239 / 391
番外編:淫化帝国姫騎士ものがたり・11.8
しおりを挟む
でぇえええええっ。
如何なる経緯で、魔族とリュネ人族の混血児が産まれてしまったのやら。
ですが、これまた例の淫化人に翼をという話が進む助けになるやも知れません。
何故ならば、魔族とリュネ人の間に産まれた子は通常、魔族の特徴の方が強く出るとは判明しております。
しかるに眼前の魔界剣士だか魔剣士だかの人物。
着ているものが魔族由来の衣装でなかったら。見た目は人の子にしか見えませんよ。
「ええと、当代の剣聖様…ですね。魔剣士エイモンと申します。剣聖様のお生まれになる遥か前の星期の者ですので、直接には剣を交えた事はございませんかと…」
でまぁ、気になるのはその出自。
しかし、今は朝の儀式を早々に始めたいところです。
とりあえず、この人は魔族における剣聖の立ち位置である魔剣士だという事にしておきましょう。
それに、魔剣を提げておりますから、魔剣が言うことを聞く…魔剣に認められた人物なのでしょう。
で、エイモンとやら。
なんであなたが私の副官役に。
(人族の特徴も持っている上に、恐らくだが聖剣も扱えるはずだ。お前に何かあった際の助けともなるだろう、とな…)
ふむふむ。
ちなみに翼、どうなんでしょ。
試しに翼を出してもらうと、灰色ですがリュネ人族の羽毛ふさふさの翼でした。
では、ますますもって純粋な魔族ではなさげですねぇ。
「で、実はこのエイモンに来て貰った理由なのだがな、ここな黒薔薇騎士団長ペルセポネーゼ様からのお話がある」
と、鹿爪らしくかしこまった顔で告げるアスタロッテ。
「は。急な話で申し訳ないのですが、痴女皇国本国…すなわち、痴女島内で魔毒苔の発生が確認されたのです」
「その先はあたしから申します」
と、いきなり現れるマリアヴェッラ様。
「この魔毒苔自体は消毒除去されています。しかし、魔毒汚染に抵抗のない罪人や聖院学院児童への影響を鑑みて、早期に血液抗体…人の血から作り出す薬を製造することが求められたのです」
むう、なんと急な話。
よもや、昨日お越しの本宮の方々に胞子とやらがくっついて行ってしまったのでしょうか。
しかし、それだとサクサイワマン神殿の検疫施設やら何やらの見直しも必要ではないかと…。
(これこれイリヤさん、実はちょこちょこ起きてるのですよ、持ち込み…ただ、これは本宮などから直接転送した人がそのまま戻る場合に起きることが予想されたため、現在では魔毒苔の発する放射線を聖環で検出できるように改良されています。ですから、実は今、大騒ぎする事でもないのです…本当なら、ね)
ああ、わかりました。
つまりこの話、パイローテを痴女宮に派遣するための前振りです。
全くの嘘ではないのでしょうが、本当なら今すぐ言う話でもないのでしょう。
そして、マリアヴェッラ様の驚愕のお話。
「で、魔毒に対する毒耐性をある程度保有した人を痴女宮に派遣して欲しいのですが、血液製剤を製造するためには長期にわたって痴女宮、または茸島に滞在して頂く必要が生じます。そして…痴女島では魔素が得られないので、一時的に痴女種へ種族転換することを合意して頂きたいのです」
「で、私から付け加えましょう。この協力者は数年に亘って痴女皇国本国に滞在する事になりますから、いっそ淫化を代表する大使として痴女宮本宮に赴任頂くのが良いのではないかと、私は進言します。幸か不幸か、淫化では独自の太陽神信仰が存在しますから、淫化の拠点となる太陽神殿を痴女宮そばの各国大使館区域に建設して駐在員を常駐させることで、痴女皇国本国との連絡も密に取れる事になるかと」
と、すらすらお話になるペルセさん。
ええ、ここまで話されたら、よほどのおにぶでもない限りは理解可能でしょう。
要は、常駐する使者をリュネ人または魔族から出してくれということです。
そして、血を使って薬を作るための血抜き要員だけでなく、痴女皇国本国と淫化の連絡役も頼む。
つまり、それなりの人材をよこしてくれ、となるでしょう。普通なら。
