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狂気の新旧交代劇・波乱の戴冠式編その2
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「では、これより戴冠の儀式に入ります。アルトリーゼ、皇帝マリアリーゼと共に中央へ」
(やはりマリア様、ちょっとご様子がおかしいですね。…クレーゼ様。申し訳ありませんが、ご先祖様方代表という事で誰かに乗り移って頂けません?マリア様の頭の薔薇飾りを外すお役目をご先祖様が買って出られたという事で)
(アルトさん。うちがやりまひょ。玉藻はん、クレーゼ様が入ったらうちの身体作り替えて。今ならうちは色気なしの酢豚姿や。それがクレーゼ様そっくりになったら誰が見ても説得力あるやろ。おかみさま。見届け代表としてお聞きしますが、それでよろしか?)
(かめへん。助けたれ)
(は。クレーゼ様、うちですんまへん。あとエロ狐おりますけどよしなに)
(ほいほい。よいしょ。あらほんと。しっぽ九本にちんぽ九本…)
(わわわ待った待ったそれいじるの後にしたって下さい!儀式優先!)
「はい。ではエレンファーネの身体をお借りしてますけど、クレーゼでございます。では、ご先祖を代表してわたくしがマリアリーゼより薔薇を預かりますわね。マリア大丈夫?うーん。とりあえず外させて頂きますわよ。はい」
(どうもこれ、まてりあるぼでぃというのですか。それの影響かも知れませんわね。おかみさま。戴冠を見届けさせ次第マリアは袖に下げます。密かに袖側にお越し頂けますか?)
(あいわかった。そなた様も傍にいてくれ)
「では、わたくしクレーゼより薔薇冠を先代聖母たるジーナお義姉様に預けさせて頂きます。文官代表マイレーネ様、よろしうございますか」
「異論ございません。お渡しを」
「ではお義姉様。これを」
「はい。確かに薔薇冠をクレーゼ金衣女聖より預かりました。ではこの薔薇冠をマリアヴェッラの髪に取り付ける事よろしいでしょうか?武官代表アレーゼ顧問」
「異存なし。マリアヴェッラ。先代聖母より薔薇冠を預かりなさい」
「かしこまりました。お母様どうぞ」ベラ子の頭に薔薇飾りを取り付けます。付け根が一対の櫛になっており、バネ仕掛けで髪の毛をぱちんと挟む構造です。
よいしょ。
「ではマリアヴェッラ、舞台中央へ」そこでルクレツィアさん登場。るっきーはベラ子を椅子に座らせる役ですが…イザベラさんもシスター姿で付き添っています。そしてるっきーも同じ姿。
で。椅子前で。
「イザベラ・デステ国母。連合イタリアとしてマリアヴェッラが痴女皇国皇帝の座に座る事を承認されますか。そしてルクレツィア・ボルジア様。聖母教教皇庁名代としてチェーザレ・ボルジア様よりの書状を携えておられるかと存じます。イザベラ様。ルクレツィア様の書状をお改め下さい」
「確かに、新聖母マリアヴェッラを了承する権限を我が妹ルクレツィアに預けるとあります。即ち、今よりの我が義妹の振る舞い、教皇庁の決定と同じでございます。ルクレツィア。マリアヴェッラの親として娘を導きあれ」
「お義姉様。承知いたしました。マリアヴェッラ。自らの意志でこの椅子に腰掛けるかをお選びなさい」
「御意」あっさり座るベラ子ですが、決意はその眼に漲っています。
そして立ち上がり…。
「皆様。只今より第二代聖母並びに神聖痴女皇国女皇帝の地位を引き継いだマリアヴェッラ・ボルジアとして臨時の勅命を発させて頂きます。アルトリーゼ様。初代女皇帝マリアリーゼ姉様を至急舞台袖に。診察の方にお預けくださいませ」
「アルトリーゼ御意。仰せのとおりに」胸に手を当てててから、後ろ向きにマリアを載せた車椅子ごと下がるアルトくん。アドリブだけど上手くこなしてくれたのでひと安心です。
「さて、異母姉妹としてマリアリーゼ姉様の容態が気になるところではあります。ですが、これもわたくしに対する試練です。そして聖母として授かりし我が子エマニエル。貴女に聖母としてのお願いをいたします。今この場に、おかみさまと互角たる貴女を打ち負かす者はおりませぬ。かかるそなたの力、母に貸す意思あらば我が隣に。そなたが母と対である姿を皆にお示し下さい」
「エマニエル。承知いたしました」エマ子がベラ子の隣に立ちます。
「そしてもう一人のエマニエル。壇上に。そなたは聖院世界の子。聖院世界と聖母を助くる意志あらば聖院聖女マリアリーゼ姉様の隣においでなさい」
これ、予定事項。痴女皇国として白エマ子の存在は認識しています。聖院世界の重要人物として白マリにひっついてよしと許可の出てるVIPでっせアピールね。
「そして我がしもべ、ミカエル・ダリア・ワーズワース。クリス・ワーズワース様の今際の際のお子として、初代聖母と共に我が傍に」んで、ミカ子に連れられてあたしは…手に桃色の薔薇を三本。ミカ子が渡してきた。
「そして、参列の方のうち国賓に該当する三名の方に、この薔薇をお贈りさせて頂きたく」
うん。ピンクローズは痴女皇国の国花。これを受け取るのはイコール国家承認も同じ意味があんだよね。
で、ベラ子はまず、ワーズワース大公とアグネスさんを舞台に呼びます。
(受け取ったらアグネスさんの胸元へ。飾ってあげて夫婦仲アピールお願いしますよ)あたしが心話で耳打ちしときます。
で、ワーズワース大公が席に戻ると続いてラッツィオーニ大将を召喚。
こちらは大将の胸元にベラ子が飾りまかす。そして二人で並んで立つ姿をカメラマン役のハゲが撮影して仲良しアピール。
(ハゲは余計だ。それより今年の大将退役後の事務局長選出馬、聞いてるよな)
(だからプレス向けサービスカット撮影さしたってんやない。宙兵隊も閣下も痴女皇国とは仲良しですよーと)
で、最後は…。
「クリサンサマーネ女官。日本国の派遣職員をご案内願います」実は蒔子さんにはクリーム色のスーツに着替えて貰っている。で、連れてくるのは白ネクタイグレースーツ姿の若様。
