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うさぎ座
あなたの精を奥宮に注いで、私は若返る①♥
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兎国の東端には、生きる者すべての命を奪おうとする尊大な雪山が聳え立っている。
季節問わず猛吹雪が吹き荒れ、体の寒さはもちろん、永遠に続くただ真っ白いだけの視界は心も挫かせて容赦なく精神を凍らせて行く。
この氷層地獄とも言うべき雪原の中を、小さな祠付きの雪車で駆ける一人の男がいた。
四頭の雪犬に手綱を打つその男は、この国のβ星で三等星ニーバールを守護星に持つ、騎士団長ニハルであった。
身分を隠す為か雪の中の居所を掴まれない為か、彼は雪と同じ真っ白な厚手のローブを深々と被り、一直線に雪山へ向かっている。
しかし騎士団長たる威厳の大きさは白いローブでも隠し切れず、その大柄な図体と時折見せる深緑の凛々しい瞳が、彼の存在を見えないオーラで燃え上がらせていた。
彼は雪山の吹雪に真っ向から立ち向かい、ジリジリとその麓へ近づいて行った。
雪車を引く雪犬は、最初は十頭居た。それがこの猛吹雪で次々に力尽き、今ではたった四頭にまで減ってしまった。
それでも、ニハルはそこまでして雪山に向かわなければいけない大事な想いがあった。
雪山の裾野に辿り着いたのは、自身の館を出立してから三日後の夜である。
雪犬達の長い毛は、猛吹雪に晒されて所々に氷の毛玉が出来ている。ニハル自身も、白いローブの袖や帽子の縁には氷の塊が大小張り付き、気付けば長い睫毛にも小さな雪玉がこびりついていた。
一分一秒でも猛吹雪に長く晒されていたら、命の灯火をどんどん吹き消されてしまう。昼夜問わず死に物狂いで雪原を駆け抜けたニハルは、すがる様に雪山の割れ目に逃げ込み、雪犬達を避難させた。
「お前達、よくここまで耐えてくれた。この奥は暖かい洞窟になっている。小川が流れていて魚もいる。しばらくはその中でゆっくり休んでいろ」
ニハルが灯籠に火を灯せば、洞窟は奥まで続いていて、その先は吸い込まれてしまいそうな漆黒の闇で埋もれていた。彼は慣れた手つきで灯籠を掲げ、その奥へとゆっくり歩いていく。そして生き残った雪犬達も、主人に倣って狭い道を一列になって辿っていった。
「……もうすぐだ。もうすぐ会える。俺の紅い宝石」
つい先程まで生死の戦いを掻い潜ってきたのに、ニハルの身体が生の豪炎で熱を帯びていく。
洞窟の中は狭い道が続き、時折岩が突き出して足場の悪い所が続いた。しかしニハルは危険な箇所を熟知している様で、一つ一つ確認しながら確実に奥へと歩みを進める。
十分ほど細い道が続くと、突然大きな道に躍り出て、足元も一変して金色に輝く砂と極浅い清流が流れ始めた。ニハルがその先の一点を見つめると、先には更に広い空間が待ち構えていた。
その巨大な空間には、大きく割れた天井から降り注ぐ月明かりと、その光に照らされる大木が凛として佇む。
「ケル……メス……ケルメス……」
ニハルは取り憑かれた様に月明かりの方へ歩み始めた。次第に歩幅が大きくなり、速くなり、凍えたままの脚で時折もつれながら駆けて行く。
目の前に大木が現れた瞬間、月明かりとその光を照らす岩壁の反射光で目が眩んだ。それでもニハルは泣き出しそうな目尻を必死に歪ませて、月光に照らされる大木へと走っていった。
「ケルメス……!! 逢いたかった……逢いたかったぞ……!!」
頑丈に身を包ませていた白いローブを走りながら脱ぎ捨て、ニハルは大木の蔓で繋がれた皺くちゃの男を抱き留めた。
抱き締められた男は、肌が茶黒くくすみ、赤髪だったであろう長い髪も土埃で赤茶色く汚れている。ボロの腰布を巻く痩せ細った身体は、辛うじて皮があるだけで、まるで生きた化石のようだ。
