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若妻ショタ地獄・狂気の青い果実狩り!・8
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(そろーっと、こそーっと)
で、ここはクラブジュネス淋の森店の裏口です。
我々が向かうのは淋の森。
で。
何をしようとしているのか。
その説明の前に。
リンジーさんが着想したガールスカウトの痴女皇国版はどうですかという提案ですが、これに対する各方面の評価を見てみましょう。
まず、リンジーさんの構想に価値ありと判断したアグネスおばさま。
(ガールスカウトというのはいいところに目をつけたわね。確かにそちらでいうKnightsを編成するよりは平和的でいいんじゃない? それに、その子たちの管理であれば男を直接相手しなくとも良い事になるから…あとはリンジーの能力次第。そして、グッドニュースかどうかは分からないけどね…ハイスクールでも「仕切れる子」だったという人物評価が出ているわよ)
で、聖母教会の活動に利用できる可能性の萌芽を感じた叔父。
(これならば出家させずとも、教会活動に貴族や富豪の子弟を動員する口実に出来るじゃないか。更には、そうした良家の子女を教育する場とすれば積極的に子供を行かせる親も出て来よう。そのシニョリーナの構想、失敗したところで莫大な損失が出るものでもなければ、ひとつやらせて差し上げて良いのではないか?)
茸島分校での軍事教練教程の授業カリキュラムに組み込めるのでは? と提案してきたオリューレさん。
(その少女奉仕団、先輩後輩の関係が存在しますのでしょ? では高度な訓練を受けた先輩少女騎士が後輩や一般少女を保護しながら慈善行為のために活動するのは自然な流れでは?)
あと、たのきちからガールスカウト制度の説明を受けたハリティリーネ福祉部長も、俄然、乗り気。
(ふーむ、確かに、我々を除けば子供に読み書き算術を教えるのは教師を雇えるか、お金を支払い習わせるか…身内に教えられる者がいれば話は別ですが…一般的には貧しい者ほど、教えを受ける機会に恵まれませんわね)
ですね。その辺の教育格差は壮絶と言って良いくらいでしょう。もはや親ガチャとやらどころではない、格差もここに極まれりと言うべき話です。
(しかし、富裕な者が施すならば話は別。連邦世界の預言者由来の宗教では、富裕者は貧者に施すのが義務であったかと存じますが、それに倣えば良いでしょう。更には…その子弟が恵まれぬ同年代に恵むならば、与える過程で世の中の実態を知ることにもつながるでしょう。制度定着までは苦難の道のりになるとは今の段階でも予想は出来ますが、その苦難を乗り越えた先に得られるものもまた大きいのではないでしょうか)
とまぁ、今の段階でさえ「失敗した際のリカバリーが可能ならやってもらっていいんじゃない?」と乗り気の方々が。
そして、たのきちが話を聞いていた事が良い方向に働きました。
財務局長たるデルフィリーゼ叔母様。姉から数えて先先代金衣女聖。
つまり、かつては聖院トップとして福祉にすら目を向けていた方が、我々のやりとりに参加なさいました。
(確かに増え続ける女官の経費支出は問題である。だが、精気資源枯渇の方が女官には遥かに重要な問題なのを忘れてはならぬ。金を使うべき社会すら消滅しては本末転倒。人の子供が増える事、即ち大人が増える事なり。マリアリーゼ、この支出で痴女皇国の財源が枯れる事はあるまいとは思うが、万一の場合は済まぬがよろしく頼む)
…つまり、姉とエマ助に「足が出たら不足分を掘りに行ってくれ」という事です…。
ですが、経費を使って良しとの判断を下されたこと、すなわち修道院建設費用を関係国家に配ってよいという指示と見てよいでしょう。
そして、修道女官の増員に伴う報償金支出もやむなし、との財政出動の判断を下したにも等しい発言ですね。
(マリアヴェッラ。予算については案ずるな。お前は皇帝として…慈善女官計画とでもしておくが、指揮する女官と、現地で教育に当たる女官を選任することに専念するのが良いだろう。必要な人選を行い、任命すれば公布は部下たちが行う。頼んだぞ)
はい…。
そうなんですよ、姉や母様が以前言ってた「ベラ子は有能な部下を従えるようにしろ」という事例のひとつですね…。
文字通りの超人が多数揃っている歴代金衣からすると、姉のように一人で何でもかんでもやってしまう部類の方が金衣向きだと見る女官が多かったらしいのですが。
(マリアヴェッラ。アレーゼだ。聖院当時と違って、各国の政治に積極関与している上に、指揮監督下にある女官の数はもはや倍どころの騒ぎではない。大国の政治体制…それも連邦社会から見ても相応の国家規模にまで育っている痴女皇国で、従来のやり方に固執した専制君主方式はかえって危ない舵取りにもなりかねん)
と、確実に超人の上にも超人なアレーゼおばさまから、当の超人君臨制度に懸念を示す声が。
(ベラ子…おばさまはおめーを庇ってんだよ…気付け…)あぃあぃ。
(まぁ、お前を庇っているのは何もマリアだけではない。お前の後見人たる私だけでなく、初代様を含めた歴代金衣の全てはお前の皇帝位を維持するために動いているから心配するな。任せるべきは任せて…あ、クレーゼの浪費だけは常に監査しておいてくれ。うん)
そそ、叔母様は姉としばらく暮らして面倒を見ていた関係で、姉をマリアリーゼではなくマリアと呼びますよ。姉からすると第三の母親のような存在らしいです。
で。
その姉の出産を担当した第二の母親というべき方が。
(あねうえ。わたくしも義姉様からかいしゃをわたされた時に節約と清貧を否応なく覚えさせられたんですわよ!)
