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終章
第32話「エアウィッカー」①
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直後、凄まじい轟音と共に巨大な稲妻が砂ムカデの牙へと落雷した。
爆発音と共に衝撃波が生まれ、タキオンは空中のまま投げ飛ばされて空高く舞い上がる。
何が起こった!? 地表の砂ムカデは雷の衝撃と高圧の電流で倒れ、痺れて動けなくなっている。しかし、タキオンも兵士達が粒になる程高く飛ばされては、そのまま地に落ちて助からない。
だめだ、このままでは死んでしまう。勇者の力もここまでか……! そう思った瞬間、彼の身体がフッと軽くなり、背後から暖かい感触がタキオンの身を包んだ。
「……タキオン、大丈夫か」
「あ……この声……ま、まさか……」
聞き覚えがある。いや、ずっと聞きたかった落ち着いた声。
すぐに目の奥が熱くなった。タキオンが震えながらゆっくり後ろを振り向くと、すぐ後ろには白いローブを被ったデュボイズの優しい眼差しと目が合う。
「な、なんで……? どうして……?」
「私の使命を果たしにきたのだ……」
「し、しめい?」
地上の兵士達も、デュボイズが突然現れて目を大きく見開き凝視していた。
大きな稲妻が落ちた時、雲の間から姿を現したのがデュボイズだった。そして即座にタキオンの体を庇い、地上へ落ちるのを食い止めたのだ。
羽の無い人間が空を飛べるなど聞いたことがない。ましてや、彼の周りには古代のレース服を見に纏った女神のような女性が数人、透けた体でデュボイズの周りを包み込むように回っている。
「天上人だ……」
地上で見つめる兵士の一人が口走った。
そうだ。天上人はその世界が天空にあり、神の使いとして地上人達をいつも見守っている。神の使いなら空中を舞い、天女を率いて地上へ降りる事は造作も無いことだろう。
兵士達の中から次々に「天上人だ」「神の思召しだ」と歓喜に満ちた声が湧き上がる。やがてそれは盛大な声援となり、タキオンとデュボイズを鼓舞させた。
「タキオン、砂ムカデはまだ生きている。私がこのまま砂ムカデの頭部に突っ込む。お前はその勢いで額をかち割り、今度こそ息の根を止めるんだ」
「は、はい……!!」
「聖剣インペリウスも良いな?」
『……主の意思のままに』
「っふ、そうだな。では…………行くぞ!!」
宙に浮いていたデュボイズの身体がふわりと浮力を無くし、倒れた砂ムカデに向かって突風のように駆け落ちてゆく。その間にタキオンは聖剣を頭上で構え、蒼き光が炎となって大きく燃え盛った。
「――今だ!! 一気に突き刺せ!!」
「うおぉぉぉぉ!!」
蒼い炎が弧を描いて振り下ろされる。砂ムカデの額に炎の先端が当たって甲高い金切り音が鳴り響いた。同時に甲殻の切れ目から陽を覆う程の黒い瘴気が、凄まじい勢いで噴き出しはじめる。
『神から与えられし聖なる力で、魔物の瘴気を浄化する!』
聖剣インペリウスから蒼い炎が渦巻き、シュウシュウと風の音を立てながらどす黒い瘴気を巻き込んでいった。
巨大な魔物のせいだからか、瘴気を完全に浄化するまで暫し時間を要した。その間、タキオン達はもちろん、崖の上に集まる兵士達も固唾を呑んで見守った。
充分な時間をかけて魔力が徐々に弱まっていく。やがて瘴気は炎と一緒にかき消され、全てを浄化する頃には砂ムカデの甲殻も瘴気と一緒に蒸発し消えてなくなっていた。
爆発音と共に衝撃波が生まれ、タキオンは空中のまま投げ飛ばされて空高く舞い上がる。
何が起こった!? 地表の砂ムカデは雷の衝撃と高圧の電流で倒れ、痺れて動けなくなっている。しかし、タキオンも兵士達が粒になる程高く飛ばされては、そのまま地に落ちて助からない。
だめだ、このままでは死んでしまう。勇者の力もここまでか……! そう思った瞬間、彼の身体がフッと軽くなり、背後から暖かい感触がタキオンの身を包んだ。
「……タキオン、大丈夫か」
「あ……この声……ま、まさか……」
聞き覚えがある。いや、ずっと聞きたかった落ち着いた声。
すぐに目の奥が熱くなった。タキオンが震えながらゆっくり後ろを振り向くと、すぐ後ろには白いローブを被ったデュボイズの優しい眼差しと目が合う。
「な、なんで……? どうして……?」
「私の使命を果たしにきたのだ……」
「し、しめい?」
地上の兵士達も、デュボイズが突然現れて目を大きく見開き凝視していた。
大きな稲妻が落ちた時、雲の間から姿を現したのがデュボイズだった。そして即座にタキオンの体を庇い、地上へ落ちるのを食い止めたのだ。
羽の無い人間が空を飛べるなど聞いたことがない。ましてや、彼の周りには古代のレース服を見に纏った女神のような女性が数人、透けた体でデュボイズの周りを包み込むように回っている。
「天上人だ……」
地上で見つめる兵士の一人が口走った。
そうだ。天上人はその世界が天空にあり、神の使いとして地上人達をいつも見守っている。神の使いなら空中を舞い、天女を率いて地上へ降りる事は造作も無いことだろう。
兵士達の中から次々に「天上人だ」「神の思召しだ」と歓喜に満ちた声が湧き上がる。やがてそれは盛大な声援となり、タキオンとデュボイズを鼓舞させた。
「タキオン、砂ムカデはまだ生きている。私がこのまま砂ムカデの頭部に突っ込む。お前はその勢いで額をかち割り、今度こそ息の根を止めるんだ」
「は、はい……!!」
「聖剣インペリウスも良いな?」
『……主の意思のままに』
「っふ、そうだな。では…………行くぞ!!」
宙に浮いていたデュボイズの身体がふわりと浮力を無くし、倒れた砂ムカデに向かって突風のように駆け落ちてゆく。その間にタキオンは聖剣を頭上で構え、蒼き光が炎となって大きく燃え盛った。
「――今だ!! 一気に突き刺せ!!」
「うおぉぉぉぉ!!」
蒼い炎が弧を描いて振り下ろされる。砂ムカデの額に炎の先端が当たって甲高い金切り音が鳴り響いた。同時に甲殻の切れ目から陽を覆う程の黒い瘴気が、凄まじい勢いで噴き出しはじめる。
『神から与えられし聖なる力で、魔物の瘴気を浄化する!』
聖剣インペリウスから蒼い炎が渦巻き、シュウシュウと風の音を立てながらどす黒い瘴気を巻き込んでいった。
巨大な魔物のせいだからか、瘴気を完全に浄化するまで暫し時間を要した。その間、タキオン達はもちろん、崖の上に集まる兵士達も固唾を呑んで見守った。
充分な時間をかけて魔力が徐々に弱まっていく。やがて瘴気は炎と一緒にかき消され、全てを浄化する頃には砂ムカデの甲殻も瘴気と一緒に蒸発し消えてなくなっていた。
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