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終章
第31話「最悪の魔物」①
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円に散らばった兵士達はタキオンの動きを真似て全員が剣を天に掲げた。その瞬間、蒼き光を与えられた十本の剣が次々に青い稲妻で隣の剣を繋いでいく。
全ての剣が光線で繋がれた時、蒼い光の結界が張られた。これで未だ地中に潜る砂ムカデは、円の外には逃げられない。
円の中心で佇むタキオンは、聖剣を構えたまま静かにその時を待った。
『我が主よ……そろそろ来るぞ……』
「分かった……」
足元の奥底で砂が大きく蠢めき出したのが分かる。タキオンはジリジリと結界を狭めていた兵士たちに目配せをして、砂中に剣を突き刺すよう促した。
「剣さえ壊れなければ大丈夫です。でも安全のために、少し離れた所で待機していてください」
その声は緊張で張り詰めている。
ただ一人タキオンだけが結界内に入り、いわばたった一つの囮となった。
タキオンは足の裏に神経を集中させて砂の動きを読み取ろうとした。しかし何故か最初に感じた振動よりも小さくなっている気がする。
これは砂ムカデが更に奥深くの地中へ潜ろうとしているのか、はたまた、タキオンから遠ざかっているのか……。
「――――まさかっ!?」
タキオンは後ろを振り向き、結界の端にいる兵士へ即座に叫んだ。
「結界を破ろうとしている! 離れろ!! そこを離れろぉぉ!!」
叫んだ瞬間、勢いよく吹き上がった砂から巨大なムカデが姿を現した。そして突き刺さった剣の一つを砕こうと、見えない結界の壁に勢いよく体当たりする。
「ウワァァァ!!」
「で、出たぁぁぁぁ!!」
砂ムカデは見えない壁の存在に気づいているようだ。何度も結界に甲殻をぶつけ、その度に結界にぶつかる鈍い音が辺りに響き渡る。
しかし、それ以上に心配なのが結界のすぐ側で腰を抜かした兵士だった。頭上高く伸びたムカデの体を目の前にして、怯えて硬直してしまっている。これでは、万が一剣が壊され結界が破られたら、この兵士を助ける事ができない。
「い、嫌だぁぁぁ!!」
「――くそ! インペリウス!!」
『御意、我が主……』
タキオンは急いで巨大ムカデの方へ駆けて行き大きく飛び上がった。
インペリウスの蒼き力のおかげで少年の身体がふわりと浮かび上がり、空へ上がる。そして聖剣を下に突き立て、体重と重力の重さを利用して甲殻を突き刺そうとした時、砂ムカデは頭上の気配を感じて勢いよく砂の中へ潜ろうとした。
「――ぅわっ!! ――うっぷ!!」
轟音と共に砂の中へ潜る衝撃で溢れ出た砂波がタキオンを襲う。それと同時に突き刺していた結界の剣も空中へ投げ出され、軽い金属の音を鳴らしながら地面に転がった。
幸い結界の剣はまだ壊れていない。そして結界自体もまだ崩れてはいない。しかし次に砂ムカデの勢いを正面から受ければ、剣にヒビが入り結界が壊されるのも十分あり得る。
タキオンはその前に砂ムカデの命を仕留めなければならない。これはもはや、時間との勝負でもある。
「タキオン様ぁぁぁ!! 背後の砂が!!」
「後ろから来ますぞぉぉぉ!!」
背後に迫る砂の盛り上がりを見て、崖の上から見張っていた兵士達が次々にタキオンへ今を知らせる。その声を聞いてタキオンも咄嗟に振り向き剣を構えた。――その瞬間だった。
――――クワァァァァアアアア!!
