亡命者の竜の国の皇子は年上脳筋女子に逆らえない

胡蝶花れん

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第六十四話

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 こうして、ブリュネ村の依頼が終わった早々にすぐさまイ・ベルディ獣王国に赴くことになったレイリアとアレク。しかし、今回の目的地である、イ・ベルディ獣王国は今まで仕事で遠征した近隣諸国に比べても、その比ではないほど距離がある。それを解決する方法は・・・

 「転移門?」
 「はい、門(ゲート)までは行ってもらわないといけませんか、それならば行程を短縮することが可能です。」
 
 アーレンベック共和国とイ・ベルディ獣王国は実は大陸が異なる。イ・ベルディ獣王国はアーレンベック共和国のずっと東にある王国で、その間にはいくつもの国が跨っている状態なのだ。陸続きで遠征した場合は、複数の国を経由しなければ辿りつけず、そして大陸が違うので、間に海を挟むことになり、船にも乗らなければならないのだ。それくらい距離が離れた国ではあるが、それを一気に短縮することが可能なのが、『転移門』と呼ばれる転移魔法なのだ。
 各国の要所に設置されており、これを使えば、一瞬で違う場所に行けるという、便利な魔法だ。ただし悪用されないように、仕様の際には、国の許可が必要なのである。

 「名前は聞いたことあるけど、まだ利用したことないから、ちょっと楽しみかも!」
 
 と、レイリアはテンション高くなったが、すぐにハッと気が付き、

 「す、すみません。お姫様が眠ったままなのに・・・空気読めないこと言ってしまって・・・」

 レイリアは慌てて頭を下げたが、アントニーは首を横に振り、

 「いえ、別に構いません。気にしないでください。」
 
 レイリアは居た堪れない気持ちになっていた。

 「じゃ、依頼を請け負うということだが、これについては当然指名依頼として受理させてもらうことになる。」
 「はい、もちろんそれでお願いします。」
 「それとあと一名も一緒に行ってもらう。」
 「あと一名は一体どなたですか?」
 「ヴァンデル・ブロームだ。」
 「おぉ、ご尊名は存じております。確か『剣豪』の称号を持つと。」
 「そ、そのヴァンだ。」

 ギードの言葉に、アレクは少し驚き、

 「じっちゃんも行くのか?」
 「あぁ、今は仕事が一段落してるし、同行してもらおうと思ってる。さすがに二人では心もとないしな。」
 「ちっ、わかったよ。」

 ギードの言葉に、アレクは少し面白くなさそうでは、あったが実力差はわかっているので、しぶしぶながらも承諾した。

 「久々に、三人でのお仕事ね!」

 レイリアは素直に喜んでいた。

 「あと、リア、わかっているとは思うが、コレ持って行けよ。」

 ギードが指刺したのは、テーブルに鎮座している卵だった。

 「や、やっぱり持って行くのよね・・・」
 「そりゃ話の流れを考えたら、当然だろ?」
 「・・・アレク背負ってよね。」
 「えぇーーー!」

 先ほどまでは冗談だと思っていたことが、本当に背負うことなるとは、アレクは地味にショックを受けていた。

 「とりあえず、門(ゲート)の使用許可については、俺から申請しておくよ。すぐにでも出発できるように、支度しといてくれ。ヴァンには一筆書いておくから、それ渡して補足説明は頼むな。」
 「わかったわ。」
 「あと、アントニーさん、依頼は承ったが、内容が内容なだけに、確約はできないことは了承してほしい。」

 ギードが真剣な顔で言うと、アントニーは頷き、

 「はい。正直自国でさえ、匙を投げてしまっている案件です。ですが藁にも縋る思いですので、可能性があるのならそれに賭けたいのです。」
 「わかった。もちろんベストは尽くさせてもらう。」

 ギードが言うと、レイリアもアレクも、顔を見合わせて、

 「もちろん、尽力は尽しますので!」
 「同じく。」

 二人がそう言うと、アントニーは胸に手を当て敬礼をし、会釈した。

 「恩に着ます。」
 
 
   
 
 



イ・ベルディ獣王国の宮殿にある、寝室にて___



 「レベッカ、今日も目覚めぬか・・・」

 レベッカと言われたその人物は、ベッドに仰向けで眠ったままだった。美しいストレートの銀髪をもち、目を瞑ったままでも、儚げな美しい容姿を持つ美少女であることは一目瞭然だった。だが、頭には獣人ならではの、猫のような耳があった。そしてベッドの傍らには先ほど声をかけた人物が座っていた。同じく頭には獣人ならではの、トラの耳が生えており、銀髪の髪にはメッシュのような黒の髪がところどころ混じっていた。口元しか見えないが、妖艶な唇が開き、
 
 「レベッカ、妾の愛しい娘・・・」

 そう言いながら、娘の顔を撫でていた。
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