男は蔓に繋がれた両手首だけを天に伸ばし、身体は力なく膝をついてしまっていた。足首の腱を切られていて、立つ事すら出来ないようだ。その証拠に、両膝には土汚れと擦り傷の血が混じって錆色に変色し、膝に無数の瘤が出来ていてスネにやたら傷が多かった。
「……っ、……ぅ。…………ぅぅ」
「そうだ。ニハルだ。だいぶ待たせてしまって辛い思いをさせたな……ケルメス……すまなかった……」
ケルメスと呼ばれた男は、声を出そうとしても空気音しか出ず言葉すら出せなかった。しかし彼はニハルの温かい両手に小顔を包まれ、嬉しそうに紅い瞳を潤ませた。涙を流し皺枯れた頬をニハルの頬に擦り寄せ、何度も頬擦りして再びニハルを見つめ直す。
くすんだ肌や髪とは違い、透き通った紅い瞳。その瞳に見つめられて、ニハルは胸の中心を貫かれる快感を憶えた。紅い瞳の美しさは宝石そのもので、見た者全てを火照る欲情へ沈ませていく。
「あぁ、貴方を一刻も早く抱きたかった。抱いて、抱いて、抱き潰したい……そして若返った貴方を眺め、また悦ばせたい……再会して早々だが、もう待てない……」
ニハルもケルメスの瞳を愛おしそうに見つめ、二人は待ち侘びた様に顔を近づけた。やがてかさついた唇が合わさり、裂けた唇を舌で充分に湿らせながら口腔深くまで愛し合っていく。
月明かりが照らす仄暗い洞窟の中で、唾液の絡み合う音と荒い息遣いが淫らに鳴り響く。ニハルを連れてきた雪犬達は、主人のその熱い抱擁に耳をそば立て、只じっと見つめていた。
「……っ、――――んぅ! ――――はぁはぁっ!」
「あぁぁ、ケルメス……ケルメス! はぁはぁ……んぐ、あぁぁ……はぁはぁっ……!」
「――ゥン! ンゥゥ……!」
最早言葉は必要ない。二人は貪るように口付けを交わし、ニハルの腕の中で何度も首筋を交差した。
ニハルが自身の衣を何枚もむしり取っていく。何枚も着込んだ厚手の服が、今ではとことん煩わしい。服を剥ぎ、下穿きを剥ぎ、最後にケルメスの腰布を投げ捨て素肌同士が重なり合うと、その艶かしい温もりで二人の口から思わず感嘆の吐息が漏れ出す。
「ずっとこうしたかった……あぁぁ……ケルメス……愛している……」
何故だろうか。外は誰も寄せ付けない極寒の地だと言うのに、嵐の影響を受けないこの洞窟で愛する者と肌を重ねていると、身体の奥深くから燃えたぎる熱が溢れ出てくる。
ケルメスも同じようだ。最初に抱き締めた時は人形のように冷たかった肌が、今ではしっとりと肌が吸い付いて汗ばんでいる。
「ケルメス、貴方も感じているんだな……」
ニハルの逞しい二の腕に頭を乗せるケルメスは、うっとりした眼差しで小さくうなづいた。
下腹部に視線を落とせば、大小二本の精留塔が寄り添いながら天にそそり立っている。仄暗い中でよく見れば、互いに透明な蜜まで溢れ出て、時折月明かりの光で塔の先がテラテラと青白く輝いている。
「今すぐ貴方を犯したい……しかし、久しぶりでキツイかもしれないが……良いか?」
その言葉に、ケルメスは焦がれる様にして何度もうなづく。
「そうか……よく濡らして挿れるから、少し我慢していてくれ……ッッ!」
「――ッ、――――ッ、ッンン」
ニハルはケルメスを軽々持ち上げ、腿上に乗せて自身の腰に細い脚を絡ませた。そのまま華奢な上体を抱き寄せ、互いのうなじに顔を埋める。そして蔓に繋がれたケルメスの両腕を支えにして、ニハルの両手は愛する人の双丘を大きく開かせた。
「――――ッッ!! ――――ゥん!!」
ニハルは自身の塔に唾液を垂らし、固くなった切っ先で谷間の底をなぞり愛合部を探していく。鈴孔のヌットリしたいやらしい感触に、ケルメスの細い腰がビクビクと脈を打った。
早く欲しい、待ちきれない……期待に溢れる吐息は、ニハルの耳元へ切実に訴えてくる。
