闇堕ち女帝マリア・痴女皇帝建国譚

すずめのおやど

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女修道士渚に立つ・9.5

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「おおおおおおオリューレさんっ3速と2速だけじゃだめです1速まで使って! 逆です逆!シフトレバーを下に引いて引いて引いて!」

「ひいい陛下ぁあああかえって加速しますぅううう」

--------

で、奇怪な岩山が多数そびえ立つ、メテオラの麓に広がるカランバカの町が見渡せる辺りに建っているのがカランバカ修道教会ですが、我々はその教会の前の駐車場兼・広場におります。

「いいですか…明日朝のブダペストでの本試験までに、メテオラからカランバカまでの道を安全に往復できること。そもそも、これができないと本試験には合格など夢のまた夢なのですよ…」

ええ、鬼の形相のベラ子陛下が両手を腰に当て、仁王立ちで申し付けて来られます。

背後には、辛うじて無傷でカランバカ修道院まで降りて来たダンケ号が…というよりも途中でたまりかねたカルノがちょっと僕にも運転をと言い出し始めましたところ、おっかなびっくりではありますが、ベラ子陛下の指示通りに山道を降りて来る椿事すら起きまして。

「これが普通の王政や帝制の国家であれば、馬車の御者の仕事を王帝に覚えさせるようなものであり、出来なくて当たり前でしょう。ですが…残念なことに痴女皇国では上皇も皇帝も日本皇室や英国王室に範を取って、自らが運転出来るのを是としていますっ。ですので、仮にも南洋行政局の局長様があたしの乱暴ルギーニよりもはるかに気を遣わないはずの…なにせ連邦世界では労働者輸送や貨物や資材を運搬するための平民用箱車なのです…こんな簡単なもんを運転できないようでは幹部、そして皇族外戚がいせきとしての沽券こけんに関わるのですぅっ」

ええ、陛下は大変にお怒りですが、なんで。

(イタリアでは運転がへったくそな若者を煽る罵倒に「家に帰ってパスタでも茹でてな」というのがあるのです。つまり、運転が下手な人物…特に若い男性に人権はないのです…ましてや、オリューレさんはカルノ君を連れて車で南洋島内の視察とか考えておられるようですから、なおさら運転が出来る必要があるはずなのです…)

うう、痛いところを突かれます。

「このカランバカとメテオラの間の道はほぼ、痴女島の酷道1号線または2号線で堤防から平地まで降りる距離の倍以上です。もし、今回の運転検定が不合格の場合は痴女宮呼び戻しの上で酷道1号線智秋記念牧場往復または酷道2号線聖院空港往復で練習、運転検定に合格するまでを申し渡します…」

(要はカルノ君の前でええ格好したいんでしょうがぁっ。ならばそれに相応しい汗を流すのですぅっ)

ぐぬぬぬぬぬ。

しかし、この場合のベラ子陛下の裁定には文句のつけようがありません。

騎士報酬等級昇格認定の件でもそうですが。要は試験に合格しないとダメということです。

受かるか諦めるか以外の選択肢はないのです。

そして、私が南洋行政局長に任じられている限りは絶対に合格させるおつもりでしょう。

(合格するまでお仕置き放題。よく言い返すオリューレさんを従順な牝豚に調教するまたとない機会ではないですか…シェヘラザードさんも言ったでしょ? 状況とは最大限に利用するものだって…)

鬼ですか、陛下。

(鬼でもワニでもヘビでもなんでもなりますから、本宮またはブダペストでの運転検定には絶対に合格するように…)

で、カランバカからメテオラまでの道の運転、どの程度の難しさなのでしょうか。

(少なくとも酷道1号線や2号線よりは絶対にまともです。阪奈道路と箕面の裏と大垂水峠をミキサーに放り込んでかき混ぜた程度、天の声に言わせれば表六甲を上がって行って六甲の夜景を眺めるよりも簡単だそうですし、あたしも全く同意見です。少なくとも連邦世界で初心者マークが取れた人間で、ペーパードライバーではないならば、この区間を走る車両が他にいない状態で単独事故を起こすようであれば即座に下手くそと罵倒されるべきでしょう)

はぁ。

つまり、この道を走らせてベラ子陛下のお墨付きを得られない場合は、より困難な酷道1号線または2号線の運転が待ち受けているのですか。

(オリューレさんが受かりやすいようにって、わざわざ平地の多いブダペストを指定したんですよ…?本宮女官は智秋記念牧場への生徒送迎業務を想定していますから、監督官同乗の上で港町警備本部から酷道1号線を智秋記念牧場まで往復走行して採点になるんです。つまり、ブダペストでやってる検定走行路よりも格段に難しい路上検定区間が待ち受けているのです…それがわかっているからこそ、手加減のために平地主体で人工的な坂道発進区間を設けただけのブダペストを指定したあたしの温情に応えてくださいよ…)

ええ、お説教の内容以前に、陛下がここまで早口でまくし立てるという状態はかなり怒っておいで。

(カランバカ視察後に皆をメテオラに送りますけどね、その後はオリューレさんとあたしで特訓ですからね…ミス1回ごとにラスプーチンちん5分の刑で)

ひぎぃいいいいいい。

ええ、精神年齢も年齢ですし、ラスプーチンちんを突っ込まれるのは辛いものがあるのです。

それに、カルノに運転を体験させた後に、初めてのはずのメテオラからカランバカ修道院までの道を普通に運転したのはエステラーネ院長。

言うまでもなく、私よりステータスランクが下です。

(今や千万卒のオリューレさんが、こないだやっと十万卒の昇格詮議を通過したエステラーネさんに出来るはずの事が出来ない。この屈辱を晴らすためには特訓あるのみ。違いますかっ)

(メル子にかけさせたような黒眼鏡まがいの矯正器具は存在しないのでしょうか)

(あるにはあります。強制的に運転がうまくなるように鍛えるための最終手段が)

悪い予感がします。

(待て。ベラ子、お前…ジャンさんの知識共有とか恐ろしい事、考えてねぇだろうな…オリューレさん、ベラ子はあんたに連邦世界で車に乗せたら一番速い男の諸々を移植しようとか考えてたんだが、そこまでする必要ねぇだろ…)

(えええええ、ねーさん、それは干渉というものでしょう…)

(というかF1マシンとダンケ号じゃ動かし方が全然違うだろうがよ…あれはCD値…空力抵抗の値が実のところ異様に悪いようにわざと設計してるから、常時アクセル全開じゃないとエアブレーキがかかったようになってガクっと速度が落ちるんだよ…もうまるっきり公道仕様の市販車とは設計思想からして違う代物だぞ…そんなもんで世界最速を競ってる人間の技能知識を移植してみろよ、かえって惨劇が起きるだろうが…)

で、分体を出して来られたのか、我々の前に現れるマリア様。

とりあえず車酔いになった我々の中の面子に精気を渡して治療なさった後、このカランバカ修道院の司祭執務室をお借りして講義を頂くことになりました。

話は変わりますが、このお部屋も長椅子が幾つか置かれています。

更には、痴女宮仕様の石便器までしっかり設置してあって、メテオラ大修道院の院長室同様の用途で使われているようですね…。

「で、オリューレさん…この2枚の絵を見比べてみてくれ」

接客応接椅子に座られたマリア様が聖環から出されたのは、いわゆる萌え絵とか言われる分野の女性画。

「こっちは雅美さんのエロ同人誌…いわゆる薄い本というやつで、男性向けだ」

ふむふむ、モロにおめこやちんぽが描き込まれておりますが。

「修正前の原稿らしいんだけどな。実際にはこれに申し訳程度の黒線を描き入れたりして電子製本するか、印刷屋に渡して製本してもらうんだ。まぁそれはともかく、一応は立体的に描かれているだろ?」

はぁ。多少の誇張はありますが、現実の女のように見えるそれらしさは窺えます。

で、もう1枚の絵を見せられたのですが、こちらは女同士の絡み…ってちんぽ、生えてるじゃないですか。

「これはftnrとかふたなりとか言われているジャンルの絵だ。あたしら痴女種のように見えるが、日本を中心に割と古くからこの性別概念は存在したのはともかく…さっきの雅美さんの絵と比べて、何か感じねぇか」

などと申されるマリア様。

助平を極めたような場面の漫画とやらを前にしておりますが、その表情は真剣極まりないもの。

「うーん、何と言うのでしょうか、先程の絵に比べて、女性の女性らしい部分ですね、目や表情、そして髪の毛などはきちんと描き込まれておりますが、肝心の胸や尻の写実性再現性が低いと申しますか…」

「ああ、正解だ。これは雅美さんの後輩で、一時期手違いで千人卒化されてしまった人の作品でね、こういう“ふたなり漫画”ってジャンルの世界では有名なんだが…どちらかというと百合向け、つまり女性が女性に読ませる見せる方向性の作品に定評があるんだよ」

「いわゆる少女漫画とかレディコミっぽい絵柄ですね。男性が見てせんずりのおかずにするには少し違和感を感じると思いますが」と、ベラ子陛下も評価を下されます。

「でな、雅美さんも痴女種化してるけど、基本は女だろ。同じ女が描いてるのに、この差は何だと思う。それとヒントだ。雅美さんの後輩のペンネームが涼冬西瓜すずふゆすいかさんだっけ、この人は運転免許を持っていない」

ふむ…雅美さんは言うまでもなく、ダンケ号やもっと大きな車も動かせましたね。

「飛行機の操縦は厳しいとジーナ母様が判定を出さざるを得ませんでしたが、まぁ車については一般の女性運転者以上の技量はおありでしょう」

(飛ぶもんが苦手なだけよっ)

(苦手克服を新年の書き初め文字に指定しましょうか?)

何やら雅美さん…田中内務局長がお怒りのようですが。

(スケアクロウの操縦試験したけど、見事不合格を食らった黒歴史が…しかも、来年にはまた再挑戦とか言われて嫌な気分になってたのを思い出したのよっ!)

(頑張って下さいとしか申し上げられません…)

(そういうオリューレさんも明日は運転試験でしょ? マリアちゃんが言いたい事は何となくわかるんだけどさぁ。で、スイカちゃんはもともと女性向けのレズもの百合ものジャンルの人なのよ。オリューレさん向けに言うと、女性に読ませて評価をもらえる絵ばかり練習してたのね)

む…つまり、男性受けは考えていない人だと。

(そそ。で、あたしの描いたのも見たと思うけど、あたしの場合は3Dによるポーズ例作成ソフトの支援とか色々裏技も使ってっけどさ、基本的には実際の男女の絡みの動きで変化する身体の描写を重視しています。つまり、実際におめこした際のリアルさを追求してるのね)

なるほど…。

「で、話は少し変わるけどさ、アトスに行った時に道に迷いそうになったり、今どこにいるか分からなくなった感覚に囚われたの、この中にいるだろ」

マリア様が眺める先には、ベラ子陛下・エステラーネ院長・ジニア・マルハレータ・ウィレミーナ・カルノ・甚右衛門さん、そして私オリューレが。

「ベラ子とオリューレさんは物体透過視覚能力が高いから道に迷う事はなかったと思うけど、マルハレータちゃんとウィレミーナちゃんは少し迷ってただろ。それと、男だがカルノ君は初めての場所な上に地図とか見てないからやはり、土地勘めいたものが消失して困ったはずだ」

そう言えば、ベテハリもカルノも、ボロブドゥール寺院や王宮では迷った素振りを見せる事はありませんが、アニサはお付きの尼僧なり小僧がいないとあれ?どこだっけとやってる事はありますね。

(オリューレさんもあの寺院の中じゃ、たまにやらかしてたろ。それと、超がつくベテランだから目立たないけど、スイス研修時のシヨン城の中とか、本宮や女官寮じゃ迷った事あったろ?)

と、私の経験や記憶から事例を引っ張り出して来られるマリア様ですが。

(これはオリューレさんの昔の過失を探すんじゃなくてだな…そうだな、聖院学院や女官寮に罪人寮を含む痴女宮のあちこちに案内看板や表示を付けた時期があったろ。あたしが聖院金衣に就任してすぐの時)

ああ、ありましたね。

(あれはあたしの代になったら絶対にやろうと思ってた改革の一つでね。聖院に上がった新人の子たち、絶対迷ってただろ。あれの対策だよ)

ふむ…。

(で、ここで男性と女性の差が出るんだ。罪人寮にも同様に看板は付けたが、そもそも罪人は割と迷う事が少なかったろ?)

ええ、警備騎士を経験すると分かりますが、罪人は聖院内の構造把握、結構早い人物が多かったですね。

「これが女性と男性の注目視点差や空間認識能力の差だよ。例えば女があら探しをする際には、対象の老化…目元のシワとか筋肉のたるみだの、脂肪層の落ちやら髪の毛の乱れとかさ、要するに細かいところをチェックしていくだろ。だけど、男はプロポーションや胸やら尻のでかさとか形状にまず、目が行くよな」

ええ、確かに聖院でも痴女宮でも、女官慣れしていない罪人男性の視線…特に好色さが感じられるものについては、女とは見るところがかなり違うのを知って愕然としました。

そして、この男女の視線差は女官教育の一環として盛り込まれていて「自分が男から見られている際にはどこを見られているか」を講義補助として呼ばれた罪人の意識を実際に覗いて実習させるのですよ。

「で、さっきの漫画の話に戻るけど、雅美さんは男から見た女の姿ってのを可能な限り再現しようと意識してるわけだ。だけど、女性が女性向けに描いた絵の理想形を最優先して描くってのが身に染み付いてる西瓜さんは、女性らしさが出るポイントを強調して描くわけよ。だから、男から見るとあれ?となっちゃうんだ」

「つまり、オリューレさんはブレーキならブレーキ、シフトダウンならシフトダウンするタイミング、道を見て決めているのですが、その際に車が進行する先のことまで読まずに自分の見た今その一瞬の操作に思考が行ってしまうのです。それで、ギクシャクするのですよ」

な、なるほど…。

「ベラ子が言った件だけどさ、これは痴女宮の女官寮の構造にも影響が出てるんだ。女官寮の下層階の曲がり角、天井近くに鏡を置いてるところあるだろ」

ありますね。それも、廊下が分岐している場所には必ず。

「あれは百人卒までの連中の出会い頭の事故を防止するためだよ。上層階の千人卒以上なら先をある程度透過したり、進行する先の気配がわかるけど、人間同然の一人卒や、女官寮に慣れてない子だと割とぶつかったりぶつかりかける事は結構多いだろ?」

(でさぁ…あたしの昔の職場でも事務の子が物流センターの中をうろついた際に、迷ってヘルプの電話をかけてくる事は決して珍しくなかったわけよ…特に地下に入るとてきめんに迷うわね)

ありますね…特に、両替処時代の財務は地下通路を経由して出勤してましたし、今も出納や下足処関係者は地下通路を通りますから…。

「この方向感覚と認識能力の優劣を埋める方法だけどさ、決定打はやはり脳の中身に手を入れることだ。だけど、それをやると個性が埋没するっていう毎度毎度の障害が立ちはだかるわけよ。んじゃどうするか、だけど…」

で、ニヤリと笑うマリア様ですが。

「オリューレさん、とりあえず今晩の特訓と、明日の実技試験の時にはちんぽを出してくれ」

えええええ…何ででしょうか。私には露出趣味は…。

「多少はあるのはわかってる。それはいいとして、別に完全に出せって訳じゃなくて、ちんぽ装備状態に体を変化させてから運転して欲しいんだよ。理由は言うまでもなく、ちんぽを出した時点で痴女種身体だと男性の思考回路や神経・筋肉にホルモン系統が追加もしくは変化する。つまり、男に近い生理や思考になるんだ」

なるほど、男に近くなれば筋肉の瞬間出力や反射神経の速さが変わるのは習いましたね、そう言えば…。

「だから、合格を保証するわけじゃねぇけど、受かりやすくするための身体のズルは別にいいと思うんだよ。むしろ、管轄の住民の方々や子供たちの輸送に携わることもあるわけだから、安全行動のためにも取れるべき措置は必ず取って欲しいってのが本音だな。で…」

言うなり、マリア様の手が私にかざされますと、何か力が抜けたような感覚を味わいます。

「今、オリューレさんは外観年齢同等の通常人類女性の体力になる制限を受けた状態にした。でね、カルノ君は少年のままだな…ちょっとオリューレさんとさ、腕相撲っていうんだけど力比べをしてみてよ。こんな風に」

で、マリア様を相手に応接卓の上で腕を握り合い、カルノを相手に実演します。

この腕相撲、刑務騎士勤務の時に新規受け入れ罪人に対して必ず実演することなので、私は知っております。

そして、結果はある程度知っております。

「じゃ、カルノ君…オリューレさんの手を倒せるかどうかやってごらん。うまく行けばオリューレさんに男の子を作ってもらえるようにするよ」

えええええ。

ちょっと待ってくださいよ…。

「よし、どうせなら賭けよう。と言っても2回戦だから、2回やってオリューレさんとカルノ君のどちらが勝つか両方の勝負の結果を見事当てた者にはあたしから褒美を取らせる。1階級昇格だ。ただ…あたしとベラ子は賭けに張れないようにしよう」

「えええええ、ねーさんそれは不公平」

「ばっきゃろー。この中じゃお前とあたしはある程度結果が読める立場だろうが。ヒントを与えると公平な勝負にならんし、2回戦を戦うまではこの部屋の思考共有も遮断するからな」

まぁ、これは妥当な措置でしょう。ベラ子陛下が私が勝つとかカルノが勝つと予想して、それを匂わせる発言をするだけでも公平な賭けにはならないと思いますし。

ですが、この褒美には在室していた尼僧や騎士、そして女官経験者がただならぬ真剣な顔になります。

なにせ、ステータスランクを1つ上げて貰えるのですから。

千人卒の子であれば、万卒です。つまり、聖母教会であれば司祭以上の勤務資格を得ることになりますからね。

ただ、私がこれ以上上がると億卒かつ皇族処遇となり、南洋島を離れて本宮勤務ともなりかねません。

それは、ちょっとまずい話でしょうから、陛下に具申を試みます。

(陛下、褒美は私も頂けるので?)

(ああ、いいよ。と言ってもオリューレさんが欲しいことって昇格じゃねぇな…うん、その願いなら了解だ。やってみてくれ)

で、マリア様に何をお願いしようとしたのかは内緒で。

そして…皆が注目する中、私とカルノは右手を握り合いますが。

「え…」

「ちょちょちょちょちょっと待ってくださいよ…」

「カルノ君は明らかに男の子なのに…」

「これが男と女の筋肉の差なのでしょうか…」

ええ、皆が思わず、口々に漏らす感想。

そして、組み合った私自身も改めて結果に驚くのですが。

…そうです、私、負けました…。

「カルノ君とオリューレさんの思考をモニタさせてただろ? 瞬間的な筋肉の出力は男の身体の方が大きいんだよ。…ベラ子、一時期さ、連邦世界のスポーツ競技で心はオナゴってのを女性の競技に出して問題になった事があっただろ」

「ああ…ありましたね。結局は男性器を有する場合は男性として出場すべしとなったあれ」

「あれが正に、男女の身体能力差を悪用したズルなんだよ。瞬間的な筋肉出力が高い方が良い成績が出る陸上競技や水泳にさ、心は女でございますとか屁理屈言ってるヲカマまがいを出して金メダルを取らせるような…一種の不正がまかり通った時代があったんだ」

ふむふむ。確かに、今のカルノは少年状態でも髪の毛をもう少し伸ばせば女として主張できるかも知れませんし、そうなれば剣の模擬試合でも良い成績を収めかねませんね…相手が女官ではない場合に限りますが。

しかし、これで私の二勝はなくなりました…。

(これは内緒だ。オリューレさんが次に勝ったら、あんたの願いは褒美としてあたしが扱おう。だけど…これは承知しておいて欲しいんだけど、こればかりは絶対確実じゃねぇんだ…努力はしてあげるし、それなりに結果も出るとは思うけどな)

それでも構いません。

それに、思考読み取り制限がかかっているので内容はわかりませんが、どうやらカルノも願い事をベラ子陛下にしているようですし。

で、二戦目を改めて始める訳ですが、今度はカルノが偽女種状態にされます。

「音声での声援はナシだぞ…これは実験でもあるからな」

と、マリア様がお達しを出されたのでカルノ勝てとかいう声は出ません。

しかし、皆が固唾を飲んで見守っております。

で、私は成人女性状態で、体格はカルノより明らかに大柄。

対するカルノは14歳程度ですかね。

今度は…。

「はいっオリューレさんの勝ちー」

「えええええ、偽女種って完全な女性じゃないって聞いたんですけど…」

「確かにカルノも善戦してましたけど、これはオリューレさんの粘り勝ちめいた勝負の印象です…」

そう、持久戦めいた戦いに持ち込んだのです。

そして、顔を汗びっしょりにする私とカルノですが、成人の体力と持久力だけで勝てたのでしょうか。

「じゃ、種明かしをしよう。女性の筋肉は確かに瞬間出力は男に劣る。だけど、連続して同じことをするとか長時間一定の運動をするような場合は、女性が有利になることがあるんだ」

ふむふむ。

実は、これ…本宮勤務…特に本宮や女官寮の内部に大量の水を流していた時代を知っている女官だと、割と納得できる結果なんですよ。

そう、女官寮や本宮上部の金衣・銀衣居室やら貴賓室が存在した時代の室内清掃は女官の仕事でもありました。

女官寮には罪人をうかつに入れられませんし、意識して遮断しない限りは高温を発している上級女官のいる階にはもっと迂闊に入れられません。下手をすれば低温やけどとやらになってしまいます。

ですが、罪人は罪人寮を騎士監督のもとで自分達が掃除しますし、本宮1階などの公共の場では男女が組んで清掃を行います。

その際に、床をモップで拭くとか、壁や装飾を雑巾掛けしたりする際に、男だと何分かやって息が切れたに近い状態になったり、飽きたような感情を出し始めますし、女官であれば罪人の身体の異変に気を遣っていますから疲労も感じ取れます。

ところが、下級女官、それも罪人とそんなに力が変わらない一人卒状態でも、男の罪人よりも長く一定の労働量をこなすのです。

ですので、当時の罪人工場や厨房でも、何かを絞ったり研いだり洗ったりなどなど、男の仕事と女の仕事を身体の向き不向きで細かく分けて能率が出るようにしていたのですよね…。

「ま、女官としての経験が長いオリューレさんの知略もあったってことだよ。じゃあ、賭けの勝者はいないってことだけど、その代わりにだな…」

ここで、皆が文句を言わない理由。

(参加賞を用意した)

そして、これまたマリア様が聖院金衣だった時代から、この手の皆が参加する何かでは、それなりの褒美が出ることは割とよく知られた話だったりします。

そう、賭けの敗者にも何かが下賜されるように取り計らわれるのです。

(本当の博打やってる訳じゃないからな…)

で、今回の参加賞とは。

「で、今日のこのカランバカ修道院の食堂で、労務罪人に振る舞われる食事だな、それにデザートを一品加えるようにお願いした」

一瞬、えええええという声が一部の尼僧から出かかります。

ですが。

「静粛に。聖女たるマリアリーゼ陛下が何のお考えもなく、罪人に何かを与えるとは私には思えません。陛下」

「ありがとう。さて、このカランバカを任せているリンドリアーネさんから説明を頂こう」

(あ、この方、オリューレさんのかつての部下の方…)

(そうですよ。ベラ子陛下の部屋付き女官としての勤務も結構多かったはずです)

(…オリューレ室長が女官管理室を外れた時に私もあーだこうだあったのですよ…本当はどうせ配転ならもう少し実家に近い方を所望したのですが、とりあえずそっちはまだ完全に支配されていないし、実績を積んでからでも遅くはないと…ちなみに実家はニュルンベルクの北の方にございます)

(バイロイト音楽祭のバイロイトの北西方角にある地方貴族領の娘さんで、第一次強姦作戦で犯され出家を決意したと説明しろって姉が)

で、リンドリアーネですけど…ベラ子陛下の説明臭い科白の通り、ダリアが黒薔薇騎士団長の時代に、マリア様や雅美さんが思いついていた欧州上流階級への浸透作戦の犠牲者というか被害者だった子です。

Lindriahne. (Linne Bernstein) リンドリアーネ Ten Thousand Suction (Limited Hundred Thousand) 一万卒(限定十万卒) Slut Visual 痴女外観 Red Rossy Kinghts, Imperial of Temptress. 赤薔薇騎士団 Kalambaka-Trikala Local Administrating Church Priest. East Euro Branch. 痴女皇国東欧支部

そして、万卒でここに来ているという事は、元来はかなりの広域統治を任されているはずなのです。

人口たかだか二千名と聞く、このカランバカだけの所轄修道院で終わって良いはずではありません。

(で、オリューレさんは気づいてるはずだ。この修道院、街の規模にしちゃ、異様にでかいだろ)

(ですね…地上部こそさほど大きくありませんが、地下の罪人食堂やら浴場を含めれば、南洋慈母寺本院と比べても見劣りはせず。南洋王宮の半分くらいはあるのでは)

「で、このカランバカは言うまでもなく、元来の東方聖母教会としては人口に合わせて千人卒の司祭一人と輔祭、そして修練士やらでだいたい4~5名を配属すれば足りるはずだけどさ、なぜ万卒司祭を置いてるのか。そして、配置人員はメテオラからの通勤応援者を含めれば常時500名は来ているはずだよな」

と、マリア様は言われます。

「オリューレ室長…いえ局長、スカルノ陛下とこのカランバカを視察なさるとお聞きしましたが、マリア様並びにベラ子陛下がそう申し付けられた理由、そして、ただいまの賭けの褒美を罪人に対して振る舞う理由が、このカランバカ荘園と、そこで働く労働罪人を管理する仕掛けにあるかと存じます。…ええ、記憶を拝見致しましたが、南洋王国の王都たるジョクジャカルタの王宮周辺の少年少女の住み込み労働官舎街や、はたまた灸場のハバナ少年罪人街と似た事、このカランバカでも試行されているのです…」

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かるの「思いついた事があるんだけど、恐らくこれを言うとオリューネ、いえオリューレは怒ると思います」

べらこ「言ってみてください。皇帝権限で許可します」

かるの「恐れながらマリアヴェッラ陛下、僕が運転検定とやらを受けても良い気がいたします」

べらこ(その発想はありませんでした…うかつでした)

マリア(よく考えてみりゃ、痴女皇国世界だからあたしとか痴女皇国の幹部が騒ぎさえしなきゃ罪に問われないよな)

おりゅーれ(私の自尊心はどうなるのですか…一応はカルノの保護者役…)

べらこ(オリューレさんがカルノ君をあっちこっち連れて行きたいだけでしょうがぁっ)

おりゅーれ(南洋王国内の視察のためです!私に自転車を漕いでバタヴィアとかスラバヤまで行けと?)

べらこ(痴女種なら走った方がはるかに速いですよ。ちなみにジョクジャカルタからスラバヤまで270キロ、バタヴィア…ジャカルタまで500キロはあります…理恵パイセンに鉄道はよ敷いたってくださいって言っておきますから…)

おりゅーれ(茸島で言うと、ロビナビーチからデンパサールまで直線距離で70キロと教わりましたね…道は山を避けてぐねぐね曲がってますからもう少し長いとは聞いておりますが)

かるの「明日は僕も一緒に検定を受けようかと思ったんだけど…」

おりゅーれ「カルノ、明日はコンスタンチノープルでほもをみるのでしょう?」

マリア「オリューレさんの発言はとんでもないんだけど、予定としては合ってるんだよな」

かるの「ほもを見るより運転を覚える方が南洋王国のためになりそうな気がいたします…」

マリア「まぁ、ほもやオカマを見るよりは生産的な気もするが、実のところコンスタンチノープルはコンスタンチノープルで見ておいた方がいいよ。これは真剣に言っとく。本当なら、東方聖母教会の聖地遺跡として聖列されているギョベクリ・テペを見ておく方が更にいいんだけど…」

べらこ「ねーさん…あそこは初代様がさも、聖母降臨を予言した粘土板を発見したかのように見せかけたでっち上げ歴史の地もごもががががが」

てるこ(あたくし由来の土地に違いはないのですわよ!聖母様がかつてあそこに降り立っていけにえをやめさせたという話、しゅめーる文字で書いたのはあたくしですけどね!)

べらこ(ちなみに鯖挟皇帝のメフメト陛下がギョベクリ・テペ遺跡を掘るのめんどくさがって、地下宮殿の水の中に沈んでいた粘土板、地下貯水池となっていたその宮殿を点検した際に発見したことにしたのはこれまた内緒で)

マリア「まぁ聖母教会自体がそもそも、初代様他を含めてあたしら痴女皇国の有志がでっち上げた宗教なんで、その辺はもうどうにでもなるっちゃなるんだよな…」

べらこ「聖母教会教典では本当ならほも禁止ですよっ。しかも痴女皇国世界だからいいものの、連邦世界のオスマン帝国ってイスラム教国家では?…つまり、ほもは本当ならダメなのではないでしょうか…」

マリア「というかホモOKにしてる国家や宗教の方が珍しいくらいだぞ」

べらこ「ともかくカルノ君。オリューレさんが明日、不合格を出された場合はカルノ君にも運転検定を後日、受けてもらいましょう。場所は…ジョクジャカルタからボロブドゥールの間の通称参拝街道にしましょう。あそこならほとんど山道はないですし」

おりゅーれ「私の時より簡単じゃないですか!…実は、私は2回…運転研修と検定をやらされていたのです」

べらこ「1回目は痴女島で女官管理室長時代に。この時は堤防から外に車を出すなと御触れが出ましたね…つまり、初回は不合格に等しいのです…」

おりゅーれ「バラさないでください。で、2回目がですねぇ…茸島の険道1号線ですね…この時はロビナからデンパサールまでの運転でしたが…あの変な無理ティプラとか何なのですか。更にはあの車、ダンケ号と運転方法かなり違うじゃないですか!」

べらこ「オートマじゃないんですよね…茸島の無理ティプラ…」

マリア「ところでベラ子。普通は自動車教習ってよ、ダンケ号みたいなトラックまがいを使うか」

べらこ「日本では中型自動車教習以上でトラックそのものを使うでしょうね」

マリア「つまり、ダンケ号じゃなくてもっと小さくて運転がしやすそうな車に限定して運転許可を与えるのも、痴女皇国じゃありだってことだよ」

べらこ「その発想はなかったと言いたいところですが、南洋島でも配備車、だいたいはダンケ号かぱちもん号ですよ」

マリア「その辺は心配すんな。NBのジジイコレクションはあたしとアグネスおばさまが管理を引き継いでるけど、クリス父さんの運転練習用に使っていた車がまだあるんだ」

べらこ「軽ターハムは茸島に持って来てますよ」

マリア「それじゃない。これだ」

べらこ「何ですかこの笑ってるような、けったいな車は」

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マリア「無理ティプラより普通だと思うが。これはオース珍ヒーレー・スプライトという車だ」

べらこ「セクハラ表現のところ申し訳ないのですが、ちんぽにも見えませんよ」

マリア「あのなぁ。で、この車はカニの目玉のように見えるということで日本ではカニ目と称された」

べらこ「蟹光線は発射しませんよね」

マリア「やろうと思えば改造も出来るが、それよりこの車、実はかつてジーナかーさんとクリス父さんの婚約式とやらをNBで挙行した際に、事実上の新婚旅行のアシとして用意されたものだ」

おりゅーれ「確かそれ、ジーナ様とクリス様を捕える指令を受けた騎士から逃げ切らないと、初夜を牢屋で過ごしてもらうと脅された時のくるまではないでしょうか…」

マリア「オリューレさん正解だ。まさしくこの車の白い同型車が、父さんの車としてNBに保存されていてな」

おりゅーれ「悪い予感がしますが」

マリア「この車で追っ手から逃げ切ったら運転許可証を出してあげよう」

おりゅーれ「どれくらい速いのですか、この車」

マリア「車重は650キログラムだったかな」

べらこ「ちょっと昔の軽自動車並みですね。クリスおじさまの軽ターハムより100キログラムほど重いくらいで。ただ…エンジンは何馬力だったのですか」

くりす「これ、スプライトマーク1の初期型で完全ノーマルだから…120キロとか130キロくらいでやめておく方がいいんだよ…」

べらこ「なんでまた」

マリア「オーバーヒートする場合がある。特に南洋島は完全に赤道地帯だし、その上南洋島でちょっと遠出するとすぐに山道だからな…本当にジョクジャカルタの街中か、ボロブドゥールまでのアシだぞ」

べらこ「いくらなんでももう少しまともなものにしましょうよ…エアコンとか絶対ついてないの丸わかりですし…」

マリア「じゃあミニにしておくか」

べらこ「ミニならまだ文化的ですね。乗ったら女に見境がなくなって100トンハンマーを持って追いかけられそうですけど」

マリア「まぁまぁ、現物を見てくれ」

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べらこ「何ですかこの下だけしかないような車は」

マリア「これもれっきとしたミニだぞ」

くりす「マリア…熱帯で英国車はやめた方が…」

マリア「何でだよとーさん…ああ、雨か…」

べらこ「まさかこの車、雨が降ってもこうですか?…」

くりす「一応サイドカーテンを付けて乗るんだけど、通気性が最悪になるから窓が曇るんだよ…」

おりゅーれ「英国がハッテンするとこんな変なものばかり作るのですか…提携、やめません?」

マリア「それが出来れば苦労はしないんだよなぁ…まぁ、あの国は基本的に小さいものでも何らかの変態要素を入れてくるんだよ…」

かるの(そんな変態の国とお付き合いするから変態が増えるんですね、痴女皇国は)

クリス(カルノ君に…言い返したいんだけど言い返せない…)

マリア「いいんじゃないの?視察って言っても要は慈母寺で起きてる変態行為を見に行くんだろうし」

他全員「よくない!」
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