「イリヤ様、元来なれば朝の勤行をサクサイワマンで行うところですが、このマリアヴェッラ様の緊急のお話を受けて、淫化では人を送り出そうと思います。しかしながら、痴女皇国本国の求めではリュネ人または魔族の出自であることが求められるとか…そうなりますと、淫化帝国だけの人事では決めかねる話です。出来ればイリヤ様、そしてアスタロッテ様にお決め頂きたい話ではございます」
と、これまた緊急で呼ばれて来たらしい、淫化皇帝略装のチャスカまでもが。
「でな、イリヤ…お前の配下で出世を望む者がいないか、この場でリュネ出身の…できれば上級戦士に尋ねてくれぬか。痴女皇国本国に回す者であればそれなりの教養や知能も必要だろうし」
アスタロッテからもこう言われますが、その真意はもはや、当事者たるパイローテ以外の皆には伝わるところ。
で、私はこう申します。
「ふむ…と申しましても、この淫化に来ておるリュネ人族で思い当たる者は片手の指未満。ただ、人を向かわせるだけならまだしも、痴女島に常駐するとあっては少しく考えどころではありますね。パイローテ、あなたなら誰を考えますか。むろん…あなた自身が手を挙げても構いませんよ」
「かしこまりました…イリヤ様、本宮のお呼びであれば相応の人材を振り向ける話となりましょう。然るに熟考の余地もなく、喫緊であれば取り急ぎ、このパイローテが赴いて応急のお役目だけでもと」
と、うやうやしく私の前にかしこまって意見を奏上しよるパイローテ。
むろん、この女、そんな殊勝な心掛けでこの言葉を告げてませんよ。
(ぬうう…これはもしかしてイリヤの支配を免れる千載一遇の好機。だが、物欲し気にしてはならぬ…)
いやその、ハイハイハイって全力で手を上げていいのよ。
思いっきり笑顔で送り出して上げますよ、私。
「よろしい。ではパイローテ、緊急に痴女宮に向かってください。あなたの私物などは本日中に痴女宮に届くよう手配いたします」
「御意」
で、頭を下げるパイローテの顔が一瞬だけ、ほんの一瞬だけ邪悪な笑みに変わったの、私以外にも察知した方がおられたようです。
(なるほど…地位ある立場で淫化を離れれば、自分にも目があると思い込みましたか…)
(ふ。愚かな…生き地獄はこれからですよ…)
(じゃエマちゃん、ちょっと厄介な手術で申し訳ないけど。よろしくお願いしますよ)
(へいへい。確かにこのパイローテゆう人、獅子身中の虫っちゅうやつですわなぁ)
で、黄色い帽子を被って土工人夫の服を着た姿のエマニエル建設部長がおいでになりました。
「では、これからパイローテさんの痴女種転換作業を始めます。痴女種化身体の参考にしますので、チャスカさんもこちらへお願いしますわ」
ええっ。
いきなり、場所が変わりました。
私・アスタロッテ・エイモン、そしてチャスカと他ならぬパイローテも大いに驚きます。
(ここ…茸島のファインテックの生化学検査区域ですよ。手術設備があるからには手術室なんですけど、検体摘出などを主に行う場所です)
ええ、マリアヴェッラ様がここがどこかをご存知の様子です。
で、手術台なる寝台がもう一つ並べられた上にチャスカが横たわるように指示されます、
元来、この部屋に存在した大づくりな寝台には、パイローテが。
そして、緑色の帽子に口布、同じく緑色一色の服と手袋をつけた小柄な姿の方がお越しになります。
「聖母教聖父クリス・ワーズワース…あたしの姉たる聖女マリアリーゼの実父です。では…おじさま、初代様、お願いします」
ほう。そのお姿で顔立ちはよくわかりませんが、目の色は青ですね。
そして、マリアヴェッラ様とペルセさんも、同様の装いに身なりを変えておしまいに。
(これは手術着と言って、元来はこの部屋で医術を施す際に着る服なのです…)
(でマリアヴェッラ、とりあえずはこの子たちを生かしたままにすればよいのですね。ペルセポネ、間違っても二人を冥界送りにしてはなりませんよ…)
(ええナンム母様。そして、エロスも待機中です…)
エロス、とはどなたなのでしょうか。
まぁともかく…二人の顔の上にマリアヴェッラ様が順番に手をかざすと、寝ている二人の意識は失われたようです。
で、ここからが驚愕の光景でした。
なんと、その聖父様と呼ばれた方がのこぎりか、はたまた太い刀めいたものを寝台に装着して何かを操作すると、チャスカとパイローテの首が切れてしまったではありませんか!
