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第一章
第5話②
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結局、タキオンが出来たのは野菜や木の実の採取だけで、その他の肉体労働はデュボイズがいつも通り行った。
つっこみどころが満載な役割分担であるが、爆弾を抱える少年にとっては致し方無い。
しかし、それでもデュボイズは今までに無かった日常の明るさを噛み締めていた。
思えば、人と語らい笑った事など何年振りであろう。
特にタキオンは、とても無邪気で表情が豊かな少年だ。人間嫌いのデュボイズは少なからず少年の喜怒哀楽を垣間見て、彼との触れ合いを楽しんでいた。
(こんなに心が豊かになったのは本当にいつ以来だろうか……私の欲していたものは、もしかしたらこういう日常だったのかもしれない……)
デュボイズは実った人参を引き抜こうとする少年を見つめ、普段から強張っている顔の筋肉が数年振りに綻んでいた。
「せんせぇぇぇ!! これ、抜けないんです!! 手伝ってくださぁぁい!」
「あぁ。どれ、一緒にやろうか」
明るい声に呼ばれて揚々と駆け寄り、少年の華奢な身体にデュボイズが覆い被さる。
(わっ、先生が近い……!! こないだの事もあったし、なんかドキドキする……)
タキオンはデュボイズの見えないところで顔が真っ赤になっていた。しかし、それをデュボイズが気付いたかは分からない。
そして白く細い指に包容力のある大きい掌が重なれば、実った人参はいとも簡単に引き抜かれた。
引き抜かれた人参は通常よりも三倍は大きい実り方をしていた。その大きさに二人は驚いて見つめ合い、互いに笑みを溢れさせた。
「すごぉい! やっぱ先生だとこんな大きな人参も引っこ抜けられるんですね!」
「ははは。まぁ、今はお前も居たからどうだろうな」
「先生。これ、今日の夕飯に使いましょうね!」
「あぁ、そうしよう」
デュボイズは今までに経験してこなかった当たり前の幸せを胸いっぱいに噛み締めた。
この日常が永遠に続けば良いのに……とさえ彼は思う。
タキオンの春陽のような笑顔に魅せられ、心を暖かく満たされながら、二人は寄り添いそして語らい、家路へと向かったのだった。
つっこみどころが満載な役割分担であるが、爆弾を抱える少年にとっては致し方無い。
しかし、それでもデュボイズは今までに無かった日常の明るさを噛み締めていた。
思えば、人と語らい笑った事など何年振りであろう。
特にタキオンは、とても無邪気で表情が豊かな少年だ。人間嫌いのデュボイズは少なからず少年の喜怒哀楽を垣間見て、彼との触れ合いを楽しんでいた。
(こんなに心が豊かになったのは本当にいつ以来だろうか……私の欲していたものは、もしかしたらこういう日常だったのかもしれない……)
デュボイズは実った人参を引き抜こうとする少年を見つめ、普段から強張っている顔の筋肉が数年振りに綻んでいた。
「せんせぇぇぇ!! これ、抜けないんです!! 手伝ってくださぁぁい!」
「あぁ。どれ、一緒にやろうか」
明るい声に呼ばれて揚々と駆け寄り、少年の華奢な身体にデュボイズが覆い被さる。
(わっ、先生が近い……!! こないだの事もあったし、なんかドキドキする……)
タキオンはデュボイズの見えないところで顔が真っ赤になっていた。しかし、それをデュボイズが気付いたかは分からない。
そして白く細い指に包容力のある大きい掌が重なれば、実った人参はいとも簡単に引き抜かれた。
引き抜かれた人参は通常よりも三倍は大きい実り方をしていた。その大きさに二人は驚いて見つめ合い、互いに笑みを溢れさせた。
「すごぉい! やっぱ先生だとこんな大きな人参も引っこ抜けられるんですね!」
「ははは。まぁ、今はお前も居たからどうだろうな」
「先生。これ、今日の夕飯に使いましょうね!」
「あぁ、そうしよう」
デュボイズは今までに経験してこなかった当たり前の幸せを胸いっぱいに噛み締めた。
この日常が永遠に続けば良いのに……とさえ彼は思う。
タキオンの春陽のような笑顔に魅せられ、心を暖かく満たされながら、二人は寄り添いそして語らい、家路へと向かったのだった。
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