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第四十話
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「ん?待って。兄上ってことは普通にお兄さんよね?順当でいけば、普通にそうなんじゃないの?」
「あぁ詳しく言うとね、兄上は側室の子供で、俺は正妻、つまり正妃の息子だから・・・」
「あーそういうこと・・・」
なるほど、順番が逆なら良かったが、先に側室に男子が生まれたから、話がややこしくなったんだなと、レイリアは納得した。
「うん、それで兄上に『竜紋』が現れたからね。だから当然兄上を次の皇帝にって声が周りからも大きかった。」
「なんで、そんなに周りもそのお兄さんにって推すのかしら?だって、アレクは正妃の子供なんでしょ?」
「・・・俺の母上は、貴族ではあるけど男爵という貴族では下位になるから、立場は弱くてね。だけど珍しく父上とは恋愛の情で結婚した、珍しい夫婦だったんだ。普通は皇族たる者、政略結婚が当たり前なんだけどね。」
「お貴族様は恋愛もままならなくて、それはそれで大変そうね。」
レイリア自身も貴族なのだが、すっかり他人事のように話しているのを見てヴァンの目は(お前もそうだっただろ)と、突っ込みをいれたいのを我慢していた。
「うん。それで側室は俺の母親と違って・・・・・」
アレクが言い淀んだが、その先はレイリアでもわかった。
「側室は高位貴族だったってわけね。だから余計に側室のお兄さんを推す声が大きかったってことか・・・」
アレクはレイリアの言葉に頷いた。
「さっきも言ったけど、それなら別にそれでよかったんだ。俺は母上と二人でいたらそれでよかったし、正直・・・皇帝にすごくなりたいっていうのもさほどなかったから・・・」
「それで、もしかしてお兄さん派の人から狙われる羽目になったの?」
「うん。それで逃げてきた・・・」
「うーん・・・・・」
アレクの話は大体はわかったが、レイリアは腑に落ちないことがあった。それはヴァンも同様で・・・
「あの、アレクは普通に正当な皇子様じゃない?」
「うん。」
「それなら、然るべく対応を、守られる立場にあると思うんだけど、なんでこんなことになってるの?」
そうレイリアは不思議だった。仮にも正当な正妃の子供である、まだ十歳にも満たないアレクが単身で逃げてくるなど、普通なら考えられなかったからだ。
「『竜紋』・・・・」
「『竜紋』?」
「さっきも言ったけど、リンデルベルク帝国の皇族は『竜紋』が重要なんだよ。たとえ正妃の子供であっても、それが現れていなければ、それは落ちこぼれ、劣等者になるんだ。」
そういったアレクは、寂しそうだった。
「あれ?でも今はちゃんと出てるんでしょ?なら・・・」
もしかして、これで認められるのではと、レイリアは思ったが、アレクは首を横に振り、
「普通はね、生まれた時には『竜紋』が既にあるんだって。」
「え?でも今は・・・・出たんだよね?」
「うん、すっごい薄いけどね。」
アレクが言うように、見せてもらった『竜紋』は薄っすらと現れている感じだった。
「そのもしかしてお兄さんのは、もっと濃いの?」
「うん、もっと範囲は広くて金の鱗はよりはっきりと出てるよ。だから仮に今の俺では比べられるほどじゃない。」
「そっかぁ・・・」
レイリアは残念そうにシュンとした。
「俺は・・・母様が早くに死んでしまって・・・それからは本当にしんどかった。リアねぇさんに言った通り、助けてくれた人もいるけど、その人もやっぱりいなくなってしまって・・・」
アレクが悲しそうに語ってくれたリンデルベルク帝国の話は、レイリアが以前感じた通り、やはりアレクは冷遇されて育ったのだと、確信を得るものだったのだ。
「あぁ詳しく言うとね、兄上は側室の子供で、俺は正妻、つまり正妃の息子だから・・・」
「あーそういうこと・・・」
なるほど、順番が逆なら良かったが、先に側室に男子が生まれたから、話がややこしくなったんだなと、レイリアは納得した。
「うん、それで兄上に『竜紋』が現れたからね。だから当然兄上を次の皇帝にって声が周りからも大きかった。」
「なんで、そんなに周りもそのお兄さんにって推すのかしら?だって、アレクは正妃の子供なんでしょ?」
「・・・俺の母上は、貴族ではあるけど男爵という貴族では下位になるから、立場は弱くてね。だけど珍しく父上とは恋愛の情で結婚した、珍しい夫婦だったんだ。普通は皇族たる者、政略結婚が当たり前なんだけどね。」
「お貴族様は恋愛もままならなくて、それはそれで大変そうね。」
レイリア自身も貴族なのだが、すっかり他人事のように話しているのを見てヴァンの目は(お前もそうだっただろ)と、突っ込みをいれたいのを我慢していた。
「うん。それで側室は俺の母親と違って・・・・・」
アレクが言い淀んだが、その先はレイリアでもわかった。
「側室は高位貴族だったってわけね。だから余計に側室のお兄さんを推す声が大きかったってことか・・・」
アレクはレイリアの言葉に頷いた。
「さっきも言ったけど、それなら別にそれでよかったんだ。俺は母上と二人でいたらそれでよかったし、正直・・・皇帝にすごくなりたいっていうのもさほどなかったから・・・」
「それで、もしかしてお兄さん派の人から狙われる羽目になったの?」
「うん。それで逃げてきた・・・」
「うーん・・・・・」
アレクの話は大体はわかったが、レイリアは腑に落ちないことがあった。それはヴァンも同様で・・・
「あの、アレクは普通に正当な皇子様じゃない?」
「うん。」
「それなら、然るべく対応を、守られる立場にあると思うんだけど、なんでこんなことになってるの?」
そうレイリアは不思議だった。仮にも正当な正妃の子供である、まだ十歳にも満たないアレクが単身で逃げてくるなど、普通なら考えられなかったからだ。
「『竜紋』・・・・」
「『竜紋』?」
「さっきも言ったけど、リンデルベルク帝国の皇族は『竜紋』が重要なんだよ。たとえ正妃の子供であっても、それが現れていなければ、それは落ちこぼれ、劣等者になるんだ。」
そういったアレクは、寂しそうだった。
「あれ?でも今はちゃんと出てるんでしょ?なら・・・」
もしかして、これで認められるのではと、レイリアは思ったが、アレクは首を横に振り、
「普通はね、生まれた時には『竜紋』が既にあるんだって。」
「え?でも今は・・・・出たんだよね?」
「うん、すっごい薄いけどね。」
アレクが言うように、見せてもらった『竜紋』は薄っすらと現れている感じだった。
「そのもしかしてお兄さんのは、もっと濃いの?」
「うん、もっと範囲は広くて金の鱗はよりはっきりと出てるよ。だから仮に今の俺では比べられるほどじゃない。」
「そっかぁ・・・」
レイリアは残念そうにシュンとした。
「俺は・・・母様が早くに死んでしまって・・・それからは本当にしんどかった。リアねぇさんに言った通り、助けてくれた人もいるけど、その人もやっぱりいなくなってしまって・・・」
アレクが悲しそうに語ってくれたリンデルベルク帝国の話は、レイリアが以前感じた通り、やはりアレクは冷遇されて育ったのだと、確信を得るものだったのだ。
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