亡命者の竜の国の皇子は年上脳筋女子に逆らえない

胡蝶花れん

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第三十二話

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 「あと確認なんだが、リアの祝福がどうして呪いを祓うものだと、知っているんだ?」
 「じっちゃん、はっきり言っちゃうんだ・・・」
 「フン、今更取り繕ったところで意味ないだろ」
 「まぁそうなんだけど・・・」
 「で、どうなんだ?」
 「・・・それは今は言えません。そう言う約束なので。ただ確かな筋、とだけお伝えしましょう。一応付け加えるならば、貴方方、つまりアーレンベック側、ギルド関連ではないので、そこはご安心を」 
 
 レイリアはソレを聞いて少し安心した。しかし結局、情報源がどこかわからないのは不安が残ったままではあったが。 

 「・・・まぁそうだろうな。まぁいい。つまりこの依頼は、リアへの単独依頼ってことだな。俺とアレクはお呼びじゃねぇな。」
 「確かに『解呪』についてはそうかもしれませんが、ここまでの道中を彼女一人で来ていただくわけにもいきませんからね」
 「リアねぇさんのボディガードってことか」
 「そういうことです。うちが迎えに行ってもよかったのですが、仰々しくなるのは、お好みではないと思いましたものでね。」

 『確かに、侯爵様の馬車・・・でしょ?うん無理!』

 レイリアは豪華な馬車に乗っている自分を想像して首をブンブンと横に振っていた。 

 「で、侯爵の親父さんはどうしてるんだ?話からするに、当事者だろう?」
 「父ですが、今も尚母に付きっ切りです。父は『魔法解除』ができないと知った頃から公務もままならない状態になってきましてね・・・だから僕が時期尚早ながらも後を引き継ぎました。」  
 「なるほどな。通りで侯爵というわりに、えらく若いから不思議だったんだよ。」

 ヴァンの指摘通り、アートスはまだ二十三歳、通常であれば侯爵を名乗るのには早すぎる年であった。
 
 「先ほどの話に戻りますが、父はバルミング家を調べました。そこで失礼ながら、バルミング家の財政難に目を付けたのです。」
 「財政難?」
 
 ヴァンの問いにアートスは少し苦笑いをして、

 「レイリア嬢、貴方は物心着いた頃から虐げられていたので、それには関わっていないと思いますが。バルミング家は後妻になってから、散財が目立ってます。」
 「あぁ・・・」

 レイリアはソレを言われて納得した。記憶の中でも継母が派手な生活をしていたのは覚えていたからだ。

 「バルミング家の金銭面を援助すると言ったら、喜んで婚約の件は了承していただいたそうです。ただその頃は既にレイリア嬢、貴方は行方不明となっていたので不在でした。ただし娘はもう一人いる。」
 「オルガのことですね。」
 「そうです。だから父は確認したのです。オルガ嬢の瞳は『紫』かを。そしてバルミング家からの回答は『紫』でした。」
 「え?待って・・・オルガが紫?私の記憶では確か緑だったはずだけど・・・?」

 記憶の中のオルガの瞳は、緑色だったと。父にそっくりな瞳の色だったからレイリアはよく覚えていたのだ。

 「・・・そうです。まんまと私共も騙されました。」   

 思い出したのか、アートスの目は怒りを含んでいた。

 「オルガ嬢もアーティファクト(魔道具)を使って瞳の色を変えていました。私共を欺いていたのです。」
 「え~~~!」

 そこまでやるのかと、レイリアは呆れると同時に、ナーリスバーナ侯爵家が『祝福』を頼みの綱としていたのだとしたら、オルガの瞳が紫色でなかったことにどれだけショックを受けたのだろうと思うと、居た堪れなかった。
 
 「で、でもどうしてそんなことを?いつか絶対にバレるような嘘なのに?」
 
 レイリアは訳がわからなかった。瞳の色を変えたところで、『祝福』を使えなければ意味がないからだ。
 
 「・・・・時間稼ぎですよ。」
 「?」
 「わかった!」

 レイリアはわからなかったが、アレクは理解したらしく、ポンと両手で叩いた。

 「ほら、話の中で、神官の人が『解呪』には時間がかかるって。多分それを待ってたんじゃないかなって」

 「ふふ、アレクくんの言うとおりです。そして当のオルガ嬢については、まだ力が覚醒していないとか言い訳ばかりで、ずっと待たされていたんですよ。」

 アートスは笑ってるけど、目が全然笑っていないことに、レイリアとアレクはちょっと怯えていた。

 「あまりにおかしいと思いましたね。今度は徹底的に調べました。バルミング家を。ところが調べていくうちにとんでもないことがわかりました。」
 「とんでもないこと、とは?」
 「オルガ嬢の出生が偽りだったことが発覚したのです。」
 「偽り?でも・・・あの子は私とは半分は繋がっています。腹違いの姉妹だもの・・・」

 『そう、オルガは父が再婚した時に連れて来た子。だけど、私と一つしか違わない妹。父は母が亡くなる前から裏切っていたのは、幼かった時からわかってた・・・・・』

 「それですよ。」
 「え?」
 「オルガ嬢は出生を偽っていました。ドミニカ夫人の子ではなく、レイリア貴方の生母オフェリア夫人の子供ということで戸籍に登録されていたのです。」
 「・・・・えぇ?!ど、どうしてそんなことを?。」
 「それは・・・性質が悪いな・・・」

 ヴァンも顔をしかめていた。

 「恐らくですが・・・僕は二つの理由から、それをしたのではないかと思っています。」
 「二つの理由?」

 レイリアがそういうと、アートスは頷き、

 「一つ目は恐らくバルミング伯爵は自分の不貞の隠ぺいのためにオフェリア夫人の子として出生届をだしていたのではないか、ということです。」
「あんっのバカ親父!!!」

 一応侯爵の手前、取り繕っていたレイリアだったが、思いがけない事実に思わず素の部分が出てしまった。
 
 「し、失礼しました。」
 「ふふ、お気になさらず。貴方のお怒りはもっともです。ですが・・・もうひとつの理由の方が動機理由としては濃厚ではないかと思っています。」

 「それって・・・どういう??」
 「・・・証拠が出ていませんので、今となっては憶測ですが貴方のお母さまは殺されたのではないかと。」
 「!!!」

 オフェリアは事故でなくなったと聞いていた。まさかそれが計画的だったとしたら?だがありえない話ではなかった。何せレイリア自身も殺されかけたからだ。

 「そうすると、バルミング家の後継者はレイリア嬢貴方になります。何せ貴方の御父上である現在のバルミング伯爵ことブルーノ氏はあくまで貴方が成人するまでの暫定的なものですから。」

 ブルーノはバルミング家の婿養子である。バルミングを名乗れるは、正当な後継者が成人するまでの繋ぎなのだ。しかしレイリアが行方不明となった場合、それは次女であるオルガにその権利が移るのだが、それはあくまで本当の真の意味で妹だった場合にのみだ。腹違いであるなら、それは当然ありえない。

 「ま、まさか・・・」
 「そうです。オルガ嬢の戸籍を偽ったのは、初めからレイリア嬢とその母であるオフェリア夫人を亡き者にし、バルミング家を乗っ取るための布石だったのでは、ということです。」
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