19 / 58
第十八話
しおりを挟む
晴天の中、森にあるログハウスの庭で、アレクはヴァンに木刀を持って剣の稽古をつけてもらっていた。
「たぁああああっ!!」
「ほいっと」
「げっ!」
アレクは上段の構えでヴァンを切りつけたが、あっさりと足払いをされてコケてしまい、そのまま勢いよく地面に倒れていった。
ズササァアアアッ
「いたたた・・・っ」
「バカか。そんなわかり易い太刀筋でどうする。そういう構えは、そこそこできるようになってからだ。」
「くっそう!もう一回だ!」
そう言って、アレクは起ち上ってヴァンに向かっていった。その様子をレイリアは微笑ましく見つめていた。
ヴァンが帰宅後は、ヴァンが直々にアレクに鍛錬をしてくれるようになったのだ。
「じじいの世話にはならねぇ!」
と、アレクは初めこそは威勢よく啖呵を切ったものの、そもそもレイリアもヴァンの家に住んでいるので全く説得力はなく、レイリアからも拳骨をくらっていた。
ゴン!!
「リアねぇさん痛い・・・・」
「痛いように殴ったんだから当たり前よ。そもそもここはじっちゃんの家なの。寝言は寝て言いなさい。あとね、せっかくじっちゃんが鍛錬に付き合ってくれるって言うんだから、そこは素直に甘えておきなさいな。」
「でも・・・俺はリアねぇさんに・・・」
「アレクは強くなりたくないの?」
「!も、もちろん強くなりたい!」
「だったら、鍛錬は受けなさいな。じっちゃんはね、私よりも強いし、実際に私はじっちゃんに稽古をつけてもらって、今の私があるの。ここまで言えばアレクにはわかるでしょ?」
「うっ・・・」
レイリアはしゃがんでアレクと視線を合わせると、
「それに、もちろん私の鍛錬も引き続きするわよ。だけど先生は一人より、多い方がいいでしょ?」
「た、たしかに・・・」
レイリアが強いことは、アレクも充分に理解していた。そしてそれはヴァンの力が大きいことも、アレクは素直に認めたくないながらも理解はしていた。
「小僧、お前が俺を気にくわないのは別にいいさ。だがな、お前さんは強くならないと不味いんだろう?だったら、四の五の言わず俺に教えを乞うんだな。それが最短だと思うけどねぇ」
「だから、小僧じゃない!」
「おいおい、忘れたのか?的のど真ん中に当てたら、名前呼びしてやるよ」
「くそっ!」
ヴァンは半笑いで、アレクの出方を見ていた。
アレクはしばらく悔しそうに俯いていたが、
「リアねぇさん、俺ちゃんと鍛錬するよ!そして絶対強くなる!」
「ふふ、その意気ね。」
レイリアがアレクの頭を嬉しそうにわしわしと撫でると、アレクはまたもや照れくさそうにしていた。
「あ、でもアレクのじっちゃんへの口の聞き方は・・・・」
アレクは相変わらず、レイリアとヴァンに対する口調はわかり易く違っていた。だがヴァンはさほど気にしていなかった。
「ふふん、元気なくらいが調度いい。」
ヴァンがそう言うならと、レイリアもあっさりと気にしないことにした。
「ふふ、アレク頑張って!!」
レイリアの声援に、アレクは嬉しそうに手を振って答えていた。
ヴァンは小さな声で、
「こうも俺のところには、ややこしいのやら筋がいいのが集まるのは何の因果かねぇ。」
と、ニヤリと満更でもないようだった。
その頃______
とある貴族の一室にて・・・
「ど、どうしてですか?!!」
中高年の男は焦っていた。とある約束が反故されそうだったからだ。だが、そもそも反故というのもおかしな話だったのだ。
「ん~だって、そもそもそういう約束だったでしょ?」
「だ、だからうちの娘を!!」
「あのねぇ~バカにしないで欲しいなぁ」
「!?」
その男の顔は、はっきりとは見えないが、中高年の男よりは年若くそして身分が高かった。当然着用しているものは洗練された高級な衣装を纏っていることから、高位貴族であることが窺えた。
「僕は知ってるんですよ?」
「い、一体なにを・・・?」
「正当な娘ではないでしょう。」
「!!」
中高年の男は焦った。なぜそれを知っているのかと、そしてその男は続けた。
「ふふ、なんで知ってるんだって顔してますね。だけどそんなことぐらい、ちょっと調べれば誰でもわかることですよ。」
「で、ですがオルガは器量もいいですし・・・っ!」
男はわざと大きくため息をついて、中高年の男の話をさえぎり、椅子の肘掛けに肘をつき頬杖をついて、組んでいた足を組み換えた。
「僕が婚約者にと望むのは・・・真のバルミングの継承者である令嬢ですよ?」
「!!」
中高年の男は焦っていた。ただでさえ、噴き出ていた汗はさらに止まらなかった。頬杖をついている男が言う言葉の意味を中高年の男は理解していたからだ。
だからこそ、この場をどう切り抜けばいいのかと、必死に頭の中で考えをめぐらせていた。
「たぁああああっ!!」
「ほいっと」
「げっ!」
アレクは上段の構えでヴァンを切りつけたが、あっさりと足払いをされてコケてしまい、そのまま勢いよく地面に倒れていった。
ズササァアアアッ
「いたたた・・・っ」
「バカか。そんなわかり易い太刀筋でどうする。そういう構えは、そこそこできるようになってからだ。」
「くっそう!もう一回だ!」
そう言って、アレクは起ち上ってヴァンに向かっていった。その様子をレイリアは微笑ましく見つめていた。
ヴァンが帰宅後は、ヴァンが直々にアレクに鍛錬をしてくれるようになったのだ。
「じじいの世話にはならねぇ!」
と、アレクは初めこそは威勢よく啖呵を切ったものの、そもそもレイリアもヴァンの家に住んでいるので全く説得力はなく、レイリアからも拳骨をくらっていた。
ゴン!!