そして、一瞬だけおかみ様に来てもらいます。
おかみ様がベラ子から薔薇を受け取って若様の胸ポケに差す図式。
(痴女皇国との交流を深める手伝いなら動いてやるから、おのれら頭使えやと。若様は話がわかるし、あんたらと付き合い長いからのう。ちなみに聖院側の比丘尼国の長もわしやからな)
(ま、これで関係を読んでくれたらいいのですがね)
(蒔子さんに、日本のあの方らが着そうなスーツを着せたメッセージも読みよるかなぁ)これ、未来永劫預かる気はないよ。返す気満々よって。
(一応伝えてはおきます)
(あと、薔薇を贈る意味。これ、「こちらが」贈る立場ですらあるからってワーズワース大公の入れ知恵な。ほんまにこういう底意地の悪い外交メッセージ入れる事にかけてはえげつないセンスあるよなー)
実はこの心話、NBはもとより連邦の皆様にまる流し。つまりNBは「痴女皇国トップに入れ知恵できる立場でもあるよ」という二重アピールなわけで…。
(長年の経験からくる知恵と言う奴だよ)
(はっはっはっ、閣下にはかないませんな。それよりジーナ。君は生涯に亘り俺の有能な部下だ。俺が夜の役に立つかはともかく、沖縄が遠のいて寂しくなるのはかなわん。ニューヨークに移っても顔は出しに来てくれよ)
(ママとこの卒業生であそこに店開いてるのがおりますわ。アナポリスの近所は流石に厳しいんで…)
(とまあ若様、マリ公が得意なこういうやりとり、日本でもこれが出来るだけの安定政権体制作りたいよなぁ)
(マリアさん真剣にこういうの好きでしたからねぇ)
(つくづく惜しい娘を)
(まだ死んでない死んでない!それより戴冠式が終わったら来てくれ。おかみ様、あたしのこれの原因を掴めたらしいんだ)
(よし、マリアヴェッラに締めさすわ。ワーズワース卿も来られます?言うたら外賓の方全員、マリアの血縁が縁者ですさかいに)
(うむ。孫娘だしね。私も聞かせてもらおう)
そして閉会の儀もそこそこに、マリア様の周りに集まる皆様。
「まず原因についてやけど、痴女皇国のマリアに責任がある話と違うと思う。これは、クレーゼはんもわしも一致しとる。ふじん、念の為にあんたも診たってくれるか?」
「まぁ覚えて頂けるなら夫人でも…って誰の妻になれば良いのか…で、診察結果。おかみさまとクレーゼ様の診断とまとめて、私が申し上げましょうか」
「うむ。言うたって」
「…ものすごく言いづらいんですけど…サボっておられる状態です。皆さんちょっと待って待って!ちゃんと説明しますから!で、普通ならマリア様が責められる話になるのに、何でわざわざおかみさまがマリアリーゼ姉様のせいではないと前置きされたか。ここをよく理解頂きたい話なんですよ」
じろーっと皆を睨む我が最強娘。
「で、クレーゼ様が、マリアリーゼ姉様の人工身体化…マテリアルボディ化した事が原因ではないかと推察された通りなんです、原因。…あと、これまた申し上げにくいお話がいくつか。まず一点め。原因、私とマリアヴェッラ様にあります」
ええー?という皆さん。
「実はマテリアルボディの自己セーブ機能らしいんですよ。で、マリアリーゼ姉様や私、一種の生体兵器みたいなものだと申しましたでしょ。あたしの生物学的父親はともかく、機能的な父親のアレ…神様免許仮免状態、もう一万年くらいやっとけと怒っておきましたから。ええ、ジーナ様やマリアリーゼ姉様、わかりますよね。アレの設計ミスです。つまり、上位互換者が現れたらスリープモードに移るようにしてたって…何さらしとんねんあのアホは…」
「つーまーりー。ベラ子とエマ子が昇格したり現れたから黒マリは寝とこうと身体が勝手に動いてしまった状態なんか…あいつはアホかああああああ!」
「…マジかよ…何でそんな間抜けな仕掛けつけたんだよ…」
「一応言い訳。君達は強力だから何人もいたら世界が混乱する。だから一番強いの以外はパワーダウンするように考えたんですと。ただ、それを差し引いても、もう少し考えてやれときっつく言い聞かせましたから。引き継ぎとか、それぞれの事情があるんだから、互いに敵対状態になってる訳でもないのに、いきなり機能制限したりスリープ入れたら逆に世界が混乱するだろと!無機質世界みたいにフルデジタル化されててエラー訂正も合理的に出来る訳じゃないでしょ。学習やり直しだね本当」
「なあ、エマ子…アレにそこまで言うのかよ…」
「あったりまですやん、ねーさん。今回の件は完璧にやつのミス。ただねぇ、ここで問題二点めが出てくんのよ。すぐ訂正できない、有機体に戻すのが手っ取り早いけど、身体再構成を何度も何度もやったら機能破壊の可能性があるんですと」
「あー、あたしも今、直接謝られてる。端的に言って、ベラ子やあんたが危機に陥るか、例のあれを孕むタイミングまで寝てた方がいいと言われたよ…」
「分体…つまり、まりあさんは最悪、あたしがリンクしてサポートや制御出来るけどねぇ。ファインテック社の自動縫製システムリンクとか覚えるの、これからだっちゅーのに。とりあえずフルスリープさせんな。最低でも被服管理能力は維持させろやとゴテといたから、まだしばらくは完全スリープはしない。アルトさんも」
「やっぱりアルトも巻き添えになんのか…」
「マテリアルボディにしちゃったからねぇ。あと、問題点三点めー。はい、今までの話を聞いて顔が真っ青になってる聖院のマリアねーさん。それと白エマ子、あたし。あなたたちも同じ事が起きる可能性極大だそうです。だから調子に乗って無闇に孕むなと…これは聖院マリア姉が悪い。完璧に悪い。だから、聖院側のジーナ様ご夫婦か、マリア姉とアルトさんどちらかがスリープして欲しいと…ま、生贄を差し出すわ。カシウスとロンギヌスいるでしょ。あれを聖院所属にして、聖院側でスリープかけて貰ったら回避できる」
