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 そして翌日、アルフォンスは俺を伴って国王陛下に俺がゲームで得た情報を報告した。

「オークラ殿、それは全てそなたの狂言ではないと女神に誓って言えるか?」
「はい、ユーミルに誓って」

 などと昨日のアルフォンスと同じやり取りをした後、事態を重く受け止めた陛下は早急に研究所への査察を決めた。ここ最近は書面での報告を受けるだけだったのでちょうどいい理由らしい。

「あちらさんもエンプリオの巣を発見したとこっちに報告を上げてんだ、査察くらいは予想して卵は隠してっかもな」
「それはこちらも想定内です。通常の査察を行なっている間、密偵を潜入させ施設内をくまなく探させます」
「叔父上……王弟殿下への対処はどうする?」
「以前から1人、彼の方の屋敷へ使用人としてこちらの手の者を送っています。その者に探りを入れさせましょう」
「アレも勘のいい男だ。確証が持てるまで派手な動きはせんよう釘を刺しておけ。あくまでも何らかの動きが見えた時だけこちらへ連絡させよ」
「畏まりました」

 俺の話を信じてくれたお偉いさんたちは俺を囲んでどんどん話を進めていく。そのへんの細かい話はわからんので俺は素直に聞き役に徹していた。俺は空気を読んでお口チャックできる子ですよ。

「さて、誰を出す?」

 王様らしくゆったりと威厳のある声の陛下がぐるりと全員を見渡す。
 エンプリオ復活の情報を知るのは陛下とその側近、騎士団長、宰相、アルフォンスとシグルド、そして俺の7人。
 少ないと思うだろうか。でも王宮にも王弟と懇意にしている貴族はいるという。そいつらに知られて王弟側に情報を流されては困るのだ。

「査察と言うからにはあまり大仰にはできません。派遣できるのは文官を数人、護衛として兵士を数人が限度でしょう」

 陛下の言葉に宰相が思案顔でそう話す。それに次いで手を挙げたのはアルフォンスだった。

「私も行こう。王族としてエンプリオやドラゴンの見識を深めたいと言えばあちらも断れまい」
「それなら殿下の護衛として騎士も派遣できるな」

 騎士団長がそれに便乗。陛下や他の人たちも異論はないのか反論はないようだった。
 それならば!と思うのは俺である。ズバッと勢いよく手を挙げた。

「あの!俺も行きたいです!」
「オークラ?」
「俺だからこそわかることもあるかもしれません。文官の1人として参加することはできませんか?」

 確かLODの中で放棄された研究所に潜入するミッションがあった。細かい間取りは残念ながら覚えてないけど、実際に見てみたら何か思い出すかもしれない。そう主張すると皆納得したようで、アルフォンスと俺をメンバーに加えた形で査察の面子を決めることになった。

 結果、エンプリオに関しての俺の言葉はほぼ丸っと受け入れられた形になったわけだ。凄いな~、御使の信頼度と発言力!普通は出会って数日の身元不明不審者の言葉なんて信用できないぞ。

「オークラ、本当にいいのか?危険かもしれないんだぞ」

 詳しい日取りはまた後日と一旦は解散した俺たち。サロンで一息つこうと腰を落ち着けた頃、一緒に王太子宮へ戻ったアルフォンスが気遣わしい顔で俺に問いかけてきた。
 アルフォンスの後ろに立つシグルドも似たような顔をしてる。2人とも俺に気を遣ってくれているんだろう。2人の気持ちをありがたく思いつつ、俺はへらりと笑った。

「怖くないって言ったら嘘になりますけど……だからって引きこもってても問題は解決しないでしょ。だったら動いた方がいいって思ってるだけです」

 俺はエンプリオに死体の山を築かせないために3章のRTAに挑むのだ。後手に回るほど命が危ないのはわかっているのだから、比較的マシな今色々と動いておかないとヤバいことになる。ガチの戦場になったら俺は確実に死ぬ。断言できる。俺はこんなところで死にたくはない。
 だから早め早めに外に出て打てる手を打つのだ。

 女神様さぁ、俺がアクティブな方のオタクで良かったね!

「オークラ……お前、いい奴だなぁ」
「うはは、もっと褒めてくれていいんですよ!」

 俺の言葉に感動した様子で肩を叩くアルフォンスにやけっぱちに笑って胸を張る。何の取り柄もない平凡な俺に過剰な重積を負わせたのだ。ヨイショでもしてもらわにゃやってられん話だよ実際。

「俺は普段から褒められて伸びる子なん」
「オークラ」
「うぇ?!」

 すると何と言うことでしょう。アルフォンスはきょとりと目を丸め、何か考える素振りを見せたかと思うとあら不思議。なんとその力強い腕で俺を抱きしめてきたではないか!

「でっ、でででででんか?!」

 やべ、ビビり過ぎてめちゃくちゃどもった。シグルドもギョッとしている。
 いやだって考えてもみてくれ。俺はアルフォンスをLOD 一推しているのだ。そんな相手からぎゅっと抱きしめられ……抱きしめられて……いやほんと何で?

 そんな俺の混乱などものともせずアルフォンスは俺の背中をぽんぽんと叩き、優しい声で語りかけてくる。

「オークラ、お前は凄い。突然異世界に送られたにも関わらず、俺たちのことを信じてこの国を救おうとしてくれる。それは簡単なことじゃないはずだ」
「殿下……」

 そうか、俺が褒めてくれって言ったからか。アルフォンスはわからないながらに何かしようとする俺を肯定してくれるのか。凄いと思ってくれるのか。そう思うと胸がムズムズとむず痒くなって、戸惑いと同時に温かい何かが広がっていった。

「お前は凄い奴だよ」

 そう言って体を離したアルフォンスはその凛々しい顔を柔らかく緩めて微笑んでいる。こんなに距離が近いのに嫌悪感なんて一切ない。むしろ輝くような微笑みに胸が高鳴る。

 うわーんこんなの二次元だけに許される所業だ!いや俺にとっては絶賛三次元だが!でも許す!ありがとうございます!
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