8 / 81
第七話
しおりを挟む
『・・・うん、大方じっちゃんの目論見通りに育ったわよね?私。そうじっちゃんは訳アリの私をここまで育ててくれた・・・』
目を伏せていたレイリアは目を開き、くすっと笑った。
「アレクは優しいのね。」
「え?」
「気持ちは嬉しいわ。だけど、その見なかったって提案は却下ね。」
「えっ!?」
「っていうか、むしろ匿う気満々だけど?」
「ええっ!?だ、だめだよ!そりゃおねえさんが強いのはわかるよ!だけど僕を匿ったりしたら迷惑かけるだけだから・・・ 」
そういうとアレクは伏せがちに寂しそうな目をした。だけど、そんなアレクをお構いなしにレイリアは明るく振る舞った。
「ふふーんお姉さんの強さはこんなもんじゃないのよ?」
『まーじっちゃんにはまだまだっだって言われるだろうけど』と、心で少し言葉が続いた。
「でも!!」
レイリアはアレクの傍までいくと、しゃがんでアレクの目を見つめながら話した。
「実は私もね、君と似たような境遇だったの。」
「え?」
「小さい時にね、殺されそうになったところを、じっちゃんに助けてもらったの。」
「!?」
アレクはレイリアの言葉に驚いて、目を見開いた。
「そんな・・・レイリアさんも・・・」
「だからね、余計にほっとけないなーって」
「でも!」
それでも食い下がるアレクにレイリアは大きなため息をついた。
「どうせ、行くところないんでしょ?それとも行く当てはあるの?」
「えっと・・・それは・・・」
アレクは俯いて、半泣きになっていた。そんな様子をレイリアはしばらくじっと見つめ、
「・・・そんな場所ないんでしょ?なら素直に甘えておきなさいな。子供が意地張るんじゃないわよ。」
そういうとレイリアはニカっと微笑んだ。その顔を見たアレクはさらに涙溢れてきた。
「どう・・して・・・こんな会ったばかりなのに・・・」
アレクは泣き出した。今のアレクは自分が継母の策略で殺されそうになった頃よりは少し大きく見える。先程の発言が本当なら、殺されそうになったばかりか、アレクと関わった人にも何かしらの理不尽な行為が行われていたということだろう。
「私もね、会ったばかりで、じっちゃんにすぐに保護してもらったのよ。」
「じっちゃん・・・」
「あぁ説明不足だったわね。私の保護者、親代わりなってくれた人よ。ヴァンデル・ブロームって言うんだけどね。殺されそうになってた私を助けてそのまま匿ってくれたのよ。それにね、すっごく強いのよ!悔しいけど私よりも!」
「レイリアさんよりも強いんだ・・・」
レイリアは悔しいと言いながらも、その表情は嬉しそうだった。それだけで、レイリアがヴァンを慕っているのが見て取れた。しかしアレクはふと浮かんだ疑問を口にした。
「あれ・・・?でもここはレイリアさんの家なんですよね。ということはそのヴァンデルさんも一緒なんじゃ?」
そう、アレクの疑問はこの家に保護者であるヴァンが不在だったこと。しかしその疑問を聞いたとたんレイリアは、今にも泣きそうな表情を浮かべた。
「あぁ、じっちゃんは・・今はいないの・・・」
「え?!あ、あの余計なこと聞いてごめんなさい!」
『そうか、じっちゃんっていうくらいだ。きっとお年を召されているはず。今この場にいないのは・・・そうか、そういうことなんだよな・・・』
アレクは聞いてはいけないことを聞いてしまい、申し訳ない気持ちになった。そして、先程のレイリアの申し出に思い至った。
『あ、だからか!レイリアさんもヴァンデルさんがいなくて寂しいのもあるんだよな。だから僕を匿う気になったのかもしれない・・・』
「あの・・・まさかそんなこと言ってもらえるなんて思っても、みなかったから・・・少し・・・少しだけ考えさせてもらってもいいですか?」
「・・・そうね、急に言われて困るわよね・・・でも、どのみちは考えが決まるまではうちにいればいいわ。」
「そんな迷惑じゃ・・・・・・」
「さっきも言ったけど、行くところないんでしょ?」
「・・・」
「じゃ、決まりね!」
「あの・・・よろしくお願いします。」
アレクが軽く会釈するとその頭をレイリアはわしわしと撫でた。アレクは少し照れくさそうにしていた。
『ふふ、思い出すなぁ。じっちゃんもこうして私の頭をよく撫でてくれたっけ。』
レイリアは今この場にはいないヴァンに思いを馳せていた。
目を伏せていたレイリアは目を開き、くすっと笑った。
「アレクは優しいのね。」
「え?」
「気持ちは嬉しいわ。だけど、その見なかったって提案は却下ね。」
「えっ!?」
「っていうか、むしろ匿う気満々だけど?」
「ええっ!?だ、だめだよ!そりゃおねえさんが強いのはわかるよ!だけど僕を匿ったりしたら迷惑かけるだけだから・・・ 」
そういうとアレクは伏せがちに寂しそうな目をした。だけど、そんなアレクをお構いなしにレイリアは明るく振る舞った。
「ふふーんお姉さんの強さはこんなもんじゃないのよ?」
『まーじっちゃんにはまだまだっだって言われるだろうけど』と、心で少し言葉が続いた。
「でも!!」
レイリアはアレクの傍までいくと、しゃがんでアレクの目を見つめながら話した。
「実は私もね、君と似たような境遇だったの。」
「え?」
「小さい時にね、殺されそうになったところを、じっちゃんに助けてもらったの。」
「!?」
アレクはレイリアの言葉に驚いて、目を見開いた。
「そんな・・・レイリアさんも・・・」
「だからね、余計にほっとけないなーって」
「でも!」
それでも食い下がるアレクにレイリアは大きなため息をついた。
「どうせ、行くところないんでしょ?それとも行く当てはあるの?」
「えっと・・・それは・・・」
アレクは俯いて、半泣きになっていた。そんな様子をレイリアはしばらくじっと見つめ、
「・・・そんな場所ないんでしょ?なら素直に甘えておきなさいな。子供が意地張るんじゃないわよ。」
そういうとレイリアはニカっと微笑んだ。その顔を見たアレクはさらに涙溢れてきた。
「どう・・して・・・こんな会ったばかりなのに・・・」
アレクは泣き出した。今のアレクは自分が継母の策略で殺されそうになった頃よりは少し大きく見える。先程の発言が本当なら、殺されそうになったばかりか、アレクと関わった人にも何かしらの理不尽な行為が行われていたということだろう。
「私もね、会ったばかりで、じっちゃんにすぐに保護してもらったのよ。」
「じっちゃん・・・」
「あぁ説明不足だったわね。私の保護者、親代わりなってくれた人よ。ヴァンデル・ブロームって言うんだけどね。殺されそうになってた私を助けてそのまま匿ってくれたのよ。それにね、すっごく強いのよ!悔しいけど私よりも!」
「レイリアさんよりも強いんだ・・・」
レイリアは悔しいと言いながらも、その表情は嬉しそうだった。それだけで、レイリアがヴァンを慕っているのが見て取れた。しかしアレクはふと浮かんだ疑問を口にした。
「あれ・・・?でもここはレイリアさんの家なんですよね。ということはそのヴァンデルさんも一緒なんじゃ?」
そう、アレクの疑問はこの家に保護者であるヴァンが不在だったこと。しかしその疑問を聞いたとたんレイリアは、今にも泣きそうな表情を浮かべた。
「あぁ、じっちゃんは・・今はいないの・・・」
「え?!あ、あの余計なこと聞いてごめんなさい!」
『そうか、じっちゃんっていうくらいだ。きっとお年を召されているはず。今この場にいないのは・・・そうか、そういうことなんだよな・・・』
アレクは聞いてはいけないことを聞いてしまい、申し訳ない気持ちになった。そして、先程のレイリアの申し出に思い至った。
『あ、だからか!レイリアさんもヴァンデルさんがいなくて寂しいのもあるんだよな。だから僕を匿う気になったのかもしれない・・・』
「あの・・・まさかそんなこと言ってもらえるなんて思っても、みなかったから・・・少し・・・少しだけ考えさせてもらってもいいですか?」
「・・・そうね、急に言われて困るわよね・・・でも、どのみちは考えが決まるまではうちにいればいいわ。」
「そんな迷惑じゃ・・・・・・」
「さっきも言ったけど、行くところないんでしょ?」
「・・・」
「じゃ、決まりね!」
「あの・・・よろしくお願いします。」
アレクが軽く会釈するとその頭をレイリアはわしわしと撫でた。アレクは少し照れくさそうにしていた。
『ふふ、思い出すなぁ。じっちゃんもこうして私の頭をよく撫でてくれたっけ。』
レイリアは今この場にはいないヴァンに思いを馳せていた。
2
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~
あきさけ
ファンタジー
とある平民の少女は四歳のときに受けた魔力検査で魔力なしと判定されてしまう。
その結果、森の奥深くに捨てられてしまった少女だが、獣に襲われる寸前、聖獣フラッシュリンクスに助けられ一命を取り留める。
その後、フラッシュリンクスに引き取られた少女はノヴァと名付けられた。
さらに、幼いフラッシュリンクスの子と従魔契約を果たし、その眠っていた才能を開花させた。
様々な属性の魔法が使えるようになったノヴァだったが、その中でもとりわけ珍しかったのが、素材の声を聞き取り、それに応えて別のものに作り替える〝錬金術〟の素養。
ノヴァを助けたフラッシュリンクスは母となり、その才能を育て上げ、人の社会でも一人前になれるようノヴァを導きともに暮らしていく。
そして、旅立ちの日。
母フラッシュリンクスから一人前と見なされたノヴァは、姉妹のように育った末っ子のフラッシュリンクス『シシ』とともに新米錬金術士として辺境の街へと足を踏み入れることとなる。
まだ六歳という幼さで。
※この小説はカクヨム様、アルファポリス様で連載中です。
上記サイト以外では連載しておりません。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる