8 / 36
断罪回避のために
しおりを挟む
子供たちと使用人との顔合わせが終わり、場所を変えて小さなサロンで子供たちとお茶の時間を過ごす。ちなみにその間に一回着替えを挟みました。
ルキーノはまだ仕事があるとかで夕食の時間まで執務室だ。俺たち新婚ですよね?とは思っても言わない。ワガママ嫁ムーブかまして疎ましく思われるのは困るからね。
「これ、おいしい、よ。ネロさま、たべて?」
「ありがとうジュリエッタ様。私の分はここにちゃんと取り分けてあるから、一緒に同じもの食べようか」
「ん……」
自分の分を差し出そうとしたジュリエッタのかわいさに内心ほっこりしつつ、おすすめされた一口サイズのベリータルトを一緒に食べる。ジュリエッタは俺がタルトを口に入れた瞬間、期待に目を輝かせて俺を見た。
「おいし?」
「うん、とってもおいしい。こんなにおいしいの初めて食べたよ」
「んふふ!やったぁ」
あーかわいい。100点。嬉しくて足がぷらぷら揺れてるとことか最高。ジュリエッタのナニーが困った顔をしてるけど俺相手だし今日くらい大目に見てあげてほしいな。
「ジュリー、気に入ったなら兄さまの分も食べるか?」
「いーの?」
「もちろんだ」
ステファノはメイドに言って自分の皿に乗せられたベリータルトをジュリエッタの皿に取り分けさせる。目の前に再び現れたキラキラ輝くベリータルトに負けないくらいに目を輝かせるジュリエッタ。丁寧に切り分けて口に運んで膨らむ頬がまたかわいい。
もちろんそれを見て満足げにしているステファノも大変かわいい。うーん、もしかして俺子供結構好きなのかもしれない。
子供たちとの初めてのお茶の席は和やかに進んでいく。
今のところ子供たちからも使用人からも平民の俺に対する侮蔑や敵意みたいなものは感じられない。想像していたよりもアットホームな雰囲気に俺の疑問は深まるばかりだ。
小説のルキーノは多くの犯罪に手を染めていて、主人公に全ての罪を暴かれた後国家反逆罪で一族全員が投獄された。
ルキーノと共に断頭台に送られたのは俺と子供たちにベネディクティス家の分家筋の当主とその妻子。屋敷の上級使用人や片棒を担いでいた貴族たちも何人かいたように思う。順に首を落とされるその様子を淡々と綴った文章がより惨さを表していた。
小説の中の彼は使用人を人として扱わず、血縁や自分の子供でさえ自身の駒と思っているような発言をしていた。処刑が決定しても最後まで己の罪を認めず主人公を詰っていたのだ。ならばさぞベネディクティス家は冷淡な、冷え切った家庭なのかと思っていたのだが現実では今のところ真逆の印象を受けている。
子供たちは素直でかわいいし、使用人は俺の出自を知っていて後夫として尊重しようとしてくれている。ルキーノも彼らを虐げているようには見えなかった。
「ビジョンの物語と、現実は違っている……?」
ぼそりと呟いた言葉が聞き取れなかったのかステファノとジュリエッタが首を傾げている。それに俺は何でもないと首を振った。
いや、まだわからない。少なくとも俺は彼が聖人君子ではないことだけは既に知っている。俺は悪巧みには最適な場所で働いていて、彼とはそこで出会ったのだから。
たった1日で楽観視するのは早計というものだ。念のためビジョンで見た小説と同じ道を辿ると考えて行動すべきだろう。だって思い出した記憶に意味がないのなら、何故思い出したかの説明がつかない。
もっと彼と親しくなって、彼の裏の顔まで覗き見る。それで何か確定的にヤバいことをする前に止めないと。
前世のビジョンを見たからと言って俺はここを逃げ出そうとは思ってない。彼は半ば諦めながら『誰か』を待っていた俺の手を取ってくれたのだから、俺だって彼の手を離さない。一緒に落ちるんじゃなくて、落ちる彼を引き上げるために手を繋ぐんだ。俺は膝の上に置いた手を見つめ、ぎゅっと握りしめた。
「ネロ様、そろそろ夕食の準備が整います。先にお召替えをいたしましょう」
「えっ?!また着替えるの?!」
「ん?あたりまえだろ。ばんさんの前にようふくを着がえるのはじょうしきだぞ」
「じょーしきだよ?」
「そんな常識初めて聞きました!」
めっちゃ真剣なこと考えてたのにブリジッタの言葉で考えてたことが全部吹っ飛んだ。
貴族着替え多すぎじゃない?!効率わる!!
ルキーノはまだ仕事があるとかで夕食の時間まで執務室だ。俺たち新婚ですよね?とは思っても言わない。ワガママ嫁ムーブかまして疎ましく思われるのは困るからね。
「これ、おいしい、よ。ネロさま、たべて?」
「ありがとうジュリエッタ様。私の分はここにちゃんと取り分けてあるから、一緒に同じもの食べようか」
「ん……」
自分の分を差し出そうとしたジュリエッタのかわいさに内心ほっこりしつつ、おすすめされた一口サイズのベリータルトを一緒に食べる。ジュリエッタは俺がタルトを口に入れた瞬間、期待に目を輝かせて俺を見た。
「おいし?」
「うん、とってもおいしい。こんなにおいしいの初めて食べたよ」
「んふふ!やったぁ」
あーかわいい。100点。嬉しくて足がぷらぷら揺れてるとことか最高。ジュリエッタのナニーが困った顔をしてるけど俺相手だし今日くらい大目に見てあげてほしいな。
「ジュリー、気に入ったなら兄さまの分も食べるか?」
「いーの?」
「もちろんだ」
ステファノはメイドに言って自分の皿に乗せられたベリータルトをジュリエッタの皿に取り分けさせる。目の前に再び現れたキラキラ輝くベリータルトに負けないくらいに目を輝かせるジュリエッタ。丁寧に切り分けて口に運んで膨らむ頬がまたかわいい。
もちろんそれを見て満足げにしているステファノも大変かわいい。うーん、もしかして俺子供結構好きなのかもしれない。
子供たちとの初めてのお茶の席は和やかに進んでいく。
今のところ子供たちからも使用人からも平民の俺に対する侮蔑や敵意みたいなものは感じられない。想像していたよりもアットホームな雰囲気に俺の疑問は深まるばかりだ。
小説のルキーノは多くの犯罪に手を染めていて、主人公に全ての罪を暴かれた後国家反逆罪で一族全員が投獄された。
ルキーノと共に断頭台に送られたのは俺と子供たちにベネディクティス家の分家筋の当主とその妻子。屋敷の上級使用人や片棒を担いでいた貴族たちも何人かいたように思う。順に首を落とされるその様子を淡々と綴った文章がより惨さを表していた。
小説の中の彼は使用人を人として扱わず、血縁や自分の子供でさえ自身の駒と思っているような発言をしていた。処刑が決定しても最後まで己の罪を認めず主人公を詰っていたのだ。ならばさぞベネディクティス家は冷淡な、冷え切った家庭なのかと思っていたのだが現実では今のところ真逆の印象を受けている。
子供たちは素直でかわいいし、使用人は俺の出自を知っていて後夫として尊重しようとしてくれている。ルキーノも彼らを虐げているようには見えなかった。
「ビジョンの物語と、現実は違っている……?」
ぼそりと呟いた言葉が聞き取れなかったのかステファノとジュリエッタが首を傾げている。それに俺は何でもないと首を振った。
いや、まだわからない。少なくとも俺は彼が聖人君子ではないことだけは既に知っている。俺は悪巧みには最適な場所で働いていて、彼とはそこで出会ったのだから。
たった1日で楽観視するのは早計というものだ。念のためビジョンで見た小説と同じ道を辿ると考えて行動すべきだろう。だって思い出した記憶に意味がないのなら、何故思い出したかの説明がつかない。
もっと彼と親しくなって、彼の裏の顔まで覗き見る。それで何か確定的にヤバいことをする前に止めないと。
前世のビジョンを見たからと言って俺はここを逃げ出そうとは思ってない。彼は半ば諦めながら『誰か』を待っていた俺の手を取ってくれたのだから、俺だって彼の手を離さない。一緒に落ちるんじゃなくて、落ちる彼を引き上げるために手を繋ぐんだ。俺は膝の上に置いた手を見つめ、ぎゅっと握りしめた。
「ネロ様、そろそろ夕食の準備が整います。先にお召替えをいたしましょう」
「えっ?!また着替えるの?!」
「ん?あたりまえだろ。ばんさんの前にようふくを着がえるのはじょうしきだぞ」
「じょーしきだよ?」
「そんな常識初めて聞きました!」
めっちゃ真剣なこと考えてたのにブリジッタの言葉で考えてたことが全部吹っ飛んだ。
貴族着替え多すぎじゃない?!効率わる!!
110
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない
天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。
ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。
運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった――――
※他サイトにも掲載中
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

嫌われ者の僕が学園を去る話
おこげ茶
BL
嫌われ者の男の子が学園を去って生活していく話です。
一旦ものすごく不幸にしたかったのですがあんまなってないかもです…。
最終的にはハピエンの予定です。
Rは書けるかわからなくて入れるか迷っているので今のところなしにしておきます。
↓↓↓
微妙なやつのタイトルに※つけておくので苦手な方は自衛お願いします。
設定ガバガバです。なんでも許せる方向け。
不定期更新です。(目標週1)
勝手もわかっていない超初心者が書いた拙い文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。
誤字などがありましたらふわふわ言葉で教えて欲しいです。爆速で修正します。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中

その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。
無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。
そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。
でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。
___________________
異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分)
些細なお気持ちでも嬉しいので、感想沢山お待ちしてます。
現在体調不良により休止中 2021/9月20日
最新話更新 2022/12月27日
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる