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くじら座
生きる意味
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鯨国のミラは、守護星が終末期になり自身ももうすぐ今生を終える。
彼は殆ど動けなくなった身体でベッドに横たわりながら、ふと昔の事を思い出していた。
ミラには元々歳の離れた伴星がいた。その彼はずっと身体も大きく、優しく、とても頼りになる男だった。まだ幼かったミラにとって、生きる為の術を全て教わったのも彼であった。
一緒に川へ行き魚を釣ったりした。よく肩車をしてくれた。ミラが高熱にうなされた時は、ずっと寄り添ってくれて、とても安心して眠れたものだ。
一緒に過ごして毎日がとても楽しかった。そして、それがいつまでも続くと思っていた。
だが、伴星はその大きな星の寿命を終え、一緒に過ごしてきた男も、同時に天上へ旅立った。
「あぁ、そういえばあの人の最期も、こんな感じだったなぁ……」
伴星の男が寝た切りになって、ミラが傍らに寄り添うようになっていた。あの時、ミラが幼い頃感じた安心感を、あの人も得られたであろうか。
「でも本当は死んで欲しくなかった……一人取り残されるのが、とてもとても怖かった……」
――再び昔の記憶が蘇る。
今度は伴星の男が臨終する間際の事だった。
「どうして星は死ぬの!? どうして星ビトは、守護星と一緒に死ななきゃならないの!?」
泣きじゃくる幼いミラに、男は天井を見つめながら虚ろな瞳で囁いた。
「……守護星と星ビトの命は……連動しているからね……」
「じゃあ連動する理由はなに!? なんで星と星ビトの命が連動する必要があるの!」
ミラの必死な言葉に、男はゆっくり振り向いて涙でぐしゃぐしゃなミラに笑ってあげたのだった。
「それはね……星ビトは守護星に、愛や悲しみや色んな心を教えるため、存在しているんだよ」
そして男は「それこそが星ビト達の生きる意味なのだ」と教えてくれた――
「……愛や悲しみ、色んな心を教えるため」
そういえばミラが一人になってから、心というものが色褪せてしまったように思う。いや、本当は心に火を灯してしまうと孤独と悲しみに溺れてしまいそうだから、無理矢理心を押さえ付けていたのかもしれない。
(ボクは自分の守護星に心を教えてあげられただろうか……)
ミラは一抹の不安を憶えたが、その時、家の外で軽快に駆ける足音が近づいて来た。
「ミラ、起きてるか! 今日も暖かいから散歩に行こう!」
突然家の扉が開き、シャマリーが元気な声でミラを誘う。
(あぁ、そうか大丈夫。ボクはちゃんと心を伝えられている……)
ミラはゆっくり振り向いて微笑むと、シャマリーに向けて微かに右手を上げた。
彼は殆ど動けなくなった身体でベッドに横たわりながら、ふと昔の事を思い出していた。
ミラには元々歳の離れた伴星がいた。その彼はずっと身体も大きく、優しく、とても頼りになる男だった。まだ幼かったミラにとって、生きる為の術を全て教わったのも彼であった。
一緒に川へ行き魚を釣ったりした。よく肩車をしてくれた。ミラが高熱にうなされた時は、ずっと寄り添ってくれて、とても安心して眠れたものだ。
一緒に過ごして毎日がとても楽しかった。そして、それがいつまでも続くと思っていた。
だが、伴星はその大きな星の寿命を終え、一緒に過ごしてきた男も、同時に天上へ旅立った。
「あぁ、そういえばあの人の最期も、こんな感じだったなぁ……」
伴星の男が寝た切りになって、ミラが傍らに寄り添うようになっていた。あの時、ミラが幼い頃感じた安心感を、あの人も得られたであろうか。
「でも本当は死んで欲しくなかった……一人取り残されるのが、とてもとても怖かった……」
――再び昔の記憶が蘇る。
今度は伴星の男が臨終する間際の事だった。
「どうして星は死ぬの!? どうして星ビトは、守護星と一緒に死ななきゃならないの!?」
泣きじゃくる幼いミラに、男は天井を見つめながら虚ろな瞳で囁いた。
「……守護星と星ビトの命は……連動しているからね……」
「じゃあ連動する理由はなに!? なんで星と星ビトの命が連動する必要があるの!」
ミラの必死な言葉に、男はゆっくり振り向いて涙でぐしゃぐしゃなミラに笑ってあげたのだった。
「それはね……星ビトは守護星に、愛や悲しみや色んな心を教えるため、存在しているんだよ」
そして男は「それこそが星ビト達の生きる意味なのだ」と教えてくれた――
「……愛や悲しみ、色んな心を教えるため」
そういえばミラが一人になってから、心というものが色褪せてしまったように思う。いや、本当は心に火を灯してしまうと孤独と悲しみに溺れてしまいそうだから、無理矢理心を押さえ付けていたのかもしれない。
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ミラは一抹の不安を憶えたが、その時、家の外で軽快に駆ける足音が近づいて来た。
「ミラ、起きてるか! 今日も暖かいから散歩に行こう!」
突然家の扉が開き、シャマリーが元気な声でミラを誘う。
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