11 / 85
第一章
第4話②
しおりを挟む
「……タキオンと言ったな。君が元気を取り戻したら聞こうと思っていた事が山ほどあるのだが、話を聞いても良いか?」
「はい……」
先程どよめいた心を振り払うようにデュボイズは話題を変えた。タキオンも先程とは雰囲気が変わり、神妙な面持ちになる。
デュボイズは白紙のノートを取り出し、その中の白紙のページにペンを走らせた。
「まず先に言っておきたい。夢魔は本来、人間の夢の中で悪さをするもので身体の中に入り込むというのは初耳だ。魔物自体、まだまだ謎な部分が多いのだ。だから、誰もがキミの身体の中の夢魔を取り除く方法を知らない。分からない。私もだ」
「はい……」
「そのため、私も試行錯誤しながら色々試して記録を残していく必要がある。それを一つ一つこのノートに書き記していくが、良いか?」
ここでデュボイズは少し気まずそうに咳払いをした。
「つまり、その……昨夜のような情事もこと細かく記録する必要があるんだ。どの方法が患者や夢魔に有効なのか分かるからな……」
「はい、大丈夫です」
タキオンは真剣な表情で力強く頷く。デュボイズの心とは違い、身体の中の夢魔に立ち向かおうという決意が滲み出ていた。
それを見たデュボイズも心を決め、頷く。
「有難い……では、いつから夢魔に取り憑かれたのか知りたい。もしくは分かった時期でもいい。それらしい事があれば、今は何でも教えてくれ」
「はい……」
タキオンは真剣な表情で今までの経緯を語った。デュボイズはその言葉の一字一句を隈無く書き記す。
タキオンの身体に異変が起こり始めたのは、約二年前だと言う。最初は風邪だと思っていたものが、調べる内に夢魔に取り憑かれていると分かったという。しかし、これといって原因になる様な場所へ行ったり、呪術を受けたという事も無かった。
また、タキオンが大事に持ってきた、曾祖父から譲り受けたという細身の剣や、タキオンそっくりな母親の肖像、その他の荷物にも呪いが掛けられている節はなさそうだった。
次にデュボイズが睨んだのは、世情で話題になっている魔物達の暴走についてであった。
ガディウス共和国は治世二十年とまだまだ若い国である。
元々はエンディリア公国の辺境の地で魔物の出現も多く、半ば見捨てられていたこの地域を開拓し、タキオンの父親を初め八人の男達が中心となって街づくりが進められた。
しかしガディウス共和国の東側は、魔物の巣窟『ファンジェレル岩山郡』と程近く、特に最東端のマルタート領では、度々魔物の軍勢が村々を襲っているという。
デュボイズが居るこの場所は、ランドルフ領に隣接する共和国の西側、レイズ領の山中である。しかし西側地域にも度々魔物が現れる様になり、父や二人の兄達は領民を連れて討伐に向かうのだと言った。
デュボイズは最近の世情を知り、ペンを走らせながら「ほう……」と聞き耳を立てた。
「東側は魔物の無法地帯から位置が近いから分かるが、西側にまで及んでいるのか。こちらの影響はまだまだ少ないと思っていたが、そこまで暴走が強くなっているのだな……」
ここでタキオンは一つ疑問を投げかけた。
「あの……なんで最近魔物の暴走が激化しているんでしょう? ガディウス共和国を平定する時は、こんなに魔物の数は居なかったし凶暴化してなかったと父様から聞いてます」
「ん? キミは知らんのか? 十年前に山岳地域で起こった厄災を」
「厄災?」
「そうだ。何者かが魔王ノスフェラトゥを復活させた。それを機に魔物達の数や魔力が格段に増えたんだ」
「はい……」
先程どよめいた心を振り払うようにデュボイズは話題を変えた。タキオンも先程とは雰囲気が変わり、神妙な面持ちになる。
デュボイズは白紙のノートを取り出し、その中の白紙のページにペンを走らせた。
「まず先に言っておきたい。夢魔は本来、人間の夢の中で悪さをするもので身体の中に入り込むというのは初耳だ。魔物自体、まだまだ謎な部分が多いのだ。だから、誰もがキミの身体の中の夢魔を取り除く方法を知らない。分からない。私もだ」
「はい……」
「そのため、私も試行錯誤しながら色々試して記録を残していく必要がある。それを一つ一つこのノートに書き記していくが、良いか?」
ここでデュボイズは少し気まずそうに咳払いをした。
「つまり、その……昨夜のような情事もこと細かく記録する必要があるんだ。どの方法が患者や夢魔に有効なのか分かるからな……」
「はい、大丈夫です」
タキオンは真剣な表情で力強く頷く。デュボイズの心とは違い、身体の中の夢魔に立ち向かおうという決意が滲み出ていた。
それを見たデュボイズも心を決め、頷く。
「有難い……では、いつから夢魔に取り憑かれたのか知りたい。もしくは分かった時期でもいい。それらしい事があれば、今は何でも教えてくれ」
「はい……」
タキオンは真剣な表情で今までの経緯を語った。デュボイズはその言葉の一字一句を隈無く書き記す。
タキオンの身体に異変が起こり始めたのは、約二年前だと言う。最初は風邪だと思っていたものが、調べる内に夢魔に取り憑かれていると分かったという。しかし、これといって原因になる様な場所へ行ったり、呪術を受けたという事も無かった。
また、タキオンが大事に持ってきた、曾祖父から譲り受けたという細身の剣や、タキオンそっくりな母親の肖像、その他の荷物にも呪いが掛けられている節はなさそうだった。
次にデュボイズが睨んだのは、世情で話題になっている魔物達の暴走についてであった。
ガディウス共和国は治世二十年とまだまだ若い国である。
元々はエンディリア公国の辺境の地で魔物の出現も多く、半ば見捨てられていたこの地域を開拓し、タキオンの父親を初め八人の男達が中心となって街づくりが進められた。
しかしガディウス共和国の東側は、魔物の巣窟『ファンジェレル岩山郡』と程近く、特に最東端のマルタート領では、度々魔物の軍勢が村々を襲っているという。
デュボイズが居るこの場所は、ランドルフ領に隣接する共和国の西側、レイズ領の山中である。しかし西側地域にも度々魔物が現れる様になり、父や二人の兄達は領民を連れて討伐に向かうのだと言った。
デュボイズは最近の世情を知り、ペンを走らせながら「ほう……」と聞き耳を立てた。
「東側は魔物の無法地帯から位置が近いから分かるが、西側にまで及んでいるのか。こちらの影響はまだまだ少ないと思っていたが、そこまで暴走が強くなっているのだな……」
ここでタキオンは一つ疑問を投げかけた。
「あの……なんで最近魔物の暴走が激化しているんでしょう? ガディウス共和国を平定する時は、こんなに魔物の数は居なかったし凶暴化してなかったと父様から聞いてます」
「ん? キミは知らんのか? 十年前に山岳地域で起こった厄災を」
「厄災?」
「そうだ。何者かが魔王ノスフェラトゥを復活させた。それを機に魔物達の数や魔力が格段に増えたんだ」
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜
ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。
高校生×中学生。
1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。
クソザコ乳首アクメの一日
掌
BL
チクニー好きでむっつりなヤンキー系ツン男子くんが、家電を買いに訪れた駅ビルでマッサージ店員や子供や家電相手にとことんクソザコ乳首をクソザコアクメさせられる話。最後のページのみ挿入・ちんぽハメあり。無様エロ枠ですが周りの皆さんは至って和やかで特に尊厳破壊などはありません。フィクションとしてお楽しみください。
pixiv/ムーンライトノベルズにも同作品を投稿しています。
なにかありましたら(web拍手)
http://bit.ly/38kXFb0
Twitter垢・拍手返信はこちらから
https://twitter.com/show1write
チート魔王はつまらない。
碧月 晶
BL
お人好し真面目勇者×やる気皆無のチート魔王
───────────
~あらすじ~
優秀過ぎて毎日をつまらなく生きてきた雨(アメ)は卒業を目前に控えた高校三年の冬、突然異世界に召喚された。
その世界は勇者、魔王、魔法、魔族に魔物やモンスターが普通に存在する異世界ファンタジーRPGっぽい要素が盛り沢山な世界だった。
そんな世界にやって来たアメは、実は自分は数十年前勇者に敗れた先代魔王の息子だと聞かされる。
しかし取りあえず魔王になってみたものの、アメのつまらない日常は変わらなかった。
そんな日々を送っていたある日、やって来た勇者がアメに言った言葉とは──?
───────────
何だかんだで様々な事件(クエスト)をチートな魔王の力で(ちょいちょい腹黒もはさみながら)勇者と攻略していくお話(*´▽`*)
最終的にいちゃいちゃゴールデンコンビ?いやカップルにしたいなと思ってます( ´艸`)
※BLove様でも掲載中の作品です。
※感想、質問大歓迎です!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる