亡命者の竜の国の皇子は年上脳筋女子に逆らえない

第二十六話

　「へぇ～さすが王都ね～」
　「うん、すごい賑わってる。お店の数がすごいよね。」
　「今は買うと荷物になるから、何か欲しいものがあったら目星付けとけよ。帰りに寄るからな。」
　「え？じっちゃんもしや買ってくれるの？」
　「まぁ滅多とないからな。アレクもな。」
　「「やったーー！」」
　
　二人はヴァンの言葉に素直に喜んでいた。
　レイリア一行はクライブ王国の王都であるライブの街に到着していた。ここからレイリアの実家はもうすぐだ。レイリア自身は幼い頃に住んでいた街ではあったが、実際はほとんど自分の屋敷の敷地から出たことはなかったため（誘拐を除いて）初めてクライブ王国の王都の街並みを歩いていたのだ。
　王都ライブには、サザの街ではあまり見かけないお洒落なカフェやブティックもあり、中には貴族御用達の専門店などもあった。

　「なんていうか、高級感あふれるお店が多いわねー」
　「まぁここは王都だからな。実際に貴族が多いからそうなるのは必然だろ。商人からしたら格好の太客だからな。」
　「確かにねーでもせっかくの遠出の醍醐味は、やっぱご当地飯でしょ！」
　「リアねぇさんは色気より食い気だね。」
　「あったり前でしょう！お洒落して、魔獣に何の意味があるのよ！・・・・あ、でも奇抜さを狙えばそれもありか・・・？」　

　それを聞いたアレクは呆れ気味でヴァンは笑っていた。

　
　
　　　
　ヴァンの提案によりライブの街の『冒険者ギルドマリカ』に寄ることになった。ギルドに寄ったのはレイリアの実家にアポを取り付けてもらうためだ。自ら直接行くことは可能ではあったが、レイリアとしてはもう自分の実家という概念はないので、あえて他人行儀を通したかったのだ。

　それから、宿泊宿を決めて、馬を預けた三人は今後の予定を宿の一室で話し合っていた。せっかくだからとご当地モノが売りのところへ夕飯に行こうと決まったところで、ドアをノックする音が聞こえた。

　コンコン　
　　　
　「すみません、今よろしいでしょうか？」
　「・・・いってぇ何の用だ？」

　宿屋の主人の声であることはわかったが、声に少し緊張が含まれていることに気が付いた。ヴァンだけでなくレイリアもそれに気が付き、少し警戒をしていた。ドアを開けると、やはり宿屋の主人の様子がおかしい。妙に落ち着きがなく汗をかいていたのだ。

　「えっと・・・実は、私共も大変驚いているのですが・・・・」
　「なんだ？もったいつけてねぇで、早く言ってくれ。俺らは腹が減ってるからとっとと食いに行きてぇんだよ。」
　「その事なのですが・・・」
　「？」　
　「実は、ナーリスバーナ侯爵の使いの方がいらっしゃってまして・・・」
　「ナーリスバーナ侯爵？誰だそりゃ？」
　「「？？？」」

　ヴァンが言うように、当然レイリアもアレクも聞いたこともない名前だった。宿屋の主人は緊張を隠せないまま、説明した。

　　「あぁ、そうですよね。他国の方ならわかりませんよね。ナーリスバーナ侯爵は、ここクライブ王国の高位貴族の方なのです。私も会ったことは一度もございませんが、名前だけは聞いたことあるってくらいなので・・・、その、そのお方がですね、ヴァン一行様にぜひ夕飯を一緒にしないかとお申し出がありまして・・・」

　　「「はぁああああ？」」

　会ったこともない貴族の申し出にレイリアもアレクも驚きが隠せなかった。　

　「ナーリスバーナ侯爵の使いの方が、下でお待ちになっておられます。・・・そのどうしましょう？」
　
　　ヴァンは黙って少し考える素振りをし、レイリアとアレクは二人で顔を見合わせていた。