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第三章
第14話②
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それからのデュボイズは、迷いの無い足取りで屋敷の地下へ足を進めた。
地下に続く階段を降りれば湯の暖かさで空気が湿気を帯び、やがて昼間の様に明るい空間へ躍り出る。
そこは、先ほど居た寝室よりも一回り大きい、大理石を敷き詰めた清潔感あふれる広い浴場だった。
湯気が立ち上る池の様な浴槽には三体の妖精の石像が均等に並べられ、妖精達が持つ壺の中から勢い良く源泉の湯が流れ出ている。また少し離れた所には水を張った小さい浴槽が用意されている。これは火照った身体を冷やすのに良いのだろう。
「せ、先生見て下さいよ! 二面の壁と天井が鏡張りですよ!?」
湯気でよく見えないが目を凝らしてみると、入り口正面と右側の壁が一面鏡になっていて、上を見上げれば自分達の顔と床の白い大理石が映し出されていた。
一面の鏡達は浴場の灯りを映し、反射して白く輝く大理石をも映し出している。そのお陰でここは昼間のように明るいのだと、デュボイズは内装のカラクリに感嘆した。
「しかし、これはあまりにも……」
デュボイズは鏡の役割に他の目的も理解していた。
湯気という幻想的な演出と空間の中で鏡に映る情事を見たら、淫楽に陥らない方がおかしい。しかもご丁寧に天井まで鏡張りにしている。これは、どんな体制でも両者が自身の目交う姿を見れるようにとの配慮なのだろう。
まるで二人の交合いを誘い出す空間に、デュボイズの顔がいつも以上に強張り引き攣るのは言うまでも無い。
「タ、タキオン……ここまで連れてきたんだ。あとは自分で出来るな?」
「えっ? 一緒に洗って下さるんじゃないんですか? 左腕はまだ痛くてあまり動かせないので、背中とか右腕を洗えないです……」
その言葉に、デュボイズは分かりきった応えながらも顔をしかめた。
本当は一緒に湯に浸かり、思い切りタキオンを可愛がってやりたい。しかしその為にエンディリアへ来た訳ではない。
だが、痛みに耐えている少年を無理やり一人にして引き離すのか?それこそ情を持たない冷たい人間であろう。
「そう、だよな……患部は無理に動かせんし、床が大理石では滑って転びそうだしな……」
自分が勝手に誘惑されているだけじゃないか。そう考えれば、いかに自身が欲に飢えた薄汚い人間なのだと思えてきた。
これは怪我をしたタキオンの為にやっている。仕方ないことだ。デュボイズはそう思い込むことで、無理やり色欲の嵐を抑え付けた。
地下に続く階段を降りれば湯の暖かさで空気が湿気を帯び、やがて昼間の様に明るい空間へ躍り出る。
そこは、先ほど居た寝室よりも一回り大きい、大理石を敷き詰めた清潔感あふれる広い浴場だった。
湯気が立ち上る池の様な浴槽には三体の妖精の石像が均等に並べられ、妖精達が持つ壺の中から勢い良く源泉の湯が流れ出ている。また少し離れた所には水を張った小さい浴槽が用意されている。これは火照った身体を冷やすのに良いのだろう。
「せ、先生見て下さいよ! 二面の壁と天井が鏡張りですよ!?」
湯気でよく見えないが目を凝らしてみると、入り口正面と右側の壁が一面鏡になっていて、上を見上げれば自分達の顔と床の白い大理石が映し出されていた。
一面の鏡達は浴場の灯りを映し、反射して白く輝く大理石をも映し出している。そのお陰でここは昼間のように明るいのだと、デュボイズは内装のカラクリに感嘆した。
「しかし、これはあまりにも……」
デュボイズは鏡の役割に他の目的も理解していた。
湯気という幻想的な演出と空間の中で鏡に映る情事を見たら、淫楽に陥らない方がおかしい。しかもご丁寧に天井まで鏡張りにしている。これは、どんな体制でも両者が自身の目交う姿を見れるようにとの配慮なのだろう。
まるで二人の交合いを誘い出す空間に、デュボイズの顔がいつも以上に強張り引き攣るのは言うまでも無い。
「タ、タキオン……ここまで連れてきたんだ。あとは自分で出来るな?」
「えっ? 一緒に洗って下さるんじゃないんですか? 左腕はまだ痛くてあまり動かせないので、背中とか右腕を洗えないです……」
その言葉に、デュボイズは分かりきった応えながらも顔をしかめた。
本当は一緒に湯に浸かり、思い切りタキオンを可愛がってやりたい。しかしその為にエンディリアへ来た訳ではない。
だが、痛みに耐えている少年を無理やり一人にして引き離すのか?それこそ情を持たない冷たい人間であろう。
「そう、だよな……患部は無理に動かせんし、床が大理石では滑って転びそうだしな……」
自分が勝手に誘惑されているだけじゃないか。そう考えれば、いかに自身が欲に飢えた薄汚い人間なのだと思えてきた。
これは怪我をしたタキオンの為にやっている。仕方ないことだ。デュボイズはそう思い込むことで、無理やり色欲の嵐を抑え付けた。
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