「あー!それ待ってそれ!向こうでお話し中の大江山組の内容に影響出るじゃん!あの二人ってクリサンサマーネの交配候補よ!」白マリが慌てておるが…ああ、例のお子にも絡むんよな…。
「ああもう、殴りたいわあれ。殴っても痛いし効き目ないけど。まーしゃーないわね。蒔子さんについてはこちらで対処するわ。どのみち、今晩初夜であたしの初期教育のつもりだったから」
「ごめんなさいごめんなさいもう二度と避妊考えずにやりません」
「謝って済んだら警察はいらないのよ!あたしたちを取り締まる警察があるかは別にして…なーんか、マリアねーさんが生まれた時より私、辛い立場に置かれてない?母様たちとらぶらぶな日々送れると思ってウキウキしながら生まれたらこれよ!私の愛の日々を返してよ!」
「えまこがえまにえるふじんとかしています」
「性能はともかく、性格は絶対にかーさん譲りだな、あれは…」
「とりあえず聖院側のNBや連邦への対応メンバーに変更はないように、そっちのあたしが動くから、マリア姉さんとジーナ様は白エマ子の指示に従ってね?あと、ジーナ母様の分体も機能障害を出す可能性があるし、復活継続するとまずいから、今日の初夜が終わったら四十九日くらいはお仏壇ライフを過ごしてもらう方が無難よね…何かあったら私の身体をお貸ししますわ」
「待て、かーさんがめんどくさがって身体いらんとか言い出さねーかよ」
「ねーさん。それはない。絶対ないっ」
「なんか、かーさんまんまに言いくるめられてる気分だぜ…ツラだけでも、もう少し別物にできねーのかよ…」
「あきまへん。ベラ子母様の強い強いリクエストの結果です。この顔と身体はねーさんからの要請と申せど譲れまへん。そしてジーナ母様が絶対に私の身体を欲しがる理由。ちょっとの間だけでも高性能っぷりが理解できましたわよね?今の分体にしてもめっちゃくちゃ調子いいはずよ?そう、もはや母様は私の身体の虜になってるのよ!」
「いや、たしかにこれ使うとマリ公の代わりも楽勝に思えるけどさ、エマ子お前、その言い方やと色々語弊と誤解が…」
(ちなみに申し上げておきましょう。本当に快感三千倍も可能ですわよ…ひっひっひっひっひっ)
「悪人顔なんかも、かーさんそのものよね」
「あー…確かに悪い事考えてる顔はまんまだよな…」
「はいはい、とりあえず原因もわかりましたので、マリアねーさんは一旦自室に戻って頂きます。アルトさん、ちょっとついといてあげて下さいませ。部屋付き女官はメル子さんだっけ?」
「ですね」
「私と聖院マリア様はちょっと大江山組と話がありますので、先にお戻り下さい。ワーズワース卿、ラッツィオーニ閣下、ゴルディーニ閣下、今後の件につきまして母様方と私とで対応させて頂きます」
「え」
「エマ子が更に一体」
「七体までは簡単に出せますよ。ではとりあえず、参りましょうか…」本体の方のエマ子に連れられ、とりあえずわたしたちは屋上ペントハウスに転送されます。
(エマ子…これ、当分、分体にあたしがいた方が良くはないか。マリ公の事務作業とか結構あるぞ)
(そっちは大丈夫でしょう、私が七体まで出せたら物理処理は割と簡単に可能ですよ。それより…外交、特にNBです。ファインテック社関係の活動で、姉さん、結構NBに行ってたみたいなんですよねぇ)
(なるほど。つまりNBの国籍や市民登録が必要なんやな)
(それと連邦も。ベラ子母様がいればイタリア国籍がありますからそっち方面は捗りますけどね、英国や日本への対応が…)
(まりあ使えば何とかなるっしょ。あれは日本籍や)
(了解了解。では)と、関係者鳩首協議に移ります。
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でぇ。流石に肉体的脳的には疲れへんけどさ、心理的には色々とね。
大江山組との話をしてた方のエマ子曰く、クリサンサマーネ、つまりマキちゃんは百パーセント本人意思でここに来たかったかと言うとまぁ、微妙。
「確かにご本人、まだ若いし日本にいても縁談が来て臣籍降下確実。ならばと臣下の話に乗ったんか…。つまり、聖院側の高木まりあ側の入学時に、どこぞ省が介入してどこぞ大学に入学はちょっと遠慮して欲しい云々ってのと根っこは類似やな」
「本当にあそこはロクな事しないわよねぇ。今回の若様、聖院側の若様と連携してくれてるけど、本当にあそこの中にはちょっと困った方々の一派がって言ってたから」と、うちらのお部屋に来た白マリ。
「真剣におかみ様に頼んで、神野悪五郎か、あれ辺り送り込んで脅かした方がええんちゃうか」
「マジにそーしたい。つか、聖院は聖院でアレーゼおばさまがいるから、何らかの形でプラウファーネさん後継問題を考えるわ。恐らく現状だとそっちと全く同じ構成へ移管すると思う」
「で、マキちゃん。この際おうち問題は切り離して、自分のしたい事を言うてみいというのがおかみ様の主張とな」
「そそ。本人自身は欲望もあるから性的な面ではトライ&アタックを繰り返したがってはいたが、如何せん周りが片端から人外」
「うちらも人外といえば人外ではあるが」
「そしてですねぇ。仮に預かったとしましょう。専属監督役は1名、絶対に必要でしょうね」エマ子が断言する。なぜに。
「分析結果。鬼人化率、現時点で30%。衝動性があります」
「あっちゃあああ…」
「母様、鬼になる事がそんなにまずいのですか。確かに、外道さんやおかみ様見てますと、本来はものすごくわがままな印象を受けましたが」
「いやベラ子、あれはわがままと違う。あれはやくざと同じや。基本的に日常が戦闘行動みたいな人種なんで、何かあると頭がすぐいくさの方向に向くような感じなんや。君らの時代のイタリアにはまだ、あまりそう言う連中はいなかったと思うが、一部の犯罪組織を構成するような連中は右手で握手しながら左手は常に毒の短剣を握って隙あらば刺すぞ下克上するぞ俺が天下を取るぞ、というような奴がおるのや…そしてやな」
「む」
「毒の短剣でなく、ちんぽを与えた場合どうなるか。殺す代わりにちんぽで屈服させる方向に思考が行く。そして…痴女のちんぽがどういう性質かを考えれば、鬼人化した場合どないなるか。エレンファーネさんに頼んで向こうの日常を見せてもらえ。あれでも精一杯抑え込んでるらしいからな」
「確かにねぇ、鬼という伝説上の存在を知ってる日本人の思考がないと、あれの危険性はわかりづらいわよねぇ」
「で。マリア様」じろ、とマリアを睨むエマ子。この目は怒る前兆の目やな。
「そういうお方を現状の痴女宮に押し付けるのも如何なものかと。そもそもあの方は聖院時間軸の方でしょうに…」
「ええええええ引き受けてくれるっていうから」
「事情が変わりました。現時点でこちらのマリア陛下があの状態です。加えてマリア姉様やそちらのジーナ様がスリープモードに入らないための人柱も二名、差し出しました。痴女皇国と聖院で今後の交流を途絶なさるなら話は別ですが…こちらは既にNB日英伊四国との外交交流状態を継続中です。そちらはまだまだこれから連邦社会に食い込む工作の必要性が極めて高いかと」
(ふっふっふっ白エマ子。あなたの力を以てしても、これから聖院サイドは大変と思うわよぉ? 今、こっちで起きてるごったごたは確実にそちらでも起きる話よ…)
(ぐぬぬぬぬぬぬ、確かに今、絶交は得策ではないわね…)
「な、何が言いたいのよ」
「あらぁ。妹としての要求は簡単ですわよ。半年だけで構わないからマリア上皇陛下、こっちでやって頂けませんかしら?私もマリア様の作業履修をこなしながらあれこれは正直大変です。出来なくはありませんが、国籍関係の整備や登録を行う必要がありますからね。早い話、高木エマニエルとして行動出来れば痴女皇国サイドのマリアねーさんの代行は出来るんですよ、私で」
「それまでの時間稼ぎをやれと…」
「むろん、蒔子さんの面倒は見させて頂きますわ。ただし、少々手荒い扱いになるかも知れません。蒔子さんの教育係として適任者を配置する事は可能なんです。極端な話を言いますと、蒔子さんをその方のお側につけて侍女として行動して頂きたいんですよ。で、暴走を抑える方向でと」
「むー。それ、あたしじゃないよね」
「もちろん。多忙なねーさんに預けるような真似は致しません。ジーナお母様に預けます」
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黒ジーナ「ちょちょちょちょい待ち待ち!」
黒エマ子「あそこのおうち問題や日本事情に明るい。ちんぽ技や助平行為に躊躇はない。SM行為や調教経験もある。痴女皇国や聖院サイドの事情に精通している上に、こっちの世界に関しては事実上フリーパス。そして、私の分体装備なら大江山に百万年居住しても鬼の影響を受けませんよ」
黒ジーナ「マリ公といいエマ子といい、娘がこき使う…」
白ジーナ「更にあたしらの方はマリ公を引き抜かれかけている…」
黒エマ子「言いたくはありませんが、白サイドのかーさま方の暴走というかやらかしも一因です。白エマ子を今産む必要性はあったのですかぁあああああああ」
黒ジーナ「なぁ白うち。この気性は確実にうちらの遺伝やな…」
白ジーナ「更にあんた。マリアヴェッラの性格を考えてみろ。あれはるっきーの子供やぞ」
黒ジーナ「そっちはそっちであんたとクリス。更に、うちの遺伝子すら入り込んでる可能性があるやろ」
白ジーナ「え。何それ」
黒ジーナ「実は以前に暴走した白い方のマリ公が云々」
白ジーナ(つまり、その時のマリ公の受精卵をうちに流し込んで…おい黒うち。何が何でも黒エマ子に頼んで、白エマ子の遺伝子的な親の存在確定させてくれ。それで何が起きるかわからんが、とりあえず精神的な安定が欲しい)
黒エマ子(安定するかどうかわからないけど断定します。基礎卵子はマリアねーさんとジーナ様。受精精子はジーナ母様と白クリス様。四名分の遺伝子を無理やり混ぜ込まれてますぅ。つまりぃ。押し付けられた)
白ジーナ「おいマリ公。痴女皇国へのお前の貸し出しを了承する事にした。異論は言わさん。白エマ子。あたしが怒る理由は黒エマ子に聞け。あと黒うち。そっちの懲罰服でマリ公の奴があるはずや。うちのマリアが行ったら問答無用で着せてくれ。抵抗したら黒エマ子に命じて墓所の黒グッズ使って抑え込んでええわ」
白マリ「えええええええ…」
白ジーナ「あと、お前は忘れているかも知れないが、一時期あたしとクリスは痴女皇国に貸し出されてえらい目に遭っているのだ。その時の事を今更掘り返して云々言い出す気はない。ないがな。ないがな」
黒ジーナ「つまりぃ。うちとしては、お前もちょっと痴女皇国行って苦労してこいと」
白ジーナ「うむ。やはりうちはうちや。同じ人間やから思考は一致するとは思うが、この措置について異論はあるかねうち」
黒ジーナ「ああ。あたしがそっちサイドでも貸し出してたな」
白エマ子「せせせせせ聖院の経営はどうするのですか!」
黒ジーナ「んなもん決まっとる。アルトはそっち置いとく。白ダリアは返す。あとはマリ公の代わりは、君しかおらんやろ。黒エマの体に入って分かったが、分体の活用次第では、事務処理能力は単純に言うとマリ公の三倍くらいはいくぞ。君の修行と思って頑張りなさい」
白エマ子「ひぎいいいいいい」
白マリ「ああ、生まれてすぐ地獄を見る女がまた一人…」
白エマ子「おがーざんのせいもあるのよー!(涙)」
(やはりマリア様、ちょっとご様子がおかしいですね。…クレーゼ様。申し訳ありませんが、ご先祖様方代表という事で誰かに乗り移って頂けません?マリア様の頭の薔薇飾りを外すお役目をご先祖様が買って出られたという事で)
(アルトさん。うちがやりまひょ。玉藻はん、クレーゼ様が入ったらうちの身体作り替えて。今ならうちは色気なしの酢豚姿や。それがクレーゼ様そっくりになったら誰が見ても説得力あるやろ。おかみさま。見届け代表としてお聞きしますが、それでよろしか?)
(かめへん。助けたれ)
(は。クレーゼ様、うちですんまへん。あとエロ狐おりますけどよしなに)
(ほいほい。よいしょ。あらほんと。しっぽ九本にちんぽ九本…)
(わわわ待った待ったそれいじるの後にしたって下さい!儀式優先!)
「はい。ではエレンファーネの身体をお借りしてますけど、クレーゼでございます。では、ご先祖を代表してわたくしがマリアリーゼより薔薇を預かりますわね。マリア大丈夫?うーん。とりあえず外させて頂きますわよ。はい」
(どうもこれ、まてりあるぼでぃというのですか。それの影響かも知れませんわね。おかみさま。戴冠を見届けさせ次第マリアは袖に下げます。密かに袖側にお越し頂けますか?)
(あいわかった。そなた様も傍にいてくれ)
「では、わたくしクレーゼより薔薇冠を先代聖母たるジーナお義姉様に預けさせて頂きます。文官代表マイレーネ様、よろしうございますか」
「異論ございません。お渡しを」
「ではお義姉様。これを」
「はい。確かに薔薇冠をクレーゼ金衣女聖より預かりました。ではこの薔薇冠をマリアヴェッラの髪に取り付ける事よろしいでしょうか?武官代表アレーゼ顧問」
「異存なし。マリアヴェッラ。先代聖母より薔薇冠を預かりなさい」
「かしこまりました。お母様どうぞ」ベラ子の頭に薔薇飾りを取り付けます。付け根が一対の櫛になっており、バネ仕掛けで髪の毛をぱちんと挟む構造です。
よいしょ。
「ではマリアヴェッラ、舞台中央へ」そこでルクレツィアさん登場。るっきーはベラ子を椅子に座らせる役ですが…イザベラさんもシスター姿で付き添っています。そしてるっきーも同じ姿。
で。椅子前で。
「イザベラ・デステ国母。連合イタリアとしてマリアヴェッラが痴女皇国皇帝の座に座る事を承認されますか。そしてルクレツィア・ボルジア様。聖母教教皇庁名代としてチェーザレ・ボルジア様よりの書状を携えておられるかと存じます。イザベラ様。ルクレツィア様の書状をお改め下さい」
「確かに、新聖母マリアヴェッラを了承する権限を我が妹ルクレツィアに預けるとあります。即ち、今よりの我が義妹の振る舞い、教皇庁の決定と同じでございます。ルクレツィア。マリアヴェッラの親として娘を導きあれ」
「お義姉様。承知いたしました。マリアヴェッラ。自らの意志でこの椅子に腰掛けるかをお選びなさい」
「御意」あっさり座るベラ子ですが、決意はその眼に漲っています。
そして立ち上がり…。
「皆様。只今より第二代聖母並びに神聖痴女皇国女皇帝の地位を引き継いだマリアヴェッラ・ボルジアとして臨時の勅命を発させて頂きます。アルトリーゼ様。初代女皇帝マリアリーゼ姉様を至急舞台袖に。診察の方にお預けくださいませ」
「アルトリーゼ御意。仰せのとおりに」胸に手を当てててから、後ろ向きにマリアを載せた車椅子ごと下がるアルトくん。アドリブだけど上手くこなしてくれたのでひと安心です。
「さて、異母姉妹としてマリアリーゼ姉様の容態が気になるところではあります。ですが、これもわたくしに対する試練です。そして聖母として授かりし我が子エマニエル。貴女に聖母としてのお願いをいたします。今この場に、おかみさまと互角たる貴女を打ち負かす者はおりませぬ。かかるそなたの力、母に貸す意思あらば我が隣に。そなたが母と対である姿を皆にお示し下さい」
「エマニエル。承知いたしました」エマ子がベラ子の隣に立ちます。
「そしてもう一人のエマニエル。壇上に。そなたは聖院世界の子。聖院世界と聖母を助くる意志あらば聖院聖女マリアリーゼ姉様の隣においでなさい」
これ、予定事項。痴女皇国として白エマ子の存在は認識しています。聖院世界の重要人物として白マリにひっついてよしと許可の出てるVIPでっせアピールね。
「そして我がしもべ、ミカエル・ダリア・ワーズワース。クリス・ワーズワース様の今際の際のお子として、初代聖母と共に我が傍に」んで、ミカ子に連れられてあたしは…手に桃色の薔薇を三本。ミカ子が渡してきた。
「そして、参列の方のうち国賓に該当する三名の方に、この薔薇をお贈りさせて頂きたく」
うん。ピンクローズは痴女皇国の国花。これを受け取るのはイコール国家承認も同じ意味があんだよね。
で、ベラ子はまず、ワーズワース大公とアグネスさんを舞台に呼びます。
(受け取ったらアグネスさんの胸元へ。飾ってあげて夫婦仲アピールお願いしますよ)あたしが心話で耳打ちしときます。
で、ワーズワース大公が席に戻ると続いてラッツィオーニ大将を召喚。
こちらは大将の胸元にベラ子が飾りまかす。そして二人で並んで立つ姿をカメラマン役のハゲが撮影して仲良しアピール。
(ハゲは余計だ。それより今年の大将退役後の事務局長選出馬、聞いてるよな)
(だからプレス向けサービスカット撮影さしたってんやない。宙兵隊も閣下も痴女皇国とは仲良しですよーと)
で、最後は…。
「クリサンサマーネ女官。日本国の派遣職員をご案内願います」実は蒔子さんにはクリーム色のスーツに着替えて貰っている。で、連れてくるのは白ネクタイグレースーツ姿の若様。
そして、一瞬だけおかみ様に来てもらいます。
おかみ様がベラ子から薔薇を受け取って若様の胸ポケに差す図式。
(痴女皇国との交流を深める手伝いなら動いてやるから、おのれら頭使えやと。若様は話がわかるし、あんたらと付き合い長いからのう。ちなみに聖院側の比丘尼国の長もわしやからな)
(ま、これで関係を読んでくれたらいいのですがね)
(蒔子さんに、日本のあの方らが着そうなスーツを着せたメッセージも読みよるかなぁ)これ、未来永劫預かる気はないよ。返す気満々よって。
(一応伝えてはおきます)
(あと、薔薇を贈る意味。これ、「こちらが」贈る立場ですらあるからってワーズワース大公の入れ知恵な。ほんまにこういう底意地の悪い外交メッセージ入れる事にかけてはえげつないセンスあるよなー)
実はこの心話、NBはもとより連邦の皆様にまる流し。つまりNBは「痴女皇国トップに入れ知恵できる立場でもあるよ」という二重アピールなわけで…。
(長年の経験からくる知恵と言う奴だよ)
(はっはっはっ、閣下にはかないませんな。それよりジーナ。君は生涯に亘り俺の有能な部下だ。俺が夜の役に立つかはともかく、沖縄が遠のいて寂しくなるのはかなわん。ニューヨークに移っても顔は出しに来てくれよ)
(ママとこの卒業生であそこに店開いてるのがおりますわ。アナポリスの近所は流石に厳しいんで…)
(とまあ若様、マリ公が得意なこういうやりとり、日本でもこれが出来るだけの安定政権体制作りたいよなぁ)
(マリアさん真剣にこういうの好きでしたからねぇ)
(つくづく惜しい娘を)
(まだ死んでない死んでない!それより戴冠式が終わったら来てくれ。おかみ様、あたしのこれの原因を掴めたらしいんだ)
(よし、マリアヴェッラに締めさすわ。ワーズワース卿も来られます?言うたら外賓の方全員、マリアの血縁が縁者ですさかいに)
(うむ。孫娘だしね。私も聞かせてもらおう)
そして閉会の儀もそこそこに、マリア様の周りに集まる皆様。
「まず原因についてやけど、痴女皇国のマリアに責任がある話と違うと思う。これは、クレーゼはんもわしも一致しとる。ふじん、念の為にあんたも診たってくれるか?」
「まぁ覚えて頂けるなら夫人でも…って誰の妻になれば良いのか…で、診察結果。おかみさまとクレーゼ様の診断とまとめて、私が申し上げましょうか」
「うむ。言うたって」
「…ものすごく言いづらいんですけど…サボっておられる状態です。皆さんちょっと待って待って!ちゃんと説明しますから!で、普通ならマリア様が責められる話になるのに、何でわざわざおかみさまがマリアリーゼ姉様のせいではないと前置きされたか。ここをよく理解頂きたい話なんですよ」
じろーっと皆を睨む我が最強娘。
「で、クレーゼ様が、マリアリーゼ姉様の人工身体化…マテリアルボディ化した事が原因ではないかと推察された通りなんです、原因。…あと、これまた申し上げにくいお話がいくつか。まず一点め。原因、私とマリアヴェッラ様にあります」
ええー?という皆さん。
「実はマテリアルボディの自己セーブ機能らしいんですよ。で、マリアリーゼ姉様や私、一種の生体兵器みたいなものだと申しましたでしょ。あたしの生物学的父親はともかく、機能的な父親のアレ…神様免許仮免状態、もう一万年くらいやっとけと怒っておきましたから。ええ、ジーナ様やマリアリーゼ姉様、わかりますよね。アレの設計ミスです。つまり、上位互換者が現れたらスリープモードに移るようにしてたって…何さらしとんねんあのアホは…」
「つーまーりー。ベラ子とエマ子が昇格したり現れたから黒マリは寝とこうと身体が勝手に動いてしまった状態なんか…あいつはアホかああああああ!」
「…マジかよ…何でそんな間抜けな仕掛けつけたんだよ…」
「一応言い訳。君達は強力だから何人もいたら世界が混乱する。だから一番強いの以外はパワーダウンするように考えたんですと。ただ、それを差し引いても、もう少し考えてやれときっつく言い聞かせましたから。引き継ぎとか、それぞれの事情があるんだから、互いに敵対状態になってる訳でもないのに、いきなり機能制限したりスリープ入れたら逆に世界が混乱するだろと!無機質世界みたいにフルデジタル化されててエラー訂正も合理的に出来る訳じゃないでしょ。学習やり直しだね本当」
「なあ、エマ子…アレにそこまで言うのかよ…」
「あったりまですやん、ねーさん。今回の件は完璧にやつのミス。ただねぇ、ここで問題二点めが出てくんのよ。すぐ訂正できない、有機体に戻すのが手っ取り早いけど、身体再構成を何度も何度もやったら機能破壊の可能性があるんですと」
「あー、あたしも今、直接謝られてる。端的に言って、ベラ子やあんたが危機に陥るか、例のあれを孕むタイミングまで寝てた方がいいと言われたよ…」
「分体…つまり、まりあさんは最悪、あたしがリンクしてサポートや制御出来るけどねぇ。ファインテック社の自動縫製システムリンクとか覚えるの、これからだっちゅーのに。とりあえずフルスリープさせんな。最低でも被服管理能力は維持させろやとゴテといたから、まだしばらくは完全スリープはしない。アルトさんも」
「やっぱりアルトも巻き添えになんのか…」
「マテリアルボディにしちゃったからねぇ。あと、問題点三点めー。はい、今までの話を聞いて顔が真っ青になってる聖院のマリアねーさん。それと白エマ子、あたし。あなたたちも同じ事が起きる可能性極大だそうです。だから調子に乗って無闇に孕むなと…これは聖院マリア姉が悪い。完璧に悪い。だから、聖院側のジーナ様ご夫婦か、マリア姉とアルトさんどちらかがスリープして欲しいと…ま、生贄を差し出すわ。カシウスとロンギヌスいるでしょ。あれを聖院所属にして、聖院側でスリープかけて貰ったら回避できる」
「あー!それ待ってそれ!向こうでお話し中の大江山組の内容に影響出るじゃん!あの二人ってクリサンサマーネの交配候補よ!」白マリが慌てておるが…ああ、例のお子にも絡むんよな…。
