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第五十一話
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「はっくしょん!」
「アレクやっぱり風邪なんじゃないの??」
「・・・いや、これも誰か噂でもしてるんじゃないかって思うんだけど、悪寒も同時に感じたんだよな。」
アレクはくしゃみと同時になんだかよくわからないゾクッととしたものを感じたのだ。
「え?!悪寒って寒気じゃないの?やっぱり風邪かも!ちょっと見せて!」
「?!!」
そういうとレイリアはアレクの顔を持ったかと思えば、グイっと強引に自分の額とアレクの額を合わせた。顔はもうキスができるくらい目の前にある。
「んー熱はないわね?」
「ちょっ!!リアねぇさん近い!顔が近い!!」
「あ、ごめん。熱がないかと思って測ってみたかったの。」
レイアリは熱がないと知るや、パッと顔を放したが、アレクの顔は真っ赤だった。
「あれ?顔が赤い。やっぱり風邪なんじゃ・・・」
「違う!これはそういうのじゃないから!!」
「??」
『くっそう!意識してないからこその行動なのが、痛し痒しとは!』
今の立ち位置であるからこそ、レイリアと親密でいられることは嬉しくも反面、やはり異性として見られてないことにはアレクはモヤモヤするのであった。
冒険者ギルド『ゼルタ』____
「さっすがお仕事が早い!レイリアさんとアレクくんのコンビがすっかり様になってきてるわよね!」
ギルドの受付に行くと、アニタが出迎えてくれた。
「ふふ、ありがとう。最近は見つけたら即討伐だから、効率よく回ってやりやすいわよ。ね、アレク?」
「うん。」
「もうー相変わらず謙虚ね。じゃこれはいつも通り解体した後は、お肉持って帰るでいい?」
「あ、今回は皮もお願いできるかな?そろそろ寒くなる前に、毛皮用意しときたいし。」
「いいけど、この模様は結構派手だけど大丈夫?」
タイガーサーベルはその名のごとく、トラのような模様をしているのだ。
「いいのよ。それはじっちゃんに着てもらうつもり」
そういうとレイリアはニヤッとした。
「ヴァンさん。確かにコーデは茶色系が多いですもんね。」
ヴァンは特に衣服に拘りがないので、地味になりがちなのだ。
「そうそう。だから年寄りでも少しくらい洒落っ気がないとね!」
「なんか想像したら、強者感でるよなー」
「「あはは確かに。」」
「あーーーっアレクくん!!」
レイリアとアニタの声が被ったところへ、別の声がした。
「げっ」
その声を聞いたとたん、アレクは苦虫をつぶしたような顔になっていた。それを見ていたレイリアはアレクの顔を見て、声の主を見てみると、先日アレクに告白をしていた、新人受付嬢のカルロッタだった。
『このピンク色の髪。たしかこの子に告白されてたわよね。』
レイリアはアレクの告白現場を見た時に、女性の後姿しか見えていなかったので、髪色でそう判断した。
「よかったーー今日何となく、アレク君が来る気がしてたのぉ。会えて嬉しいな♪」
「あぁそう・・・」
甘ったるい声で、アレクにすり寄ってはいるものの、アレクは素っ気ない。二人のやり取りで、レイリアは思った。
『今まで特に意識したことなかったから気にしていなかったけど、確かにアレクが苦手な感じなのだけはわかるわね。』
だからフッたのだなと、合点がいった。とはいえ、自分がしゃしゃり出るのは違うと思い、レイリアは今のところは静観の姿勢を取っていた。
「ねぇねぇ、今日は何を仕留めたの?」
「依頼書見ればわかる・・・」
「アレク君ほんと凄いよねぇ。私と同い年とは思えないくらい落ち着いてて、それにとっても強いし、ステキだなぁって♪」
「・・・・・」
アレクは傍から見ても、会話を続けたくない様子がわかり、レイリアは先ほど静観と思ったばかりなのに、笑いが出そうなのを必死で凝らえていた。
『アレク、わかり易過ぎ!!』
とはいえ、先日告白してフラれているにも関わらず、このすり寄り具合はカルロッタが尋常でないメンタルを持っていることには、レイリアでも気が付いた。
『うーん。フラれても諦めない不屈の精神の持ち主なのかってところなのかしらね?まぁそれだけ一途なのかしら?』
などと考えていたところ、アニタがそーっと手招きをしていた。それに気が付き、こっそりとアニタに近づくと、思ってもいないことを教えてくれた。
「あの子、カルロッタだけど要注意人物だから気を付けてね。」
「え?どういう意味?」
「あんまり悪口とか、言いたくないんだけど、あの子他にも言い寄っている男の子いるからさ。」
「え?あの子アレクが好きなんじゃないの?」
「正確には、アレク君も好きってことよ。」
「あー・・・」
アニタの話でレイリアはわかった。カルロッタという受付嬢は好意を持っている対象が複数人いるということに。
「恋愛は当事者同士の話だとは思うんだけど、やっぱ長い付き合いがある知り合いが巻き込まれるのはちょっと・・・ね」
アニタは、レイリアとアレクのことを気にして、注意喚起してくれたのだとわかった。
「ふふ、アニタありがとう。私はアレクが誰と付き合おうが構わないけど、ただやっぱりアレクを大事にしてくれる人がいいものね。」
レイリアがそう言った瞬間、アニタの顔はショックを受けていた。
「え?どうしたの・・・?」
「そうかー。そうきたかー。アレク君前途多難ね・・・」
「んっ??」
