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こぐま座(&りゅう座)
風に乗って
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――風に乗ってどこまでもお前を連れていくよ。
北極星から見ただけでは分からない、空気の冷たさや凛とした花々の美しさを、
その目で、耳で、全身で感じて欲しいんだ――
龍国の元・北極星トゥバンは、今日も小熊国の少年王ポラリスを背におぶせて、龍の如く空高く飛び上がっていた。
ポラリス少年王は自身の守護星が現在の北極星である。その為に彼は度々『北のアーミラリ神殿』に出向き、この世界の北半球の異変を見守ってきた。
かつてはトゥバンがその役割を担っていた。そして心が乱される世界の悪しき理を、数え切れないほど見てきたのである。
幼いポラリスがそれを否応なしに見てしまうのがトゥバンはとても気掛かりだった。まだまだあどけなさの残る少年で心も純粋な内に、この大事な役割を任せるのは酷だとも感じていた。
しかし、北極星となった恒星とその星ビトは、年齢など関係なく世界の為に動かなくてはならない。そうして全天オデュッセイアは、大きな戦いも災害もなく、ここまで続いて来たのだから。
――だからオレは自分の出来ることで、ポラリス王の負担を無くしてやりたいんだ――
「ねぇ、トゥバン……今日はどこに連れて行ってくれるの?」
トゥバンの耳元で、暖かい吐息と可愛らしい声が話し掛ける。
「今日はな、北半球と南半球の境を行ってみようと思う」
「そんな遠い所!? 何日も掛かったら王宮の皆が心配しちゃう……」
ポラリスはトゥバンの背中で身をすくめ、自国の不安を吐露する。しかしトゥバンは大きく笑って無用の心配だと言いのけたのだった。
「知ってるか? 空高くにはな、超高速でうねる風の通り道があるんだ。それに乗れば、南半球までひとっ飛びなんだぜ?」
「そうなんだ! そんな凄い風が通ってるなんてボク、初めて知ったよ」
「まぁ知らなくて当然だ。オレ様みたいに空高く高くジャンプ出来る奴じゃないと気付けねぇからなぁ! へへん!」
トゥバンは得意げに鼻を高くして脚を深く折り曲げた。
「風の勢いがスゲェから、しっかり掴まっているんだぞ?」
「う、うん」
そしてトゥバンは雲の無い一点の空を見つめ、思い切り歯を食いしばって空高く舞い上がった。
北極星から見ただけでは分からない、空気の冷たさや凛とした花々の美しさを、
その目で、耳で、全身で感じて欲しいんだ――
龍国の元・北極星トゥバンは、今日も小熊国の少年王ポラリスを背におぶせて、龍の如く空高く飛び上がっていた。
ポラリス少年王は自身の守護星が現在の北極星である。その為に彼は度々『北のアーミラリ神殿』に出向き、この世界の北半球の異変を見守ってきた。
かつてはトゥバンがその役割を担っていた。そして心が乱される世界の悪しき理を、数え切れないほど見てきたのである。
幼いポラリスがそれを否応なしに見てしまうのがトゥバンはとても気掛かりだった。まだまだあどけなさの残る少年で心も純粋な内に、この大事な役割を任せるのは酷だとも感じていた。
しかし、北極星となった恒星とその星ビトは、年齢など関係なく世界の為に動かなくてはならない。そうして全天オデュッセイアは、大きな戦いも災害もなく、ここまで続いて来たのだから。
――だからオレは自分の出来ることで、ポラリス王の負担を無くしてやりたいんだ――
「ねぇ、トゥバン……今日はどこに連れて行ってくれるの?」
トゥバンの耳元で、暖かい吐息と可愛らしい声が話し掛ける。
「今日はな、北半球と南半球の境を行ってみようと思う」
「そんな遠い所!? 何日も掛かったら王宮の皆が心配しちゃう……」
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「知ってるか? 空高くにはな、超高速でうねる風の通り道があるんだ。それに乗れば、南半球までひとっ飛びなんだぜ?」
「そうなんだ! そんな凄い風が通ってるなんてボク、初めて知ったよ」
「まぁ知らなくて当然だ。オレ様みたいに空高く高くジャンプ出来る奴じゃないと気付けねぇからなぁ! へへん!」
トゥバンは得意げに鼻を高くして脚を深く折り曲げた。
「風の勢いがスゲェから、しっかり掴まっているんだぞ?」
「う、うん」
そしてトゥバンは雲の無い一点の空を見つめ、思い切り歯を食いしばって空高く舞い上がった。
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