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第三章
第15話②(♥)
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暫し二人の真愛を確かめ合った後、タキオンはヤーコフと一緒に屋敷の玄関扉まで出て、市街へ出向くデュボイズを見つめていた。
マントを羽織り颯爽と馬を乗りこなす青年はいつにも増して頼もしく、キラキラと光を纏い輝いている。
これはきっと、愛おしい感情から来る色仕掛けの効果なのだろう。しかしタキオンはその事に気づかず、うっとりした眼差しで点になるまでデュボイズの姿を見送った。
「はぁ……せんせぇ行っちゃった……」
タキオンは小さくため息をつき、もの悲しい表情で肩を落とした。
デュボイズの元へ厄介になってからというもの、今までも彼が街へ繰り出す度に家に独り残される事はあった。しかしいざ他国で一人になると、無性に孤独と不安に苛まれ、包容力のある温もりが恋しくなる。
「さあタキオン様、デュボイズ様もお出かけになられた事ですし、今日はごゆるりとお過ごし下さいませ」
ヤーコフもタキオンの心情を察している様だった。老人は慰めるように微笑み、少年の心を紛らわそうと会話をかって出る。
「はいぃ……でも、朝食を食べたら本当にやる事なにも無いんですよねぇ。何しようかなぁ?」
「……そういえばカンリン様の御伝言ですが、お部屋の棚に置かれております御本を、ぜひタキオン様にお読み頂きたいと申し上げておりましたよ?」
「え!? ボクに……ですか?」
「はい。デュボイズ様ではなくタキオン様にと。なんの御本か存じ上げませんが、お暇でしたら丁度良い機会では御座いませんか?」
「ボクに読んでほしい本……なんだろ……」
その後タキオンは、デュボイズには量が多いと言わせたヤーコフお手製の料理をペロリとたいらげ、無限の胃袋を十分に満たして部屋へ戻った。
部屋の片隅にはヤーコフが言っていたように小さな本棚が置かれていて、ガラス扉の中には数冊ほど分厚い本が並べられている。
タキオンが徐にその中の一冊を取り出すと、本の表紙には『男性同士における交合指南』と書かれていて、彼の鼓動を飛び出させた。
(男同士の交合!?)
その直球な題名を見過ごすわけがない。
彼は釘付けになってページをめくり、図解と共に難しい用語の文章を、舐め回すようにして目で追って行った。
「す、すごい……男同士だとお尻を使うのか……」
衝撃の事実に幾つもの疑問符が浮かぶ。そしてその問いを一つ一つ調べれば、指南本には準備の方法や注意点などが事細かく記されていた。
――体温と同じ暑さの湯を使って直腸を洗う。スポイトなどで湯を少量注入し、数秒待って排出する。それを三度程行うが、湯の温度が合わないと腸を刺激し炎症を起こす原因となるので注意が必要である。
又、湯を数分以上腸に貯めることも良くない。水分を吸収してしまい、ひきつけを起こす可能性がある。よってこれらの作業は細心の注意を払いながら素早く行う必要がある――
「うへぇぇ……そんな危なくて面倒な準備をわざわざしてまで、やる意味があるの?」
半ば狼狽えながら読み進めていると、とあるページにメモ書きを見つけた。
それは丁寧な字で『水晶の記憶を呼び覚ませ……アムリス・ニミナ・ベルマネンツ』と書かれている。
タキオンはまるで呪文の様なメモ書きを手に取り、習う様に唱えてみせた。
その時だった。
ベッドの横に置かれているインテリアだった筈の掌大の水晶玉から、突然紫の光が棚引いた。驚いてタキオンがその方を振り向けば、水晶の中から甘い声が漏れ出したのであった。
マントを羽織り颯爽と馬を乗りこなす青年はいつにも増して頼もしく、キラキラと光を纏い輝いている。
これはきっと、愛おしい感情から来る色仕掛けの効果なのだろう。しかしタキオンはその事に気づかず、うっとりした眼差しで点になるまでデュボイズの姿を見送った。
「はぁ……せんせぇ行っちゃった……」
タキオンは小さくため息をつき、もの悲しい表情で肩を落とした。
デュボイズの元へ厄介になってからというもの、今までも彼が街へ繰り出す度に家に独り残される事はあった。しかしいざ他国で一人になると、無性に孤独と不安に苛まれ、包容力のある温もりが恋しくなる。
「さあタキオン様、デュボイズ様もお出かけになられた事ですし、今日はごゆるりとお過ごし下さいませ」
ヤーコフもタキオンの心情を察している様だった。老人は慰めるように微笑み、少年の心を紛らわそうと会話をかって出る。
「はいぃ……でも、朝食を食べたら本当にやる事なにも無いんですよねぇ。何しようかなぁ?」
「……そういえばカンリン様の御伝言ですが、お部屋の棚に置かれております御本を、ぜひタキオン様にお読み頂きたいと申し上げておりましたよ?」
「え!? ボクに……ですか?」
「はい。デュボイズ様ではなくタキオン様にと。なんの御本か存じ上げませんが、お暇でしたら丁度良い機会では御座いませんか?」
「ボクに読んでほしい本……なんだろ……」
その後タキオンは、デュボイズには量が多いと言わせたヤーコフお手製の料理をペロリとたいらげ、無限の胃袋を十分に満たして部屋へ戻った。
部屋の片隅にはヤーコフが言っていたように小さな本棚が置かれていて、ガラス扉の中には数冊ほど分厚い本が並べられている。
タキオンが徐にその中の一冊を取り出すと、本の表紙には『男性同士における交合指南』と書かれていて、彼の鼓動を飛び出させた。
(男同士の交合!?)
その直球な題名を見過ごすわけがない。
彼は釘付けになってページをめくり、図解と共に難しい用語の文章を、舐め回すようにして目で追って行った。
「す、すごい……男同士だとお尻を使うのか……」
衝撃の事実に幾つもの疑問符が浮かぶ。そしてその問いを一つ一つ調べれば、指南本には準備の方法や注意点などが事細かく記されていた。
――体温と同じ暑さの湯を使って直腸を洗う。スポイトなどで湯を少量注入し、数秒待って排出する。それを三度程行うが、湯の温度が合わないと腸を刺激し炎症を起こす原因となるので注意が必要である。
又、湯を数分以上腸に貯めることも良くない。水分を吸収してしまい、ひきつけを起こす可能性がある。よってこれらの作業は細心の注意を払いながら素早く行う必要がある――
「うへぇぇ……そんな危なくて面倒な準備をわざわざしてまで、やる意味があるの?」
半ば狼狽えながら読み進めていると、とあるページにメモ書きを見つけた。
それは丁寧な字で『水晶の記憶を呼び覚ませ……アムリス・ニミナ・ベルマネンツ』と書かれている。
タキオンはまるで呪文の様なメモ書きを手に取り、習う様に唱えてみせた。
その時だった。
ベッドの横に置かれているインテリアだった筈の掌大の水晶玉から、突然紫の光が棚引いた。驚いてタキオンがその方を振り向けば、水晶の中から甘い声が漏れ出したのであった。
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