アニタは少し憐れんだ顔をしていたが、レイリアはアニタの言うことがよくわかっていなかった。
「アレクやっぱり風邪なんじゃないの??」
「・・・いや、これも誰か噂でもしてるんじゃないかって思うんだけど、悪寒も同時に感じたんだよな。」
アレクはくしゃみと同時になんだかよくわからないゾクッととしたものを感じたのだ。
「え?!悪寒って寒気じゃないの?やっぱり風邪かも!ちょっと見せて!」
「?!!」
そういうとレイリアはアレクの顔を持ったかと思えば、グイっと強引に自分の額とアレクの額を合わせた。顔はもうキスができるくらい目の前にある。
「んー熱はないわね?」
「ちょっ!!リアねぇさん近い!顔が近い!!」
「あ、ごめん。熱がないかと思って測ってみたかったの。」
レイアリは熱がないと知るや、パッと顔を放したが、アレクの顔は真っ赤だった。
「あれ?顔が赤い。やっぱり風邪なんじゃ・・・」
「違う!これはそういうのじゃないから!!」
「??」
『くっそう!意識してないからこその行動なのが、痛し痒しとは!』
今の立ち位置であるからこそ、レイリアと親密でいられることは嬉しくも反面、やはり異性として見られてないことにはアレクはモヤモヤするのであった。
冒険者ギルド『ゼルタ』____
「さっすがお仕事が早い!レイリアさんとアレクくんのコンビがすっかり様になってきてるわよね!」
ギルドの受付に行くと、アニタが出迎えてくれた。
「ふふ、ありがとう。最近は見つけたら即討伐だから、効率よく回ってやりやすいわよ。ね、アレク?」
「うん。」
「もうー相変わらず謙虚ね。じゃこれはいつも通り解体した後は、お肉持って帰るでいい?」
「あ、今回は皮もお願いできるかな?そろそろ寒くなる前に、毛皮用意しときたいし。」
「いいけど、この模様は結構派手だけど大丈夫?」
タイガーサーベルはその名のごとく、トラのような模様をしているのだ。
「いいのよ。それはじっちゃんに着てもらうつもり」
そういうとレイリアはニヤッとした。
「ヴァンさん。確かにコーデは茶色系が多いですもんね。」
ヴァンは特に衣服に拘りがないので、地味になりがちなのだ。
「そうそう。だから年寄りでも少しくらい洒落っ気がないとね!」
「なんか想像したら、強者感でるよなー」
「「あはは確かに。」」
「あーーーっアレクくん!!」
レイリアとアニタの声が被ったところへ、別の声がした。
「げっ」
その声を聞いたとたん、アレクは苦虫をつぶしたような顔になっていた。それを見ていたレイリアはアレクの顔を見て、声の主を見てみると、先日アレクに告白をしていた、新人受付嬢のカルロッタだった。
『このピンク色の髪。たしかこの子に告白されてたわよね。』
レイリアはアレクの告白現場を見た時に、女性の後姿しか見えていなかったので、髪色でそう判断した。
「よかったーー今日何となく、アレク君が来る気がしてたのぉ。会えて嬉しいな♪」
「あぁそう・・・」
甘ったるい声で、アレクにすり寄ってはいるものの、アレクは素っ気ない。二人のやり取りで、レイリアは思った。
『今まで特に意識したことなかったから気にしていなかったけど、確かにアレクが苦手な感じなのだけはわかるわね。』
だからフッたのだなと、合点がいった。とはいえ、自分がしゃしゃり出るのは違うと思い、レイリアは今のところは静観の姿勢を取っていた。
「ねぇねぇ、今日は何を仕留めたの?」
「依頼書見ればわかる・・・」
「アレク君ほんと凄いよねぇ。私と同い年とは思えないくらい落ち着いてて、それにとっても強いし、ステキだなぁって♪」
「・・・・・」
アレクは傍から見ても、会話を続けたくない様子がわかり、レイリアは先ほど静観と思ったばかりなのに、笑いが出そうなのを必死で凝らえていた。
『アレク、わかり易過ぎ!!』
とはいえ、先日告白してフラれているにも関わらず、このすり寄り具合はカルロッタが尋常でないメンタルを持っていることには、レイリアでも気が付いた。
『うーん。フラれても諦めない不屈の精神の持ち主なのかってところなのかしらね?まぁそれだけ一途なのかしら?』
などと考えていたところ、アニタがそーっと手招きをしていた。それに気が付き、こっそりとアニタに近づくと、思ってもいないことを教えてくれた。
「あの子、カルロッタだけど要注意人物だから気を付けてね。」
「え?どういう意味?」
「あんまり悪口とか、言いたくないんだけど、あの子他にも言い寄っている男の子いるからさ。」
「え?あの子アレクが好きなんじゃないの?」
「正確には、アレク君も好きってことよ。」
「あー・・・」
アニタの話でレイリアはわかった。カルロッタという受付嬢は好意を持っている対象が複数人いるということに。
「恋愛は当事者同士の話だとは思うんだけど、やっぱ長い付き合いがある知り合いが巻き込まれるのはちょっと・・・ね」
アニタは、レイリアとアレクのことを気にして、注意喚起してくれたのだとわかった。
「ふふ、アニタありがとう。私はアレクが誰と付き合おうが構わないけど、ただやっぱりアレクを大事にしてくれる人がいいものね。」
レイリアがそう言った瞬間、アニタの顔はショックを受けていた。
「え?どうしたの・・・?」
「そうかー。そうきたかー。アレク君前途多難ね・・・」
「んっ??」
アニタは少し憐れんだ顔をしていたが、レイリアはアニタの言うことがよくわかっていなかった。
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