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「貴方、名はなんと?」
「あ、大倉です。大倉健一」
「オークラケニーチ?」
名前を名乗ればなんかちょっと変なイントネーションで返された。あれ?俺もあなたも今日本語喋ってますよね?何で名前だけ急に訛るの。俺はことりと首を傾げる。
「おおくら、けんいち、です。姓が大倉で名前が健一」
もう一度、今度はゆっくりはっきりと言い直す。すると男前は頷いてどこどなく言いにくそうに大倉健一と呟いた。
「ではオークラ、あなたの出身は?今どこに住んでいますか?職業は?身分を保証するものは持ち合わせていますか?」
そして続いたのは怒涛の質問コーナー。職質みたいだ。いや多分職質だ。だって俺この男前から見たらどこかの王子によく似た不審者だもんな。俺もこんな右も左もわからない場所でゴネる気はないので大人しく事実を述べることにした。
「えーっと、出身は日本です。職業は事務系のサラリーマン。身分証は……イビルボアに投げつけてどっか行きました……」
「ニホン?サラリーマン?聞いたことのない地名と職業ですね」
俺の話を聞いて男前の顔は再び険しくなる。そんな流暢な日本語喋っておいて日本もサラリーマンも知らないとはどういうこっちゃい。やっぱ俺夢見てんのかな。でも夢にしちゃあ感覚が起きてる時と変わらないくらいにリアルだし、イビルボアに吹っ飛ばされた時にぶつけたところが物凄く痛い。
あり得ない話だが、夢じゃないのかもしれない。でもそれならここはどこだ?結局疑問は振り出しに戻る。
今俺が頼れるのは目の前にいる男しかいない。置かれた状況を知りたいし、どうにか安全なところまで連れて行ってほしい。俺は只管低姿勢でちょっと半泣きになりながら男に問いかけた。
「さっきも言いましたけど俺気づいたらここにいて!ここってどこなんですか?日本……ではないっぽいですよね……」
「ここはナルグァルド王国の首都ナギリムの外れにある赤の森です。本当に知らないんですか?」
「ナルグァルド王国、首都ナギリム、赤の森」
あっ、めっちゃ聞き覚えありますわ。LoDの3章に出てくる国と街と森だぁ……って、マジで?
俺の問いかけに呆れたように答えてくれた男。その男がくれた答えに俺は引き攣った笑い顔のまま固まってしまった。知らないのかと聞かれたら、知っている。俺はナルグァルド王国も首都ナギリムも赤の森もよく知っている。でもそれは画面を通してみたゲームの世界だ。あれは現実に存在する世界なんかじゃない。
ライフ・オブ・ドラゴン、通称LoD。生き馬の目を抜くオンラインゲーム界隈で長く続いている人気RPG系ゲームだ。
魔法あり機械ありのファンタジー世界が舞台。タイトルにある通りドラゴンがこの世界では最強の存在であり、吉凶をもたらすものとして畏怖、崇拝されている。良くも悪くもドラゴン中心の世界として描かれているのでライフ・オブ・ドラゴン。ドラゴンの存在が生活に根付いているのだ。
その中で人間、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族の5種族が繁栄していて、それぞれに国を持ち独自の文化を築いている。しかも文化も国ごとに多種多様で単純にフィールドを歩き回るだけでもかなり楽しめるようにできているのだ。
今現在10章まで配信中。プレイヤーは自身でカスタムしたアバターを作って冒険者となり、各章ごとのメインストーリーとサブストーリー、フリーミッションをこなしていく。メインストーリーは大災害を起こすドラゴンの討伐。プレイヤーは冒険者として各章メインストーリーの主人公となるNPCと協力して物語を進めていく。
で、この軍人風の男前曰くここはそのゲームに出てくる国の一つ、ナルグァルド王国らしい。
「あ、大倉です。大倉健一」
「オークラケニーチ?」
名前を名乗ればなんかちょっと変なイントネーションで返された。あれ?俺もあなたも今日本語喋ってますよね?何で名前だけ急に訛るの。俺はことりと首を傾げる。
「おおくら、けんいち、です。姓が大倉で名前が健一」
もう一度、今度はゆっくりはっきりと言い直す。すると男前は頷いてどこどなく言いにくそうに大倉健一と呟いた。
「ではオークラ、あなたの出身は?今どこに住んでいますか?職業は?身分を保証するものは持ち合わせていますか?」
そして続いたのは怒涛の質問コーナー。職質みたいだ。いや多分職質だ。だって俺この男前から見たらどこかの王子によく似た不審者だもんな。俺もこんな右も左もわからない場所でゴネる気はないので大人しく事実を述べることにした。
「えーっと、出身は日本です。職業は事務系のサラリーマン。身分証は……イビルボアに投げつけてどっか行きました……」
「ニホン?サラリーマン?聞いたことのない地名と職業ですね」
俺の話を聞いて男前の顔は再び険しくなる。そんな流暢な日本語喋っておいて日本もサラリーマンも知らないとはどういうこっちゃい。やっぱ俺夢見てんのかな。でも夢にしちゃあ感覚が起きてる時と変わらないくらいにリアルだし、イビルボアに吹っ飛ばされた時にぶつけたところが物凄く痛い。
あり得ない話だが、夢じゃないのかもしれない。でもそれならここはどこだ?結局疑問は振り出しに戻る。
今俺が頼れるのは目の前にいる男しかいない。置かれた状況を知りたいし、どうにか安全なところまで連れて行ってほしい。俺は只管低姿勢でちょっと半泣きになりながら男に問いかけた。
「さっきも言いましたけど俺気づいたらここにいて!ここってどこなんですか?日本……ではないっぽいですよね……」
「ここはナルグァルド王国の首都ナギリムの外れにある赤の森です。本当に知らないんですか?」
「ナルグァルド王国、首都ナギリム、赤の森」
あっ、めっちゃ聞き覚えありますわ。LoDの3章に出てくる国と街と森だぁ……って、マジで?
俺の問いかけに呆れたように答えてくれた男。その男がくれた答えに俺は引き攣った笑い顔のまま固まってしまった。知らないのかと聞かれたら、知っている。俺はナルグァルド王国も首都ナギリムも赤の森もよく知っている。でもそれは画面を通してみたゲームの世界だ。あれは現実に存在する世界なんかじゃない。
ライフ・オブ・ドラゴン、通称LoD。生き馬の目を抜くオンラインゲーム界隈で長く続いている人気RPG系ゲームだ。
魔法あり機械ありのファンタジー世界が舞台。タイトルにある通りドラゴンがこの世界では最強の存在であり、吉凶をもたらすものとして畏怖、崇拝されている。良くも悪くもドラゴン中心の世界として描かれているのでライフ・オブ・ドラゴン。ドラゴンの存在が生活に根付いているのだ。
その中で人間、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族の5種族が繁栄していて、それぞれに国を持ち独自の文化を築いている。しかも文化も国ごとに多種多様で単純にフィールドを歩き回るだけでもかなり楽しめるようにできているのだ。
今現在10章まで配信中。プレイヤーは自身でカスタムしたアバターを作って冒険者となり、各章ごとのメインストーリーとサブストーリー、フリーミッションをこなしていく。メインストーリーは大災害を起こすドラゴンの討伐。プレイヤーは冒険者として各章メインストーリーの主人公となるNPCと協力して物語を進めていく。
で、この軍人風の男前曰くここはそのゲームに出てくる国の一つ、ナルグァルド王国らしい。
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