やがて谷の奥に潜むひくつく蕾に辿り着くと、ケルメスの反応はより一層激しいものになった。
「――――ゥゥゥンン!!」
腰を震わせ、早く受け入れたいと尻たぶを突き出す。しかしニハルの腰にしがみつく両脚は頑なに絡みつき、声にならない呼吸が高揚と共に浅く速くなっていく。
この細くか弱い身体のどこに、こんな力強さが芽生えるのだろう? 恐らくケルメス自身が意図的にやっているわけではない。愛撫で身体が勝手に反応し、反射的に強い電流が流れて激しく身体が波打つのだろうか。
「ケルメス……挿れるぞ……っくぅ!!」
ニハルも波打つ力強さに抑揚を憶えていった。時に自分の力がままならない程ケルメスに腰を反らされ、乱れる姿に雄の潮流が全身を駆け巡っていく。
「ハァハァッ!! ――――ァァアア!! ――――ッハァァァン!!」
「あぁぁ! っぐ……!!」
久しぶりの蕾はやはり固く閉じていて、引き攣る粘膜がミチミチと悲鳴に似た音で塔を拒む。しかしニハルは二度三度、蕾に強く押し込み、愛合部は兜の張りに沿ってゆっくり少しずつ、大きく口を開けていった。
大きな兜が受け入れられていく。
何度も先だけを出し入れして兜の張りを全て飲み込んだ時、「グプン!」というしゃぶる水音と共にケルメスの視界が天を仰いだ。
「――――ァウンッ!!」
「あぁぁ……!! あぁ……一番大きい所が入った……中がとても熱い……」
ケルメスの蜜壺は干からびた肌とは違い、粘膜が潤っていて熱かった。一つになれた証拠だ。
その後はズブズブと太い茎を飲み込んでいき、腹の中を抉る感触にケルメスの身体は震え、恍惚な表情で気持ち良さを訴える。
これだ。この感触がずっと欲しかった。ケルメスは腹の中を埋められる感触に神経を研ぎ澄ませた。
想像以上の大質量が下腹部の中を掻き分けていく。ゴリュゴリュと快楽のツボである胡桃のシコリを扱かれ、体内の奥深くから幸せのさざなみが意識を解放させようとする。
逞しい精留塔を抱き締める蜜壺が、悦びに溢れて大きくうねりを上げ始めていた。嬉しい嬉しいと歓喜に沸いて脈打ち、何度もニハルの塔をきつく締め付けてくる。
ニハルもその熱い抱擁を敏感に感じ取っていた。粘膜を何度も擦り合って塔を抱き留められる度、全身に強烈な閃光が飛び散り、愛液を噴き出してしまいそうになる。
「あぁ、気持ちいいか? ハァハァッ、俺もとても気持ちいい……何度も貴方を犯して、腹が膨れるまで精を注ぎ込んでやりたくなるっっ」
まだ二人が一つに合わさったばかりなのに、早くもニハルの精が飛び出そうだ。
必死に堪えて耐えるニハルに、ケルメスは潤んだ瞳で切なく見つめ、食いしばる口元にそっと口付けをしてあげた。
――何度も注いで欲しい。ニハルが満足するまで、たくさん。
言葉はない。しかし、ケルメスの眼差しはそう語っていた。
ニハルはその心にフッと身体が軽くなり、同時に押さえつけていた雄の欲望が理性を完全に払い除ける。
直後、細い下半身を支えていた両手が小さな尻たぶを鷲掴みにして、鍛えられた腰は素早く激しく、愛合部を打ち付けた。
「――――ンァァァァ!! ――――ァァんッ!! ハァッハァッハァッハァ!! ――――アゥゥンン!!」
棍棒の様に硬くなった精留塔が蜜壺の中を容赦なく行き来し、ケルメスの薄い腹の中を淫らにしごいた。肌を打ち付け合う弾けた音が鳴り響き、勢いよく根元まで挿入してケルメスの最高の性感帯、奥宮の門戸に押し入れる。
「――――ァウッ!! ――――ァァァゥン!! ッんァァんんん!!」
「あぁ……!! ケルメス……ケルメス……!!」
腰の動きが最速となった瞬間、ニハルの精液がケルメスの体内へ撒かれた。二度、三度、精を絞り出して、蜜壺の壁を覆っていくのが分かる。それと同時にケルメスの塔からも思わず白い精が飛び散った。
「……まだ終わりじゃないぞ? ……ハァハァッ、俺の言葉を忘れたか」
「――ッッ!? ――――ンァ!!」
本番はここからだと言わんばかりに、ニハルの抽送は力強さを増した。
一度吐き出された精が潤滑液となり、粘膜同士の壁が甘く滑らかに溶けてゆく。
二人の結合部が細胞の隅々まで絡まり合い、一つになっていくようだ。
ニハルの鈴孔で一番奥の幸せになれる部分へ口付けをされる。その度、ケルメスは背を仰け反らせて最高の愛撫に酔いしれた。
全身に気持ち快さが行き渡り、腰がフルフルと震える。足先までピンと張らせて愛する塔をギュウギュウ締め付ける。その凄まじい強さにニハルも天を仰いで声を上げれば、負けじと腰を攻め入って、奥の宮の更にその先を押し破った。
「出る……あぁぁ!! ……っぐ!! っく、ぁぁぁあ!!」
「――――ァウ! ァウ、ァウ、ァァウ!! ――――ッッ、ァァァン!!」
二回目の精は、ケルメスの蜜壺の最奥、命の糧を貪る奥の宮の中へ注がれた。奥宮はゴクゴクと濃い精液を飲み干し、もっと欲しいと侵入した硬い兜にしゃぶりつく。
この感触が一番快いのだ。ニハルの過敏になった兜をジュウジュウ吸われ、下腹部が疼いて更なる律動を与えたくなる。
そして、ケルメスも最高の性感帯である奥宮とその扉を激しく揺さぶられれば、全身から絶頂が弾けて意識の高みへ飛ばされていく。
この状態になると、最早二人に理性を取り戻すことなど不可能だった。
獣の様に無我夢中で快楽を貪り、身の振り方などどうでも良くなる。互いのビクンビクンする身体の反応が絶頂への相乗効果となり、抱き締め合いながら恍惚な世界へ導かれていく。
とめどなく絶頂させられたケルメスの胸や首元は、自身から放たれた白い精にまみれていた。そして紅く熟れた蕾と合わさる塔の隙間から、飲みきれなかったニハルの白濁液が尻や太腿に垂れてゆく。
精液で全身汚れたケルメスが、ひどく愛おしい。愛おし過ぎて上半身をキツく抱き締め、まみれた精液を互いの腹に塗りたくる。
髪を振り乱して喘ぎ、叫び、頬を赤らめて涙を流す姿を目の前にして、ニハルの鼓動は何度も何度も高鳴った。その度、数えきれないほど太い塔の力は漲り、ニハルは打ち付けるように無心で腰を振る。そして愛する人の体内に溢れんばかりの濃い精液を幾度となく注いであげたのだった。
*
季節問わず猛吹雪が吹き荒れ、体の寒さはもちろん、永遠に続くただ真っ白いだけの視界は心も挫かせて容赦なく精神を凍らせて行く。
この氷層地獄とも言うべき雪原の中を、小さな祠付きの雪車で駆ける一人の男がいた。
四頭の雪犬に手綱を打つその男は、この国のβ星で三等星ニーバールを守護星に持つ、騎士団長ニハルであった。
身分を隠す為か雪の中の居所を掴まれない為か、彼は雪と同じ真っ白な厚手のローブを深々と被り、一直線に雪山へ向かっている。
しかし騎士団長たる威厳の大きさは白いローブでも隠し切れず、その大柄な図体と時折見せる深緑の凛々しい瞳が、彼の存在を見えないオーラで燃え上がらせていた。
彼は雪山の吹雪に真っ向から立ち向かい、ジリジリとその麓へ近づいて行った。
雪車を引く雪犬は、最初は十頭居た。それがこの猛吹雪で次々に力尽き、今ではたった四頭にまで減ってしまった。
それでも、ニハルはそこまでして雪山に向かわなければいけない大事な想いがあった。
雪山の裾野に辿り着いたのは、自身の館を出立してから三日後の夜である。
雪犬達の長い毛は、猛吹雪に晒されて所々に氷の毛玉が出来ている。ニハル自身も、白いローブの袖や帽子の縁には氷の塊が大小張り付き、気付けば長い睫毛にも小さな雪玉がこびりついていた。
一分一秒でも猛吹雪に長く晒されていたら、命の灯火をどんどん吹き消されてしまう。昼夜問わず死に物狂いで雪原を駆け抜けたニハルは、すがる様に雪山の割れ目に逃げ込み、雪犬達を避難させた。
