62 / 85
第四章
第23話②
しおりを挟む
その後、目的のプラヴェル神殿へは、行程通り砂漠に入ってから七日で辿り着くことが出来た。
一行を率いてきた男の言うには、砂漠の中で魔物の脅威に一度も出くわさず歩いてこれたのは、非常に稀で幸運極まりない事なのだと言う。
男はこの一行の中に「神の御加護を賜っている者がいるのかもしれない!」と大声を上げて笑っていたのだが、デュボイズは天上人から貰った『珊瑚の花』のお陰なのではないか……と思うのだった。
プラヴェル神殿は大砂漠の中の一番大きな祠に相応しく、塔の高さは大図書館よりも見上げるほど高く、横幅も城一つ分に匹敵するほど巨大な石造りの建造物であった。
材質は全て大理石という、見た目にも立派で頑丈な石材で造られている。細かい装飾も最近の修繕が幾つも行われて、神や天使の彫刻が何十体にも渡って巡礼者達を出迎えた。
そして神殿の正面に並べられた数十もの石柱には、彫刻師達が天界に憧れたであろう跡が隅々にまで象られ、歩くたびに別世界、正に神の世界へ誘われる錯覚さえ憶えた。
デュボイズはその大神殿を遠目から眺めた時点で思わず立ち止まった。
彼自身、プラヴェル神殿に赴くのは初めてである。にもかかわらず、天上人達が夢で見せた、あの大神殿と全く同じ構造物だったのである。
――分かる。中に入れば天上人を模した像が何体も置かれ、奥の本殿へと続いていく。
あの時、天上人達に見せられた光景と全く同じだ。そして本殿の奥には神を象った御神体が置かれ、その後ろ側に小さな魔法陣が描かれている……はず。
デュボイズはタキオンの手首を絶対離さんと掴み、あの夢を思い出しながら、引き寄せられる様に神殿へと静かに歩みを進めた。
中では神の像に向かって礼拝し、頭を床に押し当てた巡礼者達でひしめき合っている。しかし二人はその間をぬって前進した。
「そこのお二人さん! これ以上先へ行ってはいかんぞ! 御神体の周りには結界が張られていて、本殿に近づこうとすれば外まで吹き飛ばされてしまう!」
「神の罰が与えられるぞ!? 悪い事は言わないから戻ってこい!」
拝礼する老人達から忠告の声が上がる。タキオンは振り向いて動揺したが、デュボイズに手首を持たれて立ち止まる事が出来ない。
「せ、せんせぇ? この先は結界が張られているって……聞こえていないんですか!?」
「我々なら大丈夫だ……行くぞ」
デュボイズは周りの声を聞かず、御神体の置かれる階段に足を踏み入れた。と同時に、その様子を見つめていた人々の悲鳴と動揺の声が神殿の中に響き渡る。
――しかし、結界は拒むどころか二人を何事もなく受け入れた。
大きなどよめきが渦巻く中、二人は階段を登り、そして御神体の奥の暗闇へ消えていった。
一行を率いてきた男の言うには、砂漠の中で魔物の脅威に一度も出くわさず歩いてこれたのは、非常に稀で幸運極まりない事なのだと言う。
男はこの一行の中に「神の御加護を賜っている者がいるのかもしれない!」と大声を上げて笑っていたのだが、デュボイズは天上人から貰った『珊瑚の花』のお陰なのではないか……と思うのだった。
プラヴェル神殿は大砂漠の中の一番大きな祠に相応しく、塔の高さは大図書館よりも見上げるほど高く、横幅も城一つ分に匹敵するほど巨大な石造りの建造物であった。
材質は全て大理石という、見た目にも立派で頑丈な石材で造られている。細かい装飾も最近の修繕が幾つも行われて、神や天使の彫刻が何十体にも渡って巡礼者達を出迎えた。
そして神殿の正面に並べられた数十もの石柱には、彫刻師達が天界に憧れたであろう跡が隅々にまで象られ、歩くたびに別世界、正に神の世界へ誘われる錯覚さえ憶えた。
デュボイズはその大神殿を遠目から眺めた時点で思わず立ち止まった。
彼自身、プラヴェル神殿に赴くのは初めてである。にもかかわらず、天上人達が夢で見せた、あの大神殿と全く同じ構造物だったのである。
――分かる。中に入れば天上人を模した像が何体も置かれ、奥の本殿へと続いていく。
あの時、天上人達に見せられた光景と全く同じだ。そして本殿の奥には神を象った御神体が置かれ、その後ろ側に小さな魔法陣が描かれている……はず。
デュボイズはタキオンの手首を絶対離さんと掴み、あの夢を思い出しながら、引き寄せられる様に神殿へと静かに歩みを進めた。
中では神の像に向かって礼拝し、頭を床に押し当てた巡礼者達でひしめき合っている。しかし二人はその間をぬって前進した。
「そこのお二人さん! これ以上先へ行ってはいかんぞ! 御神体の周りには結界が張られていて、本殿に近づこうとすれば外まで吹き飛ばされてしまう!」
「神の罰が与えられるぞ!? 悪い事は言わないから戻ってこい!」
拝礼する老人達から忠告の声が上がる。タキオンは振り向いて動揺したが、デュボイズに手首を持たれて立ち止まる事が出来ない。
「せ、せんせぇ? この先は結界が張られているって……聞こえていないんですか!?」
「我々なら大丈夫だ……行くぞ」
デュボイズは周りの声を聞かず、御神体の置かれる階段に足を踏み入れた。と同時に、その様子を見つめていた人々の悲鳴と動揺の声が神殿の中に響き渡る。
――しかし、結界は拒むどころか二人を何事もなく受け入れた。
大きなどよめきが渦巻く中、二人は階段を登り、そして御神体の奥の暗闇へ消えていった。
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる