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第一章

第13話「この想いは……」

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 フクロウの鳴き声が森の中に響き渡る夜半、ウクダーは疲れた様子で全体重を椅子に預け、深く考え込んでいた。
 少年を助けてから初めての事ばかりで、頭が追い付かない。少年の言葉を何度も反芻し、今の状況を理解しようとしていた。

(この子はどこから来たのだろう……空から落ちて来たと言っていたが、一体どういうことなんだ?)
 
 少年の紅らめる肌と熱い媚肉の感触を思い出しながら、ウクダーはベッドの中ですやすやと眠る少年の寝顔を見つめた。
 
 少年の白い髪は部屋の灯りに反射し、虹色に輝いている。白く滑らかな肌は光を帯び、華奢な身体が光粒をまとっている。
 
 寝顔でさえも造形美を讃えるほどとても可憐で美しい。見蕩れるという言葉は、正にこの事を指すのだろう。そう思いながら、ウクダーは時が止まった様にいつまでもその寝顔を眺めていた。

(これからどうする? まずは彼に事情を聞いて……それから王都の役所に行けば素性が分かるかもしれない。いや、もしかしたら何か素性を知られたくない理由もあるかもしれないな……)

 ウクダーは体が疲れ切っているにもかかわらず、少年の事が気になって目が冴えてしまっていた。
 眠ろうと思っても、少年を見つめて考えてしまう。
 彼を助けてあげる方法はないか、匿う方法はないか、出来ることなら、ここで一緒に暮らしても構わない。そして、愛を育んで深く深く一つに――――

 ここでウクダーはある事に気付いて思考を止めた。その直後、彼は思わずため息混じりの笑みを浮かべる。

「フッ、これが一目惚れってやつか? 俺はこの子の美しさだけで惚れてしまったのか……まったく、自分が思っている以上に俺は単純な男だったんだな……」
「うーーん……スゥゥ、フゥゥ……」
「あ、うるさかったか。悪い……」

 ウクダーは自分の本心に皮肉を込めてののしったが、それを少年の寝息が否定してくれたように感じた。その嬉しさ、湧き上がる切なさに、ウクダーは大きな掌でそっと白く小さな頭を撫でてあげたのだった。

(――本当に綺麗だ。全てが繊細なガラス細工の様で……触れたら壊れてしまいそうなのに、吐息も身体もとても温かい……)
 
 普段ウクダーは森の奥深くで大木を相手にする事が殆どだ。たまに薪を渡す行商人とやり取りぐらいはするが、人の温もりを感じた事などいつぶりだったろう。
 自分を求める温もりがこんなに心地良かったとは、とうの昔に記憶の彼方へ追いやってしまっていた。
 
 だから少年に惹かれるのか? 自分は単に人肌が恋しかっただけなのか? 無性に切なく痛む心はなんなのか。少年に強く惹かれるこの想いは、恋と呼んでいいものなのか。

(少なくともそれがハッキリするまで、俺はこれ以上この子に手出しは出来ない……)

 少年は再び腹の中に精が欲しいとせがむだろう。しかしその時、ウクダーがどこまで理性を保つ事が出来るのか。それがウクダー自身とても不安だった。
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