星の鳴る刻(全天オデュッセイア(星座88ヶ国)短編集)

テーブルさん座

神様へ

“神様へ

　ボクはずっと、蝘蜓カメル国のショウト王が忘れられません。
　この間、全天会議でお会いしたばかりだというのに、もう毎日毎日会いたくて、あの人の笑った顔が見たくて仕方ありません。

　ボクはおかしいのでしょうか？
　他国の王様の事がこんなに気になるなんて。
　ボクは自分の国の事を大事にしなきゃいけないのに、ショウト王の事ばかり考えてしまいます。

　ボクは王様として、あるまじき行為をしているのかもしれません。
　王様として失格なのかもしれません。
　どうしてこんなボクが王様をしているのでしょう……。王様でなくとも、立派にやっていける星ビトはたくさんいるはずなのに。

　それでもボクが卓上メン国の王様として国のみんなを幸せにしなくてはいけないのなら、どうか、ショウト王にもう一度だけ会わせてください。
　ショウト王はこんなボクをどう思っているのか知りたいです。
　いえ、せめてあの優しい声と笑顔だけでも見せてください。
　そしてショウト王の国の考え方を学ばせてください。そうすればボクも国民の事を、卓上メン国の事をいっぱい好きになれると思います。”




　まだあどけなさの残るメンサ少年王は、ロウソクの灯った机にペンを置いて一息ついた。
　彼はふと西の窓を見つめた。ショウト王が治める蝘蜓カメル国は、卓上メン国の西隣に位置する小国である。

（あの先にはショウト王がいる。今、何をしているんだろう……）

　メンサ少年王は想いを綴った手紙を両手で小さく千切ると、その欠片を西の窓から空へ大きくばら撒いた。紙の欠片は空高く舞い上がり、天上の神々へ願いを送り届けてゆく。

（ボクの想いを神様が読んでくれて、ショウト王に会えるといいなぁ）

　メンサ少年王は光粒になっていく紙吹雪を見つめ、自分に向けてくれた想い人の笑顔をいつまでも思い返していた。