「お前達、よくここまで耐えてくれた。この奥は暖かい洞窟になっている。小川が流れていて魚もいる。しばらくはその中でゆっくり休んでいろ」
ニハルが灯籠に火を灯せば、洞窟は奥まで続いていて、その先は吸い込まれてしまいそうな漆黒の闇で埋もれていた。彼は慣れた手つきで灯籠を掲げ、その奥へとゆっくり歩いていく。そして生き残った雪犬達も、主人に倣って狭い道を一列になって辿っていった。
「……もうすぐだ。もうすぐ会える。俺の紅い宝石」
つい先程まで生死の戦いを掻い潜ってきたのに、ニハルの身体が生の豪炎で熱を帯びていく。
洞窟の中は狭い道が続き、時折岩が突き出して足場の悪い所が続いた。しかしニハルは危険な箇所を熟知している様で、一つ一つ確認しながら確実に奥へと歩みを進める。
十分ほど細い道が続くと、突然大きな道に躍り出て、足元も一変して金色に輝く砂と極浅い清流が流れ始めた。ニハルがその先の一点を見つめると、先には更に広い空間が待ち構えていた。
その巨大な空間には、大きく割れた天井から降り注ぐ月明かりと、その光に照らされる大木が凛として佇む。
「ケル……メス……ケルメス……」
ニハルは取り憑かれた様に月明かりの方へ歩み始めた。次第に歩幅が大きくなり、速くなり、凍えたままの脚で時折もつれながら駆けて行く。
目の前に大木が現れた瞬間、月明かりとその光を照らす岩壁の反射光で目が眩んだ。それでもニハルは泣き出しそうな目尻を必死に歪ませて、月光に照らされる大木へと走っていった。
「ケルメス……!! 逢いたかった……逢いたかったぞ……!!」
頑丈に身を包ませていた白いローブを走りながら脱ぎ捨て、ニハルは大木の蔓で繋がれた皺くちゃの男を抱き留めた。
抱き締められた男は、肌が茶黒くくすみ、赤髪だったであろう長い髪も土埃で赤茶色く汚れている。ボロの腰布を巻く痩せ細った身体は、辛うじて皮があるだけで、まるで生きた化石のようだ。
男は蔓に繋がれた両手首だけを天に伸ばし、身体は力なく膝をついてしまっていた。足首の腱を切られていて、立つ事すら出来ないようだ。その証拠に、両膝には土汚れと擦り傷の血が混じって錆色に変色し、膝に無数の瘤が出来ていてスネにやたら傷が多かった。
「……っ、……ぅ。…………ぅぅ」
「そうだ。ニハルだ。だいぶ待たせてしまって辛い思いをさせたな……ケルメス……すまなかった……」
ケルメスと呼ばれた男は、声を出そうとしても空気音しか出ず言葉すら出せなかった。しかし彼はニハルの温かい両手に小顔を包まれ、嬉しそうに紅い瞳を潤ませた。涙を流し皺枯れた頬をニハルの頬に擦り寄せ、何度も頬擦りして再びニハルを見つめ直す。
くすんだ肌や髪とは違い、透き通った紅い瞳。その瞳に見つめられて、ニハルは胸の中心を貫かれる快感を憶えた。紅い瞳の美しさは宝石そのもので、見た者全てを火照る欲情へ沈ませていく。
「あぁ、貴方を一刻も早く抱きたかった。抱いて、抱いて、抱き潰したい……そして若返った貴方を眺め、また悦ばせたい……再会して早々だが、もう待てない……」
ニハルもケルメスの瞳を愛おしそうに見つめ、二人は待ち侘びた様に顔を近づけた。やがてかさついた唇が合わさり、裂けた唇を舌で充分に湿らせながら口腔深くまで愛し合っていく。
月明かりが照らす仄暗い洞窟の中で、唾液の絡み合う音と荒い息遣いが淫らに鳴り響く。ニハルを連れてきた雪犬達は、主人のその熱い抱擁に耳をそば立て、只じっと見つめていた。
「……っ、――――んぅ! ――――はぁはぁっ!」
「あぁぁ、ケルメス……ケルメス! はぁはぁ……んぐ、あぁぁ……はぁはぁっ……!」
「――ゥン! ンゥゥ……!」
最早言葉は必要ない。二人は貪るように口付けを交わし、ニハルの腕の中で何度も首筋を交差した。
ニハルが自身の衣を何枚もむしり取っていく。何枚も着込んだ厚手の服が、今ではとことん煩わしい。服を剥ぎ、下穿きを剥ぎ、最後にケルメスの腰布を投げ捨て素肌同士が重なり合うと、その艶かしい温もりで二人の口から思わず感嘆の吐息が漏れ出す。
「ずっとこうしたかった……あぁぁ……ケルメス……愛している……」
何故だろうか。外は誰も寄せ付けない極寒の地だと言うのに、嵐の影響を受けないこの洞窟で愛する者と肌を重ねていると、身体の奥深くから燃えたぎる熱が溢れ出てくる。
ケルメスも同じようだ。最初に抱き締めた時は人形のように冷たかった肌が、今ではしっとりと肌が吸い付いて汗ばんでいる。
「ケルメス、貴方も感じているんだな……」
ニハルの逞しい二の腕に頭を乗せるケルメスは、うっとりした眼差しで小さくうなづいた。
下腹部に視線を落とせば、大小二本の精留塔が寄り添いながら天にそそり立っている。仄暗い中でよく見れば、互いに透明な蜜まで溢れ出て、時折月明かりの光で塔の先がテラテラと青白く輝いている。
「今すぐ貴方を犯したい……しかし、久しぶりでキツイかもしれないが……良いか?」
その言葉に、ケルメスは焦がれる様にして何度もうなづく。
「そうか……よく濡らして挿れるから、少し我慢していてくれ……ッッ!」
「――ッ、――――ッ、ッンン」
ニハルはケルメスを軽々持ち上げ、腿上に乗せて自身の腰に細い脚を絡ませた。そのまま華奢な上体を抱き寄せ、互いのうなじに顔を埋める。そして蔓に繋がれたケルメスの両腕を支えにして、ニハルの両手は愛する人の双丘を大きく開かせた。
「――――ッッ!! ――――ゥん!!」
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「――――ゥゥゥンン!!」
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「ケルメス……挿れるぞ……っくぅ!!」
ニハルも波打つ力強さに抑揚を憶えていった。時に自分の力がままならない程ケルメスに腰を反らされ、乱れる姿に雄の潮流が全身を駆け巡っていく。
「ハァハァッ!! ――――ァァアア!! ――――ッハァァァン!!」
「あぁぁ! っぐ……!!」
久しぶりの蕾はやはり固く閉じていて、引き攣る粘膜がミチミチと悲鳴に似た音で塔を拒む。しかしニハルは二度三度、蕾に強く押し込み、愛合部は兜の張りに沿ってゆっくり少しずつ、大きく口を開けていった。
大きな兜が受け入れられていく。
何度も先だけを出し入れして兜の張りを全て飲み込んだ時、「グプン!」というしゃぶる水音と共にケルメスの視界が天を仰いだ。
「――――ァウンッ!!」
「あぁぁ……!! あぁ……一番大きい所が入った……中がとても熱い……」
ケルメスの蜜壺は干からびた肌とは違い、粘膜が潤っていて熱かった。一つになれた証拠だ。
その後はズブズブと太い茎を飲み込んでいき、腹の中を抉る感触にケルメスの身体は震え、恍惚な表情で気持ち良さを訴える。
これだ。この感触がずっと欲しかった。ケルメスは腹の中を埋められる感触に神経を研ぎ澄ませた。
想像以上の大質量が下腹部の中を掻き分けていく。ゴリュゴリュと快楽のツボである胡桃のシコリを扱かれ、体内の奥深くから幸せのさざなみが意識を解放させようとする。
逞しい精留塔を抱き締める蜜壺が、悦びに溢れて大きくうねりを上げ始めていた。嬉しい嬉しいと歓喜に沸いて脈打ち、何度もニハルの塔をきつく締め付けてくる。
ニハルもその熱い抱擁を敏感に感じ取っていた。粘膜を何度も擦り合って塔を抱き留められる度、全身に強烈な閃光が飛び散り、愛液を噴き出してしまいそうになる。