(声を出せないようにしていますからね…悲鳴を上げるのは予想しておりました)
(ほほほほほ、痴女種化されていればこれくらいで死ぬことはありませんわよっ)
(まぁ、良い眺めではありませんよね。それっ)
なぜか、床に落ちず血も噴き出ない状態の首。
その首と胴体の組み合わせ、なんとチャスカとパイローテの間で入れ替わってしまいます。
そして、首はそれぞれの入れ替わった胴体の元に。
しかし、首の太さとかはかなり違いますけど。
(まぁ、これからが本番っちゅう訳で)
前に進み出るエマニエル部長。
で、今度は部長の目から出る青い光線が二人に降り注ぎます。
一体全体、何をなさっておいでなのか見当もつきません。
ですが、パイローテのもののはずの身体、チャスカの元来の身体に近づくように変わっていくのです。
(よっし、チャスカさんについては身体と人種種別変更終了。痴女種要素ありのリュネ族状態に変わりましたで)
どうやら…チャスカの首から下をパイローテの身体に交換しただけではなく、チャスカをリュネ族にしておしまいになったようです…。
(しかも、首から上はチャスカさんですから、淫化皇帝の血も引いていると周囲は認識するでしょう。で…問題はパイローテさんですよ、エマちゃん)
(とりあえず仮処置を行って意識を戻しますわ)
で、パイローテの方も青い光で撫でられると、これまた、元々はチャスカの身体であったのが、パイローテの身体に変わって行きます。
なんという超絶の技。
(で、今から申し上げる事にそんなんウソやろとか野暮、言わんといて下さいよ…)
(そうそう、今からの方が本番なのですよ、本番っ)
(ペルセ…元来の死者をさばくわけではありませんよ…それに人の死はタナトスのりょうぶんでもあるのですから、うきうきしてはなりません。むしろあなたは冥界からエロスを呼び出すにんむがおありでしょうが…)
(はーい母様…)
初代様って怖い人だったのでしょうか。
黒薔薇騎士団の長の上に、人も恐れる神様だったようですけどね、ペルセさん。
(ムー大陸とアトランティス大陸…そうですね、魔大陸とリュネ大陸をまとめて一瞬に沈めるようなおばちゃんです)
(マリアヴェッラ…なにを余計なことを申しておるのですか…)
(おばちゃんには間違いないでしょ…)
で、意識を戻されたパイローテに、聖父様から告げられる申告。
(痴女種転換が完璧には上手く行っていないのです。厳密に言うと、チャスカさんの身体…淫化皇帝とマリアヴェッラ陛下の子供で純正痴女種たるチャスカさんですから、あなたがたリュネ人の血液や諸々には相性があるようですね…パイローテさん、ここで死ぬのはもちろん、お嫌ですよね?)
ええええっ困りますっと心話で叫ぶ、パイローテ。
そりゃまぁ、そうですよね。
(聖院初代金衣テルナリーゼと申します、パイローテとやら)
(痴女皇国の元になった聖院を作ったおばちゃんです…一応はえらいひとで、ペルセポネーゼちゃんのお母さんですよ…)
(おばちゃんはよけいですわっ。で、パイローテとか申す者。あなたには三つの道を示しましょう。一つは、あなたはこのまま死にます。それは嫌だと言う前に、残り二つの条件をお聞きなさい)
ええ、有無を言わせぬ圧力を誰もが感じました。
青い髪の毛になったばかりか、全裸に近い状態のマリアヴェッラ様…いえ、神々を産んだナンム様という方の状態だそうです。
その強大な力、パイローテでもはっきりと理解できるでしょう。
(次には、ここなエイモン…ですか、エイモンの身体にどうきょするのですわ。わたくしとマリアヴェッラのかんけいをお考えくださいな)
(えええええ、僕はそんなの…)
(しっ…エイモン、ナンム様はお前が嫌だと言ってもそういう事が出来るお方のようなのだ…お前を苗床に投げ込んだ魔王様をはるかに上回る暴虐を好まれると聞く…ここは黙って従っておくのだ…)
(アスタロッテとやらが、わたくしを褒めておるようでその実、とんでもない評価を出しておる気もしますわね)
(貶されてるのに気づきなさいよおばちゃんっ)
(時として暴君べらこちゃんを名乗るマリアヴェッラにいわれとうありませんっ)
まぁともかく、エイモンにパイローテを間借りさせるというとんでもない技の提案ですが、案の定魔族なんぞにと贅沢を申しよるパイローテ。
(で、みっつめの提案。ここなペルセポネは元々はギリシャなる国の神の一つ。そして、ペルセポネの同僚で、わたくしどもがその復活を切望する神がおりました。エロス、おいでなさい)
(は。アフロディーテの息子にして愛を司るエロスと申します。そうですね、そこのエイモンってのにπέοςと羽根を生やしたら僕に実体があった時の姿に近うなりますね)
どええええ。
(ぼ、ボクっ娘なんですか…)
(あのーマリアヴェッラ陛下、僕は男ですよ…そしてそこのエイモンとやら、そなたは女性であろう?)
(えーとその、少なくともチンポとか言うのは今はありませんね。昔はあったんですけど…)
で、エイモンの出自はともかく、エロスという方。
(うーん、パイローテさんって方にだけどね、僕の管轄してた世界の方じゃないからあれこれと昔の事は言わないけど、もう少し他人を大切にしたりする事を覚えた方が、この先の痴女皇国での暮らしにはいいと思うんだよね。で、あなたがこのままだと死んじゃうらしいんだけど、僕ならあなたの身体を治せるよ)
ほう。
(ただ…僕もさ、ペルセや母から頼まれてるんだけど、痴女皇国の手伝いをして欲しいらしいんだ。で、僕に頼まれたお手伝い、ある程度の目処がつくまで君の身体を借りたい。そして、君のカイゼンが認められたなら、僕からあなた独自の身体をもらえるようにお願いしてあげるよ。どうだい、僕の提案に乗ってみるかい?)
ええ、別にお前の身体でのうてもええんやでと言わんばかりのその、お声。
つまり…パイローテのやつ、恐らく数年は、エロスなる神様に身体を提供する代わりに、一種の牢屋入り状態となるのでしょう。
(別にあなた専用の身体を渡してもいいそうだけど、その場合は痴女皇国の駆け出し女官として、他の一般採用の女性と一緒に仕事を覚えてもらう必要があるようだね)
(パイローテさん…その痴女皇国の皇帝として申し上げておきますよ…女官となった暁には売春が必須です。しかも、お相手を満足させたか、また呼ばれるのかなど、実際のお相手の内容を全てあたしの部下が把握して分析し、出世の検討材料にします。つまり…手抜きはもちろん、男性をだましたり貢がせることはできないのです。もちろん、そうしたお仕事の放棄に対しては厳しい処罰が待っていますよ?)
ええ、マリアヴェッラ様の厳しい宣告。
(エロス、あなたはベルナルディーゼ様に代わって厚労局に入るか、直接に文教局の長となるかどちらかで話が進んでおりましたね)
(そうだよペルセ。僕にはどっちでもいいんだけど、人の愛を育むことを教えるなら、女官を教えるよりも子供を教える方がいいのかな…)
ほうほう。
つまりは、マリアヴェッラ様が今、皇帝の職務と兼任している、まなびやの元締めの地位につくか、はたまた、本宮のあの巨大な女子寮に住む売春研修の女たちを仕切るのか。
どちらにも即、就任できるような能力をお持ちの方であらせられると。
なるほど…いわば、単に牢屋にぶち込まれるだけではなく、エイモンか、このエロス様の元で人の道の勉強をやり直せと言われたようなものですね。
ええ、これならば下手にパイローテを冥界だの地獄に落とすよりは、はるかに未来と人生を約束したような処置となるでしょう。
我慢が出来れば、ですが。
(お返事が出来ないようなら、とりあえずは人の命を優先するよ。僕はタナトスと違って人を死に導く神様じゃないからね)
と、無理からにパイローテが乗っ取られる気配。
そう…パイローテの意志よりも、彼女の人命優先。
とりあえずは命を救ってあげます、ということでしょう。
ああ、なんて痛快な筋書き。
ええ、この方々は何一つ、嘘はついてませんね。
リュネ人の血が欲しいのも本当なら、手術とやらに失敗しかけたのも事実。
そして、とりあえずはチャスカだけでも翼持ちにしてあげる必要があったのも事実でしょう。
そして、パイローテにしてみれば、目の上のコブのごときうっとおしい上官たる私の管轄を完全に離れることになるのでしょう。
加えて、優秀さがエロス様に認めて頂ければ、それなりの出世…それも、通常の女官養成の過程をいくつも飛ばしていきなり要職を任されることすら、夢ではないでしょう。
(ああ、これも事故から来た奇貨。ニンゲンバンジサイオウガウマとお聞きしましたが、パイローテには数星期のシンボウで、意外なる出世の道が示されたように私には思えますが…アスタロッテ、そしてエイモンはどう感じましたか)
(イリヤに同じ。本宮で女官か、はたまた子供を育てるところの巨大さと扱う人々の数を思い出すだに、大出世の道が開けたと言うべきだろうな)
(そこ、何人いてるんですか)
この、ぼそっと思いつきで呟いたがごとき、エイモンの質問に対して返された答えが驚愕でした。
(聖院学院本校福祉部だけで常時二千人から四千人、教育部入れたら五千人はいますね、生徒)
(そして女官寮は現在、多少の変動はあるが常時5千人は入っています。更には1万人を越す罪人が、罪人寮に起居して働いておりますよ…)
この、マリアヴェッラ様とペルセさんの言葉に驚くエイモン。
(あのさぁ、リュネ王都でも二千人はいなかったんじゃない?)