(売女の会社が大変だったのは私も知ってるし、お前やスザンヌの女官寮食堂利用や、あげくお前の金衣報償金の支給承認と、購買部での日用品購入を認める稟議に署名もしたぞ…それより、たまには池尻大橋に行ってスザンヌの成長も見ておいてやれ…私ですら時折聖院に行って、しほ子の顔を見てるんだからな…)
(ま、まぁ…確かにお義姉様もえぬびーに行かれましたし…)
(阿波内侍殿や宇賀神桔梗さんに丸投げだけはやめておいてくれよ…)クレーゼおばさま、さすがに娘さん…スザンヌちゃんの事を言われてはしゅんとしたようですね。
(ベラ子。ジーナ母様から義夫お祖父さんの会社を引き継いで切り盛りしてた最初、クレーゼ母様は大変だったんだよ…で、食費や生活費に困って、聖院の食堂や売店を使えるようにした時期があってな…)とは姉の内緒の事情説明です。
おわかりでしょうか。
歴代金衣、痴女皇国のねーさん以外は全員…母親である事を経験しています。
ですので、娘や子供の育児の話題には敏感も敏感。
ベテハリ君とアニサちゃんに子作りさせたのも正解と言えば正解なんですよね…茸島保養所の用人雇用、一発で通ってしまいましたし…。
(こうしこんどうだめぜったい)
(ですよねー伊藤さんー。ぜーったいベラちゃんが囲い込みあんあんあんっ)
(सुश्री तानोज़(田野瀬さん)…この場は黙っておきましょう…)ええ、空気を読めるインド人の方って素敵ですね。
--
そんな訳で、妾に正妻のごとく監視されているあたくしマリアヴェッラ。
なにせ、この後で行く場所は…人を選ぶのです。
で、あの場にいた全員で押しかけるわけにはいきません。
後ろをこそーっと瞳さんがついてきてますけど、ゼアラさんには(あそこは危険すぎるの、ゼアラさんもよくご存知ですよね…瞳さんの様子が危険だと思ったら、独自判断で退避してください…)とお願いしております。
(ええ、あそこですか…それは確かに危険。私も正直、あそこは足を踏み入れたくはありませんね…)
どこへ向かうのかお話する前に。
(シャルロットさん…あなたが感染した駄洒落菌の解除には条件を付けさせて頂きます。今後の修練士と助修士の教育、やはり専門の施設を整備した上で集約的に行う方がいいんじゃないかと思いますし…)
と、淋の森の奥への道すがら、シャルロットさんにお説教をば。
いえ、このマリアヴェッラとて、人に道を説くには足らぬものがあるかも知れません。
しかし、いくら生理的な嫌悪感や忌避感があっても、無用な差別をことさらに助長するようでは今後、聖母教会職員としての勤務適性に疑問符をつけざるを得ないのも理解して欲しいのです。
更には、シャルロットさん…そしてリンジーさんが嫌がってるような人物…非行少年や肉体労働系成人男性…特に非・欧米系の方々の雇用や活用は痴女皇国、ひいては世界の発展に必要不可欠。
彼らを連邦世界のように酷使消耗させずに、労働資源…そして精気資源化するためにも、聖母教会での教育体制は万全でなくてはなりません。
(まこと陛下の申される通り。この方針に一応の賛意を寄せるならばまだしも、根拠のある理由なき否定は…厳罰でよろしいかと)あー…ハリティリーネさん、めっちゃ怒ってますね…。
文教局の教育制度…特に少年を全寮制生活下で教育するとともに若い精気を余すところなく頂戴する福祉部の政策ですね…たのきちの案が形になったのは、正直申し上げてハリティリーネ福祉部長の献身と尽力なしには不可能だっただけに、今や児童福祉の専門家として押しも押されぬ地位を痴女宮で確立しておられます。
その、痴女宮並びに聖院学院の福祉の権威とでも言うべきハリティリーネさんの発言は、聖母教会側でも決して無視はできないでしょう。
ええ。
叔父たる聖母教会初代教皇のカエサル一世も、聖院学院福祉部の成果を見たからこそ、教会主導の少年少女活用を決めたようなものです。
(まぁ…可能な限り、シャルロットさんには欧州帰還と役職の用意をという事で、あたしも考えています。ですが、相応の役職をご用意するには、やはり実力も欲しいところなのです…)
要は、コネでの腰掛け人事で椅子を用意するような余裕、我が痴女皇国にはおまへんで。
あたしは、これが言いたいのです。
幸いなことに、セレビッチ作戦での記念すべき獲物第一号たるジェニファーさん。
そのノリと前向きな姿勢が評価されまして。
(あのひとはジュネス向きですね。きょういくは必要でしょうけど、ただならぬさいのうを感じます)
とは、あたしの左隣で、クリスおじさまを両側から挟む形で歩いているアルトさんの評価です。
(そうですね。正直、思わぬ拾い物と言うべきでしょう)
Jennifer Goldluck. ジェニファー・ゴールドラック Thousand Suction(Limited Ten thousand Suction). 千人卒 Slut Visual. 痴女外観 White Rosy knights, Imperial of Temptress. 白薔薇騎士団 Information department, Ministry of Interior, Imperial of Temptress 痴女皇国内務局情報部付 Ian Lancaster Fleming anniversary Information Research Center. Foreign Affairs Division 2nd. イアン・フレミング記念情報研究センター外事第二室
はい。内務局長の田中雅美さんの発議扱いにしましたけど、一発昇格決定。
ちんぽも装備して、淋の森店の副店長候補としていきなり抜擢です。
どこかの右顧左眄大臣とは違うのだよ鶏のように首を振り世論に左右される大臣とはとか言えと天の声に強要されましたが、そんな問題首相がいるのでしょうか。
まぁともかく、話が動くと早い痴女皇国です。
(噂には聞いていましたが、早すぎる気も…)
(いえいえリンジーさん、我々はこんなもんですよ。それより…ジュネス勤務免除の代替人事なのですが…これからの試練を受けて頂く事で、万卒以上への昇格はその代替人事を受けて頂くために必須となります。かなり辛い話になりますけど、頑張ってくださいね…)
(ほほほほほ。そのくつうを最小限にするためにあたくしがよばれたのです。おおぶねに乗ったつもりでらくにしてくださいっ)
えーと。
あのですねアルトさん。
黒薔薇資格者を作るわけじゃないですからね。
そこんとこ、間違えないでくださいね。
と、穴開きばんぴれら衣装…つまり、元来は聖院白金衣で、現在はアルトさん所有のそれを着てやる気満々のアルトさんに「そこまでせんでええから」と言うのを遠回しに伝えます。
(ほほほほほ。あたくしがしょうかくさせられない女という評価はまちがっている。これをみなさまにお教えしたいのです!)
えーとですね。今いてるアルトさん、聖院のアルトさんで間違いないですからね。
痴女皇国の方のアルトさんじゃありませんからね。
ですが、今から向かう場所にはアルトさんがいた方がいいのです。
ほんとーはだりあさんでもいいのですがぱいせんがいやがるのです。
(何よその棒読み…)
(っていうかパイセンがあんなお墓を提案するから通ったんじゃないですか! あんなもん可能なら撤去か移築したいですよ!)
