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「わ、わかりました!わかったからちょっと離れてください、描き足してみますから!」
「おっと、悪い悪い」
顎クイされている現状に耐えかねて腕を突っ張って距離を取る。抵抗なく解放されたことにホッとしつつアルフォンスから更に離れた。
アルフォンスからの過剰なファンサに俺の心臓は全力疾走している。これ以上は危険だ。うっかり恋する乙女になるところだった。俺は心を落ち着かせようとそっと窓の外を見た。
ああ、夕焼けと夜のグラデーション、きれい……
「何やってんだあいつ?」
「さぁ?と言うか彼今私の顔をしているんですからあんまりベタベタしないでくれます?自分がされてるみたいで不快です」
「容赦なく不敬だなお前は」
窓に向かって遠い目をする俺を首を傾げて眺める二人。若干不審に思われていることにあえて気付かない振りをする俺。
そうして心の平穏を取り戻した俺は、宣言通り黒子を描き足すためにメイクポーチからアイブロウペンシルを取り出した。見落としていた黒子を描き足して、これでようやくシグルド・リンドベリのコスプレは完成だ。手鏡とペンを置いて二人に視線を移す。
「これでどうですか?」
「おおー、どこから見てもシグルドだ。黒子の一つ二つで変わるものだなぁ」
「ええ本当に、鏡を見ているようです」
アルフォンスから合格を頂戴し、シグルドは相変わらず微妙な顔をしている。まあそれだけ似ているということだと思えば悪くない反応だ。俺ももう一度鏡でチェックして、紫紺の髪と紺碧の目のクール系イケメンに変わった顔に満足げに頷いた。
完璧!そう思った瞬間“ピロン”と脇に置いたタブレットから通知音が鳴る。また何か新しい情報が開示されたのかと俺は慌てて通知を確認した。
「お、おお……!?」
「どうしました?」
「何だ?女神からの啓示か?!」
「スキルレベルが上がりました!」
「「なんだ……」」
「何だとは何ですか失礼な!」
俺の返事に目に見えてガッカリした2人。そんなこと言うなら教えてやんねーぞコラ!ぷりぷりと怒りながらもう一度タブレットを確認すると、そこには俺のスキルが上がったことと共に新たな能力も記されていた。
『スキル:メタモルフォーゼのレベルが3にアップしました。追加機能、リストが解放されました』
「リスト?」
よく見るとメタモルフォーゼのスキルにリストという項目が追加されている。タップするとウインドウが開き、いくつかのスロットの中にアルフォンス、シグルドの名前が記されていた。
『リスト:獲得したキャラクターをリストに登録すると、次回以降メタモルフォーゼにかかる時間をカットできる。タブレットでキャラクター選択可能。スキルレベルが上昇する毎にリストの上限数は増加する。最大値10』
つまり、一度成功すると次からはボタン一つで変身できちゃうわけか?そりゃ楽ちんだ!
「では早速ぽちっとなー!!」
衝動的にアルフォンスの文字を押した瞬間、ぽむ!と若干マヌケな音とベタな煙に姿が覆われる。それは不思議と煙たくも苦しくもなく、瞬きの間にスッと消えてしまった。
スッキリした視界の中で見えるのは、あんぐりと口を開けて俺を見ているアルフォンスとシグルド。これだけでぽちっとな、の結果が分かろうものだ。
「な、なんだ?!どうなってる?!急に姿が……!」
「ちょ、どういうことですか?!何したんですあなた!」
「うっへへ!新機能ですぞ!」
「「新機能?!」」
大慌ての二人に向かってえっへんとふんぞり返って得意げに言う。視界に入る掌も腕もさっきより厚く太くなり、目元にちらつく前髪は金色だ。そう、今の一瞬で俺はシグルドからアルフォンスに姿を変えていたのだ。
どういう仕組みかさっぱりだが、ここにきてようやく俺にもチートっぽい能力が出てきたぞ。やったね!
「おっと、悪い悪い」
顎クイされている現状に耐えかねて腕を突っ張って距離を取る。抵抗なく解放されたことにホッとしつつアルフォンスから更に離れた。
アルフォンスからの過剰なファンサに俺の心臓は全力疾走している。これ以上は危険だ。うっかり恋する乙女になるところだった。俺は心を落ち着かせようとそっと窓の外を見た。
ああ、夕焼けと夜のグラデーション、きれい……
「何やってんだあいつ?」
「さぁ?と言うか彼今私の顔をしているんですからあんまりベタベタしないでくれます?自分がされてるみたいで不快です」
「容赦なく不敬だなお前は」
窓に向かって遠い目をする俺を首を傾げて眺める二人。若干不審に思われていることにあえて気付かない振りをする俺。
そうして心の平穏を取り戻した俺は、宣言通り黒子を描き足すためにメイクポーチからアイブロウペンシルを取り出した。見落としていた黒子を描き足して、これでようやくシグルド・リンドベリのコスプレは完成だ。手鏡とペンを置いて二人に視線を移す。
「これでどうですか?」
「おおー、どこから見てもシグルドだ。黒子の一つ二つで変わるものだなぁ」
「ええ本当に、鏡を見ているようです」
アルフォンスから合格を頂戴し、シグルドは相変わらず微妙な顔をしている。まあそれだけ似ているということだと思えば悪くない反応だ。俺ももう一度鏡でチェックして、紫紺の髪と紺碧の目のクール系イケメンに変わった顔に満足げに頷いた。
完璧!そう思った瞬間“ピロン”と脇に置いたタブレットから通知音が鳴る。また何か新しい情報が開示されたのかと俺は慌てて通知を確認した。
「お、おお……!?」
「どうしました?」
「何だ?女神からの啓示か?!」
「スキルレベルが上がりました!」
「「なんだ……」」
「何だとは何ですか失礼な!」
俺の返事に目に見えてガッカリした2人。そんなこと言うなら教えてやんねーぞコラ!ぷりぷりと怒りながらもう一度タブレットを確認すると、そこには俺のスキルが上がったことと共に新たな能力も記されていた。
『スキル:メタモルフォーゼのレベルが3にアップしました。追加機能、リストが解放されました』
「リスト?」
よく見るとメタモルフォーゼのスキルにリストという項目が追加されている。タップするとウインドウが開き、いくつかのスロットの中にアルフォンス、シグルドの名前が記されていた。
『リスト:獲得したキャラクターをリストに登録すると、次回以降メタモルフォーゼにかかる時間をカットできる。タブレットでキャラクター選択可能。スキルレベルが上昇する毎にリストの上限数は増加する。最大値10』
つまり、一度成功すると次からはボタン一つで変身できちゃうわけか?そりゃ楽ちんだ!
「では早速ぽちっとなー!!」
衝動的にアルフォンスの文字を押した瞬間、ぽむ!と若干マヌケな音とベタな煙に姿が覆われる。それは不思議と煙たくも苦しくもなく、瞬きの間にスッと消えてしまった。
スッキリした視界の中で見えるのは、あんぐりと口を開けて俺を見ているアルフォンスとシグルド。これだけでぽちっとな、の結果が分かろうものだ。
「な、なんだ?!どうなってる?!急に姿が……!」
「ちょ、どういうことですか?!何したんですあなた!」
「うっへへ!新機能ですぞ!」
「「新機能?!」」
大慌ての二人に向かってえっへんとふんぞり返って得意げに言う。視界に入る掌も腕もさっきより厚く太くなり、目元にちらつく前髪は金色だ。そう、今の一瞬で俺はシグルドからアルフォンスに姿を変えていたのだ。
どういう仕組みかさっぱりだが、ここにきてようやく俺にもチートっぽい能力が出てきたぞ。やったね!
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