「リアねぇさん痛い・・・・」
「痛いように殴ったんだから当たり前よ。そもそもここはじっちゃんの家なの。寝言は寝て言いなさい。あとね、せっかくじっちゃんが鍛錬に付き合ってくれるって言うんだから、そこは素直に甘えておきなさいな。」
「でも・・・俺はリアねぇさんに・・・」
「アレクは強くなりたくないの?」
「!も、もちろん強くなりたい!」
「だったら、鍛錬は受けなさいな。じっちゃんはね、私よりも強いし、実際に私はじっちゃんに稽古をつけてもらって、今の私があるの。ここまで言えばアレクにはわかるでしょ?」
「うっ・・・」
レイリアはしゃがんでアレクと視線を合わせると、
「それに、もちろん私の鍛錬も引き続きするわよ。だけど先生は一人より、多い方がいいでしょ?」
「た、たしかに・・・」
レイリアが強いことは、アレクも充分に理解していた。そしてそれはヴァンの力が大きいことも、アレクは素直に認めたくないながらも理解はしていた。
「小僧、お前が俺を気にくわないのは別にいいさ。だがな、お前さんは強くならないと不味いんだろう?だったら、四の五の言わず俺に教えを乞うんだな。それが最短だと思うけどねぇ」
「だから、小僧じゃない!」
「おいおい、忘れたのか?的のど真ん中に当てたら、名前呼びしてやるよ」
「くそっ!」
ヴァンは半笑いで、アレクの出方を見ていた。
アレクはしばらく悔しそうに俯いていたが、
「リアねぇさん、俺ちゃんと鍛錬するよ!そして絶対強くなる!」
「ふふ、その意気ね。」
レイリアがアレクの頭を嬉しそうにわしわしと撫でると、アレクはまたもや照れくさそうにしていた。
「あ、でもアレクのじっちゃんへの口の聞き方は・・・・」
アレクは相変わらず、レイリアとヴァンに対する口調はわかり易く違っていた。だがヴァンはさほど気にしていなかった。
「ふふん、元気なくらいが調度いい。」
ヴァンがそう言うならと、レイリアもあっさりと気にしないことにした。
「ふふ、アレク頑張って!!」
レイリアの声援に、アレクは嬉しそうに手を振って答えていた。
ヴァンは小さな声で、
「こうも俺のところには、ややこしいのやら筋がいいのが集まるのは何の因果かねぇ。」
と、ニヤリと満更でもないようだった。
その頃______
とある貴族の一室にて・・・
「ど、どうしてですか?!!」
中高年の男は焦っていた。とある約束が反故されそうだったからだ。だが、そもそも反故というのもおかしな話だったのだ。
「ん~だって、そもそもそういう約束だったでしょ?」
「だ、だからうちの娘を!!」
「あのねぇ~バカにしないで欲しいなぁ」
「!?」
その男の顔は、はっきりとは見えないが、中高年の男よりは年若くそして身分が高かった。当然着用しているものは洗練された高級な衣装を纏っていることから、高位貴族であることが窺えた。
「僕は知ってるんですよ?」
「い、一体なにを・・・?」
「正当な娘ではないでしょう。」
「!!」
中高年の男は焦った。なぜそれを知っているのかと、そしてその男は続けた。
「ふふ、なんで知ってるんだって顔してますね。だけどそんなことぐらい、ちょっと調べれば誰でもわかることですよ。」
「で、ですがオルガは器量もいいですし・・・っ!」
男はわざと大きくため息をついて、中高年の男の話をさえぎり、椅子の肘掛けに肘をつき頬杖をついて、組んでいた足を組み換えた。
「僕が婚約者にと望むのは・・・真のバルミングの継承者である令嬢ですよ?」
「!!」
中高年の男は焦っていた。ただでさえ、噴き出ていた汗はさらに止まらなかった。頬杖をついている男が言う言葉の意味を中高年の男は理解していたからだ。
だからこそ、この場をどう切り抜けばいいのかと、必死に頭の中で考えをめぐらせていた。
1
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
妻は異世界人で異世界一位のギルドマスターで世紀末覇王!~けど、ドキドキするのは何故だろう~
udonlevel2
ファンタジー
ブラック会社を辞めて親と一緒に田舎に引っ越して生きたカズマ!
そこには異世界への鏡が納屋の中にあって……異世界に憧れたけど封印することにする!!
しかし、異世界の扉はあちらの世界にもあって!?
突如現れた世紀末王者の風貌の筋肉女子マリリン!!
マリリンの一途な愛情にカズマは――!?
他サイトにも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる