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第四章

第27話②

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「――なんだ!?」

 蒼い光はタキオンを繭のようにまばゆく包んみ込んでいた。夢魔が再び瘴気で襲おうとしても、光に弾き飛ばされ近づく事すら許されない。

「何だこの光は!?」
『――我はタキオンを守護するもの……タキオン・ランドルフに最期のチャンスを与える……』

 どこからか謎の男の声が聞こえた。その声に気付いたタキオンは、虚な瞳で自分の右手を見やり、自身を護る光に気付いて辺りを見回す。

「……ボク、助かったの?」
『タキオン・ランドルフよ、我は今まで貴方を守護してきたもの。しかし我の力は残り僅か。今ここで心に問う』
「――? 守護してきた、もの?」

 一度瘴気に侵されたタキオンは、未だ意識が朦朧として声には力が無い。だが、時間が無いとばかりに謎の声が迫る。

『貴方は、その身が朽ちてもデュボイズを助けたいか?』
「もちろん。ボクのせいで先生が犠牲になるのは絶対いやだ……」
『羽化直前の夢魔を成敗するには、剣で己の胴を貫き、身体の内側から瘴気を昇華させねばならない。貴方にその覚悟があるか?』
「――え? でも、そしたらボク自身は……」
『無論、助かる見込みはない。しかし夢魔を確実に殺し、瘴気から解放されたデュボイズは必ずや助かるだろう』
「ほんと!? デュボイズ様が助かるなら……やります!」

 タキオンは悩む事なく即答した。眼差しが生に満ち溢れている。デュボイズを助けたい一心で声がする方を力強く見つめ、掌を握って自身の覚悟を決めている。
 しかし今の話を聞いていた夢魔も、タキオンにとどめを刺せなかった真の理由に気付いてしまった。

「――ははぁん、そうか……タキオンをなかなか消せなかったのは、そいつのせいだったんだな? それならボクの力を最大限使って、光諸共喰らい尽くしてやる!!」

 そうと知れば黒い煙を大量に噴き出し、絶好の機会だと光の繭に襲い掛かる。

「わああ!! 大量の煙が……!! 今度こそ本当に死んじゃう!!」
『案ずるな。低級魔族の力など、たかが知れている』

 謎の声は声色を一切変えず、淡々とタキオンとの話を続けた。その言葉通り、黒い煙は蒼光の繭には全く歯が立たず、光に当たって呆気なく弾き返された。

「ぐぁっ!! 何故だ! なぜこれだけの濃い瘴気でビクともしない!?」
『当たり前だ。神から授かった力を見くびるな』
「はっ!? 神だと!?」

 声の主は一体何者か? タキオンも夢魔も、謎の声の一言で一気に背筋が張り詰める。

『――タキオンの心は分かった。これは神の御意志でもある。タキオン・ランドルフ、これから我が唱える言葉を復唱し、神と盟約せよ』
「はい――!」

 謎の声は神へ祈りが聞こえるよう、声を高らかに言葉を紡いだ。ゆっくり、優しく、だが力強く。声の主は少年の目の前に佇み、荘厳な姿が見えるようだ。

 タキオンも声の主に負けじと見上げ、割れたままの声で必死に復唱した。これでデュボイズが助かるなら、自分を蝕んできた魔物を退治できるのなら……この身など惜しくはない!

「――我が名はタキオン・ランドルフ! 聖剣の候補者にして神に選ばれた勇者の一人! 今、我が名において真の光を目覚めさせ、聖剣の力を覚醒し、命尽きるまで運命さだめに従い神と盟約する!」

 タキオンは復唱しながら驚きを隠せなかった。聖剣、神……!! 大きな力が自分の周りを回っている! これならデュボイズもきっと助かるに違いない!!

 その直後、タキオンの体内が輝き出し、神々しい白き光が解き放たれた。神の祝福を受け、生きる力が漲ってタキオンの魂が輝きに満ちている。

『――神に祈りは届いた。我が名は聖剣【インペリウス】。タキオン・ランドルフを我が主人あるじとし、盟約の下に聖なる力を覚醒する!!』
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