(恐らく、エイモンも一度は本宮見学に行かされますよ。その時に存分に驚いてください…)と、私は申しておきましょう。
(そして、人の数だけではないのです…確かに痴女宮は大きいのですが、むやみやたらに大きい訳ではないのです…人が効率よく詰め込間れて暮らすその仕掛けにこそ価値があると私は思っております…パイローテ、痴女宮本宮と女官寮、罪人寮と聖院学院本校はどれも同じ大きさの石の城で、その大きさはワイナピチュの岩山の先端を四つ並べたに等しいのです…そこに、クスコの街の人々と同数以上が起居しておるのです…)
そして、おいおいと泣いておるらしいパイローテですが、もはやその身体は他人のもの。
で、他人のものと言えば、チャスカ。
(チャスカ…ここでその新しい身体の変化を試すのも良いのですが、時をいじっておるとは申せど、あなたや私の戻りをマチュピチュで待っている乙女たちがおります。ここは、我らがマチュピチュに戻った際に、翼が出るかを試してみるべきでしょう…)
如何なる経緯で、魔族とリュネ人族の混血児が産まれてしまったのやら。
ですが、これまた例の淫化人に翼をという話が進む助けになるやも知れません。
何故ならば、魔族とリュネ人の間に産まれた子は通常、魔族の特徴の方が強く出るとは判明しております。
しかるに眼前の魔界剣士だか魔剣士だかの人物。
着ているものが魔族由来の衣装でなかったら。見た目は人の子にしか見えませんよ。
「ええと、当代の剣聖様…ですね。魔剣士エイモンと申します。剣聖様のお生まれになる遥か前の星期の者ですので、直接には剣を交えた事はございませんかと…」
でまぁ、気になるのはその出自。
しかし、今は朝の儀式を早々に始めたいところです。
とりあえず、この人は魔族における剣聖の立ち位置である魔剣士だという事にしておきましょう。
それに、魔剣を提げておりますから、魔剣が言うことを聞く…魔剣に認められた人物なのでしょう。
で、エイモンとやら。
なんであなたが私の副官役に。
(人族の特徴も持っている上に、恐らくだが聖剣も扱えるはずだ。お前に何かあった際の助けともなるだろう、とな…)
ふむふむ。
ちなみに翼、どうなんでしょ。
試しに翼を出してもらうと、灰色ですがリュネ人族の羽毛ふさふさの翼でした。
では、ますますもって純粋な魔族ではなさげですねぇ。
「で、実はこのエイモンに来て貰った理由なのだがな、ここな黒薔薇騎士団長ペルセポネーゼ様からのお話がある」
と、鹿爪らしくかしこまった顔で告げるアスタロッテ。
「は。急な話で申し訳ないのですが、痴女皇国本国…すなわち、痴女島内で魔毒苔の発生が確認されたのです」
「その先はあたしから申します」
と、いきなり現れるマリアヴェッラ様。
「この魔毒苔自体は消毒除去されています。しかし、魔毒汚染に抵抗のない罪人や聖院学院児童への影響を鑑みて、早期に血液抗体…人の血から作り出す薬を製造することが求められたのです」
むう、なんと急な話。
よもや、昨日お越しの本宮の方々に胞子とやらがくっついて行ってしまったのでしょうか。
しかし、それだとサクサイワマン神殿の検疫施設やら何やらの見直しも必要ではないかと…。
(これこれイリヤさん、実はちょこちょこ起きてるのですよ、持ち込み…ただ、これは本宮などから直接転送した人がそのまま戻る場合に起きることが予想されたため、現在では魔毒苔の発する放射線を聖環で検出できるように改良されています。ですから、実は今、大騒ぎする事でもないのです…本当なら、ね)
ああ、わかりました。
つまりこの話、パイローテを痴女宮に派遣するための前振りです。
全くの嘘ではないのでしょうが、本当なら今すぐ言う話でもないのでしょう。
そして、マリアヴェッラ様の驚愕のお話。
「で、魔毒に対する毒耐性をある程度保有した人を痴女宮に派遣して欲しいのですが、血液製剤を製造するためには長期にわたって痴女宮、または茸島に滞在して頂く必要が生じます。そして…痴女島では魔素が得られないので、一時的に痴女種へ種族転換することを合意して頂きたいのです」
「で、私から付け加えましょう。この協力者は数年に亘って痴女皇国本国に滞在する事になりますから、いっそ淫化を代表する大使として痴女宮本宮に赴任頂くのが良いのではないかと、私は進言します。幸か不幸か、淫化では独自の太陽神信仰が存在しますから、淫化の拠点となる太陽神殿を痴女宮そばの各国大使館区域に建設して駐在員を常駐させることで、痴女皇国本国との連絡も密に取れる事になるかと」
と、すらすらお話になるペルセさん。
ええ、ここまで話されたら、よほどのおにぶでもない限りは理解可能でしょう。
