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終章
第29話②
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「え、え? な、なに!? 皆集まってなんなの!?」
その喜び様に一番驚いたのはタキオンである。
先頭にはランドルフ領領主であり、タキオンの父親ハンフリー・ランドルフ。その横にはタキオンと同じ緑の瞳、同じ紅髪を持つ母。その後ろは侍従長や家臣、侍女達、更には馬番まで、その数は実に三十人を超える人々がタキオンのベッドを囲み、少年のキョトンとした顔に涙ぐんで喜ぶのだった。
「タキオン……タキオン! ようやく目覚めてくれたか……!!」
「タキオンよ、ずっとこの時を待っていました。毎日毎日神に祈り続け……母は嬉しいです!」
「毎日? ボク、ここでどのぐらい寝ていたの?」
「三週間だ……! お前が突然屋敷の前で倒れているのを見つけてから三週間! お前がこのまま目を開けなかったらどうしようかと……食事も喉を通らなかった……」
腹の包帯があるせいで包容は出来ない。タキオンの父母はベッド横で膝を折り、少年の両手を固く握り締め、ポロポロと涙を流しながら我が子を見つめていた。
「三週間も……」
周りを見渡せば、囲んでくれている全員が涙している。タキオンが無事に帰り、目覚めてくれた事に心から喜んでくれている。
しかしタキオンは喜びよりも、どうしても聞きたい事があった。どうやって自分が帰って来れたのか、なぜ助かったのか、そして何よりもデュボイズの所在と安否である。
「タキオンそれはだな……砂漠の中心で天にまで昇る蒼光の柱が姿を現したのだ。その光はこの場所からも見えてな……長老や老婆達はこぞって天上人の加護だ。神の御神渡りだ。と叫んでいた。その直後に屋敷の入り口でタキオンが倒れていて、その手には青く光る聖剣が握られているじゃないか」
タキオンの疑問に答えてくれたのは父である。初老の彼は半ば高揚して、嬉しそうにタキオンに説明を続ける。
「それに貫通していた傷は、医者でも見た事の無い膜が貼られていたそうだ。まるで蜘蛛の巣のような、珊瑚の細かな網目のような……。普通なら手の施しようが無い傷なのに、これのおかげで出血は免れ、皮膚や細胞が尋常じゃない速さで再生されていったようだ。これはもう、神のご加護としか言いようがないではないか!」
それで自分は自室に寝かされ、痛みはあるものの身体を起こせるぐらいにまで動けるのか。
嬉しそうに息を上げる父とは反対に、タキオンは終始冷静に自身の身の上を推察していた。
「確かに、ボクはプラヴェル神殿の地下深くでデュボイズ様と一緒にいた。そこで体内の夢魔を殺す為に、この聖剣で二人一緒に胴を貫いたんだ……」
タキオンの力なく語る言葉に、周りから同情と哀れみを含んだ悲しい声が部屋中に渦巻く。
「だから、ボクは意識を失う直前までデュボイズ様と一緒に居たんだ。そう、デュボイズ様は無事だったの? 今どこにいるの!?」
タキオンは傷を支えながら身を乗り出し、必死な顔で訴える。その言葉に、タキオンの父はバツが悪そうに視線を逸らせた。
その喜び様に一番驚いたのはタキオンである。
先頭にはランドルフ領領主であり、タキオンの父親ハンフリー・ランドルフ。その横にはタキオンと同じ緑の瞳、同じ紅髪を持つ母。その後ろは侍従長や家臣、侍女達、更には馬番まで、その数は実に三十人を超える人々がタキオンのベッドを囲み、少年のキョトンとした顔に涙ぐんで喜ぶのだった。
「タキオン……タキオン! ようやく目覚めてくれたか……!!」
「タキオンよ、ずっとこの時を待っていました。毎日毎日神に祈り続け……母は嬉しいです!」
「毎日? ボク、ここでどのぐらい寝ていたの?」
「三週間だ……! お前が突然屋敷の前で倒れているのを見つけてから三週間! お前がこのまま目を開けなかったらどうしようかと……食事も喉を通らなかった……」
腹の包帯があるせいで包容は出来ない。タキオンの父母はベッド横で膝を折り、少年の両手を固く握り締め、ポロポロと涙を流しながら我が子を見つめていた。
「三週間も……」
周りを見渡せば、囲んでくれている全員が涙している。タキオンが無事に帰り、目覚めてくれた事に心から喜んでくれている。
しかしタキオンは喜びよりも、どうしても聞きたい事があった。どうやって自分が帰って来れたのか、なぜ助かったのか、そして何よりもデュボイズの所在と安否である。
「タキオンそれはだな……砂漠の中心で天にまで昇る蒼光の柱が姿を現したのだ。その光はこの場所からも見えてな……長老や老婆達はこぞって天上人の加護だ。神の御神渡りだ。と叫んでいた。その直後に屋敷の入り口でタキオンが倒れていて、その手には青く光る聖剣が握られているじゃないか」
タキオンの疑問に答えてくれたのは父である。初老の彼は半ば高揚して、嬉しそうにタキオンに説明を続ける。
「それに貫通していた傷は、医者でも見た事の無い膜が貼られていたそうだ。まるで蜘蛛の巣のような、珊瑚の細かな網目のような……。普通なら手の施しようが無い傷なのに、これのおかげで出血は免れ、皮膚や細胞が尋常じゃない速さで再生されていったようだ。これはもう、神のご加護としか言いようがないではないか!」
それで自分は自室に寝かされ、痛みはあるものの身体を起こせるぐらいにまで動けるのか。
嬉しそうに息を上げる父とは反対に、タキオンは終始冷静に自身の身の上を推察していた。
「確かに、ボクはプラヴェル神殿の地下深くでデュボイズ様と一緒にいた。そこで体内の夢魔を殺す為に、この聖剣で二人一緒に胴を貫いたんだ……」
タキオンの力なく語る言葉に、周りから同情と哀れみを含んだ悲しい声が部屋中に渦巻く。
「だから、ボクは意識を失う直前までデュボイズ様と一緒に居たんだ。そう、デュボイズ様は無事だったの? 今どこにいるの!?」
タキオンは傷を支えながら身を乗り出し、必死な顔で訴える。その言葉に、タキオンの父はバツが悪そうに視線を逸らせた。
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