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第一章
第1話「落雷」
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全天オデッセイアの赤道を渡る最大の国、海蛇国。
暖かな気候で有名な国のこの日の夕方は、突然の雨に見舞われた。空が突然灰色がかり、頭上では金の稲光が轟いてゴロゴロと電流の牙を向こうとしている。
早く家に入らないと、ずぶ濡れになって風邪を引いてしまう。街の星ビト達は慌てて手笠を掲げ、少しでも濡れない様にと各々の家路へ足を急かせた。
急な豪雨が降りしきる街外れで、森の中をひた走る青年がいた。
背が高く、誰もが見惚れる筋肉の鎧を纏う彼は、長草で編んだお手製の笠を被り、肩を窄めて森の奥へ駆けていく。
彼はこの国で唯一の木樵、ウクダーという名の男である。彼は人里離れた森深くに家を構え、木々の剪定をしながら薪の卸売りを生業としていた。
海蛇国では馴染みの無い薪だが、遠く北方の国々では、ウクダーの集める薪こそがそこに住む星ビト達の命を繋ぐ。そして今日も北方へ出向く商人達に薪を渡し、その帰りに突然の雨に見舞われたのだった。
「やばいな。これだけ豪雨だと、外に置いた薪が濡れてしまう……」
だんだんと雷鳴も近づいている。ここは背の高い木々が集まっている場所だ、近くで落雷する前に急いで家に篭らないと、自分の身体さえ危ない。
しかしウクダーがそう思った瞬間、すぐ先で大きな爆発音と共に一筋の光が視界を覆い尽くした。
――ゴロゴロゴロ……ピシャーン!! ドォォォォンン!!
身体の髄まで響き渡る、凄まじい重低音と衝撃波。ウクダーは思わず身を屈め、ビリビリと肌がさざめくのを感じて恐る恐る落雷した先を見つめた。
落雷した場所から白い煙が立ち込めている。凄まじい電流のせいで、雷に打たれた木から火の手が上がっている証拠だ。これを放っておけば、辺りは焼け野原になってしまうかもしれない。
「――いかん!」
ウクダーは自分や薪が濡れるのを顧みず、一刻を争う場所へ一目散に駆けて行った。
落雷した場所は、ウクダーの居た所から数百メートルしか離れていない場所だった。
ウクダーは走っている最中にわざと葉に溜まった水を笠に集め、少しでも多く、火消し用の雨水を溜めていく。
「火の手が上がる前に煙を消しきらないと……」
「……た、すけ……て…………だれか……たす……け……て…………」
「――――っっ!?」
不思議な事が起こった。現場へ近付くにつれ、助けを求める声が確かに聞こえた。まだ声が高い、若い少年の声だ。
ウクダーはまさかと思って聞き耳を立てたが、声は確かに、白い煙の中から聞こえた。
「どういう事だ? この辺りは普段、星ビトなど居ないはず……」
誰かが森に入って迷ってしまったのだろうか。しかも白い煙の中から聞こえるという事は、運悪く先の雷に打たれてしまったのかもしれない。
その時、ウクダーの身に冷たい血が駆け巡り、緊張で体が強張った。
声がしているということは、まだ生きている証だ。しかし、身体が無傷という確証はどこにも無い。再び雷が落ちる危険もある。火の手が大きくなる可能性も十分ある。ならば、急いで助けに行かなければ。
「待っていろ! 今すぐそっちへ行くぞ!」
ウクダーは助けを求める声に向かって叫び、充満する白煙の中へ飛び込んでいった。
暖かな気候で有名な国のこの日の夕方は、突然の雨に見舞われた。空が突然灰色がかり、頭上では金の稲光が轟いてゴロゴロと電流の牙を向こうとしている。
早く家に入らないと、ずぶ濡れになって風邪を引いてしまう。街の星ビト達は慌てて手笠を掲げ、少しでも濡れない様にと各々の家路へ足を急かせた。
急な豪雨が降りしきる街外れで、森の中をひた走る青年がいた。
背が高く、誰もが見惚れる筋肉の鎧を纏う彼は、長草で編んだお手製の笠を被り、肩を窄めて森の奥へ駆けていく。
彼はこの国で唯一の木樵、ウクダーという名の男である。彼は人里離れた森深くに家を構え、木々の剪定をしながら薪の卸売りを生業としていた。
海蛇国では馴染みの無い薪だが、遠く北方の国々では、ウクダーの集める薪こそがそこに住む星ビト達の命を繋ぐ。そして今日も北方へ出向く商人達に薪を渡し、その帰りに突然の雨に見舞われたのだった。
「やばいな。これだけ豪雨だと、外に置いた薪が濡れてしまう……」
だんだんと雷鳴も近づいている。ここは背の高い木々が集まっている場所だ、近くで落雷する前に急いで家に篭らないと、自分の身体さえ危ない。
しかしウクダーがそう思った瞬間、すぐ先で大きな爆発音と共に一筋の光が視界を覆い尽くした。
――ゴロゴロゴロ……ピシャーン!! ドォォォォンン!!
身体の髄まで響き渡る、凄まじい重低音と衝撃波。ウクダーは思わず身を屈め、ビリビリと肌がさざめくのを感じて恐る恐る落雷した先を見つめた。
落雷した場所から白い煙が立ち込めている。凄まじい電流のせいで、雷に打たれた木から火の手が上がっている証拠だ。これを放っておけば、辺りは焼け野原になってしまうかもしれない。
「――いかん!」
ウクダーは自分や薪が濡れるのを顧みず、一刻を争う場所へ一目散に駆けて行った。
落雷した場所は、ウクダーの居た所から数百メートルしか離れていない場所だった。
ウクダーは走っている最中にわざと葉に溜まった水を笠に集め、少しでも多く、火消し用の雨水を溜めていく。
「火の手が上がる前に煙を消しきらないと……」
「……た、すけ……て…………だれか……たす……け……て…………」
「――――っっ!?」
不思議な事が起こった。現場へ近付くにつれ、助けを求める声が確かに聞こえた。まだ声が高い、若い少年の声だ。
ウクダーはまさかと思って聞き耳を立てたが、声は確かに、白い煙の中から聞こえた。
「どういう事だ? この辺りは普段、星ビトなど居ないはず……」
誰かが森に入って迷ってしまったのだろうか。しかも白い煙の中から聞こえるという事は、運悪く先の雷に打たれてしまったのかもしれない。
その時、ウクダーの身に冷たい血が駆け巡り、緊張で体が強張った。
声がしているということは、まだ生きている証だ。しかし、身体が無傷という確証はどこにも無い。再び雷が落ちる危険もある。火の手が大きくなる可能性も十分ある。ならば、急いで助けに行かなければ。
「待っていろ! 今すぐそっちへ行くぞ!」
ウクダーは助けを求める声に向かって叫び、充満する白煙の中へ飛び込んでいった。
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