要は、常駐する使者をリュネ人または魔族から出してくれということです。
そして、血を使って薬を作るための血抜き要員だけでなく、痴女皇国本国と淫化の連絡役も頼む。
つまり、それなりの人材をよこしてくれ、となるでしょう。普通なら。
「イリヤ様、元来なれば朝の勤行をサクサイワマンで行うところですが、このマリアヴェッラ様の緊急のお話を受けて、淫化では人を送り出そうと思います。しかしながら、痴女皇国本国の求めではリュネ人または魔族の出自であることが求められるとか…そうなりますと、淫化帝国だけの人事では決めかねる話です。出来ればイリヤ様、そしてアスタロッテ様にお決め頂きたい話ではございます」
と、これまた緊急で呼ばれて来たらしい、淫化皇帝略装のチャスカまでもが。
「でな、イリヤ…お前の配下で出世を望む者がいないか、この場でリュネ出身の…できれば上級戦士に尋ねてくれぬか。痴女皇国本国に回す者であればそれなりの教養や知能も必要だろうし」
アスタロッテからもこう言われますが、その真意はもはや、当事者たるパイローテ以外の皆には伝わるところ。
で、私はこう申します。
「ふむ…と申しましても、この淫化に来ておるリュネ人族で思い当たる者は片手の指未満。ただ、人を向かわせるだけならまだしも、痴女島に常駐するとあっては少しく考えどころではありますね。パイローテ、あなたなら誰を考えますか。むろん…あなた自身が手を挙げても構いませんよ」
「かしこまりました…イリヤ様、本宮のお呼びであれば相応の人材を振り向ける話となりましょう。然るに熟考の余地もなく、喫緊であれば取り急ぎ、このパイローテが赴いて応急のお役目だけでもと」
と、うやうやしく私の前にかしこまって意見を奏上しよるパイローテ。
むろん、この女、そんな殊勝な心掛けでこの言葉を告げてませんよ。
(ぬうう…これはもしかしてイリヤの支配を免れる千載一遇の好機。だが、物欲し気にしてはならぬ…)
いやその、ハイハイハイって全力で手を上げていいのよ。
思いっきり笑顔で送り出して上げますよ、私。
「よろしい。ではパイローテ、緊急に痴女宮に向かってください。あなたの私物などは本日中に痴女宮に届くよう手配いたします」
「御意」
で、頭を下げるパイローテの顔が一瞬だけ、ほんの一瞬だけ邪悪な笑みに変わったの、私以外にも察知した方がおられたようです。
(なるほど…地位ある立場で淫化を離れれば、自分にも目があると思い込みましたか…)
(ふ。愚かな…生き地獄はこれからですよ…)
(じゃエマちゃん、ちょっと厄介な手術で申し訳ないけど。よろしくお願いしますよ)
(へいへい。確かにこのパイローテゆう人、獅子身中の虫っちゅうやつですわなぁ)
で、黄色い帽子を被って土工人夫の服を着た姿のエマニエル建設部長がおいでになりました。
「では、これからパイローテさんの痴女種転換作業を始めます。痴女種化身体の参考にしますので、チャスカさんもこちらへお願いしますわ」
ええっ。
いきなり、場所が変わりました。
私・アスタロッテ・エイモン、そしてチャスカと他ならぬパイローテも大いに驚きます。
(ここ…茸島のファインテックの生化学検査区域ですよ。手術設備があるからには手術室なんですけど、検体摘出などを主に行う場所です)
ええ、マリアヴェッラ様がここがどこかをご存知の様子です。
で、手術台なる寝台がもう一つ並べられた上にチャスカが横たわるように指示されます、
元来、この部屋に存在した大づくりな寝台には、パイローテが。
そして、緑色の帽子に口布、同じく緑色一色の服と手袋をつけた小柄な姿の方がお越しになります。
「聖母教聖父クリス・ワーズワース…あたしの姉たる聖女マリアリーゼの実父です。では…おじさま、初代様、お願いします」
ほう。そのお姿で顔立ちはよくわかりませんが、目の色は青ですね。
そして、マリアヴェッラ様とペルセさんも、同様の装いに身なりを変えておしまいに。
(これは手術着と言って、元来はこの部屋で医術を施す際に着る服なのです…)
(でマリアヴェッラ、とりあえずはこの子たちを生かしたままにすればよいのですね。ペルセポネ、間違っても二人を冥界送りにしてはなりませんよ…)
(ええナンム母様。そして、エロスも待機中です…)
エロス、とはどなたなのでしょうか。
まぁともかく…二人の顔の上にマリアヴェッラ様が順番に手をかざすと、寝ている二人の意識は失われたようです。
で、ここからが驚愕の光景でした。
なんと、その聖父様と呼ばれた方がのこぎりか、はたまた太い刀めいたものを寝台に装着して何かを操作すると、チャスカとパイローテの首が切れてしまったではありませんか!
