1 / 60
序章
キトラの序章
しおりを挟む
学者見習いの少年キトラは、無数の蔵書が置かれた図書館の小窓を覗き、天に煌めく夜空の星々を眺めていた。
なぜ僕達は守護星と呼ばれる恒星から産まれ、命を共有し、星ビトとして心を持って生きるのか。
気が遠くなる程の大昔、宇宙の片隅では、人間という僕たちに似た存在が多勢をなし、文化と秩序を持って生きていたという。
しかし人間と星ビトは決定的に違うものがある。それは性別だ。
人間には男と女という違う性が存在した。彼らは大勢の異性から愛する人を見つけ、そこから子孫を残し民族を形成した。
だが星ビトに性別は無い。強いて言えば、進化系と言われた『男』の姿と皆同じだ。皆、守護星から産まれるのだから、異性というのは必要なくなったわけだ。
しかし誰かと愛し合う心はある。
心は大昔と変わらず、誰かとの繋がりを求めている。
ここでキトラは鼻息混じりのため息をついて、手元の分厚い本を閉じた。
「……人の進化に性別は無くなっても、心は必要なのか……」
キトラは今まで学者になる事だけを夢見て、周りの者など見向きもしなかった。
だが、同じ志しを持つ者たちは友人を作り、恋人を見つけ、時に喧嘩や別れ話で心を打ち砕く者がいる。
それもまた、星ビトとして必要な事なのかもしれない。
「心……仲間を作る、愛する人を見つける……そんな星ビトを見て回れば、僕が、僕たちが、なぜこの世界に生きるのか、理由が分かるかもしれない……」
キトラはもう一度空を見上げ、自分を産み落としてくれた守護星を見つめた。
彼の守護星に言葉は無い。しかし、キトラの心の片隅に湧いた小さな高揚に気付いて、いつも以上に煌々と青白く輝いている。
キトラは愛という心の揺らぎをまだ知らない。
愛の形が無数にあるのだと知った時、彼もまた誰かの傍らで心を寄り添わせているのだろう。
なぜ僕達は守護星と呼ばれる恒星から産まれ、命を共有し、星ビトとして心を持って生きるのか。
気が遠くなる程の大昔、宇宙の片隅では、人間という僕たちに似た存在が多勢をなし、文化と秩序を持って生きていたという。
しかし人間と星ビトは決定的に違うものがある。それは性別だ。
人間には男と女という違う性が存在した。彼らは大勢の異性から愛する人を見つけ、そこから子孫を残し民族を形成した。
だが星ビトに性別は無い。強いて言えば、進化系と言われた『男』の姿と皆同じだ。皆、守護星から産まれるのだから、異性というのは必要なくなったわけだ。
しかし誰かと愛し合う心はある。
心は大昔と変わらず、誰かとの繋がりを求めている。
ここでキトラは鼻息混じりのため息をついて、手元の分厚い本を閉じた。
「……人の進化に性別は無くなっても、心は必要なのか……」
キトラは今まで学者になる事だけを夢見て、周りの者など見向きもしなかった。
だが、同じ志しを持つ者たちは友人を作り、恋人を見つけ、時に喧嘩や別れ話で心を打ち砕く者がいる。
それもまた、星ビトとして必要な事なのかもしれない。
「心……仲間を作る、愛する人を見つける……そんな星ビトを見て回れば、僕が、僕たちが、なぜこの世界に生きるのか、理由が分かるかもしれない……」
キトラはもう一度空を見上げ、自分を産み落としてくれた守護星を見つめた。
彼の守護星に言葉は無い。しかし、キトラの心の片隅に湧いた小さな高揚に気付いて、いつも以上に煌々と青白く輝いている。
キトラは愛という心の揺らぎをまだ知らない。
愛の形が無数にあるのだと知った時、彼もまた誰かの傍らで心を寄り添わせているのだろう。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる