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第十五話
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「やったぁ!リアねぇさん見て!!当たったよ!!」
アレクは庭にある的に短剣を投げる練習をしていたが、やっと的に当たったのだ。まだ真ん中ではないが、かなり中心寄りに当てている。
「ふふ、やったわね。あとはそれを真ん中に当てるように頑張って!」
「見てて、絶対当ててやるから!」
アレクはそう言うと再び的に向かって短剣を投げていた。そんなアレクを見ていると、レイリアはふと思い出した。
場所はここと同じで、その人物は幼いレイリアの近くで目線を合わせるようにしゃがんでいた。元はブラウンの髪に白髪が混じった短髪の老齢の男性で、そして老齢ではあるものの、大きな体で捲った服の袖から見える鍛えた太い腕には数か所の傷跡があり、それだけでその男が只者ではないことが伺えた。レイリアを引き取ったヴァンであった。
ログハウスの家の庭には、鍛錬用の的が用意されていた。幼いレイリアは短剣を投げる練習をしていたが、まだ幼いがゆえに、なかなか的に掠りもしなかった。しかし何度目かでようやく初めて、的の外側ではあるが短剣が的に刺さったのだ。
「じっちゃんあたったーーーー!!」
「おぅ!よくできたな!」
「すごい?ねぇすごい?」
「あぁ、すごいぞ!!」
「やったぁ!」
幼いレイリアは初めて的に当たった喜びに、ぴょんぴょんと跳ねて全身で喜びを表していた。ヴァンはレイリアの頭をわしわしと琥珀の瞳を細めて嬉しそうに撫でていた。
・・・ふふ、私もじっちゃんには鍛えられたなぁ。レイリアは自分もこの庭にある的でヴァンに短剣投げを教えてもらっていたことを思い出していた。そして側にヴァンがいないことを少し寂しく思っていた。
『ダメダメ、今はアレクに集中しなきゃ!』
「アレクー脇が甘い!もう少し絞めて!」
「はい!」
それらを眺める男の姿があった。
「ふふん、筋は良さそうじゃねぇか。」
「えい!!」
アレクは勢いよく短剣を投げたが的はずれな方向に行ってしまった。
「あぁ!」
「あーあ、ってんん??」
キンッ!!!
しかしアレクが明後日の方向に投げた短剣に何かが当たった。
そして短剣は当たった拍子に軌道修正して的の真ん中に当たったのだ。
「えぇ!!なんで!!」
アレクは的に刺さった短剣を見て驚いていたが、レイリアは的とは真逆の方向に顔を向けていた。それに気が付いたアレクも同じように後ろを振り向くと、
「じっちゃ・・・ん」
「ようリア、ちょいと時間かかってな。遅くなった。スマン。」
そこには、レイリアの記憶にあったよりも白髪が増えている老齢の大柄な男が照れ臭そうに軽く片手をあげて立っていた。
「え?!じっちゃんってリアねぇさんの?って死んだんじゃ??」
アレクは軽くパニックになっていた。レイリアは今にも泣きそうな、それでいて嬉しそうな顔をして、その男のところまで駆け出して勢いよくヴァンに抱き着いた。
「じっちゃん、遅い!!!」
「スマンスマン、ちぃっと手間取ってしまってな。」
「心配したんだから~~~」
「リアはいつまでだっても甘えん坊さんだな。ただいま。」
「じっちゃん~~おかえりなさい」
ヴァンはレイリアをギュッと抱きしめていた。そしてアレクはレイリアとヴァンの様子を凝視したまま固まっていた。
『え?もしかして前に言っていた「今はいない」っていうのは留守にしてたってこと?!』
アレクは前に話していたレイリアのセリフを思い出していた。そして確かに亡くなったとは一言も聞いていないことに気が付いたのだ。そう、レイリアの紛らわしい言い回しによってアレクは早合点して勘違いしていたのだ。
『そういうことか。でもリアねぇさん嬉しそう・・・そりゃそうか。よかったね・・・けどあれ?』
アレクはレイリアの嬉しそうな様子によかったと思うと同時に、なんとも言葉にできない少しモヤっとしたものを感じた。この感情が一体なんなのか?アレクはこの時点ではわからなかった
