闇堕ち女帝マリア・痴女皇帝建国譚

すずめのおやど

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アメリカ縦断ウルトラ耐久研修ツアー・9.6

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でまぁ、翌朝。

中米支部灸場きゅうば行政支局の建物たるカバーニャ要塞内の食堂に、寝不足めいた顔で現れるマリアンヌちゃんとスザンヌちゃん。

見るからに疲労の色も濃い姿ですが。

そして、同様に疲れた顔をしている黒薔薇騎士、3名。

そればかりではありません。

なぜか、クレーゼ局長はもちろん、アレーゼ様とアルトさんまでもが微妙に辛そうです。

一体なんでまた。

一方で元気はつらつとまでは行きませんが、スペインからこのハバナの地に派遣されているという女騎士のアナベルさんと、海賊騎士団長のジャンヌさんはまぁ、普通ですね。

そして、疲労組が追加されました。

「しかし、どうしたものか…」

「海賊女王のオマリー陛下からは、ナッソーの売春人口を増やしたい件でハバナの人口を活用したいとの意向を頂いてましたが…これ、現時点で既に灸場の特殊事情故に精気授受成績が上がってるという結論が出てる気がするんですよねぇ…」

「そりゃ、いっそ灸場に遷都するかっていう話が出るわけですわ…」

「しかし灸場に都を変えるのは、それはそれで大手間な話。カリブの島々からの中継港としてはナッソーの方が地理的には好都合なんですよ…」

ええ、ティアラちゃんとサリーさんも疲れた顔です。

むろん、疲労組は猥褻行為おめこのしすぎで疲労していたのではありません。

それぞれの課題と、そして押し付けられた無理難題について解決策をああでもないこうでもないしていたのです。

更には、日没から夜にかけての自由罪人街区の実態調査も行っていました。

普通ならこういうエロ行為の現場視察、痴女皇国うちの人間の性質なら、何かしらの口実を作って乱入して助平を堪能するはずなのです。

しかしっ。

皆が真面目に課題を考えるほどの実態がそこにあったのです…。

いえ、精気授受成績自体はそれなりの成果が上がっているのですよ?

ただし、それは痴女種女官の助力や、連邦世界から持ち込んだなどした、この世界ではオーバーテクノロジーにも程がある技術あってのものだね。

(なんせ愛の砂糖きび畑状態の演出までお膳立てして、街ひとつ丸ごとおねショタ同棲エリアにしてますからねぇ…)

(駄洒落菌制御用とはいえ、バイオテクノロジーまで投入して、やってることは痴女皇国おねショタ同好会のおとこのこをあさるばしょ作り…雅美さんが内務局長じゃなかったら滝壺で集団リンチものですよね…)

(本当にあのメスカマキリはろくな事を考えないわね…)

(アレーゼさん以外のあんたら全員の報償金、向こう3ヶ月1割カットでいいかしら…サリーちゃん、聖院女官の経理もうちの財務局員が出向して協力してるのを忘れないでね…もちろんマリアンヌちゃんもスザンヌちゃんも、あんたたちのお小遣い、それも大人扱いされている額が痴女宮から支払われてるのを忘れていないわよねっ)

(…横暴にも程がありますわ!)

(汚いさすが女郎蜘蛛じょろうぐも汚い!)

それはともかくとして、欧米の植民地や属国時代が長かったキューバ同様に、この灸場きゅうばも欧州や痴女宮におんぶでだっこの国家体制を保たなくてはならないのか等々、皆がそれなりにこの島の発展と未来を真面目に考えていた結果、徹夜に等しい状態に。

なにせ、我々痴女種は人類の男性を一定数以上確保しなくてはなりません。

そして、連邦世界の植民地の歴史のように、奴隷とされた人々をそう簡単にポイポイと使い捨てには出来ないのです。

以前からくどいほど言われている話ですし、産業振興分野の業務を国土局から新設された通商産業局に移管するほど仕事が増えている件…各種地下資源、特に化石燃料が連邦世界の半分程度の埋蔵量の上に、それを極力温存させながら人を増やす必要があるんですよ、私たち。

考え方が政治的に左寄りとなりがちな環境活動家の皆様にあれこれ言われるまでもなく、天然資源の有効活用を企図していかねばならない痴女皇国と聖院の支配する地球にあっては、単純に人を支配するだけではなく衣食住を満たす諸々を人々と共に開発開拓していかなくてはならないのですよ…。

そして、連邦世界で人口過多が問題になっている地域は案外、もともとは食料や水に困らない場所が多いのです…困らないからこそ、増えたとも申しますが。

ただ、増えすぎているから困ってるのです。

そして、増えた場所の一つがキューバ。

HIVの蔓延がなければ、更に増えたとも言われていますから。

ですから、逆に灸場をカイゼンすれば「望む人口を増やせる場所」に転換できるのです。

で、灸場の開発も、実のところは国土局が南北米大陸やオーストラリア・アフリカで実施している人口管理政策に基づいているのですよ。

ただ…その全てを国土局で決めるわけにも行かないのと、海賊共和国の設立や中米支部化された経緯もあって、内務局の管轄になっているので私があまり口を挟めなかったりするのですよ、この灸場での卑猥を極めた性交実態のある労働刑務所化政策…。

とりあえず、ティアラちゃんの支援について、本人には内緒にされていますけど、幹部の間では強く要望されている話です。

この子に対して痴女皇国が手厚い支援をしている理由は、父母の中井さん夫婦の更生が順調なのもあります。

そればかりか親子揃って南欧支部…つまりスペインと中米地区の開発に間接的に寄与している存在であり、愛娘にも幹部の道を用意して差し上げろという流れになっています。

ですから、ベラちゃんの日本人とみればお手つきしたがる性癖だけでティアラちゃんは重用されていない。

この事実も皆様には覚えておいて欲しいのです。

で、私もその支援の件が頭の片隅にありますから、ティアラちゃんと、そして飛び入りのマリアンヌちゃんとスザンヌちゃんに助け舟を出しておきますよ。

「まぁまぁ。まずはチンポネックスの副作用問題を解決してからよ。ナッソーとハバナの関係はひとまず置いといてもいいんじゃないの? それとその件でもヒント出しとくわよ。ナッソーにはフロリダも割と近いからね」

こういう時、問題を切り分けて考えるのも重要でしょう。

中米支部での精気授受実績ですが、界隈で最も成績が良い…単純に言って居住人口あたりの精気回収量がずば抜けて高いのがこの灸場島、次いでフロリダがそれに続くそうです。

で、フロリダの精気授受成績が高い理由も、実ははっきりしてるんですよ。

あそこにはまず、グレープフルーツやオレンジなどの柑橘系農園、そしてこの中米一帯の海岸では船舶・建築資材のみならず最近では副作用はあれど高い栄養価を示す果実が注目を浴びて絶賛植樹中の絶林檎ちんちんにーるの栽培と収穫に従事しているネイティブアメリカン…インディアンの皆様が多数居住し、罪人に伍して働いておられるのです…。

そう、女官さえ配置すれば…そして、畑の面積さえ拡大すれば、この灸場同様に農業従事者からあんあん、いえガンガンと精気を回収できるのです。

更には、以前ちらっと話が出た北米大陸から産出されるカシの木…つまり、オーク材。

このオーク材を積載した貨物船も、大西洋横断のための直行航路を取るのではなく、概ねマイアミに寄港するそうです。

(ハバナの造船所に回す分もあるからな…)

(五大湖沿岸やボストンからの積み出し、ゆり丸型で運んでる事が多いからそのまま大西洋を渡らせるのはしんどいのよね、あの船だと…)

で一方、テキサス方面への牧畜や農業に従事する移民を「生産」するためにも、マイアミのおめこリゾート化も進めています。

現時点では船員と農林業・漁業関係者向け向け聖母教会と併設の娯楽館を建てているだけですが、ゲインズビル方面へ鉄道を伸ばす話も出ております。

(売春だけなら絶林檎の林で青姦させれば何とかなると無理やりにね…)

(その光景も視察するんですよね…私…)

で、鉄道を敷設しようとしている理由は、言うまでもなく北米大陸内陸部の産品をマイアミまたは貨物港に輸送して船に積み込むため。

特に、人口増加に伴う衣料品需要の増大に対応して大量に消費されることが見込まれている綿花と、同じく温暖地域からやや寒冷な辺りで飼育されている羊さんの産物、つまり羊毛について早急な輸送体制を求められている状態です。

この二つの衣料品原料、近いうちに大量に必要となるのが確定しているので生産量増大と、そして欧州やアジアの紡績工場への輸送手段確保をまりりが命じています。

(え? 痴女皇国のエロ衣装と同じ自動製造ラインで作らないの?)

(それは人の自立にならんだろ…半生体素材衣料の維持にはあたしらの分解再生プラントを必要とするじゃん…淫蟲下着はまだしも、普通の服は作らせないとさ…特に庶民用)

(灸場の問題の件もそうなんだけど、どうせあたしたちに依存するなら服も与えてあげたら?)

(第二次世界大戦後のミャンマー辺りの惨状を思い出してみろ…あたしは英国ちちおやのくにの事をあまり悪し様に言えねぇ立場だけどよ、英国が植民地経営から手ぇ引いたせいで、しばらくあの辺の住民、服がなくて半裸生活してたんだぞ?)

(なんでまたそんな事に)

(工場やら縫製道具やら全部引き上げられたせいだよ。おまけに衣料品や原料輸入も停止だ)

(自分たちで作らせなかったの?)

(そこがあの二枚舌帝国の悪辣なところでさ、独立運動が成功しても後で困るように色々仕掛けてたんだよ…植民地化でよそから布持ち込まれるせいで服飾技術が衰退しかけてた上に、宗主国このばあいはいぎりすに支配から手を引かれたら一気に物資不足じゃんか…)

(汚いさすがイギリス汚いって話よね…)

(で、そんな悲劇を防ぐためにもさ、紡績や服飾についての技術を育ませる必要あるじゃん。だから女官服以外の服飾材はなるべくこの世界の人たちに生産させるべきだと思うんだよ。それと、通常の衣料品だけじゃなくて肝心の半生体服の製造原料、綿花や他の動植物系衣料品素材のうち何かは絶対に必要となるんだぞ…)

まぁ、そんなわけで連邦世界のアメリカで奴隷を使って大量に収穫していたようなものは、罪人扱いの方々や原住民の皆様の暮らしを農業生活に転換して頂いた上で、同様に畑や牧場で作ってると思ってください。

(インディアンの皆様について、狩猟型生活から農牧業生活に転換するためにさ、アレーゼおばさまがそれはそれはもう散々な苦労をしたんだよ…)

(連邦世界の言葉だと原始共産制というのかな、彼ら独自の分け合う倫理観にも一理あるとは言えるが、それは農業や工業に彼らを用いる妨げになるんだよ…、土地や家屋や何やらを所有する個人の資産という価値観を教えるのにも苦労する有様でな…)

(で、結局は罪人化になったんですよねぇ…神様が与える代わりにあたしらが与えるからって話にして。で、与えるものを与える代わりにこれやってあれやってと一種の奴隷化させた方が浸透しやすかったという結果になったって、あたしとおばさまとミカエルで頭抱えたじゃないですか…召使を使う生活に慣れてたるっきーが女王様やって解決したっていう、更にひどいオチがついて…)

(あたくしは単に言い聞かせただけでしてよ!falsa accusa…冤罪もはなはだしいですわぁっ)

(るっきー…ヒマなら灸場来てよ…みんな悩んでんのよ…それに外遊部長時代に来てるでしょ…)

(そうだな…ルクレツィアさんは私と回った事があったな…)

で、ミカエルさんと二人して呼びつけられたるっきーですが、もんのすごく不機嫌そうな顔です。

(にゅーよーくでラッツィオーニ様に呼びつけられましてお酒のお相手をですね…更には愛人の方までいらっしゃいまして、俺の目の前で二人でセッソおめこをしてくれとか無理難題言われておりましたのですわ!…お陰で抜け出す口実になりましたけど…)

その事情には同情申し上げますが、そんなんまで面倒見てたんですか。

黄美娜ほんみーなー様や乳上なんてもっとえぐい事してましてよ。それはともかく、灸場の罪人の皆様のあんぜん意識とやらがいまいち薄い件ですわよね」

ええ、痴女皇国おっちょこちょいワースト3に入りそうなるっきーに聞くのも何ですが。

「そんなもん簡単ですわよ。まじめに事故を防ぐ考えを思いついたり、実際に効き目のあることをした者にはごほうびをあげるのですわ。人にやる気を出させるならば報酬を払うのは当たり前ではございませんこと? 」

はぁ?

私を含めて、皆が何やねんそれという顔でるっきーを見ます。

というのも、まりり…上皇マリアリーゼから出された課題は、精気回収成績を落とす事なく、農薬を兼ねた特殊肥料製剤チンポネックスを散布者が浴びすぎて悪影響を受けないように撒く手段を考えろという事です。

我々は、安全な方法を求められているのであって、報償目当てに罪人を努力させる…いわば労働内容ではなく労働意欲をカイゼンする事をまりりから求められてはいないと思うのです。

ですが、るっきーは言い切ります。

「そもそも自分が危険なおくすりを浴びても大丈夫なようにする服や仮面をつけなかったり、あるいは組になって仕事している子にめいわくをかけるから起きるおはなしですわよね? 使っているを、たとえば見回り用のめじぇどくんのような人がいなくてもうごくものにすれば簡単に解決するでしょう。しかし、マリアリーゼ陛下のお考えではしごと仲間、特に男女の組み合わせで努力をさせたいという事でございましょ?」

(んだね。無人化はそりゃ、やろうと思えばできるよ。それに実際に人の手がおっつかないところは密かに助けてるじゃん、アルゼンチンチンでもテキサスでも)

「で、皆様にひんとをさしあげます」

と、ミカエルさんに命じて何かのチューブ状のものを差し出させるるっきー。

その口の封を切ってから、匂いを空気中に拡散するかのようにチューブを手でゆっくりと振ると。

その途端、にゃーにゃーと鳴き声を上げながら、砦の中で飼われている猫が寄ってきます。

それも、何匹も。

で、慣れた手つきでその猫向けチューブおやつを猫に食べさせている、るっきー。

「この猫たち、そもそもかいぞく達が持ち込んだのですわ。ただ、このハバナは漁港でもあります。つまり、港のそばであれば網にかかった小魚やらアラやらが出る町。マリアリーゼ陛下、ひものや氷漬けにするための加工場はやっておられますわよね?」

(もちろんだ。漁港は西の方のアルメンダレス川の河口に漁港作ってそっちを沿岸漁業にしてるって話だったけどな)

(沖合に出るのはハバナ港が基地のはずよ)

で、猫がいる理由は、海賊はもちろん、昔立ち寄った船でネズミ対策に飼っていた猫を街中のネズミ取りにということで放しているからだそうですけど…。

(猫が多いってことで、酒と同じくらい猫が好きなヘミングウェイが大喜びしてたらしいぞ、ハバナ)

(へぇ、あの作家のヘミングウェイよね)

(おっさんは一時期ハバナに住んでたくらい、どっぷりとキューバにハマってたんだよね…)

ふむふむ。

でまぁ、痴女皇国世界のハバナもネズミ対策で放し飼いにしているかのような猫たちが多数うろついています。

「これはれんぽう世界の沖縄の子から聞いたおはなしですが、子だからに恵まれない親がペットショップとやらに出向いたり、野良いぬやのら猫の里親になるとか。で、この砦でも猫を飼ってはおりますが、実質的に放し飼いではあったかと思いますわ」

「そうだな、確か私たちが滞在した時に、猫は家を守りネズミを取るから虐待すべきでないと、元々ここに住み着いていた漁村の民や、その漁民と取引していた海賊たちに言い聞かせた事があったな」

「海賊たちは網の原料となる麻や漁具に使う鉄、更には銛や釣り針などを買い付けてはここの者たちに渡す代わりに、食料となる魚を都合してもらっていたようですわね」

「その時以来の協力関係が生まれておりました事から、このハバナの地を快く譲って頂けたのですわ…我々が代わりの漁港を用意したり、漁船を建造する事をしておりますが」

この説明をされる灸場行政支局の騎士たるアナベルさんによると、漁村にも小規模ながら聖母教会まで存在する上に、漁業に必要な気象や海洋情報を海賊共和国側と共有しているのだとか。

更に、漁村の原住民たちから若い者をこちらに派遣して近代航海術を学ばせたり、海賊共和国側からも機材の提供や使用法の実習などなど、紺碧騎士団や海事部の協力を仰ぎながら水産資源の開発にも余念がないようです。

(海賊って荒くれ者のイメージだったんですが…)

(ティアラ、これは海賊女王やティーチにロバーツといった穏健派の方針なんだ。お互いに圧政から逃れたり侵略を不満に思う立場だったのも幸いしているが、米大陸発見直後から迫害される傾向があった原住民と手を結ぶ方向で海賊が接してくれていたのが、我々の米大陸視察にも幸いしてな…カリブ海沿岸についてはかなり話が早かったんだよ。もっとも、そのあとでインカとアマゾン川流域では苦労したが…)

(隠れ家や逃げ場所ですとか、水の補給場所を提供して貰っていたようなのですよ。道理で母国の海軍や英国が討伐に苦労するはずですわ…)

なるほど、アナベルさんはスペイン本国のご出身でしたね。

「で、海賊たちが持ち込んだ猫を原住民もありがたい生き物だと崇め、大切にするようになったのですわ」

(船から逃げ出したネズミがあわや伝染病を広めかけたりしていたのは内緒で!内緒で!)

まりりがめちゃくちゃに慌てていますが、これは確かに知られなくともよい話です。

というか、知ったらになってますよ…。

まぁ、それはともかく猫ちゃんです。

なんでまた猫を。

「このハバナの街の原住民の間では、こうした経緯から猫を神の使いと崇めて特定の個人が飼わないようにしているのです。そして、海賊たちも餌を与えること以上はせず、増えるに任せておりました」

「結果、猫たちは我が物顔で街を闊歩するようになったのはともかく、繁殖期になりますと公害めいたことも引き起こすようになりまして…増えた経緯が経緯だけに、駆除するわけにも参りませんから…」

あ、猫害…。

グロンストラーネさんとアナベルさんの顔の渋さで、猫の害の強烈さがわかります。

「もはや年に1回、約一週間の事と申しましても猫によってさかりの時期は変わりますから、この2月から3月にかけては方々で交尾の前の求愛で騒ぐ猫を、静かにしろと住民が追い立てる始末なのですよ」

「そうです。さすがに人が増えてくると猫の生態を看過できないこともあって、余った猫を他の町に移住させることも行なっています。幸い、この辺りでは魚を獲って暮らすものも少なくない上に、山には逃げ出したネズミがそこそこ繁殖しているので、猫の餌には事欠きません」

「キューバには毒蛇はいないが、他の島だと蛇がネズミを求めて家屋内に侵入してくることもある。そうした害を防ぐためにも耐毒性を獲得させた猫は有効なのだよ」

あ、なるほど。

鬼細胞や女官種の能力で、ある程度は毒に耐えるようにすれば毒蛇や毒蜘蛛やサソリはさほど怖くなくなりますね。

「読めました。つまり、事故を起こしたり起こしそうな罪人女官に欠けているのは他人への配慮。その配慮を学ばせるためにも、生存には人の助けが必要なペット…それも、賢くはありますけど、犬と違って気まぐれな猫を世話させることで、可能なら妊娠のみならず育児を自分たちで引き受ける事を思い立たせて、ひいては人の心を取り戻させようという仕組みが考えられるのならば、罪人への安全教育にも繋がるのでは」

これ、ティアラちゃんの発言です。

「た、確かに…痴女種ならペットを飼うという発想、意外に出て参りませんものね…」

「犬猫どころか哺乳類全般、痴女種化してたら勝手にあたしら避けるか懐くもんねぇ…」

「痴女種に従順な犬では、反抗やわがままを教える教材になりづらいのも納得ですね…猫である必要性も理解できるところ」

「痴女種能力で猫に盛る場所を躾ければ、ある程度は騒音公害を回避できそうな気もいたしますわね。権太郎くんは実際に言うことを聞いてくださいましたし」

そうなのですよね。

スザンヌちゃんもマリアンヌちゃんも、ペット飼育経験はないのです。

せいぜい、池尻大橋の宇賀神家の方のマンションに住んでる雄のヒマラヤン種の猫ちゃん…権太郎ごんたろうくんとたまに戯れるくらい。

そして、人の身長を遥かに超える丈に育つ砂糖きびが密生する畑では使えませんが、水田や普通の畑ならば虫や鳥を改良すれば、チンポネックスと同等の施肥も可能ではと私も提案してみましょう。

「確か灸場にもフラミンゴいたよね。あれ使えないかな」

と、まりりに聞いてみます。

(ありゃ海岸沿いの汽水域で藻や小動物を捕食する性質があるんだよ…待てよ、灸場でも水田作らせてるよな…はっはーん、フラミンゴの排泄物を鬼細胞で強化する気だな?)

(そのとーり。しかも、あれなら水田に発生する虫も餌にしてくれるんじゃない?可能なら雑草をむしってくれたら最高なんだけどね)

(ふんふん。金になる産品はともかく、食料そのものの生産も必要だし、亜熱帯から熱帯域にかけては麦よりは米の方が生産しやすいからな。あと、雅美さんも意外に執着してるカニピラフの店の目玉だしな…フラミンゴショー)

(動物虐待にならないようにしてよっ。あと、フラミンゴはあくまで例に出しただけで、スズメでも鴨でも鶴でも別にいいのよ?)

要は、私の思いつき…動物を鬼細胞で強化すれば、その排泄物も肥料としてチンポネックスと似た効果を発揮しないだろうかということです。

(鳥は飛行中でも排泄するけどな…だけど、鬼細胞を使ってなるべく田んぼで排泄させるように誘導することはできるはずだ。それと、誤爆した場合の対策も、対象選別制御型鬼細胞ならターゲットの植物以外には作用させずにすむな…)

そして、鳥類は総排泄口と呼ばれる器官を持っているのと、排泄物が固体や液体に分別されていないのもヒントになりました。つまり、雨さえ降れば土壌に溶けて浸透します。

更には広大な面積の田畑があったとしても、鳥の数で勝負。

スズメも鴨もフラミンゴも、群れる性質があります。

特にスズメとフラミンゴはかなりの数の群れを作りますよね。

そして、砂糖きび畑にはこの手が使えなくても、他の作物の栽培時に鳥類が使えるならば、それはそれでカイゼンになるでしょう。

(よっしゃ、その案はクレーゼ母様に引き受けて頂こう。母様、キューバの固有種が島に棲息している地域があります。エマ子に頼んで割り出してもらいますから、後でスザンヌとマリアンヌを連れて雄と雌を各1匹確保してください。痴女種なら手荒なことをしなくても寄ってきてくれますよ)

「はいはい、そのとりを痴女宮に連れ帰ればよいのですわね」

(スザンヌとマリアンヌ、フラミンゴの確保で今回のナインズ送りは帳消しにする。鬼細胞の移植のために使うから、くれぐれも怪我させんなよ…生かして群れに戻す必要もあるからな…)

「はいはい、あと孔雀も使えるんじゃない?」

(孔雀はアジア原産だ、灸場にはいねぇよ…まぁ、フラミンゴによる鬼細胞散布が成功してからだな)

「まりり、チンポネックス散布機のノズル延長でもいけそうでしょ。あれ確かオプションで伸ばせる奴があるから、直接根元にかけるより上から撒いてもらう方がいいかも。それに、灸場の雨量なら砂糖きびにかかった分もすぐに洗い流されて地面に到達すると思うよ」

とまぁ、改善のアイデアが出て来たところで諸々をまとめて実行に移していきます。

(あと、スザンヌとマリアンヌはるっきーとりええにお礼忘れんなよ…)

(わかってるわよ…)

(とは言え、ルクレツィア様はなかなか東京にお越しにならないのですわ)

(乳上のおみせの視察もありますから、来た時にご挨拶させて頂きますわ)

(あいー、ただ、私らまだ中学生だからあまり大層な事はできませんよ…)

(東京ではあまり派手にできませんので…)

(ほほほほほ、承知しておりますわ。何でしたらマリアヴェッラにことづけて頂ければ)

-----------

そんな訳で、転送で消えて行くるっきーやクレーゼ局長ご一行を見送った後。

「アルト、今日は私たちは東側の山林を調査するからな。あそこは確か、グアンタナモの収監罪人を中心とした樹木伐採とコーヒー、そしてゴム栽培が主体のはずだ」

「ううううう、またやまの中なのですか…」

「文句を言うんじゃない…そうだグロンストラーネ、昨日、不手際のあった件の罪人女性、結局どうするのだ。こちらの対応で十分に同種類似の事故を防げるなら、あまり厳罰に処しても良くはないだろう。組んでいる少年が復帰を望んでいるのなら、原職に戻してもいいんじゃないか」

「はい…アレーゼ様の御沙汰であれば、不平不満を言う者もいないかと…ちょっとお待ち下さい、心話に切り替えます」

いきなり顔を青くしているグロンストラーネさんですが、何かあったのでしょうか。

(アナベル…あの罪人、処遇はどうしたのですか…)

(はっ、お言いつけ通りに本日、ハバナ監獄寮の懲罰罪人に与える処分を…ああっ! 担当騎士はリベルタの懲罰を即刻中止!我々が到着するまでに舎房に戻しておくように!…はぁ、まだ開始には至っていないのだな? よし、リベルタは舎房差し戻しの上に、特赦が下ったことを教えて落ち着かせてくれ…グロンストラーネ局長、あと数分遅ければ出房の上で処置に及んでいたとの事です…間に合いました…)

どういうことなのでしょうか。

(はぁ…実は、ハバナ監獄寮にはある程度の懲罰を行うための専門の罪人が在籍しているのです…この罪人については、ティアラさんには悪魔島またはグアンタナモ視察時に説明する予定でしたけど、今、お話ししておいた方が良いでしょう…悪魔島の収監罪人について、成績良好な者は敢えてグアンタナモとハバナで懲罰を代行する実行者として働かせているのですよ…アナベル)

(は。で、その懲罰罪人に処理させますと、労働者としての子供を産ませるか、あるいは悪魔島送りのためののどちらかの刑罰を対象者に下すことになるのです…本日、グアンタナモに入港するお船のポーラは、初期収容罪人を下船させた後でハバナ監獄寮に送り込む比較的優良な罪人を乗船させて本日午後にはハバナに入港。そして、ハバナに入港中に懲罰罪人によって、悪魔島に直行させるか悪魔島送りにする罪人を処理する予定でした…ええ、後少し遅れていたら、そのリベルタも施工の上で悪魔島への移送を行う手筈だったのです…)
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