星の鳴る刻(全天オデュッセイア(星座88ヶ国)短編集)

星谷芽樂(井上詩楓)

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流れ星に願いを

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 ヴェラ国は今、若き王が崩御し、その星骸から新しい星々が無数に生まれて次なる王の星が誕生しようとしていた。

「レゴール、見えますか……貴方が放った星雲の中から、また大きな星が生まれようとしていますよ……」

 先王レゴールの側近だったスハイルは、大量の雲を吸い寄せている原始星を見つめて微笑んだ。
 先王特有の青白い星雲の他に、スハイルの守護星が持つ赤い星雲を、原始星は凄まじい重力と回転で吸収し、自身の血肉に変えている。

 スハイルは先王レゴールと側近以上の間柄であった。
 星の巨大さから短命を免れなかったレゴールに、少しでも長く生きて欲しいと何度も身体を重ね、自分の命の一部を分け与えていた。
 心の奥底から強い絆で結ばれていた二人は、短い間に幾度も濃密な時間を過ごした。その為か、レゴールの守護星が大爆発を起こした直後、普通なら有り得ないスハイル特有の星雲が放出されたのであった。

 そして今、次なる王の原始星は二人分の性質を吸収し、星になろうとしている。

「次王はどんな姿で御産まれになるのでしょうね……」

 きっと、愛する先王と自分の特徴をそれぞれ併せ持って産まれてくるのだろう。その姿を想像すると、とても楽しみで生きる力が湧いてくる。

 その時、原始星の周りを大きな流れ星がキラリと流れて行った。まるで姿無きレゴールが祝福してくれている様に。
 スハイルは押さえ込んでいた寂しさに先王レゴールが応えてくれた気がして、思わず紅い瞳に涙を浮かばせていた。

「貴方が私の為に次王を与えて下さるのですね……せめて私が見届けなければ。私達の子の行く末を……」
 
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