「ああもう、殴りたいわあれ。殴っても痛いし効き目ないけど。まーしゃーないわね。蒔子さんについてはこちらで対処するわ。どのみち、今晩初夜であたしの初期教育のつもりだったから」
「ごめんなさいごめんなさいもう二度と避妊考えずにやりません」
「謝って済んだら警察はいらないのよ!あたしたちを取り締まる警察があるかは別にして…なーんか、マリアねーさんが生まれた時より私、辛い立場に置かれてない?母様たちとらぶらぶな日々送れると思ってウキウキしながら生まれたらこれよ!私の愛の日々を返してよ!」
「えまこがえまにえるふじんとかしています」
「性能はともかく、性格は絶対にかーさん譲りだな、あれは…」
「とりあえず聖院側のNBや連邦への対応メンバーに変更はないように、そっちのあたしが動くから、マリア姉さんとジーナ様は白エマ子の指示に従ってね?あと、ジーナ母様の分体も機能障害を出す可能性があるし、復活継続するとまずいから、今日の初夜が終わったら四十九日くらいはお仏壇ライフを過ごしてもらう方が無難よね…何かあったら私の身体をお貸ししますわ」
「待て、かーさんがめんどくさがって身体いらんとか言い出さねーかよ」
「ねーさん。それはない。絶対ないっ」
「なんか、かーさんまんまに言いくるめられてる気分だぜ…ツラだけでも、もう少し別物にできねーのかよ…」
「あきまへん。ベラ子母様の強い強いリクエストの結果です。この顔と身体はねーさんからの要請と申せど譲れまへん。そしてジーナ母様が絶対に私の身体を欲しがる理由。ちょっとの間だけでも高性能っぷりが理解できましたわよね?今の分体にしてもめっちゃくちゃ調子いいはずよ?そう、もはや母様は私の身体の虜になってるのよ!」
「いや、たしかにこれ使うとマリ公の代わりも楽勝に思えるけどさ、エマ子お前、その言い方やと色々語弊と誤解が…」
(ちなみに申し上げておきましょう。本当に快感三千倍も可能ですわよ…ひっひっひっひっひっ)
「悪人顔なんかも、かーさんそのものよね」
「あー…確かに悪い事考えてる顔はまんまだよな…」
「はいはい、とりあえず原因もわかりましたので、マリアねーさんは一旦自室に戻って頂きます。アルトさん、ちょっとついといてあげて下さいませ。部屋付き女官はメル子さんだっけ?」
「ですね」
「私と聖院マリア様はちょっと大江山組と話がありますので、先にお戻り下さい。ワーズワース卿、ラッツィオーニ閣下、ゴルディーニ閣下、今後の件につきまして母様方と私とで対応させて頂きます」
「え」
「エマ子が更に一体」
「七体までは簡単に出せますよ。ではとりあえず、参りましょうか…」本体の方のエマ子に連れられ、とりあえずわたしたちは屋上ペントハウスに転送されます。
(エマ子…これ、当分、分体にあたしがいた方が良くはないか。マリ公の事務作業とか結構あるぞ)
(そっちは大丈夫でしょう、私が七体まで出せたら物理処理は割と簡単に可能ですよ。それより…外交、特にNBです。ファインテック社関係の活動で、姉さん、結構NBに行ってたみたいなんですよねぇ)
(なるほど。つまりNBの国籍や市民登録が必要なんやな)
(それと連邦も。ベラ子母様がいればイタリア国籍がありますからそっち方面は捗りますけどね、英国や日本への対応が…)
(まりあ使えば何とかなるっしょ。あれは日本籍や)
(了解了解。では)と、関係者鳩首協議に移ります。
--
でぇ。流石に肉体的脳的には疲れへんけどさ、心理的には色々とね。
大江山組との話をしてた方のエマ子曰く、クリサンサマーネ、つまりマキちゃんは百パーセント本人意思でここに来たかったかと言うとまぁ、微妙。
「確かにご本人、まだ若いし日本にいても縁談が来て臣籍降下確実。ならばと臣下の話に乗ったんか…。つまり、聖院側の高木まりあ側の入学時に、どこぞ省が介入してどこぞ大学に入学はちょっと遠慮して欲しい云々ってのと根っこは類似やな」
「本当にあそこはロクな事しないわよねぇ。今回の若様、聖院側の若様と連携してくれてるけど、本当にあそこの中にはちょっと困った方々の一派がって言ってたから」と、うちらのお部屋に来た白マリ。
「真剣におかみ様に頼んで、神野悪五郎か、あれ辺り送り込んで脅かした方がええんちゃうか」
「マジにそーしたい。つか、聖院は聖院でアレーゼおばさまがいるから、何らかの形でプラウファーネさん後継問題を考えるわ。恐らく現状だとそっちと全く同じ構成へ移管すると思う」
「で、マキちゃん。この際おうち問題は切り離して、自分のしたい事を言うてみいというのがおかみ様の主張とな」
「そそ。本人自身は欲望もあるから性的な面ではトライ&アタックを繰り返したがってはいたが、如何せん周りが片端から人外」
「うちらも人外といえば人外ではあるが」
「そしてですねぇ。仮に預かったとしましょう。専属監督役は1名、絶対に必要でしょうね」エマ子が断言する。なぜに。
「分析結果。鬼人化率、現時点で30%。衝動性があります」
「あっちゃあああ…」
「母様、鬼になる事がそんなにまずいのですか。確かに、外道さんやおかみ様見てますと、本来はものすごくわがままな印象を受けましたが」
「いやベラ子、あれはわがままと違う。あれはやくざと同じや。基本的に日常が戦闘行動みたいな人種なんで、何かあると頭がすぐいくさの方向に向くような感じなんや。君らの時代のイタリアにはまだ、あまりそう言う連中はいなかったと思うが、一部の犯罪組織を構成するような連中は右手で握手しながら左手は常に毒の短剣を握って隙あらば刺すぞ下克上するぞ俺が天下を取るぞ、というような奴がおるのや…そしてやな」
「む」
「毒の短剣でなく、ちんぽを与えた場合どうなるか。殺す代わりにちんぽで屈服させる方向に思考が行く。そして…痴女のちんぽがどういう性質かを考えれば、鬼人化した場合どないなるか。エレンファーネさんに頼んで向こうの日常を見せてもらえ。あれでも精一杯抑え込んでるらしいからな」
「確かにねぇ、鬼という伝説上の存在を知ってる日本人の思考がないと、あれの危険性はわかりづらいわよねぇ」
「で。マリア様」じろ、とマリアを睨むエマ子。この目は怒る前兆の目やな。
「そういうお方を現状の痴女宮に押し付けるのも如何なものかと。そもそもあの方は聖院時間軸の方でしょうに…」
「ええええええ引き受けてくれるっていうから」
「事情が変わりました。現時点でこちらのマリア陛下があの状態です。加えてマリア姉様やそちらのジーナ様がスリープモードに入らないための人柱も二名、差し出しました。痴女皇国と聖院で今後の交流を途絶なさるなら話は別ですが…こちらは既にNB日英伊四国との外交交流状態を継続中です。そちらはまだまだこれから連邦社会に食い込む工作の必要性が極めて高いかと」
(ふっふっふっ白エマ子。あなたの力を以てしても、これから聖院サイドは大変と思うわよぉ? 今、こっちで起きてるごったごたは確実にそちらでも起きる話よ…)
(ぐぬぬぬぬぬぬ、確かに今、絶交は得策ではないわね…)
「な、何が言いたいのよ」
「あらぁ。妹としての要求は簡単ですわよ。半年だけで構わないからマリア上皇陛下、こっちでやって頂けませんかしら?私もマリア様の作業履修をこなしながらあれこれは正直大変です。出来なくはありませんが、国籍関係の整備や登録を行う必要がありますからね。早い話、高木エマニエルとして行動出来れば痴女皇国サイドのマリアねーさんの代行は出来るんですよ、私で」
「それまでの時間稼ぎをやれと…」
「むろん、蒔子さんの面倒は見させて頂きますわ。ただし、少々手荒い扱いになるかも知れません。蒔子さんの教育係として適任者を配置する事は可能なんです。極端な話を言いますと、蒔子さんをその方のお側につけて侍女として行動して頂きたいんですよ。で、暴走を抑える方向でと」
「むー。それ、あたしじゃないよね」
「もちろん。多忙なねーさんに預けるような真似は致しません。ジーナお母様に預けます」
----------------------------------------------------------------------
黒ジーナ「ちょちょちょちょい待ち待ち!」
黒エマ子「あそこのおうち問題や日本事情に明るい。ちんぽ技や助平行為に躊躇はない。SM行為や調教経験もある。痴女皇国や聖院サイドの事情に精通している上に、こっちの世界に関しては事実上フリーパス。そして、私の分体装備なら大江山に百万年居住しても鬼の影響を受けませんよ」
黒ジーナ「マリ公といいエマ子といい、娘がこき使う…」
白ジーナ「更にあたしらの方はマリ公を引き抜かれかけている…」
黒エマ子「言いたくはありませんが、白サイドのかーさま方の暴走というかやらかしも一因です。白エマ子を今産む必要性はあったのですかぁあああああああ」
黒ジーナ「なぁ白うち。この気性は確実にうちらの遺伝やな…」
白ジーナ「更にあんた。マリアヴェッラの性格を考えてみろ。あれはるっきーの子供やぞ」
黒ジーナ「そっちはそっちであんたとクリス。更に、うちの遺伝子すら入り込んでる可能性があるやろ」
白ジーナ「え。何それ」
黒ジーナ「実は以前に暴走した白い方のマリ公が云々」
白ジーナ(つまり、その時のマリ公の受精卵をうちに流し込んで…おい黒うち。何が何でも黒エマ子に頼んで、白エマ子の遺伝子的な親の存在確定させてくれ。それで何が起きるかわからんが、とりあえず精神的な安定が欲しい)
黒エマ子(安定するかどうかわからないけど断定します。基礎卵子はマリアねーさんとジーナ様。受精精子はジーナ母様と白クリス様。四名分の遺伝子を無理やり混ぜ込まれてますぅ。つまりぃ。押し付けられた)
白ジーナ「おいマリ公。痴女皇国へのお前の貸し出しを了承する事にした。異論は言わさん。白エマ子。あたしが怒る理由は黒エマ子に聞け。あと黒うち。そっちの懲罰服でマリ公の奴があるはずや。うちのマリアが行ったら問答無用で着せてくれ。抵抗したら黒エマ子に命じて墓所の黒グッズ使って抑え込んでええわ」
白マリ「えええええええ…」
白ジーナ「あと、お前は忘れているかも知れないが、一時期あたしとクリスは痴女皇国に貸し出されてえらい目に遭っているのだ。その時の事を今更掘り返して云々言い出す気はない。ないがな。ないがな」
黒ジーナ「つまりぃ。うちとしては、お前もちょっと痴女皇国行って苦労してこいと」
白ジーナ「うむ。やはりうちはうちや。同じ人間やから思考は一致するとは思うが、この措置について異論はあるかねうち」
黒ジーナ「ああ。あたしがそっちサイドでも貸し出してたな」
白エマ子「せせせせせ聖院の経営はどうするのですか!」
黒ジーナ「んなもん決まっとる。アルトはそっち置いとく。白ダリアは返す。あとはマリ公の代わりは、君しかおらんやろ。黒エマの体に入って分かったが、分体の活用次第では、事務処理能力は単純に言うとマリ公の三倍くらいはいくぞ。君の修行と思って頑張りなさい」
白エマ子「ひぎいいいいいい」
白マリ「ああ、生まれてすぐ地獄を見る女がまた一人…」
白エマ子「おがーざんのせいもあるのよー!(涙)」
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