亡命者の竜の国の皇子は年上脳筋女子に逆らえない

胡蝶花れん

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第四十八話

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 こうして、アレクが『アーレンベック共和国』に来ることになった経緯についてレイリアとヴァンは知ることとなった。そしてレイリアは、出会った当時のことをアレクに尋ねた。

 「あれ?もしかして、そのスクロールから出てきた場所が、あの場所だったってこと?」
 
 アレクはコクリと頷いて、

 「リアねぇさんに助けてもらった時は、スクロールからの転移してから二日目だったかな。森の中は聞いたこともない動物の鳴き声とか聞こえるから怖くて・・・でも、森から出て、アーレンベックに行かなくちゃって、ウロウロしてたら、うっかり魔獣に出くわして・・・」
 「そこで私と出会ったってことね。でもここの森は、街からは少し離れているんだけど・・・」

 レイリアが疑問をポツリと言うと、ヴァンは少し考えて、

 「恐らくスクロールの不具合だろう。魔法も万能とまではいかねぇからな。座標がズレて森の中に転移しちまったんだろうよ。」
 「そういうことかだったんだ・・・とにかく、異様な雰囲気の森のだったから、朝になるまでジッとしてたんだよな・・・。」
 「うんうん。賢明な判断ね。地元じゃ子供が安易に入り込む場所じゃないから、見つけた時はびっくりしたわ。」
 「リアねえさんには助けてもらったけど、出会ったばかりの時は信用していいのかもわからなくて、名前も一部しか名乗れなかった。本当にごめん。」
 
そういうとアレクは頭を下げた。

 「あはは、そりゃそうでしょ。私は気にしていないわ。打ち解けてアレクが私達のことを信用してくれたら、きっと自分から教えてくれるって思ってたもの。」
 
 レイリアは全く気にしていないと、ニッコリと笑った。

 「リアねぇさん・・・」
 「リアは打ち解けるの早かったけどな。」
 「あ、あの時は今のアレクよりもっと小さかったから仕方なかったのよ!」

 ヴァンの突っ込みに、恥ずかしそうにするレイリアにアレクも笑みがこぼれた。そして一息つくと、

 「だから、俺の本当の名前は 『アレクシス・フォン・リンデルベルク』っていうんだ・・・」
 「そう・・・だから、アレクなのね。」 
 「・・・ごめん。ずっと黙ってて。」

 そう言うとアレクは神妙な顔でまた頭を下げた。そこへそっとレイリアがアレクの頭に手を乗せ、

 「アレク、顔を上げて。」
 「でも・・・」
 「いいから」

 アレクはその言葉を受け、下げていた頭を上げた。

 「ありがとうね。言いにくいことを教えてくれて。」
 「リアねぇさん・・・」

 レイリアはアレクに向き合い、目線を合わせアレクの両肩に手を置いた。
 
 「アレクはこれからどうしたいの?リンデルベルク帝国に帰りたい?それともここにいたい?」
 「それは・・・」
 「アレクが本当にこれからどうしたいのか、ちゃんと教えてほしい。私の気持ちはアレクとこのまま一緒にいたいって思ってるよ。じっちゃんと一緒に、三人でこのまま暮らしていきたいなって。」
 「!!」
 「だけど、それはあくまで私の希望だから、アレクがちゃんと自分でこれからどうしたいのか考えてほしい。先に言っておくけど、迷惑なるかもとかは、抜きにしてね。」

 そういったレイリアの目は真剣だった。アレクはしばしの沈黙のあと、口を開いた。
 
 「俺は・・・一緒に・・・」
 「一緒に?」
 「俺は、リアねぇさんと一緒にいたい!!!このままここにいたんだよ!」
 「なら、このまま一緒にいよう。アレクとじっちゃんと私とで。三人で暮らしていこう?」

 アレクは嬉しさのあまり、目には涙を溜めレイリアに抱き着いた。

 「うん!うん!うん!!」

 何度も何度も返事をして、レイリアは少し驚いたが、抱きしめ返し、

 「ちょっと大人びてるけど、まだまだ子供だもんね。」
 「おいおい、リアもまだ子供だろうよ。」
 
 というヴァンの突っ込みに、

 「そういえば、私もまだ成人してなかったわ。」

 その場はドッと笑いに包まれた。 
  
 『俺は絶対に、絶対にリアねぇさんとじじい・・・じいちゃんに恩をいつか必ず、絶対に恩を返すんだ!きっと・・・先生だってそうしろ言ってくれるよね?』

 アレクがそう思った瞬間、アレクの『竜紋』が少し光ったが、それは一瞬のことであった。    
  
 
 


 

 その頃____

 リンデルベルク帝国の皇居の執務室にて、公務をしながら一人の黒髪の男がアレクの存在を感じ取っていた。

 「あぁ・・・アレク。やっと、やっとか。・・・だけどまだ弱い。弱すぎる。これが今後凶と出るか吉と出るのか・・・・」

 黒髪の男の口元しか見えなかったが、少しうれしそうに口角が上がっているように見えた。そして引き続き、何事もなかったかのように、公務に戻ったのだった。 









 「じじい、頼みがある。」 

 アレクは自分を逃がしてくれたステファンがどうなったのか、それを気にしていた。だが自国に帰ることは今はできない。せっかくここまで逃がしてくれたステファンの努力が無と化すからだ。 
 だからアレクはステファン・バローの動向について、ヴァンに調べて欲しいとお願いしたのだ。

 「ま、そら気になるよな。ギルドは国を跨ってのネットワークがある。ギードを仲介して、こっそりと探りを入れておくことは可能だ。だからギードにも詳細は話すが構わねぇか?」
  
 ヴァンはギードにアレクの身の上を話してもいいかと確認し、アレクもまたそれを了承した。 
 
 「わかった。悪いようにはしねぇ。進展があったら必ず報告する。」

 ヴァンに対して、普段は多少態度が悪いが、さすがにこの件については礼儀正しくアレクは、深々と頭を下げた。

 「よろしく、お願いします。」
 「ふん、らしくねぇな。まぁ大人に任せておけ。」

 そう笑いながら、ヴァンはわしわしとアレクの頭を撫でた。アレクは、ヴァンに対し、

 「じじい・・・じっちゃんありがとう。」 
 「気にすんな。」

 この日、初めてアレクはヴァンをじっちゃんと呼んだ。 
 


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 __
 ____
 _____
 ______
 

 それから数年の月日が経った。
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