アレクは庭にある的に短剣を投げる練習をしていたが、やっと的に当たったのだ。まだ真ん中ではないが、かなり中心寄りに当てている。
「ふふ、やったわね。あとはそれを真ん中に当てるように頑張って!」
「見てて、絶対当ててやるから!」
アレクはそう言うと再び的に向かって短剣を投げていた。そんなアレクを見ていると、レイリアはふと思い出した。
場所はここと同じで、その人物は幼いレイリアの近くで目線を合わせるようにしゃがんでいた。元はブラウンの髪に白髪が混じった短髪の老齢の男性で、そして老齢ではあるものの、大きな体で捲った服の袖から見える鍛えた太い腕には数か所の傷跡があり、それだけでその男が只者ではないことが伺えた。レイリアを引き取ったヴァンであった。
ログハウスの家の庭には、鍛錬用の的が用意されていた。幼いレイリアは短剣を投げる練習をしていたが、まだ幼いがゆえに、なかなか的に掠りもしなかった。しかし何度目かでようやく初めて、的の外側ではあるが短剣が的に刺さったのだ。
「じっちゃんあたったーーーー!!」
「おぅ!よくできたな!」
「すごい?ねぇすごい?」
「あぁ、すごいぞ!!」
「やったぁ!」
幼いレイリアは初めて的に当たった喜びに、ぴょんぴょんと跳ねて全身で喜びを表していた。ヴァンはレイリアの頭をわしわしと琥珀の瞳を細めて嬉しそうに撫でていた。
・・・ふふ、私もじっちゃんには鍛えられたなぁ。レイリアは自分もこの庭にある的でヴァンに短剣投げを教えてもらっていたことを思い出していた。そして側にヴァンがいないことを少し寂しく思っていた。
『ダメダメ、今はアレクに集中しなきゃ!』
「アレクー脇が甘い!もう少し絞めて!」
「はい!」
それらを眺める男の姿があった。
「ふふん、筋は良さそうじゃねぇか。」
「えい!!」
アレクは勢いよく短剣を投げたが的はずれな方向に行ってしまった。
「あぁ!」
「あーあ、ってんん??」
キンッ!!!
しかしアレクが明後日の方向に投げた短剣に何かが当たった。
そして短剣は当たった拍子に軌道修正して的の真ん中に当たったのだ。
「えぇ!!なんで!!」
アレクは的に刺さった短剣を見て驚いていたが、レイリアは的とは真逆の方向に顔を向けていた。それに気が付いたアレクも同じように後ろを振り向くと、
「じっちゃ・・・ん」
「ようリア、ちょいと時間かかってな。遅くなった。スマン。」
そこには、レイリアの記憶にあったよりも白髪が増えている老齢の大柄な男が照れ臭そうに軽く片手をあげて立っていた。
「え?!じっちゃんってリアねぇさんの?って死んだんじゃ??」
アレクは軽くパニックになっていた。レイリアは今にも泣きそうな、それでいて嬉しそうな顔をして、その男のところまで駆け出して勢いよくヴァンに抱き着いた。
「じっちゃん、遅い!!!」
「スマンスマン、ちぃっと手間取ってしまってな。」
「心配したんだから~~~」
「リアはいつまでだっても甘えん坊さんだな。ただいま。」
「じっちゃん~~おかえりなさい」
ヴァンはレイリアをギュッと抱きしめていた。そしてアレクはレイリアとヴァンの様子を凝視したまま固まっていた。
『え?もしかして前に言っていた「今はいない」っていうのは留守にしてたってこと?!』
アレクは前に話していたレイリアのセリフを思い出していた。そして確かに亡くなったとは一言も聞いていないことに気が付いたのだ。そう、レイリアの紛らわしい言い回しによってアレクは早合点して勘違いしていたのだ。
『そういうことか。でもリアねぇさん嬉しそう・・・そりゃそうか。よかったね・・・けどあれ?』
アレクはレイリアの嬉しそうな様子によかったと思うと同時に、なんとも言葉にできない少しモヤっとしたものを感じた。この感情が一体なんなのか?アレクはこの時点ではわからなかった
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