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第二章
第9話②
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デュボイズが次に足を運んだのは、市場が開かれている大通りから徒歩で五分程の、村外れの朽ちた家々が並ぶ薄汚い場所だった。
彼は世情に通じる行商の薬師を探すべく、膨らんだ荷袋を背負って異様で重苦しい空気の中をゆっくり歩いて行く。
(共和国として今発展途上にあるこの国でも、やはりこういう場所があるのだな……)
日中でも仄暗い道を進む度、地べたに座った薄汚い男達が目を光らせる。
ここでは隙を見せたらお終いだ。途端に荷物を奪われ、殴られ、酷い場合はそのまま人身売買に連れて行かれることもある。
しかし、そこまでして危険な場所に立ち入るデュボイズは、少しでもタキオンの真相を探る為に目的の人物を探し続けた。
「…………行商の薬師だな?」
「……お代はしっかり持っているだろうな?」
「勿論だ」
デュボイズは獲物を狙う男達を横目に、大きな背負い箱を置いた男の前で足を止めた。そして薬師の男と同じ様にしゃがみこむ。
「単刀直入に聞く。今まで夢魔が身体に入り込んだという人間を聞いた事があるか?」
その言葉に、薬師の眉間が微かに動く。これは何か情報を持っていそうだ。デュボイズはそう勘ぐって威圧的に相手を見つめた。
「僅かな事でもいい。それに近しいものでも、あったら教えてくれ」
「……一〇〇レニー」
薬師は静かに言って右手を差し出す。デュボイズは袖袋から銀貨を一枚手渡し、暫し緊張が張り詰める無音の時が続いた。
「これはおよそ十年前の事だ。とある富豪の小姓達が次々と倒れ、その背中から夢魔が這い出てきたという話を聞いた事がある」
「夢魔……!!」
「小姓達は背中を破られ死に絶え、主人も夢魔に喰われて死んだとされている」
「殺されてしまったのか……助かる方法は見つからなかったのか?」
そこで再び薬師はデュボイズに目をやり、右手を差し出してきた。
「……二〇〇レニー」
この先の情報は金が掛かるらしい。デュボイズは早る気持ちを抑えて再び銀貨を渡した。
「まいど。富豪は金を撒き散らして、手当たり次第治療方法を探させたという。しかし薬、手術、祈祷、魔法あらゆる手を尽くしても一向に改善する気配を見せなかった。だが、一つだけ可能性のあるものがあった」
「一つだけ? それはなんだ?」
「……五〇〇レニー」
「……っ!!」
再び金が掛かると手を出され、デュボイズは半ば苛立ちながら袖袋の底を漁った。そして言われた通りの金を払うと、きつく睨んで言い返したのである。
「これだけ支払ってるんだ。しっかり情報をくれるんだろうな!?」
「……へい」
薬師はすかさず懐の中に受け取った銀貨を仕舞い、デュボイズの耳に寄せて更なる小声で語り出した。
彼は世情に通じる行商の薬師を探すべく、膨らんだ荷袋を背負って異様で重苦しい空気の中をゆっくり歩いて行く。
(共和国として今発展途上にあるこの国でも、やはりこういう場所があるのだな……)
日中でも仄暗い道を進む度、地べたに座った薄汚い男達が目を光らせる。
ここでは隙を見せたらお終いだ。途端に荷物を奪われ、殴られ、酷い場合はそのまま人身売買に連れて行かれることもある。
しかし、そこまでして危険な場所に立ち入るデュボイズは、少しでもタキオンの真相を探る為に目的の人物を探し続けた。
「…………行商の薬師だな?」
「……お代はしっかり持っているだろうな?」
「勿論だ」
デュボイズは獲物を狙う男達を横目に、大きな背負い箱を置いた男の前で足を止めた。そして薬師の男と同じ様にしゃがみこむ。
「単刀直入に聞く。今まで夢魔が身体に入り込んだという人間を聞いた事があるか?」
その言葉に、薬師の眉間が微かに動く。これは何か情報を持っていそうだ。デュボイズはそう勘ぐって威圧的に相手を見つめた。
「僅かな事でもいい。それに近しいものでも、あったら教えてくれ」
「……一〇〇レニー」
薬師は静かに言って右手を差し出す。デュボイズは袖袋から銀貨を一枚手渡し、暫し緊張が張り詰める無音の時が続いた。
「これはおよそ十年前の事だ。とある富豪の小姓達が次々と倒れ、その背中から夢魔が這い出てきたという話を聞いた事がある」
「夢魔……!!」
「小姓達は背中を破られ死に絶え、主人も夢魔に喰われて死んだとされている」
「殺されてしまったのか……助かる方法は見つからなかったのか?」
そこで再び薬師はデュボイズに目をやり、右手を差し出してきた。
「……二〇〇レニー」
この先の情報は金が掛かるらしい。デュボイズは早る気持ちを抑えて再び銀貨を渡した。
「まいど。富豪は金を撒き散らして、手当たり次第治療方法を探させたという。しかし薬、手術、祈祷、魔法あらゆる手を尽くしても一向に改善する気配を見せなかった。だが、一つだけ可能性のあるものがあった」
「一つだけ? それはなんだ?」
「……五〇〇レニー」
「……っ!!」
再び金が掛かると手を出され、デュボイズは半ば苛立ちながら袖袋の底を漁った。そして言われた通りの金を払うと、きつく睨んで言い返したのである。
「これだけ支払ってるんだ。しっかり情報をくれるんだろうな!?」
「……へい」
薬師はすかさず懐の中に受け取った銀貨を仕舞い、デュボイズの耳に寄せて更なる小声で語り出した。
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