(実際のところ迷惑なら壊してもらってもいいとは思うの…ただ…下手に壊したり他に移すともっとヤバくなるって言われたし…ベラちゃん。言っとくけどね、あたしもあそこまで禍々しい存在になるって思いもよらなかったわよ…)とは、当のお墓に入っている遺骨の持ち主たる雅美さんからですが。
(もはや祀られてる本人ですら迂闊に触れないというか、掃除で行く以外ではきついらしいですからね…)
(跡形もなく壊せなくもありません。ただ…かんぜん破壊には精気をそれなりに消費しますわよ…いえ、あたくしも正直マリアヴェッラと同じ意見でしてよ…よもや、あんな危険物になるとは…当初の予定通りに痴女宮正面になぞ作れば大変なことになっておりましたわよ…)と、当初はお墓を作るのに賛成していた初代様も、さすがにあの瘴気に満ち満ちた状態では何らかの対策が必要だろうから、絶林檎で隠したのはやむなしとの判断も。
ええ、この一連の会話で、我々がどこに向かっているのかお分かりでしょう。
雅美さんのお墓です。
このお墓についてはアルトさんのお話他、いくつかのエピソードでその存在や逸話が語られて来たとは思います。
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/128/
しかし、今のお話で、ちょっと洒落にならない事が起きていると思った方へ。
正解です。
高さ5mほどの絶林檎の木が何重にも囲む山側の一角。
本当なら公園内道路からは、奥まった場所にお墓を雨風から守る屋根が見えたはずなのです。
ですが、今は絶林檎の植え込みで隠されています。
なぜか。
売春客はもちろん、万卒未満の痴女種ですら、うかつに近づいて貰うと困る状態だからですっ。
ですから瞳さんも、できれば来て欲しくないのです。
(そして、アルトさんが来て頂くとありがたい理由でもあるんですよ…ここの現状)
ええ。
そして、リンジーさんとシャルロットさんをここに連れて来た理由ですがねぇっ。
リンジーさんには紫薔薇資格を持たせたいのです。
現状の千人卒では、明らかに「あたしが考えてる部署へ配属するには役不足」と思えました。
本当は黒薔薇資格まで一気に…とも思ったんですけど、それはさすがに必要ないだろうと。
で、例の黒薔薇儀式抜きに昇格させる方法として、今しも我々の眼前にある黒光りしてリアルな雅美さんの雅美さんまんまなお墓の前ですれば、その瘴気を我慢して完遂することで達成できるのではとなりまして。
というのも、ネメシスさんのイライラが募ってんのか何か知りませんけど、お墓に近寄ると衝動的になるのです。
そして、女ならば男、男なら女を求めて狂うのです。
いえ、ある程度なら歓迎すべきだと思いますよ。
けれどもですねぇ。
その症状が、あたかも駄洒落菌原種にやられたかのごとく何日か続くとか、はたまたあたしのお乳を飲んでしまったかのような依存性を発症してしまうとかですねぇ。
要は、傍迷惑な物件と化しているのです。
そして、可能なら消毒したい。
で、痴女種でそういう神種族向けの消毒用装備を常時携帯していて、かつ、強い。
(なるほど、それであたくしを…)
(それだけじゃないんですよ。ほら、今の段階で既に、本当ならリンジーさんやシャルロットさんに症状が出始めてるはずなんですけど、みんな普通でしょ。これはアルトさんとリトルクロウの効果だと思うんです)
んーとですね。
リトルクロウ、つまり小烏丸という刀。
本来の性能を出すべき持ち主、選ぶようです。
で、ネメシスさんはアルトさんがこの刀を持ってるというだけで嫌がってます。
そして、ネメシスさんに着目した理由。
昨今の雅美さん、娘さんたちの出勤を離宮で見守る立場。
更には一家団欒の機会もなるべく設け、ほのぼの家族であるというのはよく存じ上げております。
なぜか。
離宮2階の田中家のお部屋の夕食や朝食の時になると、初代様が雅美さんの方に行くからです。
ええ。食事に釣られているのは、明白。
(かかかかかか家族の集いに行ってるだけですわよっ)
(うん。確かにあたし単独ならご飯1杯でいいんだけど、普通の倍、食べてるからね)
ほれみい。ネタは上がっとるんやっ、おばちゃんっ。
そして、田中家が和食主体というのが、離宮の食生活に影響を及ぼしております。
まず、理恵パイセンのお部屋。
そして昔たのきち、今は瞳さんが完全な日本人として生きてきた人です。
更にはクレーゼ叔母様も、天王寺生活が長かった方です。
で、姉は今更言うに及ばず。
比丘尼国から日本米を輸入しているうち、1/10は離宮で消費してるんじゃないかと言う疑いがあるほどデスねぇ…。
(マリアヴェッラ。オリーブオイルとトマトと岩塩にまみれたおしょくじ、あれ何とかなりませんの)
うっさいわいっ。
ええそうです。ルクレツィア母様がしょっちゅうどこかに出かけているのは相変わらずなので、孤塁を守るがごとくイタリア人の食生活を頑なに続けているのはあたしと、ゼアラさん。
しかし、瞳さんのお腹を考えますと…いくら千人卒以上は食事いらん水分いらんと言ってもですね、食べる楽しみと…それからこれは真面目な話、輸入品や生産・製造食材の点検も必要な昨今、供食内容のチェックは欠かせません。
離宮でお食事を作ったりしているのも、調理技術の維持はもとより、お魚の脂や育ち具合ですとか、お野菜の鮮度や生育度もろもろをこの目と舌で調べられるからに他なりません。
(できる限り門前町市場で手に入るもので作ってるからねぇ…)
ともかくですね。
食生活の違いはともあれ、田中家や室見家、そして今の高木家は…下手をするとクリスおじさまが来てイタリア風または和式朝食を食べていることすらある状況。
そして和食の時は、時折ですがたのきちすら部屋に戻って来てます。
即ち、家族間の結びつきを相応に重視したほのぼの状態。
殺伐とした空気を好むような方には極めて面白くはないでしょう。
そんなわけで、不貞腐れたネメシスさんが怒ってやってるんじゃないかと。
更には堕天使の皆様も、我々の家族生活をぬるいと憤懣が沸き起こっているのは承知しとります。
ええ。
バエルさんから垂れ込み、来てますよ。
(えええええ…)
(バエル様!部下を売るなどとは!)
(っていうか悪魔としてなら仲間を売るとか裏切るとか、むしろ美徳なんじゃないんですか?)
(い、いえ…さすがに上長に平然と密告されますと、我々も立腹しきりになりますよ…)と、憤怒を司るサタンさんが、ぷりぷり怒ってますね。
で、雅美さんのお墓とあっては、ある程度の不思議な事が起こっても不思議ではありません。
少なくとも痴女皇国の女官は「雅美さんだから仕方ない」と言う共通認識を持っています。
これはあたし1人の力では容易に覆すことは難しいのです。
何せ、当の本人が懲罰具倉庫に出入り自在。
地下の大金庫室が、懲罰具倉庫の向こうにあるのは伊達ではありません。
あのお部屋、たとえ扉を開けていても、室内を通過可能なのはデルフィリーゼ局長謹製の通行証と名のつくお札を携行しているか、黒グッズ取扱資格者並びに守られた者に限られます。
そんな物騒なお部屋の棚卸しのお手伝いすらしている人が、皆からどう思われているか。
(ベラちゃん、あたし今からそっち行っていいかな…)
(来てもいいですけど、瘴気抜きの作業ですよ。雅美さんの身体には危険じゃないのですか)
(うぐぐぐぐぐ)
(マリアヴェッラ陛下。確かにあの墓碑の危険さは女官にも問題視されています。いい機会ですから洗浄してしまいましょう。何なら漂白をお手伝いしますが)
(アフロディーネ。確か雅美母様がこの間、黒けるひゃーなるものを作っていたはず。あれを試しましょう)
もごもがががががと唸る声が離宮の方で起きましたので、田中家の娘さん二人が母親を拘束したのは明らかでしょう。
(雅美母様、時として暴走なさいますのは娘として悲しい限り)
(黒けるひゃーも、わたくしペルセポネーゼが使えば逆の要素を噴射するかと)
おばちゃんの娘さんにしては、ようできた子ですね。
(マリアヴェッラ…まず、貴女の穴を洗浄)
(初代様。身体があれば初代様の穴にエアコンプレッサーの銃を向けますよ)
うるさいおばちゃんはともかく、まずはアルトさんにお仕事を頼みましょう。
(で、アルトさん。今のリンジーさんはこれです。これを十万卒プラス制限百万卒で)
(おまかせを)
Lindsay Gallaghan(Lindsay Callaghan)リンゼイ・ギャラハン Thousand Suction(Limited Ten thousand Suction). 千人卒 Slut Visual. 痴女外観 White Rosy knights, Imperial of Temptress. 白薔薇騎士団 Information department, Ministry of Interior, Imperial of Temptress 痴女皇国内務局情報部付 Ian Lancaster Fleming anniversary Information Research Center. Foreign Affairs Division 2nd. イアン・フレミング記念情報研究センター外事第二室
(んでですね。シャルロットさんは万卒で、制限千人卒。そしておじさま…駄洒落菌は改良種A1でしたっけ…痴女種標準)
(だね)
(つまり、体内の駄洒落菌も普通の痴女種向けにして欲しいのですよ)
(あいあいさー)
Charlotte d'Albret Borgia. シャルロット・ダルブレ・ボルジア Thousand Suction.(Limited hundred)千人卒(限定百人卒) Pure Female Visual. 女性外観 Red Rosy knights. 赤薔薇騎士団 Italy Branch, Imperial of Temptress. 痴女皇国イタリア支部 Sacerdote pontificio. Temptress island chiesa di Nostra Signora. 聖母教会教皇庁痴女島教会司祭
で。
おじさま。
我々は囮なのです。
そう、ネメシスさんの憤怒の注意をそらすためのっ。
そしてですねぇ。
(た、確かにここは恐ろしい場所ですわね…あの変なお墓が原因なのはわかります。そして、田中雅美様が原因ではないのも…)
とは、黒漆剣を模倣した唐剣…中原龍皇国風の直刀剣を手にしたアンヌマリーちゃん。
ベテハリ君がこの垣根の中でおかしくならないのは、ひとえにアンヌマリーちゃんが横にいるからです。
ベテハリ君も、あたしとアンヌマリーちゃんがいるからにはおかしな事は起きないだろうと信頼を寄せてくれています。
クリスおじさまも、何だかんだ言って度胸はある部類です。
でぇ。
問題は…だからここは危ないんだって言ったでしょうが…。
ずるずると垣根の奥に引きずられていく瞳さん。
ゼアラさん、ごめんなさいね。
(前もここに来ましたけど、今日ほどには危なくなかったような…)
(ですから最低でも前程度の危険度に戻すんですよ…全く無害だとかえって色々と弊害がありますから)
ふふふふふ。
実はこのちんぽ墓には利用価値があります。
即ち、このお墓は黒薔薇鍛錬用他の用途で使っていた東屋や、公園清掃用具倉庫のすぐ近所に「ありました」。
過去形なのは、この絶林檎の垣根を作るにあたって、それらの設備を垣根の中に移してしまったからなのです。
そしてさらに、滝壺への道を改良。
聖院学院の子どもたちが遊びに行ける第一段の滝壺は、以前お話ししたイタリアのトスカーナ州のテルメ・ディ・サトゥルニアと滝のような温泉めいた浅い段の滝に改良。
<i695447|38087>
更には施工担当のエマちゃん、温水プールになるように少しだけ滝の水温をいじってくれています。
(これで子供達の遊び場にはちょうどいいですやろ。ちなみに上の段も似た感じで仕上げてまっせ)
エマちゃんにしてみれば、茸島保養所のプールリゾートコテージをこういう感じで仕上げたいので腕ならしにやったみたいですけど、同時に子供たちの福祉も考えてくれているようで、ありがたくOKを出した次第。
で、堤防に代わる懲罰場として整備した滝の上段。ここへの道は、この田中家のお墓の垣根の内側からしか歩いて行けないようにしたんですよ。
そう、ゼアラさんと瞳さんには、その上段に行ってもらってます。
もちろん懲罰ではなく、元来は痴女島に存在しているはずだった火山脈を使った温泉滝のスパで、我々が作業をしている間、ゆったりと過ごして使い勝手をチェックしてもらおうという思いがあります。
ですから、決して瞳さんをないがしろにしているわけじゃないんですよ…?
この温泉源流は、元々の滝のための地下水脈流と混ざって落ちていきます。
そして、湯加減調整をするための水門が、上段の脇にある管理小屋の円形ハンドルで動くんですよ。
いわば、愛人のためかはともかく、湯治場としての機能もあります。
どうですか瞳さん。月見風呂と洒落込みながら、ゆっくりとゼアラさんとですねぇ…。
(また陛下がクリスさんとばかりぃいいいいいい)
んぐぐぐぐぐ。女はテルメに目が無いはずなのに…。
「べらこ陛下。ここはあたくしががんばります。陛下は上のたきつぼで、ひとみさんのおせわをお願いできますか」
で、ここはクラブジュネス淋の森店の裏口です。
我々が向かうのは淋の森。
で。
何をしようとしているのか。
その説明の前に。
リンジーさんが着想したガールスカウトの痴女皇国版はどうですかという提案ですが、これに対する各方面の評価を見てみましょう。
まず、リンジーさんの構想に価値ありと判断したアグネスおばさま。
(ガールスカウトというのはいいところに目をつけたわね。確かにそちらでいうKnightsを編成するよりは平和的でいいんじゃない? それに、その子たちの管理であれば男を直接相手しなくとも良い事になるから…あとはリンジーの能力次第。そして、グッドニュースかどうかは分からないけどね…ハイスクールでも「仕切れる子」だったという人物評価が出ているわよ)
で、聖母教会の活動に利用できる可能性の萌芽を感じた叔父。
(これならば出家させずとも、教会活動に貴族や富豪の子弟を動員する口実に出来るじゃないか。更には、そうした良家の子女を教育する場とすれば積極的に子供を行かせる親も出て来よう。そのシニョリーナの構想、失敗したところで莫大な損失が出るものでもなければ、ひとつやらせて差し上げて良いのではないか?)
茸島分校での軍事教練教程の授業カリキュラムに組み込めるのでは? と提案してきたオリューレさん。
(その少女奉仕団、先輩後輩の関係が存在しますのでしょ? では高度な訓練を受けた先輩少女騎士が後輩や一般少女を保護しながら慈善行為のために活動するのは自然な流れでは?)
あと、たのきちからガールスカウト制度の説明を受けたハリティリーネ福祉部長も、俄然、乗り気。
(ふーむ、確かに、我々を除けば子供に読み書き算術を教えるのは教師を雇えるか、お金を支払い習わせるか…身内に教えられる者がいれば話は別ですが…一般的には貧しい者ほど、教えを受ける機会に恵まれませんわね)
ですね。その辺の教育格差は壮絶と言って良いくらいでしょう。もはや親ガチャとやらどころではない、格差もここに極まれりと言うべき話です。
(しかし、富裕な者が施すならば話は別。連邦世界の預言者由来の宗教では、富裕者は貧者に施すのが義務であったかと存じますが、それに倣えば良いでしょう。更には…その子弟が恵まれぬ同年代に恵むならば、与える過程で世の中の実態を知ることにもつながるでしょう。制度定着までは苦難の道のりになるとは今の段階でも予想は出来ますが、その苦難を乗り越えた先に得られるものもまた大きいのではないでしょうか)
とまぁ、今の段階でさえ「失敗した際のリカバリーが可能ならやってもらっていいんじゃない?」と乗り気の方々が。
そして、たのきちが話を聞いていた事が良い方向に働きました。
財務局長たるデルフィリーゼ叔母様。姉から数えて先先代金衣女聖。
つまり、かつては聖院トップとして福祉にすら目を向けていた方が、我々のやりとりに参加なさいました。
(確かに増え続ける女官の経費支出は問題である。だが、精気資源枯渇の方が女官には遥かに重要な問題なのを忘れてはならぬ。金を使うべき社会すら消滅しては本末転倒。人の子供が増える事、即ち大人が増える事なり。マリアリーゼ、この支出で痴女皇国の財源が枯れる事はあるまいとは思うが、万一の場合は済まぬがよろしく頼む)
…つまり、姉とエマ助に「足が出たら不足分を掘りに行ってくれ」という事です…。
ですが、経費を使って良しとの判断を下されたこと、すなわち修道院建設費用を関係国家に配ってよいという指示と見てよいでしょう。
そして、修道女官の増員に伴う報償金支出もやむなし、との財政出動の判断を下したにも等しい発言ですね。
(マリアヴェッラ。予算については案ずるな。お前は皇帝として…慈善女官計画とでもしておくが、指揮する女官と、現地で教育に当たる女官を選任することに専念するのが良いだろう。必要な人選を行い、任命すれば公布は部下たちが行う。頼んだぞ)
はい…。
そうなんですよ、姉や母様が以前言ってた「ベラ子は有能な部下を従えるようにしろ」という事例のひとつですね…。
文字通りの超人が多数揃っている歴代金衣からすると、姉のように一人で何でもかんでもやってしまう部類の方が金衣向きだと見る女官が多かったらしいのですが。
(マリアヴェッラ。アレーゼだ。聖院当時と違って、各国の政治に積極関与している上に、指揮監督下にある女官の数はもはや倍どころの騒ぎではない。大国の政治体制…それも連邦社会から見ても相応の国家規模にまで育っている痴女皇国で、従来のやり方に固執した専制君主方式はかえって危ない舵取りにもなりかねん)
と、確実に超人の上にも超人なアレーゼおばさまから、当の超人君臨制度に懸念を示す声が。
(ベラ子…おばさまはおめーを庇ってんだよ…気付け…)あぃあぃ。
(まぁ、お前を庇っているのは何もマリアだけではない。お前の後見人たる私だけでなく、初代様を含めた歴代金衣の全てはお前の皇帝位を維持するために動いているから心配するな。任せるべきは任せて…あ、クレーゼの浪費だけは常に監査しておいてくれ。うん)
そそ、叔母様は姉としばらく暮らして面倒を見ていた関係で、姉をマリアリーゼではなくマリアと呼びますよ。姉からすると第三の母親のような存在らしいです。
で。
その姉の出産を担当した第二の母親というべき方が。
(あねうえ。わたくしも義姉様からかいしゃをわたされた時に節約と清貧を否応なく覚えさせられたんですわよ!)
(売女の会社が大変だったのは私も知ってるし、お前やスザンヌの女官寮食堂利用や、あげくお前の金衣報償金の支給承認と、購買部での日用品購入を認める稟議に署名もしたぞ…それより、たまには池尻大橋に行ってスザンヌの成長も見ておいてやれ…私ですら時折聖院に行って、しほ子の顔を見てるんだからな…)
(ま、まぁ…確かにお義姉様もえぬびーに行かれましたし…)
(阿波内侍殿や宇賀神桔梗さんに丸投げだけはやめておいてくれよ…)クレーゼおばさま、さすがに娘さん…スザンヌちゃんの事を言われてはしゅんとしたようですね。
(ベラ子。ジーナ母様から義夫お祖父さんの会社を引き継いで切り盛りしてた最初、クレーゼ母様は大変だったんだよ…で、食費や生活費に困って、聖院の食堂や売店を使えるようにした時期があってな…)とは姉の内緒の事情説明です。
おわかりでしょうか。
歴代金衣、痴女皇国のねーさん以外は全員…母親である事を経験しています。
ですので、娘や子供の育児の話題には敏感も敏感。
ベテハリ君とアニサちゃんに子作りさせたのも正解と言えば正解なんですよね…茸島保養所の用人雇用、一発で通ってしまいましたし…。
(こうしこんどうだめぜったい)
(ですよねー伊藤さんー。ぜーったいベラちゃんが囲い込みあんあんあんっ)
(सुश्री तानोज़(田野瀬さん)…この場は黙っておきましょう…)ええ、空気を読めるインド人の方って素敵ですね。
--
そんな訳で、妾に正妻のごとく監視されているあたくしマリアヴェッラ。
なにせ、この後で行く場所は…人を選ぶのです。
で、あの場にいた全員で押しかけるわけにはいきません。
後ろをこそーっと瞳さんがついてきてますけど、ゼアラさんには(あそこは危険すぎるの、ゼアラさんもよくご存知ですよね…瞳さんの様子が危険だと思ったら、独自判断で退避してください…)とお願いしております。
(ええ、あそこですか…それは確かに危険。私も正直、あそこは足を踏み入れたくはありませんね…)
どこへ向かうのかお話する前に。
(シャルロットさん…あなたが感染した駄洒落菌の解除には条件を付けさせて頂きます。今後の修練士と助修士の教育、やはり専門の施設を整備した上で集約的に行う方がいいんじゃないかと思いますし…)
と、淋の森の奥への道すがら、シャルロットさんにお説教をば。
いえ、このマリアヴェッラとて、人に道を説くには足らぬものがあるかも知れません。
しかし、いくら生理的な嫌悪感や忌避感があっても、無用な差別をことさらに助長するようでは今後、聖母教会職員としての勤務適性に疑問符をつけざるを得ないのも理解して欲しいのです。
更には、シャルロットさん…そしてリンジーさんが嫌がってるような人物…非行少年や肉体労働系成人男性…特に非・欧米系の方々の雇用や活用は痴女皇国、ひいては世界の発展に必要不可欠。
彼らを連邦世界のように酷使消耗させずに、労働資源…そして精気資源化するためにも、聖母教会での教育体制は万全でなくてはなりません。
(まこと陛下の申される通り。この方針に一応の賛意を寄せるならばまだしも、根拠のある理由なき否定は…厳罰でよろしいかと)あー…ハリティリーネさん、めっちゃ怒ってますね…。
文教局の教育制度…特に少年を全寮制生活下で教育するとともに若い精気を余すところなく頂戴する福祉部の政策ですね…たのきちの案が形になったのは、正直申し上げてハリティリーネ福祉部長の献身と尽力なしには不可能だっただけに、今や児童福祉の専門家として押しも押されぬ地位を痴女宮で確立しておられます。
その、痴女宮並びに聖院学院の福祉の権威とでも言うべきハリティリーネさんの発言は、聖母教会側でも決して無視はできないでしょう。
ええ。
叔父たる聖母教会初代教皇のカエサル一世も、聖院学院福祉部の成果を見たからこそ、教会主導の少年少女活用を決めたようなものです。
(まぁ…可能な限り、シャルロットさんには欧州帰還と役職の用意をという事で、あたしも考えています。ですが、相応の役職をご用意するには、やはり実力も欲しいところなのです…)
要は、コネでの腰掛け人事で椅子を用意するような余裕、我が痴女皇国にはおまへんで。
あたしは、これが言いたいのです。
幸いなことに、セレビッチ作戦での記念すべき獲物第一号たるジェニファーさん。
そのノリと前向きな姿勢が評価されまして。
(あのひとはジュネス向きですね。きょういくは必要でしょうけど、ただならぬさいのうを感じます)
とは、あたしの左隣で、クリスおじさまを両側から挟む形で歩いているアルトさんの評価です。
(そうですね。正直、思わぬ拾い物と言うべきでしょう)
Jennifer Goldluck. ジェニファー・ゴールドラック Thousand Suction(Limited Ten thousand Suction). 千人卒 Slut Visual. 痴女外観 White Rosy knights, Imperial of Temptress. 白薔薇騎士団 Information department, Ministry of Interior, Imperial of Temptress 痴女皇国内務局情報部付 Ian Lancaster Fleming anniversary Information Research Center. Foreign Affairs Division 2nd. イアン・フレミング記念情報研究センター外事第二室
はい。内務局長の田中雅美さんの発議扱いにしましたけど、一発昇格決定。
ちんぽも装備して、淋の森店の副店長候補としていきなり抜擢です。
どこかの右顧左眄大臣とは違うのだよ鶏のように首を振り世論に左右される大臣とはとか言えと天の声に強要されましたが、そんな問題首相がいるのでしょうか。
まぁともかく、話が動くと早い痴女皇国です。
(噂には聞いていましたが、早すぎる気も…)
(いえいえリンジーさん、我々はこんなもんですよ。それより…ジュネス勤務免除の代替人事なのですが…これからの試練を受けて頂く事で、万卒以上への昇格はその代替人事を受けて頂くために必須となります。かなり辛い話になりますけど、頑張ってくださいね…)
(ほほほほほ。そのくつうを最小限にするためにあたくしがよばれたのです。おおぶねに乗ったつもりでらくにしてくださいっ)
えーと。
あのですねアルトさん。
黒薔薇資格者を作るわけじゃないですからね。
そこんとこ、間違えないでくださいね。
と、穴開きばんぴれら衣装…つまり、元来は聖院白金衣で、現在はアルトさん所有のそれを着てやる気満々のアルトさんに「そこまでせんでええから」と言うのを遠回しに伝えます。
(ほほほほほ。あたくしがしょうかくさせられない女という評価はまちがっている。これをみなさまにお教えしたいのです!)
えーとですね。今いてるアルトさん、聖院のアルトさんで間違いないですからね。
痴女皇国の方のアルトさんじゃありませんからね。
ですが、今から向かう場所にはアルトさんがいた方がいいのです。
ほんとーはだりあさんでもいいのですがぱいせんがいやがるのです。
(何よその棒読み…)
(っていうかパイセンがあんなお墓を提案するから通ったんじゃないですか! あんなもん可能なら撤去か移築したいですよ!)
(実際のところ迷惑なら壊してもらってもいいとは思うの…ただ…下手に壊したり他に移すともっとヤバくなるって言われたし…ベラちゃん。言っとくけどね、あたしもあそこまで禍々しい存在になるって思いもよらなかったわよ…)とは、当のお墓に入っている遺骨の持ち主たる雅美さんからですが。
(もはや祀られてる本人ですら迂闊に触れないというか、掃除で行く以外ではきついらしいですからね…)
(跡形もなく壊せなくもありません。ただ…かんぜん破壊には精気をそれなりに消費しますわよ…いえ、あたくしも正直マリアヴェッラと同じ意見でしてよ…よもや、あんな危険物になるとは…当初の予定通りに痴女宮正面になぞ作れば大変なことになっておりましたわよ…)と、当初はお墓を作るのに賛成していた初代様も、さすがにあの瘴気に満ち満ちた状態では何らかの対策が必要だろうから、絶林檎で隠したのはやむなしとの判断も。
ええ、この一連の会話で、我々がどこに向かっているのかお分かりでしょう。
雅美さんのお墓です。
このお墓についてはアルトさんのお話他、いくつかのエピソードでその存在や逸話が語られて来たとは思います。
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/128/
しかし、今のお話で、ちょっと洒落にならない事が起きていると思った方へ。
正解です。
高さ5mほどの絶林檎の木が何重にも囲む山側の一角。
本当なら公園内道路からは、奥まった場所にお墓を雨風から守る屋根が見えたはずなのです。
ですが、今は絶林檎の植え込みで隠されています。
なぜか。
売春客はもちろん、万卒未満の痴女種ですら、うかつに近づいて貰うと困る状態だからですっ。
ですから瞳さんも、できれば来て欲しくないのです。
(そして、アルトさんが来て頂くとありがたい理由でもあるんですよ…ここの現状)
ええ。
そして、リンジーさんとシャルロットさんをここに連れて来た理由ですがねぇっ。
リンジーさんには紫薔薇資格を持たせたいのです。
現状の千人卒では、明らかに「あたしが考えてる部署へ配属するには役不足」と思えました。
本当は黒薔薇資格まで一気に…とも思ったんですけど、それはさすがに必要ないだろうと。
で、例の黒薔薇儀式抜きに昇格させる方法として、今しも我々の眼前にある黒光りしてリアルな雅美さんの雅美さんまんまなお墓の前ですれば、その瘴気を我慢して完遂することで達成できるのではとなりまして。
というのも、ネメシスさんのイライラが募ってんのか何か知りませんけど、お墓に近寄ると衝動的になるのです。
そして、女ならば男、男なら女を求めて狂うのです。
いえ、ある程度なら歓迎すべきだと思いますよ。
けれどもですねぇ。
その症状が、あたかも駄洒落菌原種にやられたかのごとく何日か続くとか、はたまたあたしのお乳を飲んでしまったかのような依存性を発症してしまうとかですねぇ。
要は、傍迷惑な物件と化しているのです。
そして、可能なら消毒したい。
で、痴女種でそういう神種族向けの消毒用装備を常時携帯していて、かつ、強い。
(なるほど、それであたくしを…)
(それだけじゃないんですよ。ほら、今の段階で既に、本当ならリンジーさんやシャルロットさんに症状が出始めてるはずなんですけど、みんな普通でしょ。これはアルトさんとリトルクロウの効果だと思うんです)
んーとですね。
リトルクロウ、つまり小烏丸という刀。
本来の性能を出すべき持ち主、選ぶようです。
で、ネメシスさんはアルトさんがこの刀を持ってるというだけで嫌がってます。
そして、ネメシスさんに着目した理由。
昨今の雅美さん、娘さんたちの出勤を離宮で見守る立場。
更には一家団欒の機会もなるべく設け、ほのぼの家族であるというのはよく存じ上げております。
なぜか。
離宮2階の田中家のお部屋の夕食や朝食の時になると、初代様が雅美さんの方に行くからです。
ええ。食事に釣られているのは、明白。
(かかかかかか家族の集いに行ってるだけですわよっ)
(うん。確かにあたし単独ならご飯1杯でいいんだけど、普通の倍、食べてるからね)
ほれみい。ネタは上がっとるんやっ、おばちゃんっ。
そして、田中家が和食主体というのが、離宮の食生活に影響を及ぼしております。
まず、理恵パイセンのお部屋。
そして昔たのきち、今は瞳さんが完全な日本人として生きてきた人です。
更にはクレーゼ叔母様も、天王寺生活が長かった方です。
で、姉は今更言うに及ばず。
比丘尼国から日本米を輸入しているうち、1/10は離宮で消費してるんじゃないかと言う疑いがあるほどデスねぇ…。
(マリアヴェッラ。オリーブオイルとトマトと岩塩にまみれたおしょくじ、あれ何とかなりませんの)
うっさいわいっ。
ええそうです。ルクレツィア母様がしょっちゅうどこかに出かけているのは相変わらずなので、孤塁を守るがごとくイタリア人の食生活を頑なに続けているのはあたしと、ゼアラさん。
しかし、瞳さんのお腹を考えますと…いくら千人卒以上は食事いらん水分いらんと言ってもですね、食べる楽しみと…それからこれは真面目な話、輸入品や生産・製造食材の点検も必要な昨今、供食内容のチェックは欠かせません。
離宮でお食事を作ったりしているのも、調理技術の維持はもとより、お魚の脂や育ち具合ですとか、お野菜の鮮度や生育度もろもろをこの目と舌で調べられるからに他なりません。
(できる限り門前町市場で手に入るもので作ってるからねぇ…)
ともかくですね。
食生活の違いはともあれ、田中家や室見家、そして今の高木家は…下手をするとクリスおじさまが来てイタリア風または和式朝食を食べていることすらある状況。
そして和食の時は、時折ですがたのきちすら部屋に戻って来てます。
即ち、家族間の結びつきを相応に重視したほのぼの状態。
殺伐とした空気を好むような方には極めて面白くはないでしょう。
そんなわけで、不貞腐れたネメシスさんが怒ってやってるんじゃないかと。
更には堕天使の皆様も、我々の家族生活をぬるいと憤懣が沸き起こっているのは承知しとります。
ええ。
バエルさんから垂れ込み、来てますよ。
(えええええ…)
(バエル様!部下を売るなどとは!)
(っていうか悪魔としてなら仲間を売るとか裏切るとか、むしろ美徳なんじゃないんですか?)
(い、いえ…さすがに上長に平然と密告されますと、我々も立腹しきりになりますよ…)と、憤怒を司るサタンさんが、ぷりぷり怒ってますね。
で、雅美さんのお墓とあっては、ある程度の不思議な事が起こっても不思議ではありません。
少なくとも痴女皇国の女官は「雅美さんだから仕方ない」と言う共通認識を持っています。
これはあたし1人の力では容易に覆すことは難しいのです。
何せ、当の本人が懲罰具倉庫に出入り自在。
地下の大金庫室が、懲罰具倉庫の向こうにあるのは伊達ではありません。
あのお部屋、たとえ扉を開けていても、室内を通過可能なのはデルフィリーゼ局長謹製の通行証と名のつくお札を携行しているか、黒グッズ取扱資格者並びに守られた者に限られます。
そんな物騒なお部屋の棚卸しのお手伝いすらしている人が、皆からどう思われているか。
(ベラちゃん、あたし今からそっち行っていいかな…)
(来てもいいですけど、瘴気抜きの作業ですよ。雅美さんの身体には危険じゃないのですか)
(うぐぐぐぐぐ)
(マリアヴェッラ陛下。確かにあの墓碑の危険さは女官にも問題視されています。いい機会ですから洗浄してしまいましょう。何なら漂白をお手伝いしますが)
(アフロディーネ。確か雅美母様がこの間、黒けるひゃーなるものを作っていたはず。あれを試しましょう)
もごもがががががと唸る声が離宮の方で起きましたので、田中家の娘さん二人が母親を拘束したのは明らかでしょう。
(雅美母様、時として暴走なさいますのは娘として悲しい限り)
(黒けるひゃーも、わたくしペルセポネーゼが使えば逆の要素を噴射するかと)
おばちゃんの娘さんにしては、ようできた子ですね。
(マリアヴェッラ…まず、貴女の穴を洗浄)
(初代様。身体があれば初代様の穴にエアコンプレッサーの銃を向けますよ)
うるさいおばちゃんはともかく、まずはアルトさんにお仕事を頼みましょう。
(で、アルトさん。今のリンジーさんはこれです。これを十万卒プラス制限百万卒で)
(おまかせを)
Lindsay Gallaghan(Lindsay Callaghan)リンゼイ・ギャラハン Thousand Suction(Limited Ten thousand Suction). 千人卒 Slut Visual. 痴女外観 White Rosy knights, Imperial of Temptress. 白薔薇騎士団 Information department, Ministry of Interior, Imperial of Temptress 痴女皇国内務局情報部付 Ian Lancaster Fleming anniversary Information Research Center. Foreign Affairs Division 2nd. イアン・フレミング記念情報研究センター外事第二室
(んでですね。シャルロットさんは万卒で、制限千人卒。そしておじさま…駄洒落菌は改良種A1でしたっけ…痴女種標準)
(だね)
(つまり、体内の駄洒落菌も普通の痴女種向けにして欲しいのですよ)
(あいあいさー)
Charlotte d'Albret Borgia. シャルロット・ダルブレ・ボルジア Thousand Suction.(Limited hundred)千人卒(限定百人卒) Pure Female Visual. 女性外観 Red Rosy knights. 赤薔薇騎士団 Italy Branch, Imperial of Temptress. 痴女皇国イタリア支部 Sacerdote pontificio. Temptress island chiesa di Nostra Signora. 聖母教会教皇庁痴女島教会司祭
で。
おじさま。
我々は囮なのです。
そう、ネメシスさんの憤怒の注意をそらすためのっ。
そしてですねぇ。
(た、確かにここは恐ろしい場所ですわね…あの変なお墓が原因なのはわかります。そして、田中雅美様が原因ではないのも…)
とは、黒漆剣を模倣した唐剣…中原龍皇国風の直刀剣を手にしたアンヌマリーちゃん。
ベテハリ君がこの垣根の中でおかしくならないのは、ひとえにアンヌマリーちゃんが横にいるからです。
ベテハリ君も、あたしとアンヌマリーちゃんがいるからにはおかしな事は起きないだろうと信頼を寄せてくれています。
クリスおじさまも、何だかんだ言って度胸はある部類です。
でぇ。
問題は…だからここは危ないんだって言ったでしょうが…。
ずるずると垣根の奥に引きずられていく瞳さん。
ゼアラさん、ごめんなさいね。
(前もここに来ましたけど、今日ほどには危なくなかったような…)
(ですから最低でも前程度の危険度に戻すんですよ…全く無害だとかえって色々と弊害がありますから)
ふふふふふ。
実はこのちんぽ墓には利用価値があります。
即ち、このお墓は黒薔薇鍛錬用他の用途で使っていた東屋や、公園清掃用具倉庫のすぐ近所に「ありました」。
過去形なのは、この絶林檎の垣根を作るにあたって、それらの設備を垣根の中に移してしまったからなのです。
そしてさらに、滝壺への道を改良。
聖院学院の子どもたちが遊びに行ける第一段の滝壺は、以前お話ししたイタリアのトスカーナ州のテルメ・ディ・サトゥルニアと滝のような温泉めいた浅い段の滝に改良。
<i695447|38087>
更には施工担当のエマちゃん、温水プールになるように少しだけ滝の水温をいじってくれています。
(これで子供達の遊び場にはちょうどいいですやろ。ちなみに上の段も似た感じで仕上げてまっせ)
エマちゃんにしてみれば、茸島保養所のプールリゾートコテージをこういう感じで仕上げたいので腕ならしにやったみたいですけど、同時に子供たちの福祉も考えてくれているようで、ありがたくOKを出した次第。
で、堤防に代わる懲罰場として整備した滝の上段。ここへの道は、この田中家のお墓の垣根の内側からしか歩いて行けないようにしたんですよ。
そう、ゼアラさんと瞳さんには、その上段に行ってもらってます。
もちろん懲罰ではなく、元来は痴女島に存在しているはずだった火山脈を使った温泉滝のスパで、我々が作業をしている間、ゆったりと過ごして使い勝手をチェックしてもらおうという思いがあります。
ですから、決して瞳さんをないがしろにしているわけじゃないんですよ…?
この温泉源流は、元々の滝のための地下水脈流と混ざって落ちていきます。
そして、湯加減調整をするための水門が、上段の脇にある管理小屋の円形ハンドルで動くんですよ。
いわば、愛人のためかはともかく、湯治場としての機能もあります。
どうですか瞳さん。月見風呂と洒落込みながら、ゆっくりとゼアラさんとですねぇ…。
(また陛下がクリスさんとばかりぃいいいいいい)
んぐぐぐぐぐ。女はテルメに目が無いはずなのに…。
「べらこ陛下。ここはあたくしががんばります。陛下は上のたきつぼで、ひとみさんのおせわをお願いできますか」
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