「あぁ、気持ちいいか? ハァハァッ、俺もとても気持ちいい……何度も貴方を犯して、腹が膨れるまで精を注ぎ込んでやりたくなるっっ」
まだ二人が一つに合わさったばかりなのに、早くもニハルの精が飛び出そうだ。
必死に堪えて耐えるニハルに、ケルメスは潤んだ瞳で切なく見つめ、食いしばる口元にそっと口付けをしてあげた。
――何度も注いで欲しい。ニハルが満足するまで、たくさん。
言葉はない。しかし、ケルメスの眼差しはそう語っていた。
ニハルはその心にフッと身体が軽くなり、同時に押さえつけていた雄の欲望が理性を完全に払い除ける。
直後、細い下半身を支えていた両手が小さな尻たぶを鷲掴みにして、鍛えられた腰は素早く激しく、愛合部を打ち付けた。
「――――ンァァァァ!! ――――ァァんッ!! ハァッハァッハァッハァ!! ――――アゥゥンン!!」
棍棒の様に硬くなった精留塔が蜜壺の中を容赦なく行き来し、ケルメスの薄い腹の中を淫らにしごいた。肌を打ち付け合う弾けた音が鳴り響き、勢いよく根元まで挿入してケルメスの最高の性感帯、奥宮の門戸に押し入れる。
「――――ァウッ!! ――――ァァァゥン!! ッんァァんんん!!」
「あぁ……!! ケルメス……ケルメス……!!」
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「……まだ終わりじゃないぞ? ……ハァハァッ、俺の言葉を忘れたか」
「――ッッ!? ――――ンァ!!」
本番はここからだと言わんばかりに、ニハルの抽送は力強さを増した。
一度吐き出された精が潤滑液となり、粘膜同士の壁が甘く滑らかに溶けてゆく。
二人の結合部が細胞の隅々まで絡まり合い、一つになっていくようだ。
ニハルの鈴孔で一番奥の幸せになれる部分へ口付けをされる。その度、ケルメスは背を仰け反らせて最高の愛撫に酔いしれた。
全身に気持ち快さが行き渡り、腰がフルフルと震える。足先までピンと張らせて愛する塔をギュウギュウ締め付ける。その凄まじい強さにニハルも天を仰いで声を上げれば、負けじと腰を攻め入って、奥の宮の更にその先を押し破った。
「出る……あぁぁ!! ……っぐ!! っく、ぁぁぁあ!!」
「――――ァウ! ァウ、ァウ、ァァウ!! ――――ッッ、ァァァン!!」
二回目の精は、ケルメスの蜜壺の最奥、命の糧を貪る奥の宮の中へ注がれた。奥宮はゴクゴクと濃い精液を飲み干し、もっと欲しいと侵入した硬い兜にしゃぶりつく。
この感触が一番快いのだ。ニハルの過敏になった兜をジュウジュウ吸われ、下腹部が疼いて更なる律動を与えたくなる。
そして、ケルメスも最高の性感帯である奥宮とその扉を激しく揺さぶられれば、全身から絶頂が弾けて意識の高みへ飛ばされていく。
この状態になると、最早二人に理性を取り戻すことなど不可能だった。
獣の様に無我夢中で快楽を貪り、身の振り方などどうでも良くなる。互いのビクンビクンする身体の反応が絶頂への相乗効果となり、抱き締め合いながら恍惚な世界へ導かれていく。
とめどなく絶頂させられたケルメスの胸や首元は、自身から放たれた白い精にまみれていた。そして紅く熟れた蕾と合わさる塔の隙間から、飲みきれなかったニハルの白濁液が尻や太腿に垂れてゆく。
精液で全身汚れたケルメスが、ひどく愛おしい。愛おし過ぎて上半身をキツく抱き締め、まみれた精液を互いの腹に塗りたくる。
髪を振り乱して喘ぎ、叫び、頬を赤らめて涙を流す姿を目の前にして、ニハルの鼓動は何度も何度も高鳴った。その度、数えきれないほど太い塔の力は漲り、ニハルは打ち付けるように無心で腰を振る。そして愛する人の体内に溢れんばかりの濃い精液を幾度となく注いであげたのだった。
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