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緩くウェーブのかかった稲穂色の髪、アクアマリンのように明るい青色の瞳。シグルドよりも少し高い身長と服の上からでもわかるがっしりとした体つき。こちらももちろん彫りの深い顔立ちで目鼻立ちははっきりとしている。そして言うまでもなくかなりのイケメン。
少女漫画の王子様のようなすらりとした線の細いキラキラタイプではなく、見るからに強そうなパワータイプの王子様だ。自ら陣頭に立ってドラゴンと戦うのだから実力も折り紙付き。権威をむやみやたらに振り翳さず気さくに冒険者ともコミュニケーションを取るタイプで、笑った時の懐っこい顔がまた『良い』のだ。
そんな俺のLoDにおける推しが今、目の前に。
「これは……」
アルフォンスの目が俺を捕らえた瞬間驚きに見開かれる。俺も俺で画面越しではない生のアルフォンスの姿に視線は釘付けだ。
言葉もなくお互いに見つめ合って、そして俺は思う。
いや、全然似てなくね?
本物のアルフォンスの方が俺なんかよりも百億倍くらいかっこいいんだが?何をどう見たら俺がこのウルトラスーパーイケメン王太子様に見えるんだよシグルド。眼科行ってメガネ作ってもらってこい。
「ほう、へえ~!いやぁ、これはこれは」
「ちょっと殿下!」
「うぉっ?!」
キラキラと目を輝かせたアルフォンスがずんずん近寄ってきた。相変わらず光の鎖に縛られている俺は一切身動きが取れないが、動けていたら飛び退いていただろう。何故ならテーブルに手をついて身を乗り出したアルフォンスが鼻息がかかるんじゃないかってくらいに顔を近づけて来たからだ。そして俺の顔を興味深そうに見ている。
近い近い!ヤダ目が潰れる!推しの顔が眩しい!
「世の中似てる人間はいるとは言うが、こんなにそっくりな人間もいるものなんだな……」
「に、似てるなんて滅相もない……!殿下の方が何百倍もカッコいいです!」
「そうか?はは、なんだいコイツ面白いな!」
俺がテンパっている様子を楽しそうに眺めて笑うアルフォンス。にかっと笑うと口から覗く八重歯がチャーミングだ。こんな状況じゃなかったら男の俺でもキャアキャア言っていたに違いない。
「殿下、それが何者でどんな能力を持っているかもわかりません。離れてください」
「大丈夫だ。シールドは張っているだろう?それに彼からはまるで悪意を感じない」
アルフォンスは俺をそこまで脅威と思っていないようだ。さっきまでシグルドが座っていた椅子に座って、俺と話を続けるつもりらしい。
「あの……失礼ですが、俺としてはまるで似てないというか、似てると言われるのも申し訳ないくらいなんですが……寄せているところはあるとはいえ、実際に見ると月とスッポンくらいの差があると言うか」
「スッポン?」
というか、突然のご本人登場で今の自分の格好が急に恥ずかしくなってきた。納得のいく完璧な姿ならいざ知らず、モンスターに襲われてボロボロの姿はみすぼらしいものだろう。いくら似ていると言われたとて、そんな姿で本人に向かってアルフォンスのコスプレとは名乗りたくないものだ。
おずおずとそう発言すると、アルフォンスもシグルドも驚いたように目を丸くした。
「お前自分の顔見たことないのか?双子かってくらい似てるぞ」
「そんな馬鹿な」
「シグルド、鏡持ってるか?」
「はい、どうぞ」
アルフォンスの問いにさっと胸元から小さな鏡を取り出したシグルド。手のひらに収まるサイズのそれを受け取ると、アルフォンスは俺に向かって鏡を掲げた。
鏡に映るのは緩くウェーブした金髪に明るい青色の瞳をした男。彫りが深くて目鼻立ちのはっきりした、精悍な顔立ち。鏡を掲げてこちらを見ているアルフォンスと、そっくり同じ顔。違いと言ったら鏡に映る顔が酷く間抜けな顔をしていることくらいだ。
「そんな、嘘だろ……」
「うん?何?」
どう見てもメイクじゃない。
ハイライトとシャドーで作った陰影は自然な凹凸に変化していて、顎周りや頬の弛みを引き上げるためのテーピングは跡形もないのにグッと引き締まったフェイスライン。アイライナーで引いたダブルラインは確かな皮膚の窪みとして存在している。あれだけ走って吹き飛ばされ転がったくせにつけまつげもそのままだし髪は乱れているだけでズレていない。
まるでこれが本当の顔のような自然さ。メイクで形作った顔とは全く違う次元。
確かに二人が言うように、俺の顔はアルフォンス・ラーゲルブラードに酷似していたのだ。
「俺の顔じゃない……俺、こんな顔じゃない!おおお、おかしいです!確かに似せたメイクはしてたけど、あくまで化粧で!俺の顔はもっと平凡で、鼻とかもっと平べったくて、一重で!」
「は?」
「どう言うことです?」
「わかりません!なんなんですかこれ?!」
イベント会場に来たと思ったら知らない場所に独りで立っていて、モンスターに襲われた。助けてくれた人にはスパイと疑われて拘束されて。挙句に顔まで変わっているなんて訳がわからない。俺は今までの全ての混乱と不安が一気に噴き上がってきてパニックになった。
少女漫画の王子様のようなすらりとした線の細いキラキラタイプではなく、見るからに強そうなパワータイプの王子様だ。自ら陣頭に立ってドラゴンと戦うのだから実力も折り紙付き。権威をむやみやたらに振り翳さず気さくに冒険者ともコミュニケーションを取るタイプで、笑った時の懐っこい顔がまた『良い』のだ。
そんな俺のLoDにおける推しが今、目の前に。
「これは……」
アルフォンスの目が俺を捕らえた瞬間驚きに見開かれる。俺も俺で画面越しではない生のアルフォンスの姿に視線は釘付けだ。
言葉もなくお互いに見つめ合って、そして俺は思う。
いや、全然似てなくね?
本物のアルフォンスの方が俺なんかよりも百億倍くらいかっこいいんだが?何をどう見たら俺がこのウルトラスーパーイケメン王太子様に見えるんだよシグルド。眼科行ってメガネ作ってもらってこい。
「ほう、へえ~!いやぁ、これはこれは」
「ちょっと殿下!」
「うぉっ?!」
キラキラと目を輝かせたアルフォンスがずんずん近寄ってきた。相変わらず光の鎖に縛られている俺は一切身動きが取れないが、動けていたら飛び退いていただろう。何故ならテーブルに手をついて身を乗り出したアルフォンスが鼻息がかかるんじゃないかってくらいに顔を近づけて来たからだ。そして俺の顔を興味深そうに見ている。
近い近い!ヤダ目が潰れる!推しの顔が眩しい!
「世の中似てる人間はいるとは言うが、こんなにそっくりな人間もいるものなんだな……」
「に、似てるなんて滅相もない……!殿下の方が何百倍もカッコいいです!」
「そうか?はは、なんだいコイツ面白いな!」
俺がテンパっている様子を楽しそうに眺めて笑うアルフォンス。にかっと笑うと口から覗く八重歯がチャーミングだ。こんな状況じゃなかったら男の俺でもキャアキャア言っていたに違いない。
「殿下、それが何者でどんな能力を持っているかもわかりません。離れてください」
「大丈夫だ。シールドは張っているだろう?それに彼からはまるで悪意を感じない」
アルフォンスは俺をそこまで脅威と思っていないようだ。さっきまでシグルドが座っていた椅子に座って、俺と話を続けるつもりらしい。
「あの……失礼ですが、俺としてはまるで似てないというか、似てると言われるのも申し訳ないくらいなんですが……寄せているところはあるとはいえ、実際に見ると月とスッポンくらいの差があると言うか」
「スッポン?」
というか、突然のご本人登場で今の自分の格好が急に恥ずかしくなってきた。納得のいく完璧な姿ならいざ知らず、モンスターに襲われてボロボロの姿はみすぼらしいものだろう。いくら似ていると言われたとて、そんな姿で本人に向かってアルフォンスのコスプレとは名乗りたくないものだ。
おずおずとそう発言すると、アルフォンスもシグルドも驚いたように目を丸くした。
「お前自分の顔見たことないのか?双子かってくらい似てるぞ」
「そんな馬鹿な」
「シグルド、鏡持ってるか?」
「はい、どうぞ」
アルフォンスの問いにさっと胸元から小さな鏡を取り出したシグルド。手のひらに収まるサイズのそれを受け取ると、アルフォンスは俺に向かって鏡を掲げた。
鏡に映るのは緩くウェーブした金髪に明るい青色の瞳をした男。彫りが深くて目鼻立ちのはっきりした、精悍な顔立ち。鏡を掲げてこちらを見ているアルフォンスと、そっくり同じ顔。違いと言ったら鏡に映る顔が酷く間抜けな顔をしていることくらいだ。
「そんな、嘘だろ……」
「うん?何?」
どう見てもメイクじゃない。
ハイライトとシャドーで作った陰影は自然な凹凸に変化していて、顎周りや頬の弛みを引き上げるためのテーピングは跡形もないのにグッと引き締まったフェイスライン。アイライナーで引いたダブルラインは確かな皮膚の窪みとして存在している。あれだけ走って吹き飛ばされ転がったくせにつけまつげもそのままだし髪は乱れているだけでズレていない。
まるでこれが本当の顔のような自然さ。メイクで形作った顔とは全く違う次元。
確かに二人が言うように、俺の顔はアルフォンス・ラーゲルブラードに酷似していたのだ。
「俺の顔じゃない……俺、こんな顔じゃない!おおお、おかしいです!確かに似せたメイクはしてたけど、あくまで化粧で!俺の顔はもっと平凡で、鼻とかもっと平べったくて、一重で!」
「は?」
「どう言うことです?」
「わかりません!なんなんですかこれ?!」
イベント会場に来たと思ったら知らない場所に独りで立っていて、モンスターに襲われた。助けてくれた人にはスパイと疑われて拘束されて。挙句に顔まで変わっているなんて訳がわからない。俺は今までの全ての混乱と不安が一気に噴き上がってきてパニックになった。
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