「――っっ!? うわぁぁぁぁ!!」
不意をつかれたタキオンは、砂ムカデの大きな牙顎に絡め取られようとしていた。それをすんでの所で飛び上がり身体を翻す。しかし何度も吹き上がる砂煙のせいで周りの視界がまったく見えなくなっていた。
「くっ、これじゃ太刀打ちできない……!!」
『我が主よ、まずいぞ。砂ムカデが何度も結界に体当たりしているせいで、先ほどの剣にヒビが入った』
「なんだって!?」
『早く仕留めなければ、殺されるか逃げられるかしてしまう!』
「そ、そんな事言ったって……!!」
タキオンは聖剣を握る拳を更に強く握り、呼応して蒼い光が大きく漲った。そして抜け落ちた剣を背にし、一人で崩れそうな壁を守ろうとする。
「インペリウス、この後ろの結界の壁まで行かせないようにするよ! 聖剣の光で大剣となって、砂ムカデの力を受け止めるんだ。そして跳ね返した瞬間、一気に突き刺す!」
『……御意。我が主』
周りが砂煙で見えない以上、自分が無駄に動く方が不意を突かれて食われてしまう。結界の限界もある。ならば、ここで構えて一回の攻撃に集中した方が確実に傷を与えられるだろう。
タキオンの口元が微かに動く。その瞬間、聖剣から聖なる光が暴発し、五人分はあるだろう細長い蒼き光の剣が姿を現した。
全ての剣が光線で繋がれた時、蒼い光の結界が張られた。これで未だ地中に潜る砂ムカデは、円の外には逃げられない。
円の中心で佇むタキオンは、聖剣を構えたまま静かにその時を待った。
『我が主よ……そろそろ来るぞ……』
「分かった……」
足元の奥底で砂が大きく蠢めき出したのが分かる。タキオンはジリジリと結界を狭めていた兵士たちに目配せをして、砂中に剣を突き刺すよう促した。
「剣さえ壊れなければ大丈夫です。でも安全のために、少し離れた所で待機していてください」
その声は緊張で張り詰めている。
ただ一人タキオンだけが結界内に入り、いわばたった一つの囮となった。
タキオンは足の裏に神経を集中させて砂の動きを読み取ろうとした。しかし何故か最初に感じた振動よりも小さくなっている気がする。
これは砂ムカデが更に奥深くの地中へ潜ろうとしているのか、はたまた、タキオンから遠ざかっているのか……。
「――――まさかっ!?」
タキオンは後ろを振り向き、結界の端にいる兵士へ即座に叫んだ。
「結界を破ろうとしている! 離れろ!! そこを離れろぉぉ!!」
叫んだ瞬間、勢いよく吹き上がった砂から巨大なムカデが姿を現した。そして突き刺さった剣の一つを砕こうと、見えない結界の壁に勢いよく体当たりする。
「ウワァァァ!!」
「で、出たぁぁぁぁ!!」
砂ムカデは見えない壁の存在に気づいているようだ。何度も結界に甲殻をぶつけ、その度に結界にぶつかる鈍い音が辺りに響き渡る。
しかし、それ以上に心配なのが結界のすぐ側で腰を抜かした兵士だった。頭上高く伸びたムカデの体を目の前にして、怯えて硬直してしまっている。これでは、万が一剣が壊され結界が破られたら、この兵士を助ける事ができない。
「い、嫌だぁぁぁ!!」
「――くそ! インペリウス!!」
『御意、我が主……』
タキオンは急いで巨大ムカデの方へ駆けて行き大きく飛び上がった。
インペリウスの蒼き力のおかげで少年の身体がふわりと浮かび上がり、空へ上がる。そして聖剣を下に突き立て、体重と重力の重さを利用して甲殻を突き刺そうとした時、砂ムカデは頭上の気配を感じて勢いよく砂の中へ潜ろうとした。
「――ぅわっ!! ――うっぷ!!」
轟音と共に砂の中へ潜る衝撃で溢れ出た砂波がタキオンを襲う。それと同時に突き刺していた結界の剣も空中へ投げ出され、軽い金属の音を鳴らしながら地面に転がった。
幸い結界の剣はまだ壊れていない。そして結界自体もまだ崩れてはいない。しかし次に砂ムカデの勢いを正面から受ければ、剣にヒビが入り結界が壊されるのも十分あり得る。
タキオンはその前に砂ムカデの命を仕留めなければならない。これはもはや、時間との勝負でもある。
「タキオン様ぁぁぁ!! 背後の砂が!!」
「後ろから来ますぞぉぉぉ!!」
背後に迫る砂の盛り上がりを見て、崖の上から見張っていた兵士達が次々にタキオンへ今を知らせる。その声を聞いてタキオンも咄嗟に振り向き剣を構えた。――その瞬間だった。
――――クワァァァァアアアア!!
「――っっ!? うわぁぁぁぁ!!」
不意をつかれたタキオンは、砂ムカデの大きな牙顎に絡め取られようとしていた。それをすんでの所で飛び上がり身体を翻す。しかし何度も吹き上がる砂煙のせいで周りの視界がまったく見えなくなっていた。
「くっ、これじゃ太刀打ちできない……!!」
『我が主よ、まずいぞ。砂ムカデが何度も結界に体当たりしているせいで、先ほどの剣にヒビが入った』
「なんだって!?」
『早く仕留めなければ、殺されるか逃げられるかしてしまう!』
「そ、そんな事言ったって……!!」
タキオンは聖剣を握る拳を更に強く握り、呼応して蒼い光が大きく漲った。そして抜け落ちた剣を背にし、一人で崩れそうな壁を守ろうとする。
「インペリウス、この後ろの結界の壁まで行かせないようにするよ! 聖剣の光で大剣となって、砂ムカデの力を受け止めるんだ。そして跳ね返した瞬間、一気に突き刺す!」
『……御意。我が主』
周りが砂煙で見えない以上、自分が無駄に動く方が不意を突かれて食われてしまう。結界の限界もある。ならば、ここで構えて一回の攻撃に集中した方が確実に傷を与えられるだろう。
タキオンの口元が微かに動く。その瞬間、聖剣から聖なる光が暴発し、五人分はあるだろう細長い蒼き光の剣が姿を現した。
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