【完結】魔導師様と夢魔に囚われた少年 ─ファンジェレル大陸・男恋譚─

星谷芽樂(井上詩楓)

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第二章

第10話②

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 とんでもない事を聞いてしまった。先日の行いは、やはりタキオンに快楽の扉を開かせてしまったのである。時間も体力も無く仕方なかったとは言え、まだ一人前にもなっていない少年の純粋な心を淫らに陥らせてしまったに違いない。
 しかし、その姿を見たタキオンはベソをかいてデュボイズに迫る。

「だって……先生が乳首を弄ってくれたの、自分じゃくすぐったいだけで……それに、昨夜、ボクに口移しで薬飲ませてくれたでしょう? あれ、凄く嬉しかったんです……」

 そして頬が紅くなりながら切なく相手を見つめる。

「あのキス……もう一度やりたい…………イヤ、ですか…………?」
「嫌では……ないが…………」

 するとタキオンは先程デュボイズが置いたザクロに目が止まり、瞳の奥が輝いた。

「アレがいい……せんせぃ……ザクロをボクに口移しでくださいませんか……?」
「正気か……昨夜のは仕方なかったからやっただけで……」
「夢魔には精液の他に快楽も餌になるんでしょ? それなら、エッチな事いっぱいした方が満腹度も上がるんじゃないですか?」
「まぁ……それはそう、なのだが…………」

 デュボイズは理性と本心がせめぎ合う。
 タキオンの言う通り、快楽も餌になるのだから彼の言う通り口移しをやってしまえばいい。しかし、それをやってしまったら、もはや自身の雄の暴走が止められない気がした。
 一度歯止めが効かなくなってしまったら、どこまでタキオンを陵辱し、傷付けてしまうだろう。

「せんせぃ……ボクのわがまま……どうか聞いてください……」

 うなだれるデュボイズにタキオンは近づき、逞しい首元にしがみついた。
 全裸のタキオンの温もりがシャツの上からも伝わる。耳元ではタキオンの熱を帯びた呼吸が聞こえ、首元に淫らな息が吹きかけられる。

 その時、タキオンの首元から黒い煙の瘴気が漂った。その煙が漂い始め、獲物を探すようにデュボイズの額にもまとわりつく。
 やはり彼の身体の中には夢魔が潜んでいる。煙を潜らされるだけでも息が詰まりそうで辛いのに、タキオンは自身の中に抱え込んでいるのだ。悩んでいる暇などあるのか?

「…………うぅっ」
「タキオン…………」

 時折タキオンの呼吸から辛そうな嗚咽が微かに聞こえた。
 これは瘴気の影響だけではない。

 中途半端に昂った身体を慰めることも、抑えることも出来ない辛さ、誰かに手伝ってもらわなければ自身の身を助けられない。自慰もできない。その悔しさ。情けなさ。
 デュボイズはタキオンの心の深くを感じ取り、白い華奢な背中にそっと手を置いた。

「私で出来ることなら進んでやろう。しかし、私だって男だ。理性が失われるかもしれない。それでも良いのか?」

 その言葉に、タキオンは今にも泣きそうな瞳でデュボイズを見つめ直した。

「いいです。ボクだけ気持ち良くなってもイヤなので……先生にも同じように気持ち良くなって欲しいです…………」
「そうか……分かった…………」

 デュボイズは切なさが込上がり、黒い煙を漂わせる華奢な身体を強く抱き締めた。
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