227 / 233
226:ルッツの失恋~前編~
しおりを挟む
「・・・はぁ~・・・」
ルッツは盛大に溜息を付いていた。
「お前何回目だよ!」
ノアベルトの指摘通りで、ルッツは既に5回以上は溜息を付いていた。酒場にきて、わずか1時間も経っていないのにも関わらず、である。
「ごめん、意識してないからわかんないね。そんなにしてた?」
「初めは数えてねぇけど、5回以上はしてるな。」
「そっか・・・」
「ま、気持ちはわからないでもないがな。」
「はぁ~・・・」
そして舌の根が乾かないうちに、またもやルッツは溜息をついた。
「だから!」
「なんだよ!溜息ぐらいいいだろ!」
そしてキレてきた。
「・・・まあ言われてみたらそうだな。」
現在、ノアベルトとルッツはニ次会?で二人で酒場に来ていた。先程までは同期のメンバーと一緒に月の兎亭で、飲み食いしていたのだ。そこでルッツは溜息を何度もついてしまうような出来事にあったのだ。
遡ること『月の兎亭』にて__
「「「「「「かんぱーーい!」」」」」」
この日は、久しぶりに同期で集まろうということで、飲み会となっていた。新人であった頃から今は別々の部隊へと配属となり、同期全員で集まるのは久しぶりであったが、相変わらず仲は良かった。始まってしばらくは、皆それぞれの自分の配属部署の近況報告や情報交換などを交わしていた。話が途切れた頃、セレスティアが切り出した。
「・・・えっとね、みんなには先に報告しておこうと思って・・・」
珍しくというか、らしくない様子でセレスティアはもじもじしていた。何となくルッツはその様子に嫌な予感を覚えた。
「へーなんだかセレスティアにしては珍しいね。」
テオもいつもと様子の違うセレスティアに興味深々で、皆がセレスティアに注目していた。
「・・・私ね、結婚することになったの。」
この瞬間、ノアベルトは口に含んでいたお酒を吐き出しそうになり、ルッツは真っ青になって固まっている。
「セレスティアおめでとう!!この中じゃ真っ先だね!」
テオは嬉しそうに祝辞を述べた。
「そうか・・・めでたいな。」
ケヴィンは相変わらず寡黙な様子で、喜びが全面に出ているわけではなかったが、その顔は優しい表情になっていた。
「おめでとう。セレスティア。」
当然ハインツは知っていたが、敢えて知らないふりをしている。
「ふふ、皆ありがとう。」
セレスティアは以前『氷の人形』と、言われていたのが嘘のように、はにかみながら頬を真っ赤にして、照れ笑いをしていた。
「お、おめでとう。」
ルッツはぎこちないながらも、なんとかお祝いの言葉を紡いだ。
「ありがとう。」
ノアベルトはルッツのセレスティアへの思いは知っていたが、当然言えるわけもなく、
「そ、そっか!まさにいつの間にって感じだな!でも、まぁ目出度い事だからな!おし、じゃもう一回乾杯しようぜ!」
何とか必死にその場を取り繕い、皆に乾杯を促した。
「「「「「セレスティアの結婚に!かんぱーい!」」」」」
「みんなありがとう。」
「でさ、相手って誰なの?竜騎士団きっての紅一点を競り落とした強者さ?」
テオは興味深々で聞いてきた。
それについては、皆も興味があった。もちろんハインツは例外である。
「えっとね、」
「カイエル・リューベルクというのよ。」
カイエルはフェルディナントの取り計らいにより、騎士爵を賜り、リューベルクという姓を名乗ることになったのだ。
「カイエル?ってあれ?」
ルッツは思い出した。魔物の騒動の時に、メルシャ村で会った男のことだと。
「もしかして、メルシャ村で会った、あの時の?」
セレスティアはルッツに指摘されて驚いた。(あーそういえばあの時会ったんだったわ。)
「ええ、そうよ。」
「やっぱり!」
ルッツはカイエルを思い出していた。
「え?まじか?ルッツ、知ってる野郎なのか?」
まさかルッツが知っている男だったとは思わず、ノアベルトは驚いていた。
「いや、知り合いってわけじゃないけど、ほら前に、5年ほど前だったかな。踊り子の上演会があったの覚えてる?その時にVIP席に座ってた黒髪の男だよ。」
「!あーあのやたら人目の引いた美形の集団のかよ!」
あの光景を見た者は、相当インパクトがあったらしく、いまだに覚えていたのだ。
「でも面白いね。セレスティアの飛竜と同じ名前だし。」
テオは感心していた。
「あぁ、すごいな。なんていうか運命を感じるな・・・」
ケヴィンの運命という言葉に、セレスティアは少しドキっとした。(実は番なんです。って言えるわけもないし。)
「ふふ、そうなの。偶然にも同じだったのよ。」
当然のことながら、カイエル・リューベルクと飛竜のカイエルが同一人物?であることは内緒であった。
ルッツは盛大に溜息を付いていた。
「お前何回目だよ!」
ノアベルトの指摘通りで、ルッツは既に5回以上は溜息を付いていた。酒場にきて、わずか1時間も経っていないのにも関わらず、である。
「ごめん、意識してないからわかんないね。そんなにしてた?」
「初めは数えてねぇけど、5回以上はしてるな。」
「そっか・・・」
「ま、気持ちはわからないでもないがな。」
「はぁ~・・・」
そして舌の根が乾かないうちに、またもやルッツは溜息をついた。
「だから!」
「なんだよ!溜息ぐらいいいだろ!」
そしてキレてきた。
「・・・まあ言われてみたらそうだな。」
現在、ノアベルトとルッツはニ次会?で二人で酒場に来ていた。先程までは同期のメンバーと一緒に月の兎亭で、飲み食いしていたのだ。そこでルッツは溜息を何度もついてしまうような出来事にあったのだ。
遡ること『月の兎亭』にて__
「「「「「「かんぱーーい!」」」」」」
この日は、久しぶりに同期で集まろうということで、飲み会となっていた。新人であった頃から今は別々の部隊へと配属となり、同期全員で集まるのは久しぶりであったが、相変わらず仲は良かった。始まってしばらくは、皆それぞれの自分の配属部署の近況報告や情報交換などを交わしていた。話が途切れた頃、セレスティアが切り出した。
「・・・えっとね、みんなには先に報告しておこうと思って・・・」
珍しくというか、らしくない様子でセレスティアはもじもじしていた。何となくルッツはその様子に嫌な予感を覚えた。
「へーなんだかセレスティアにしては珍しいね。」
テオもいつもと様子の違うセレスティアに興味深々で、皆がセレスティアに注目していた。
「・・・私ね、結婚することになったの。」
この瞬間、ノアベルトは口に含んでいたお酒を吐き出しそうになり、ルッツは真っ青になって固まっている。
「セレスティアおめでとう!!この中じゃ真っ先だね!」
テオは嬉しそうに祝辞を述べた。
「そうか・・・めでたいな。」
ケヴィンは相変わらず寡黙な様子で、喜びが全面に出ているわけではなかったが、その顔は優しい表情になっていた。
「おめでとう。セレスティア。」
当然ハインツは知っていたが、敢えて知らないふりをしている。
「ふふ、皆ありがとう。」
セレスティアは以前『氷の人形』と、言われていたのが嘘のように、はにかみながら頬を真っ赤にして、照れ笑いをしていた。
「お、おめでとう。」
ルッツはぎこちないながらも、なんとかお祝いの言葉を紡いだ。
「ありがとう。」
ノアベルトはルッツのセレスティアへの思いは知っていたが、当然言えるわけもなく、
「そ、そっか!まさにいつの間にって感じだな!でも、まぁ目出度い事だからな!おし、じゃもう一回乾杯しようぜ!」
何とか必死にその場を取り繕い、皆に乾杯を促した。
「「「「「セレスティアの結婚に!かんぱーい!」」」」」
「みんなありがとう。」
「でさ、相手って誰なの?竜騎士団きっての紅一点を競り落とした強者さ?」
テオは興味深々で聞いてきた。
それについては、皆も興味があった。もちろんハインツは例外である。
「えっとね、」
「カイエル・リューベルクというのよ。」
カイエルはフェルディナントの取り計らいにより、騎士爵を賜り、リューベルクという姓を名乗ることになったのだ。
「カイエル?ってあれ?」
ルッツは思い出した。魔物の騒動の時に、メルシャ村で会った男のことだと。
「もしかして、メルシャ村で会った、あの時の?」
セレスティアはルッツに指摘されて驚いた。(あーそういえばあの時会ったんだったわ。)
「ええ、そうよ。」
「やっぱり!」
ルッツはカイエルを思い出していた。
「え?まじか?ルッツ、知ってる野郎なのか?」
まさかルッツが知っている男だったとは思わず、ノアベルトは驚いていた。
「いや、知り合いってわけじゃないけど、ほら前に、5年ほど前だったかな。踊り子の上演会があったの覚えてる?その時にVIP席に座ってた黒髪の男だよ。」
「!あーあのやたら人目の引いた美形の集団のかよ!」
あの光景を見た者は、相当インパクトがあったらしく、いまだに覚えていたのだ。
「でも面白いね。セレスティアの飛竜と同じ名前だし。」
テオは感心していた。
「あぁ、すごいな。なんていうか運命を感じるな・・・」
ケヴィンの運命という言葉に、セレスティアは少しドキっとした。(実は番なんです。って言えるわけもないし。)
「ふふ、そうなの。偶然にも同じだったのよ。」
当然のことながら、カイエル・リューベルクと飛竜のカイエルが同一人物?であることは内緒であった。
10
お気に入りに追加
211
あなたにおすすめの小説

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
報酬を踏み倒されたので、この国に用はありません。
白水緑
ファンタジー
魔王を倒して報酬をもらって冒険者を引退しようとしたところ、支払いを踏み倒されたリラたち。
国に見切りを付けて、当てつけのように今度は魔族の味方につくことにする。
そこで出会った魔王の右腕、シルヴェストロと交友を深めて、互いの価値観を知っていくうちに、惹かれ合っていく。
そんな中、追っ手が迫り、本当に魔族の味方につくのかの判断を迫られる。
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる