亡命者の竜の国の皇子は年上脳筋女子に逆らえない

胡蝶花れん

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第九話

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 レイリアは、事の経緯を簡単にギードに説明した。

 「なるほどなぁ、狙われてるときたか・・・確かにリアの時とよく似てるな」
 「でしょ」
 「す、すみません・・・」
 「謝らなくていいって。誰だって好き好んで命(たま)狙われるやつなんざいねぇからな」

 アレクは申し訳なさそうに縮こまっていた。

 「で、匿うっていうのはわかったんだけどよ、結局この坊主はどこの誰なんだよ?」
 「??」

 レイリアは何のことを言われてるかよくわかっていなかった。

 「・・・・リア、お前なー。もう少し考えろよ。」
 「???」
 
 ギードは呆れたように、片手で顔を覆った。

 「この坊主の名前はアレク、これも本名かどうかはわからない。姓は不明、だけどどこぞの輩に命を狙われている。どこから来てなぜ逃げてきたのかも不明。状況はまぁわかったけどよ、肝心なところははぜんっぜん、不透明じゃねぇか!」
 「・・・あら?確かにそうね」
 「リア~~~」
 
 レイリアは首を傾げ、言葉を続けた。
 
 「んーでも、そんなのどうでもよくない?私は匿うと決めたんだもの。詳しい事情はアレクが言いたいときになれば言ってくれるだろうって。どのみちね、こんな子供の命を狙ってくるなんてやつらは、碌な奴でしかないと私は思ってるわけよ。」

 レイリアのあっけらかんとした主張にギードもアレクもポカ―ンとした。だが、その沈黙は、ギードの笑い声でやぶられた。 

 「くくっ、ははっお前ってやつは!」 
 「おねーさん・・・」

 アレクは感動していた。そう確かに自分がどこから来たのか、誰に追われているのか、何も詳しいことはレイリアには話していない。必死で命からがら逃げてきて、運悪く魔獣にも殺されそうになったところをたまたまレイリアが助けてくれた。その縁だけで、レイリアは匿うと言ってくれたのだ。

 「そういうわけでね、この子のギルド登録をしてほしいのよ」
 「また唐突だな。まぁわからないでもないが。」
 「え・・・えーーっ?!ギ、ギルドって、ぼ僕ですか?む、無理です!」

 いきなりのギルド登録という言葉に、アレクはビックリした。それもそうだろう。何も事前に聞いていなかったのだから。 
 
 「何言ってんだ坊主、リアはお前さんより小さい時からギルドで働いてたぞ」
 「えぇ!?」 
 「うちではね、働かざる者は食うべからずよ。」

 というなり、レイリアはアレクにいたずらっぽくウィンクをした。

 「で、でも僕・・・レイリアさんみたいに強くないし・・・」

 アレクは自信なさげに俯いていた。 

 「あのね、ここに登録しようって言ったのは2つの意味があるからなのよ。」

 レイリアは諭すように言い、アレクは俯いていた顔を上げた。
 
 「え?どういう意味ですか?」 
 「一つ目はここで登録しとけば仮の身分証みたいなのが発行することができるのよ。アレクは逃げて来たんでしょ?でも逃げてばかりじゃ生活がままならないわ。そう言う意味では、仮の身分証を作って堂々としとこうって話なのよ。実際私もそうだったんだから。」
 「あ・・・・」 

 アレクはレイリアが実体験から、逃亡以外の方法で考えてくれているのだとわかった。 

 「二つ目の意味は『冒険者ギルド』は何も荒事だけじゃないのよ。例えば初心者向きなら、比較的危険度の低い薬草の採取とか軽い依頼もあるしね。まずはできることからやっていけばいいのよ。初心者にいきなり、魔獣を討伐してこいなんて無茶言わないわよ。」
 「くくっどんな鬼畜だよ。さすがの俺でもいわねーぞ」
 「で、ですよね。」
 
 アレクは恥ずかしそうにし、レイリアとギードはカラカラと笑った。

 レイリアは決めていた。匿うと決めたからには、アレクをこれから鍛えなければいけないと。アレクがちゃんと自立できるように手助けしようと。自分がヴァンやギード達にそうして助けてもらったようにと、レイリアは決心していたのだ。
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