亡命者の竜の国の皇子は年上脳筋女子に逆らえない

胡蝶花れん

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第二話

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 レイリアは森の中にある我が家に帰ると、真っ先に男の子を自分が使っているベッドに寝かせた。男の子はやはり疲れていたのだろう、ベッドに入るとものの数分で寝息をたてていた。

 それがつい先程の出来事であった。
 
 『こういう時、一人だと気楽なモノね。ううん、きっとじっちゃんがいても同じことをしていたはず。だって私をここまで育ててくれた人だもの。
 ・・・うっ思い出したら泣けてきちゃった。・・・じっちゃんは今ここにはいない。わかっていても、ふと涙が込み上げてくる。あーだめだめ、今はそんなこと考えてる場合じゃない!
 そもそも助けないなんて選択肢はないけどね・・・まずはこの子が起きたら事情を確認しないと。』

 ベッドに横たわっている幼い男の子をよく見れば、長くも短くもない長さの少しクセがある黒髪に、薄汚れてはいるものの整った顔をしていた。先程の魔獣に追われ怯えて見開いていた目は青色だった。まだ親と一緒に行動するのが当たり前の歳だろうに、一人であの森の中いたのだ。レイリアは何となくわかっていた。どういった経緯でそこにいたのかはこの時点ではわからなかったが、絶対に訳アリだろうと。 

 『あの後、ざっと調べたけど、周りには誰もいなかったしね・・・』

 「う・・・うぅ・・・」
 
 『んん?うなされてるわね。夢見が悪いなら起こした方がいいかな?』

 とレイリアが迷っているうちに、男の子は目を覚ました。

 「うわぁあああああ!!」

 男の子は絶叫しながら飛び起きたので、レイリアも驚いた。

 「お、おはよう。大丈夫?何か怖い夢でも見たのかな?」
 「あ・・・あ・・・」

 『なんか私を見て怯えてる?もしかしてさっき魔獣を討伐したのが悪かったのかな?けど、おねえさん、生きるためには獲物を狩らないと生きていけないからね?』

 などと、レイリアが説明という名の言い訳をしようかと思った矢先に、ハッと何かに気付いた様子の男の子の口が開いた。

 「・・・その、ごめんなさい。お姉さんは僕を助けてくれたんですよね・・・」

 『あ、わかってくれたみたい。』

 「うん、まぁ出くわしたしね。(それにどのみちベアアイは討伐対象だったし)」
 「僕はてっきりお姉さんが追手かと思って・・・」

 『追手?なにやらきな臭いワードが出て来たわね。思った通り訳アリ確定ね。』

 「んーと、よくわからないけど、私はその『追手』とやらに関係ないから大丈夫だよ。そもそもギルドの依頼で森を捜索していただけだし。」
 「ギルド・・・って何?」
 「うん。冒険者ギルドのね、お仕事なんだけど、ってもしやギルドが何のことかわからなかったりする?」
 「うん・・・」

 『見た感じ、いかにも良家のお坊ちゃんって感じだもんね。そりゃ馴染みのない言葉かもしれないわ。』

 「そっか。簡単に言うとね、『冒険者ギルド』っていう組合があるのよ。ギルドには様々な種類があるのだけど、それに所属しておくと、そこから仕事をもらえるし、依頼を達成すれば報酬も貰えるってわけ。『冒険者ギルド』って名前が付くぐらいだから、荒っぽいことが大半なんだけどね。」
 「荒っぽいこと?」
 「そうね。例えばさっきベアアイに追われていたでしょ?」
 「あ・・さっきの熊みたいなやつ?」

 先程のことを思い出してか、男の子は真っ青になっていた。

 「うん。アレをね、討伐してほしいって依頼を私は請け負っていたの。たまたま君がソレに追われていたのね。けど間に合って良かったわ。」

 安心させようとレイリアはニッコリと微笑んだ。

 「あの、ごめんなさい!僕助けてもらったのに、まだお礼を言ってなかった!」

 男の子は慌てて頭を下げた。

 「ふふっどういたしまして。それと・・・ねぇ?」 
 「?」
 「とりあえずお腹空かない?」
 「え、いえ、僕は・・・『ぐぅううう』・・」

 よくあるべタな展開で、断ろうとしたところ、少年のお腹は正直だった。 

 「「・・・」」

 少年は顔を真っ赤にして、鳴ったお腹を隠すように手で覆っていた。 

 「あ、あのこれは違くて、その! 」 
 「ふふ、身体は正直ね。お姉さんもお腹空いたし、良かったら食べていって。」

 レイリアは、踵を返してキッチンに向かったが、すぐさま戻ってきた。

 「あ、そう言えば君の名前はなんていうの?私はレイリア、レイリア・ブロームって言うのよ。」
   
 「名前・・・アレク・・・・・。」
 「・・・そう、アレクね。」

 アレクは自分の名前しかわからないのか、それとも敢えて意図して姓を名乗らなかったのか、レイリアは恐らく後者であろうとは思ったが、それ以上追及することはしなかった。

 「じゃ、アレク、少しだけ待っててね。詳しい話はまたその後でね。」

 そう言うと、再びキッチンへと向かった。
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