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わし座(+アンティノウス座)
もしも未来が見えるなら
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べゼクは美術館に置かれた長椅子に座り、今日も巨大なアンティノウス像を眺めていた。
なぜこの像に惹かれていたのか、今なら分かる。
べゼクは太古の昔アンティノウスという青年であり、何度も転生をして今の自分に生まれ変わった。しかし、アンティノウスの死に際は、決して幸せなものではなかった。過去の打ちひしがれる悲しみや苦しみを今世で精算する為、ベゼクはこのアンティノウス像に引き寄せられたのである。
「やはりここに居たか、べゼクよ……」
「あ、アルシャイン様」
「今日も眠れず辛いのか?」
「いえ……今日はそういう意味で居たのではありません」
しかし今はこの苦しみも受け入れられるようになった。全ては鷲国の騎士団長、アルシャインのおかげである。
アンティノウスは愛してやまない皇帝ハドリアヌスの姿をずっと追い求めていた。そして皇帝ハドリアヌスも何百回と転生を経て今はアルシャインとなり、愛するアンティノウスの面影を探し続けていたのである。
互いの過去生を知った二人は、再び共に運命を歩み始めた。もう決して離れる事が無いよう、固い絆を誓い合いながら。
「今はこうしてボクとアルシャイン様の過去世に気づけて一緒になれましたが、来世のボク達はどうなってしまうのでしょう……」
べゼクの心に浮かんだ疑問が、漠然とした不安に変わってゆく。
来世も今と同じように過去の記憶に気付けるだろうか。アルシャインと再び再会する事は出来るだろうか。もしそれが叶わなかったら、べゼクは悲しみに打ちひしがれて、自分がどうにかなってしまいそうでとても怖くなる。
「未来が見えたらいいのに……」
べゼクはアンティノウス像を見上げるが、その視界は潤んでぼやけてしまっていた。
「そうだな……今までの私が、そうであった」
アルシャインは穏やかに微笑みながら、べゼクの隣に腰を下ろす。
アルシャインもまた、今まで数え切れない程の転生を繰り返し、今世でやっとアンティノウスの生まれ変わりであるべゼクを見つけた。気が遠くなる程の長い間、孤独を経験しているその表情は、寧ろどこか落ち着いていてべゼクに安心を与えるものだった。
「来世で再会する時も、この像の前で巡り合おう。その証に、このアンティノウス像の足首に互いの名を刻んでおくのだ」
「この石像にボク達の名前を?」
アルシャインは研究室から持参した彫刻刀で、二人の名前と今日の日付を刻んだ。
そして二人で誓い合ったあの言葉「二つの魂は永遠に結ばれ繋がるだろう」という言葉を添えて。
なぜこの像に惹かれていたのか、今なら分かる。
べゼクは太古の昔アンティノウスという青年であり、何度も転生をして今の自分に生まれ変わった。しかし、アンティノウスの死に際は、決して幸せなものではなかった。過去の打ちひしがれる悲しみや苦しみを今世で精算する為、ベゼクはこのアンティノウス像に引き寄せられたのである。
「やはりここに居たか、べゼクよ……」
「あ、アルシャイン様」
「今日も眠れず辛いのか?」
「いえ……今日はそういう意味で居たのではありません」
しかし今はこの苦しみも受け入れられるようになった。全ては鷲国の騎士団長、アルシャインのおかげである。
アンティノウスは愛してやまない皇帝ハドリアヌスの姿をずっと追い求めていた。そして皇帝ハドリアヌスも何百回と転生を経て今はアルシャインとなり、愛するアンティノウスの面影を探し続けていたのである。
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「今はこうしてボクとアルシャイン様の過去世に気づけて一緒になれましたが、来世のボク達はどうなってしまうのでしょう……」
べゼクの心に浮かんだ疑問が、漠然とした不安に変わってゆく。
来世も今と同じように過去の記憶に気付けるだろうか。アルシャインと再び再会する事は出来るだろうか。もしそれが叶わなかったら、べゼクは悲しみに打ちひしがれて、自分がどうにかなってしまいそうでとても怖くなる。
「未来が見えたらいいのに……」
べゼクはアンティノウス像を見上げるが、その視界は潤んでぼやけてしまっていた。
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