(声を出せないようにしていますからね…悲鳴を上げるのは予想しておりました)
(ほほほほほ、痴女種化されていればこれくらいで死ぬことはありませんわよっ)
(まぁ、良い眺めではありませんよね。それっ)
なぜか、床に落ちず血も噴き出ない状態の首。
その首と胴体の組み合わせ、なんとチャスカとパイローテの間で入れ替わってしまいます。
そして、首はそれぞれの入れ替わった胴体の元に。
しかし、首の太さとかはかなり違いますけど。
(まぁ、これからが本番っちゅう訳で)
前に進み出るエマニエル部長。
で、今度は部長の目から出る青い光線が二人に降り注ぎます。
一体全体、何をなさっておいでなのか見当もつきません。
ですが、パイローテのもののはずの身体、チャスカの元来の身体に近づくように変わっていくのです。
(よっし、チャスカさんについては身体と人種種別変更終了。痴女種要素ありのリュネ族状態に変わりましたで)
どうやら…チャスカの首から下をパイローテの身体に交換しただけではなく、チャスカをリュネ族にしておしまいになったようです…。
(しかも、首から上はチャスカさんですから、淫化皇帝の血も引いていると周囲は認識するでしょう。で…問題はパイローテさんですよ、エマちゃん)
(とりあえず仮処置を行って意識を戻しますわ)
で、パイローテの方も青い光で撫でられると、これまた、元々はチャスカの身体であったのが、パイローテの身体に変わって行きます。
なんという超絶の技。
(で、今から申し上げる事にそんなんウソやろとか野暮、言わんといて下さいよ…)
(そうそう、今からの方が本番なのですよ、本番っ)
(ペルセ…元来の死者をさばくわけではありませんよ…それに人の死はタナトスのりょうぶんでもあるのですから、うきうきしてはなりません。むしろあなたは冥界からエロスを呼び出すにんむがおありでしょうが…)
(はーい母様…)
初代様って怖い人だったのでしょうか。
黒薔薇騎士団の長の上に、人も恐れる神様だったようですけどね、ペルセさん。
(ムー大陸とアトランティス大陸…そうですね、魔大陸とリュネ大陸をまとめて一瞬に沈めるようなおばちゃんです)
(マリアヴェッラ…なにを余計なことを申しておるのですか…)
(おばちゃんには間違いないでしょ…)
で、意識を戻されたパイローテに、聖父様から告げられる申告。
(痴女種転換が完璧には上手く行っていないのです。厳密に言うと、チャスカさんの身体…淫化皇帝とマリアヴェッラ陛下の子供で純正痴女種たるチャスカさんですから、あなたがたリュネ人の血液や諸々には相性があるようですね…パイローテさん、ここで死ぬのはもちろん、お嫌ですよね?)
ええええっ困りますっと心話で叫ぶ、パイローテ。
そりゃまぁ、そうですよね。
(聖院初代金衣テルナリーゼと申します、パイローテとやら)
(痴女皇国の元になった聖院を作ったおばちゃんです…一応はえらいひとで、ペルセポネーゼちゃんのお母さんですよ…)
(おばちゃんはよけいですわっ。で、パイローテとか申す者。あなたには三つの道を示しましょう。一つは、あなたはこのまま死にます。それは嫌だと言う前に、残り二つの条件をお聞きなさい)
ええ、有無を言わせぬ圧力を誰もが感じました。
青い髪の毛になったばかりか、全裸に近い状態のマリアヴェッラ様…いえ、神々を産んだナンム様という方の状態だそうです。
その強大な力、パイローテでもはっきりと理解できるでしょう。
(次には、ここなエイモン…ですか、エイモンの身体にどうきょするのですわ。わたくしとマリアヴェッラのかんけいをお考えくださいな)
(えええええ、僕はそんなの…)
(しっ…エイモン、ナンム様はお前が嫌だと言ってもそういう事が出来るお方のようなのだ…お前を苗床に投げ込んだ魔王様をはるかに上回る暴虐を好まれると聞く…ここは黙って従っておくのだ…)
(アスタロッテとやらが、わたくしを褒めておるようでその実、とんでもない評価を出しておる気もしますわね)
(貶されてるのに気づきなさいよおばちゃんっ)
(時として暴君べらこちゃんを名乗るマリアヴェッラにいわれとうありませんっ)
まぁともかく、エイモンにパイローテを間借りさせるというとんでもない技の提案ですが、案の定魔族なんぞにと贅沢を申しよるパイローテ。
(で、みっつめの提案。ここなペルセポネは元々はギリシャなる国の神の一つ。そして、ペルセポネの同僚で、わたくしどもがその復活を切望する神がおりました。エロス、おいでなさい)
(は。アフロディーテの息子にして愛を司るエロスと申します。そうですね、そこのエイモンってのにπέοςと羽根を生やしたら僕に実体があった時の姿に近うなりますね)
どええええ。
(ぼ、ボクっ娘なんですか…)
(あのーマリアヴェッラ陛下、僕は男ですよ…そしてそこのエイモンとやら、そなたは女性であろう?)
(えーとその、少なくともチンポとか言うのは今はありませんね。昔はあったんですけど…)
で、エイモンの出自はともかく、エロスという方。
(うーん、パイローテさんって方にだけどね、僕の管轄してた世界の方じゃないからあれこれと昔の事は言わないけど、もう少し他人を大切にしたりする事を覚えた方が、この先の痴女皇国での暮らしにはいいと思うんだよね。で、あなたがこのままだと死んじゃうらしいんだけど、僕ならあなたの身体を治せるよ)
ほう。
(ただ…僕もさ、ペルセや母から頼まれてるんだけど、痴女皇国の手伝いをして欲しいらしいんだ。で、僕に頼まれたお手伝い、ある程度の目処がつくまで君の身体を借りたい。そして、君のカイゼンが認められたなら、僕からあなた独自の身体をもらえるようにお願いしてあげるよ。どうだい、僕の提案に乗ってみるかい?)
ええ、別にお前の身体でのうてもええんやでと言わんばかりのその、お声。
つまり…パイローテのやつ、恐らく数年は、エロスなる神様に身体を提供する代わりに、一種の牢屋入り状態となるのでしょう。
(別にあなた専用の身体を渡してもいいそうだけど、その場合は痴女皇国の駆け出し女官として、他の一般採用の女性と一緒に仕事を覚えてもらう必要があるようだね)
(パイローテさん…その痴女皇国の皇帝として申し上げておきますよ…女官となった暁には売春が必須です。しかも、お相手を満足させたか、また呼ばれるのかなど、実際のお相手の内容を全てあたしの部下が把握して分析し、出世の検討材料にします。つまり…手抜きはもちろん、男性をだましたり貢がせることはできないのです。もちろん、そうしたお仕事の放棄に対しては厳しい処罰が待っていますよ?)
ええ、マリアヴェッラ様の厳しい宣告。
(エロス、あなたはベルナルディーゼ様に代わって厚労局に入るか、直接に文教局の長となるかどちらかで話が進んでおりましたね)
(そうだよペルセ。僕にはどっちでもいいんだけど、人の愛を育むことを教えるなら、女官を教えるよりも子供を教える方がいいのかな…)
ほうほう。
つまりは、マリアヴェッラ様が今、皇帝の職務と兼任している、まなびやの元締めの地位につくか、はたまた、本宮のあの巨大な女子寮に住む売春研修の女たちを仕切るのか。
どちらにも即、就任できるような能力をお持ちの方であらせられると。
なるほど…いわば、単に牢屋にぶち込まれるだけではなく、エイモンか、このエロス様の元で人の道の勉強をやり直せと言われたようなものですね。
ええ、これならば下手にパイローテを冥界だの地獄に落とすよりは、はるかに未来と人生を約束したような処置となるでしょう。
我慢が出来れば、ですが。
(お返事が出来ないようなら、とりあえずは人の命を優先するよ。僕はタナトスと違って人を死に導く神様じゃないからね)
と、無理からにパイローテが乗っ取られる気配。
そう…パイローテの意志よりも、彼女の人命優先。
とりあえずは命を救ってあげます、ということでしょう。
ああ、なんて痛快な筋書き。
ええ、この方々は何一つ、嘘はついてませんね。
リュネ人の血が欲しいのも本当なら、手術とやらに失敗しかけたのも事実。
そして、とりあえずはチャスカだけでも翼持ちにしてあげる必要があったのも事実でしょう。
そして、パイローテにしてみれば、目の上のコブのごときうっとおしい上官たる私の管轄を完全に離れることになるのでしょう。
加えて、優秀さがエロス様に認めて頂ければ、それなりの出世…それも、通常の女官養成の過程をいくつも飛ばしていきなり要職を任されることすら、夢ではないでしょう。
(ああ、これも事故から来た奇貨。ニンゲンバンジサイオウガウマとお聞きしましたが、パイローテには数星期のシンボウで、意外なる出世の道が示されたように私には思えますが…アスタロッテ、そしてエイモンはどう感じましたか)
(イリヤに同じ。本宮で女官か、はたまた子供を育てるところの巨大さと扱う人々の数を思い出すだに、大出世の道が開けたと言うべきだろうな)
(そこ、何人いてるんですか)
この、ぼそっと思いつきで呟いたがごとき、エイモンの質問に対して返された答えが驚愕でした。
(聖院学院本校福祉部だけで常時二千人から四千人、教育部入れたら五千人はいますね、生徒)
(そして女官寮は現在、多少の変動はあるが常時5千人は入っています。更には1万人を越す罪人が、罪人寮に起居して働いておりますよ…)
この、マリアヴェッラ様とペルセさんの言葉に驚くエイモン。
(あのさぁ、リュネ王都でも二千人はいなかったんじゃない?)
(恐らく、エイモンも一度は本宮見学に行かされますよ。その時に存分に驚いてください…)と、私は申しておきましょう。
(そして、人の数だけではないのです…確かに痴女宮は大きいのですが、むやみやたらに大きい訳ではないのです…人が効率よく詰め込間れて暮らすその仕掛けにこそ価値があると私は思っております…パイローテ、痴女宮本宮と女官寮、罪人寮と聖院学院本校はどれも同じ大きさの石の城で、その大きさはワイナピチュの岩山の先端を四つ並べたに等しいのです…そこに、クスコの街の人々と同数以上が起居しておるのです…)
そして、おいおいと泣いておるらしいパイローテですが、もはやその身体は他人のもの。
で、他人のものと言えば、チャスカ。
(チャスカ…ここでその新しい身体の変化を試すのも良いのですが、時をいじっておるとは申せど、あなたや私の戻りをマチュピチュで待っている乙女たちがおります。ここは、我らがマチュピチュに戻った際に、翼が出るかを試してみるべきでしょう…)
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説




サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる