7 / 60
うさぎ座
【兎国の主な登場人物】
しおりを挟む「なるほどね。随分上手く取り入ったじゃないか。姑息なやり方で標的を手なずける……それが吸血鬼という生き物らしい」
ヴァンの目がかっと見開かれた。
その瞬間、どす黒い暗雲が立ち込めたようにして、室内の空気がにわかに重量を増す。
明るく灯っていた電燈が突然ふっと消え、辺りは薄暮に包まれた。
「貴様の生き残るわずかな可能性は、今を限りに消滅した。冥府の先で後悔するんだな。己が俺の逆鱗に触れたことを……!」
その途端、漆黒の霧のような形をした凄まじい力がヴァンの身体から放たれた。
一瞬だが、黒数珠の力が緩み、弱まる。
遥の表情から刹那、笑みが消えうせた。低く舌打ちすると、
「無駄なことをする」
再び錫杖を振り上げて、力を込めた。それで数珠は元の勢いを取り戻し、ヴァンの身体を緊縛する。
先ほどよりもずっと強い戒めに、ヴァンは顔を歪ませた。
「遊びの時間はもう終わりだ。果てない地獄で永久にさまようがいい。……無為な二百年だったな」
ヴァンの身体が薄れかかって見える。聖は首を振って喉が枯れるほどに叫んだ。
「駄目だ!やめろ!殺さないで……!」
遥は涼しい笑顔で聖の懇願を聞き流し、錫杖を掲げてヴァンにとどめの一撃を振り下ろした。
「さようなら、愚かな吸血鬼さん」
「っやめろおおおっ!!!!!!!!」
聖が自分の鼓膜が破れるほどの叫び声をあげた、そのときだった。
何か熱い塊が体を駆け抜け飛び出していったかと思うと、パリン、と澄んだ物悲しい音が響き、結界が割れて破片が四方へ飛散した。
聖はそれをヴァンがやったのだと錯覚し、そのまま彼のそばへ駆け寄る。
膝をついて、黒数珠を引きちぎろうと手をかけた瞬間、
「え?!」
数珠をつないでいた紐がぶつりと音を立てて切れ、数珠の珠が弾けるようにして床へこぼれて勢いよく散らばった。
「……」
その様子を少し離れた場所で目撃した遥は、目を見開いて驚きを浮かべ、それから剣呑な眼差しになる。
(触れただけで壊れた……何で……)
聖は戸惑いながらも、青白く生気を失った顔で横たわるヴァンを覗き込み、肩に手をかけて揺すぶった。
ヴァンの目がかっと見開かれた。
その瞬間、どす黒い暗雲が立ち込めたようにして、室内の空気がにわかに重量を増す。
明るく灯っていた電燈が突然ふっと消え、辺りは薄暮に包まれた。
「貴様の生き残るわずかな可能性は、今を限りに消滅した。冥府の先で後悔するんだな。己が俺の逆鱗に触れたことを……!」
その途端、漆黒の霧のような形をした凄まじい力がヴァンの身体から放たれた。
一瞬だが、黒数珠の力が緩み、弱まる。
遥の表情から刹那、笑みが消えうせた。低く舌打ちすると、
「無駄なことをする」
再び錫杖を振り上げて、力を込めた。それで数珠は元の勢いを取り戻し、ヴァンの身体を緊縛する。
先ほどよりもずっと強い戒めに、ヴァンは顔を歪ませた。
「遊びの時間はもう終わりだ。果てない地獄で永久にさまようがいい。……無為な二百年だったな」
ヴァンの身体が薄れかかって見える。聖は首を振って喉が枯れるほどに叫んだ。
「駄目だ!やめろ!殺さないで……!」
遥は涼しい笑顔で聖の懇願を聞き流し、錫杖を掲げてヴァンにとどめの一撃を振り下ろした。
「さようなら、愚かな吸血鬼さん」
「っやめろおおおっ!!!!!!!!」
聖が自分の鼓膜が破れるほどの叫び声をあげた、そのときだった。
何か熱い塊が体を駆け抜け飛び出していったかと思うと、パリン、と澄んだ物悲しい音が響き、結界が割れて破片が四方へ飛散した。
聖はそれをヴァンがやったのだと錯覚し、そのまま彼のそばへ駆け寄る。
膝をついて、黒数珠を引きちぎろうと手をかけた瞬間、
「え?!」
数珠をつないでいた紐がぶつりと音を立てて切れ、数珠の珠が弾けるようにして床へこぼれて勢いよく散らばった。
「……」
その様子を少し離れた場所で目撃した遥は、目を見開いて驚きを浮かべ、それから剣呑な眼差しになる。
(触れただけで壊れた……何で……)
聖は戸惑いながらも、青白く生気を失った顔で横たわるヴァンを覗き込み、肩に手をかけて揺すぶった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる