星の鳴る刻(全天オデュッセイア(星座88ヶ国)短編集)

星谷芽樂(井上詩楓)

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 全天オデュッセイア一手に負えない悪童少年王と名高いラス・アルゲティ少年王は、今日も国の大事な会議を抜け出して街へ繰り出していた。

「おーい! みんな今日も生きてるかぁぁ!?」

 そこは賑わいを見せる王都の中心部から程遠い、辺鄙な街の外れにあった。
 ここは中心部と違って草や藁で作られた小汚い家々が並び、道も土や泥が剥き出しになって、お世辞にも同じ王都の中とは思えない環境であった。

 そこへアルゲティ少年王が大声で合図をすると、家々から幼子や少年達がワラワラと出て来て少年王の周りを囲みだした。

 二十人は出て来ただろうか。小汚い少年達は誰もが貧相な布切れの服と、土埃を被った黒ずんだ髪や肌をしている。しかし少年王の周りに集まり出すと、途端に彼等の瞳が輝き出すのだった。

「アルゲティ様! 今日は何を持ってきてくれたの?」
「おう、今日は小さな宝石や宝飾品を持ってきたぞ! これを売れば幾らか飯の足しになるだろ?」

 アルゲティ少年王は幾重にも着重ねた上着のポケットからジャラジャラと煌びやかな王宮品を落とした。それを見ていた少年達は、こぞってその宝石を取ろうとする。

「まーった! いつも言ってるだろう? 小さい奴が優先だ。オレとの約束を守らん奴は、この場所から出て行ってもらうぞ! あと、一人二個までだ。嘘はつくなよ?」

 貧しい暮らしを強いられる子供達にとって、此処でのアルゲティ少年王は皆の救世主であった。彼は皆の生活を支える為に、王宮の宝物庫から度々盗みを働いていたのである。

「でもアルゲティ様……お城の物を勝手に取っちゃっていいの? アルゲティ様が怒られないの?」

 一番幼い少年が心配そうに見つめる。しかしアルゲティ少年王はニッカリ笑って言い放った。

「自国の民が生活に苦しんでいるっていうのに、なんで貴重品を大事に抱えている必要がある? 王宮の奴らは自分の腹さえ満たされてりゃ良いんだ。オレはそんな大人達を許さねぇ」

 アルゲティ少年王は右拳を握り、強い思いがあるのだと周りの子供達を一人一人見渡す。

「オレはこの国の誰一人として苦しい思いをさせたくない。その為なら使えるものは何だって使ってやる。オレは本当の意味で、この国を良くしていくんだ!」

 アルゲティ少年王の熱い言葉が終わると、子供達から盛大な歓声が沸き起こった。少年王を中心に、また一つ強い結束力が生まれた瞬間だった。
 
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