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第二章
第9話「聞き込み調査」①
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デュボイズはタキオンの心情など知らず、独り町へ下りて、市場の中を歩きながら必要な物を見て回った。
露店には野菜や果物、加工肉などの食品、洋服やアクセサリー、他には工具や日用品、戸棚といった家具や食器類など、ここに行けば生活する上で必要な物が全て揃う大きな青空市場である。
店の種類が多ければ自ずと客足も増える。
デュボイズは店の間でひしめき合う人の流れに逆らい、とある場所に着くと足を停めて店主の男に声を掛けた。
「ご主人、最近ここら辺でも魔物が出るようになっているというのは本当か?」
「へい、らっしゃい!」と威勢の良い声を張り上げる男は、デュボイズのローブを羽織る身なりを見て、困っているという素振りでデュボイズに訴えてきた。
「おぉ? あんさんは魔導師様かい? そうなんだよ……東ほどじゃないが、ここらも時折見かけるようになってな。特に夜中に魔物がウロウロするから、夜半の出歩きはしないよう上からお達しが出てるくらいさ。そのせいでオチオチ飲みにも行けやしねぇ」
「ほう……そんな注意がされていたとは知らなかったな」
野菜売りの店主と話し込んでいると、今度は隣店の太った女主人が井戸端会議を始める様に話に割り込んできた。
「そうなのよー。東側で頻発していて、段々と西側も起こっているみたいだから、私たちゃぁ戦々恐々として早く店仕舞いするぐらいさ」
「そこまで。タキオンの言っていた事が庶民の生活にまで及んでいたとは……益々魔族の力が強くなっているという事か……」
デュボイズは腕組みをして考え込んだ。しかし突然、たくさんのザクロを腕の中に乗せられたではないか。彼は目を見開いて視線の先を見やった。
「ちょ……!? なんですかこれは!?」
「お兄さんカッコイイから~。一つオマケしとくわね。はい、お代金。五十レニーいただくわね~」
「あんさん、してやられちまったな!」
「……は、はぁ」
驚くデュボイズに、にっこり笑う女主人は当然の如く掌を差し出す。
これは市場の店主が品物を売る時の常套手段だ。デュボイズは隙を見せてまんまと罠にかかってしまった。
(これだから私は人間というものが苦手なのだ。……仕方ない。帰ったらタキオンに食わせてやるか……)
デュボイズは市場で揉め事を起こす度胸はない。彼は反論する様子も見せず、苦笑いしながら銀貨を渡して支払いに応じたのだった。
露店には野菜や果物、加工肉などの食品、洋服やアクセサリー、他には工具や日用品、戸棚といった家具や食器類など、ここに行けば生活する上で必要な物が全て揃う大きな青空市場である。
店の種類が多ければ自ずと客足も増える。
デュボイズは店の間でひしめき合う人の流れに逆らい、とある場所に着くと足を停めて店主の男に声を掛けた。
「ご主人、最近ここら辺でも魔物が出るようになっているというのは本当か?」
「へい、らっしゃい!」と威勢の良い声を張り上げる男は、デュボイズのローブを羽織る身なりを見て、困っているという素振りでデュボイズに訴えてきた。
「おぉ? あんさんは魔導師様かい? そうなんだよ……東ほどじゃないが、ここらも時折見かけるようになってな。特に夜中に魔物がウロウロするから、夜半の出歩きはしないよう上からお達しが出てるくらいさ。そのせいでオチオチ飲みにも行けやしねぇ」
「ほう……そんな注意がされていたとは知らなかったな」
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「そうなのよー。東側で頻発していて、段々と西側も起こっているみたいだから、私たちゃぁ戦々恐々として早く店仕舞いするぐらいさ」
「そこまで。タキオンの言っていた事が庶民の生活にまで及んでいたとは……益々魔族の力が強くなっているという事か……」
デュボイズは腕組みをして考え込んだ。しかし突然、たくさんのザクロを腕の中に乗せられたではないか。彼は目を見開いて視線の先を見やった。
「ちょ……!? なんですかこれは!?」
「お兄さんカッコイイから~。一つオマケしとくわね。はい、お代金。五十レニーいただくわね~」
「あんさん、してやられちまったな!」
「……は、はぁ」
驚くデュボイズに、にっこり笑う女主人は当然の如く掌を差し出す。
これは市場の店主が品物を売る時の常套手段だ。デュボイズは隙を見せてまんまと罠にかかってしまった。
(これだから私は人間というものが苦手なのだ。……仕方ない。帰ったらタキオンに食わせてやるか……)
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