果で飲まないのでしょうか…)

(その答えは食事の味付けがあまりよろしくない国の商人に聞いてみましょう。ティーチさん、ロバーツさん、コイリュルちゃんに回答、お願いします)

(ティーチだ。あのさ、俺も言ってるんだよ。紅茶キメるならキメるで、変なもん混ぜない方がキマるんじゃねぇのって言ったんだぜ…一応、紅茶を流行らせた一人として言っとくけどよ…)

(ティーチ、無理だ…あいつらは効果茶だけで飲むような頭が柔軟な生き物じゃないんだ…俺もその国の人間だけどな…)

(なぁロバーツ…生まれてきた国、変えられねぇかな…英国人ってだけで何かこう、色々と負けた気がするんだよ最近…)

(だがなティーチ。お前、ベラ子陛下の前で言いたくねぇけど、鴨野郎やイタ公になりてぇか)

(それも難しい話だ…特にフランスはあのロロネーがいやがるだろ…あいつは突進公とやらの血筋を引いてるのか、はたまたジル・ド・レの生まれ変わりかってくらいにな…身体で話をしたがるんだよな…おまけに手加減しやがらねぇし)

その、ロロネーなる御仁、どういうお方なのでしょうか。

(一言で言うと、会話の代わりに拳や脚が出る部類の海賊だな…あと敵、特にイスパニアには情け容赦がねぇんだわ…)

お顔も拝見しましたが、何やら酷薄冷酷な部類の御仁では。

(昔、海賊修行の時にスペイン海軍と戦って酷い目に遭わされた恨みを抱いた野郎でね…俺たちはどっちかというと祖国の海軍に酷い目に遭わされた奴が多いんだが、今のスペインの女王様がフランス出身でなきゃスペインとは絶対に仲良くしてねぇくらい徹底してやがるんだよ…)

(度胸と腕っ節は一人前なんだがな…ラトーチュ…カリブ海の廃地のトルテュ島にフランス女の売春窟が建つくらいに栄えたのはあいつの稼ぎがそれだけでかかったって事なのさ。なぁ、ロバーツ)

(あれで情け容赦のない性格さえ改めてくれりゃなぁ…)

(ロバーツ、ティーチ…ロロネー以前にジョスリンという名前を出せばフランス人というものについて、速やかに納得する者も多いでしょう。イタリアを引き合いに出した件はそれでチャラにします)

(っていうか何をどさくさ紛れにフランスをdisっておるのですか、この暴力パスタ女はぁっ)

(残忍残虐冷酷酷薄の見本のようなカエル女にだけは言われとうないのですぅっ)

(というか海賊の皆様。皇帝がここまで口論はおろか喧嘩も早い有様で、よく痴女皇国が持つと正直なところ思える昨今)

(ちょちょちょコイちゃん何を言うのですか!)

(まぁまぁ陛下。で、もと海賊の皆様にお聞きしますが、気の荒い海の男ばかりと聞く海賊共和国ではその辺り、どうなのでしょう)

(いい質問だ、お嬢ちゃ…失礼、皇后陛下)

(そうだな…確かにロロネーは手が早い部類だ。だが、海賊連中の中では図抜けて手が早い訳でもないんだよ。俺たちだって売られた喧嘩は買ってたし、ティーチなんざ即座に抜けるようにピストルを3丁もぶら下げてたしな…)

(おいおい、ありゃハッタリ半分だってば…)

で、私が気になっていることはもう一つあります。

確かにベラ子陛下を引き合いに出しはしたのですが、どうせならばと聞いてみたい事が。

(船乗りに気が荒い者が多いと言うのは聞かされておりました。ではなぜ、皆様はあまり揉めずにやっておられたのですか)

(ふむ…一言で言うと、俺たちは喧嘩が嫌いなんだよ)

えええええ。

(仲間同士で揉めるのは、船に乗り込んだ時に命取りになるんだよ。だから行き過ぎた喧嘩は法度もんなのさ。でなきゃ、仲間同士で喧嘩してるよりもっと恐ろしい奴らと喧嘩した時に力を合わせられねぇんだ…特に正規の軍艦相手には、な)

(で、戦いになれば、そりゃ命も食い扶持もかかってんだから本気は出すぜ。でも、毎日毎日ドンパチやらかすわけにもいかねぇだろ…俺たちはあくまで海賊だった訳で、間違っても軍隊じゃないんだから火薬も砲弾も大砲も無尽蔵にある訳じゃなかったんだよ。で、手持ちの武器でもできれば温存しておきたかったのさ)

(加えて補給だ。あいつらは少なくとも国の支援を受けられるが、俺たちは溜め込んだり買ったもんしかないからな…)

なるほど、暴力的なのではなく、暴力的に見せるようにしておられたと。

で、私がこの話を振った理由なのですが、自分の興味だけでなく、クシのためでもあります。

(クシが船酔いを恥じる気持ちは分かるのですが、足が土を踏んでおらぬ暮らしの方が長い船乗りの方々と、普段は陸の上で暮らすクシとでは波への慣れが全く違うでしょう。それにまだ若いクシですし、何より淫化皇帝として、船以外にも慣れる事どもは多いと思いますよ、クシ…)

(皇后様、男ってのはメンツを重んじる生き物でね…特に女の前でだらしねぇ姿を晒したくはないってのも結構多いんだよ…)

(ああ違いねぇなロバーツ…てめぇの母ちゃん以外に無様な姿を見せたくないって思いもあるのさ)

(で、恐れながら皇帝陛下に助言させて頂きますと、だ…馬に乗ることで、揺れに強くなれるかも知れん。陸の上の兵隊にはな、騎兵って兵科があってな、馬に乗って戦場を駆け回るんだ。で、疾走する馬の上で剣だの槍だの、果ては弓矢だの鉄砲だの、武器を振り回して戦うから酔ってる暇はねぇって寸法さ)

(確か、アルゼンチンチンで馬を放し飼いにして増やしてるはずだ、あれの融通が効くなら、乗って練習しておけばお貴族様の嗜みにもなるだろ…ベラ子陛下、淫化って馬を贈っても育つような場所かね)

(その辺は通商局を経由して手配しましょう。馬に似た生き物は淫化にもおりますが、動く速さが違いますからね…)

ふむふむ。

要は、クシの見せ場になるような動きをする生き物に跨る作法を覚えれば、船にもある程度は強くなれるであろうと申しておられるのですね。

(乗馬ならチェーザレ猊下が得意なはずだぜ)

(ああ違いねぇ、まさに騎馬戦経験者だしな…)

(あの兄さんはいちいち所作が女受けするように出来てるからな…)

(叔父はスペイン系ですが、イタリア人の男とはああいうものなのです…女に受けるように生きる生物なのです…)

(違いねぇ…ま、皇后陛下、旦那様に参考にさせるならチェーザレ猊下の立居振る舞いも参考にするといいぜ)

(猊下の姪御さんがベラ子陛下だしな、色々と融通は効くだろ)

しかし思いますが、海賊の皆様、なんだかんだと物知りではありますね。

流石にあちこちを船で回っていると、色々と聞ける話もあれば人の繋がりもあるのでしょう。

私共も船で運ぶものは皆無ではない昨今、何かしらの便宜を図れるならば図っておくに越したことはないでしょうね…。

で、当初の予定からはいささかに遅れましたが、絶頂乃巣の港で船から降りた私たち、丁重にお礼を申しておきます。

私とクシの名前で、あとで海事部にはお礼をしておきましょう。

それと元・海賊の方々には。

「あー、ワイが後で何かしときますわ。ナッソーやったらワイか手下が動けますさかい」

で、青い装甲車で迎えに来て下さったマルハレータ殿下の運転で、マンコラに向けて戻る私たち。

「まぁ、飛ばせば何とか午後のアレに間に合いますやろ」

ほぼ全速力…私たちが自転車で出せる速度に匹敵する速さでマンコラに戻るのですが、くるまはまだ、マシな揺れ方ですね…。

「まぁこのくるまは道のない場所で動かすのがほんまの使い方らしいんで、こういうちゃんとした場所では逆にあまり揺れんのですわ。それよりマンコラの防砂林の中でやっとることの見学、クシ陛下にもコイリュル妃にも見せておけとベラ子陛下が是非に言われますんでね、もうちょっとの間、辛抱願います…」
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